著者
森部 豊 山下 将司 岩本 篤志 影山 悦子 福島 恵 中田 美絵
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

中央アジア出身のソグド人のうち、北朝・隋・唐時代の中国社会で活動した者たちを取り上げ、彼らの政治・軍事・文化史上の活動を、いわゆる正史などの編纂史料のみならず、既出・新出の墓誌銘をはじめとする石刻史料および考古学的発見による文物資料を利用し、検証を加えた。その結果、ソグド人の東方活動には、北朝・隋・唐初における活動の担い手と、それ以降の時期の活動の担い手において、断絶があるのではないかという仮説にいたった。また、ソグド人研究に必要な基本的資料の収集をほぼ終え、別途公開する基礎的作業が完成した。
著者
三浦 大生 秋元 崇 宮内 新 石川 知雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.88, pp.15-20, 2000-05-18
被引用文献数
1

本稿では複数のエージェントを同時に学習する手法として, 遺伝子プログラミングを用いた学習にエージェント間評価を導入して, エージェント同士が互いに評価する手法を提案する.実ロボットに提案した手法による学習法を実装してのサッカーゲームによる実験を行う.まずスルーパスに戦術を特定した学習を行い, エージェント間評価を用いることでスルーパス行動の学習効率を高めることができることを示し, エージェント間評価が有効な手法であることを示す.続いて戦術を特定することなく複数の戦術を1回の学習で同時に学習することができることを示す.
著者
小林 隆志 濱野 真二郎 谷内 麻美 Haque Rashidul Mondal Dinesh
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

致命的な内臓型リーシュマニア症(VL)の制圧には、治療による全身症状寛解後に発症する皮膚病変(PKDL)の発症機序を理解し、PKDLを的確に診断・治療することが不可欠である。PKDLのリスクファクターを解明するため、バングラデシュのPKDL患者の調査を行い、VL治療薬別PKDL発症率を解析したが治療薬と発症率に因果関係は認められなかった。しかし、リーシュマニア原虫の Real-Time PCRによる定量的検出に成功し、ミルテフォシンがPKDL皮膚病変内リーシュマニア原虫排除に機能することを経時的、定量的に示した。更に、原虫を高感度で検出する乾燥LAMPの試作に成功し現地での実用性も検証された。
著者
石部 尚登
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ベルギーにおける「方言」の復権運動には、復権の目標の違いに起因する標準語の形態に対する立場の違いが存在するものの、教育への導入の目標、ICTを利用した活動、さらには公用語政策の影響により、他の地域語・少数言語の復権と同様に「標準語」の必要性が立場の違いを超えて共有されていることを明らかにした。ただし、そこで志向される「標準語」とは、他の地域語・少数言語の復権の場合とは異なり、複数の中心を持つことが可能な、より柔軟かつ寛容な形態であることを示した。
著者
岸本 年史
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

精神分裂病患者における水中毒は病的多飲を特徴とし、意識障害、痙攣などの重篤な症状を引き起こす。また、この水中毒は抗精神病薬の長期服用によっても発症することが報告されている。しかし、この水中毒の発症機構については未だ不明な点が多く、一致した見解はない。我々は、慢性の抗精神病薬服用患者における抗利尿ホルモン分泌不適合症候群(SIADH)が水中毒発症に関係していることを指摘している(Kishimoto et al, Jpn. J. Psychiatr. Nerurol. 43,161-169,1989)。今回、この水中毒発症機構の基礎的研究の一環として抗精神病薬長期投与とSIADHとの関係を明らかにする目的で、ラット視索上核(SON)への高張artificial cerebrospinal fluid (aCSF)の注入刺激後のアルギニンバソプレッシン(AVP)遊離と行動変化に及ぼすデカン酸ハロペリドール長期投与(20mg/kg/2weeks,i.m.)の効果について検討した。下記に、デカン酸ハロペリドールを8週間長期投与したラットにおいてえられた結果を示す。1)SONにおける高張性aCSF注入による刺激は、刺激終了後30分間の飲水行動量を増加させた。また、同処置ラットの移所運動量は増加する傾向を示した。2)SONにおけるAVP濃度は、上述の高張刺激後、同様に増加した。3)同処置ラットにおいて、線条体ドパミン濃度は対照群と比較して減少した。デカン酸ハロペリドール長期投与ラットにおいて、SONへの高張性aCSFの刺激は飲水行動量の増加および同部位のAVP遊離を引き起こした。また、デカン酸ハロペリドール長期投与によって線条体ドパミン濃度の減少が認められた。以上の結果から、SONへの高張性aCSF注入刺激によって発現する飲水行動の増加およびAVP遊離は、中枢ドパミン神経系との密接な関係が推測される。
著者
寺田 努
出版者
神戸大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2009

近年,モバイル技術および無線通信技術の発展により,人々が受け取る情報は飛躍的に増大しており,大量のデータから必要なデータのみを抽出する情報フィルタリング技術,必要なデータを的確にユーザに提示する情報提示技術の重要性が高まっている.本研究では,(1)ハードウェア・ソフトウェア連動型の低消費電力・高信頼な状況認識技術として,センサのサンプリングレートを動的に制御する低消費電力化方式や,センサ内で波形のピーク情報を抽出し送信データを削減することによる低消費電力化,(2)外部音の有無や明るさなどの周辺状況に応じて提示情報を適切にフィルタリングする機構およびそれらの機構を一般のアプリケーションプログラマが容易に記述できるモジュール化の実行,(3)上記の機構を容易に組み合わせてアプリケーションを記述できるエンジンであるWearable Toolkitの開発および拡張を行った.さらに,これらの基盤システム開発を応用し,ナビゲーションシステムや技術伝承システム,新たな文字入力システム,MCシステム,バイクレース支援システム,着ぐるみ装着者の支援システム,ダンスパフォーマンスの支援システムなどを開発し,枠組みの提案だけでなく提案機構が実際に運用に耐えるクオリティにあることを明らかにした.成果は学術論文誌やウェアラブルコンピューティング分野のトップカンファレンスであるISWC2010などで複数発表しており,高い評価を受けた.
著者
五味 正一 (三石 正一)
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

遺構を恒久的に露出・展示しながら保存するために,遺構の乾燥化を防ぐ親水性ポリマーが土壌中の水分移動に与える影響をあきらかにするために研究をおこなった.実験に使用した試料土には立川ローム,供試ポリマーにはポリシロキサン-ポリオキシアルキレンオリゴマー(分子量700、以下SAO)と,ポリエチレングリコール(分子量400、以下PEG)を用いた.土壌の水分蒸発に影響を与えている供試ポリマーの浸透深さを知るために,供試ポリマー散布後の土壌中の水分ポテンシャル分布をWP4-Tを用いて測定した.その結果,SAOは深さ1cm,PEGは深さ1.5cmまで浸透していることがわかり,この結果から,乾土重あたりの供試ポリマーの比,すなわち混合ポリマー比を計算した.そして供試ポリマー混合試料土を作成し,水分保持特性曲線をWP4-Tを用いて作成した.水分保持特性から,PEGを混合した土壌の水性はSAOを混合した土壌の2倍の保水性を有することがわかった.また供試ポリマー混合試料の水分保持特性曲線をもちいて,供試ポリマー浸透層中の水通過抵抗係数をあきらかにした.その結果,SAO混合試料の水通過抵抗係数は1×10^<-13>cm s^<-1>,PEG混合試料は1×10^<-12>cm s^<-1>となり,PEGよりもSAO浸透層中の水は移動し難いことがあきらかになった.これまで得られた実験結果をもとに,供試ポリマー浸透層による輸送抵抗を考慮した土壌水分蒸発速度の予測をおこなった.輸送抵抗を組み込んだバルク式を用いて蒸発速度を計算した結果,蒸発速度を低く見積もった.その理由として,ポリマー浸透層中では水蒸気ではなく液体水が移動していることが考えられる.本研究では,供試ポリマーの添加による土壌の保水性の上昇と,ポリマー浸透層中の水分移動の相関はみられなかった.親水性ポリマーによる土壌の水分蒸発の抑制や水分蒸発量の予測には,土壌間隙中のポリマーの存在形態および水分子との関係の把握が必要であることがあきらかになった.
著者
澤木 聖子 尹 錫任
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

平成26年度は、日本国内の企業調査に加え、働く社会人を対象に「日本企業における社内公用語の英語化」に関するウエブ・アンケートを実施した。個々人のレベルでは、組織能力と英語力には正の相関があると認識しながらも、社内公用語英語化の導入に対する不安が高く示された。一方、調査対象となった企業の事例からは、外国人採用を含む国内のグローバル要員の育成方針を強化し、年功制の廃止や人材の評価尺度を統一化するグローバル人材データベース化によるグローバル・タレント・マネジメントを推進するなど、英語との親和性を伴う人事政策への転換を図る例も確認された。
著者
伊澤 佳久平 野間 晃幸 山本 昌志 木村 勝紀 伊藤 裕之 竹友 直生 沼野 香世子 川島 眞
出版者
JAPAN BIFIDUS FOUNDATION
雑誌
腸内細菌学雑誌 = Journal of intestinal microbiology (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-5, 2008-01-01
被引用文献数
2 1

慢性的便秘で乾燥皮膚を有する20歳~39歳までの女性56名を2群に分け,LB81乳酸菌(<i>Lactobacillus delbrueckii</i> subsp. <i>bulgaricus</i> 2038株ならびに<i>Streptococcus thermophilus</i> 1131株)を使用したヨーグルトあるいはこれにコラーゲンペプチド(CP)ならびにセラミド(CE)を配合したヨーグルトをそれぞれ120 mlずつ1日2回,4週間摂取させた.摂取前後の比較で,両群ともに皮膚の弾力性,乾燥および鱗屑の程度が改善された.CP・CE含有ヨーグルト摂取群ではキメ密度が有意に改善された.肌状態に関するアンケート調査(19項目)では,両群とも多くの項目で改善がみられた.両群ともに便秘の症状が有意に改善されたことから,本結果にヨーグルトの整腸作用が関与している可能性が考えられた.<br>
著者
加藤 雄一
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

DNAで可溶化した単層カーボンナノチューブ(ナノチューブ)をコール酸ナトリウム水溶液に分散させた。この溶液に、レーザー光を照射し、カイラリティ選択的な可溶化剤の交換を試みた。当目的のためにナノチューブ可溶化剤の交換挙動について調査した。DNAは長さの異なるオリゴー本鎖DNAを用い、可溶化剤の被覆率を吸収スペクトルから求めた。そして反応の平衡定数、熱力学パラメータを、カイラリティの異なるナノチューブそれぞれについて実験的に決定した。これはナノチューブと可溶化剤の相互作用の解明への道を拓いたことを意味する重要な成果である。まず、DNAの長さの影響について興味深いことが分かった。長さによって、加熱によりコール酸ナトリウムからDNAへの交換が進行するか、逆のDNAからコール酸ナトリウムへの交換が進行するかが異なることが分かった。この成果の意義および重要性は、レーザー光照射による交換についての、濃度条件や温度条件などの基本的な実験条件を求めたことにある。この成果は論文としてScientific Reports誌において発表した。またInternational Association of Colloidand Interface Scientists,Conferenceなど国際学会および国内学会で発表を行った。コール酸ナトリウムの濃度が交換挙動に与える影響を調査し、ある濃度においてコール酸ナトリウムとナノチューブの相互作用が変化することを明らかにした。この成果は論文としてChemPhysChem誌において採択された。またこの成果に関する発表は九州コロイドコロキウムにおいてposterawardを受賞した。さらに上記可溶化剤分子のサイズと濃度とが相互作用に与える影響についての体系的な調査結果と、可溶化剤交換についてのノウハウを踏まえた結果、低分子化合物であるフラビン誘導体を可溶化剤に用いたカイラリティ分離と、その後の可溶化剤を除去し、別の可溶化剤に交換することによるナノチューブの再分散に成功した。この成果は、現在論文投稿準備中である。
著者
加賀谷 聡子 中島 恵美子
出版者
杏林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、虚血性心疾患患者のセルフマネジメント教育プログラムの開発に向けて、病気に対するリスク認識とセルフマネジメントの現状について明らかにし、更に語りの影響と教育プログラム導入の可能性を検討することを目的とした。虚血性心疾患患者4名に対し半構成面接を行い、質的帰納的に分析した。分析の結果、リスク認識は【自分なりに病気体験の意味づけをする】などの5カテゴリーが、セルフマネジメントは【セルフマネジメントの困難感】など3カテゴリーが抽出された。また、面接後に対象者は気持ちの変化について語っており、語りを教育プログラムに取り入れることでセルフマネジメントが促される可能性が示唆された。
著者
江上 登 加賀谷 忠治 井上 宣之 竹下 弘秋 水谷 肇
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. A編 (ISSN:03875008)
巻号頁・発行日
vol.66, no.650, pp.1936-1942, 2000-10-25
被引用文献数
12 21 7

This study examines the effect of hybrid surface modification by vacuum carburizing and fine particle peening on fatigue strength behaviors of SCM 415 material. We used quenched vacuum carburized and hybrid, vacuum carburized and fine particle peened, specimen made of SCM 415 and measured their hardness distribution, mechanical properties, fatigue strength and crack propagation. In terms of the fatigue behaviors, we investigated the relationship between the crack propagation rate da/dN and stress intensity factor range △K, da/dN and effective stress intensity factor range △K_eff, as well as the fatigue crack initiation life N_i and crack failure life N_f of specimens. The results show specimens with hybird surface modification are effective in the prevention of fatigue crack initiation and fatigue crack propagation.
著者
杉浦 義典 杉浦 知子 丹野 義彦
出版者
信州大学
雑誌
人文科学論集. 人間情報学科編 (ISSN:13422782)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.79-89, 2007-03-15

強迫症状と関連の深い意志決定の困難さを,強迫症状に限定されないパーソナリティ特性として測定する不決断傾向尺度(Frost & Shows,1993)の日本語版を作成し,その信頼性と妥当性を検討した。非臨床群を対象とした質問紙調査の結果,以下のことが明らかになった。(1)不決断傾向は1因子構造であり,十分な内的整合性を示した。(2)不決断傾向は,強迫症状と正の相関を示した。(3)不決断傾向は,責任の認知および完全主義(ミスを恐れる傾向)との正の関連を示した。(4)不決断傾向は,一般的なパーソナリティ傾向(ビッグファイブ),および,責任の認知と完全主義で説明出来ない強迫症状の分散を説明していた(増分妥当性)。(5)否定的な思考の暴走を防ぐ認知的なスキル(認知的統制尺度の「破局的思考の緩和」)は,不決断傾向を低減できる可能性が示唆された。以上の知見から,日本語版不決断傾向尺度の一定の信頼性と妥当性が確認された。
著者
河井 崇
出版者
阿南工業高等専門学校
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2008

干潟造成による底生生物の生息地創出の再現性を評価するため,徳島県阿南市大潟人工干潟(泥干潟)・徳島市マリンピア沖洲干潟(砂干潟)の2つの干潟において,隣接地にそれぞれ類似した物理的環境特性を持つ干潟を新たに創出しその後の底生生物の加入状況を追跡した.その結果,両新規創出干潟は共に現時点で既存干潟の状況を再現できておらず,種による分布特性の違い,及びその要因となる生態的特性と環境条件との関連性のより一層の理解が重要であることが示唆された.さらに,その評価過程においては,種間の環境に対する時間的反応性,生活史,寿命等の違いを考慮した,長期的な実験・観察が必要であると考えられる.
著者
山崎 彰
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ドイツ・ブランデンブルク地方のレカーン領をめぐる紛争を、18世紀後半から19世紀前半の期間を対象として検討した。(1)18世紀の領主間で争われた領地境界紛争、(2)18-19世紀における領主と農民の間で展開した領主権と賦役をめぐる紛争、(3)19世紀中葉まで長引いた領主とビュドナー(農村下層民)の間で展開した共有地用益権の償却をめぐる紛争、以上が本研究の主要内容であった。