- 著者
-
佐々木 明彦
苅谷 愛彦
- 出版者
- The Tohoku Geographical Association
- 雑誌
- 季刊地理学 (ISSN:09167889)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.4, pp.283-294, 2000-12-31 (Released:2010-04-30)
- 参考文献数
- 26
- 被引用文献数
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三国山地平標山の亜高山帯斜面に分布する泥炭質土層の生成開始期を検討するために, 48地点で土層断面を調査した。その結果, 鬼界アカホヤ (7,200cal y BP), 浅間平標山第3 (6,600cal y BP), 妙高赤倉 (6,600cal y BP), および浅間平標山第2 (6,300cal y BP) などの完新世中期のテフラを挟む泥炭質土層が斜面の随所に分布することが明らかとなった。テフラの年代と分布深度から見積もられる泥炭質土層の平均堆積速度から, 各試坑における泥炭質土層の生成開始年代を推定すると, 早いところで9,000cal y BP頃, 一般には8,000~7,000cal y BPであることが判明した。これは, 他の日本海側多雪山地における泥炭質土層の一般的な生成開始年代と調和的である。一方, 完新世後半に生成し始めた泥炭質土層も存在するとみられるが, その分布は化石残雪凹地の中心部のごく狭い領域に限られる。