- 著者
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大野 芳裕
國弘 幸伸
- 出版者
- 耳鼻咽喉科展望会
- 雑誌
- 耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.1, pp.50-56, 1999-02-15 (Released:2011-03-18)
- 参考文献数
- 8
- 被引用文献数
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上咽頭炎68例に対する局所治療 (上咽頭処置およびネブライザー療法) の治療効果につき検討した。治療前後における局所の炎症の程度の判定は, 硬性内視鏡を用いて撮影したビデオ画像により行つた。また自覚症状の変化は, 治療前後に行つたアンケート調査の結果を基に評価した。主訴としては, 咽頭痛 (22.1%) が最も多く, 次いでめまい (19.1%), 咽頭異物感 (14.7%) の順であつた。これらの症状の他にも, 後鼻漏, 肩こり, 頭痛, 耳鳴, 咳嗽, 発熱 (不明熱), 頸部痛, 耳閉感, 咽頭乾燥感, 全身倦怠感など, さまざまな症状がみられた。主訴となつた症状は, 治療後に86.8%の症例で改善がみられた。主訴以外の症状に関しても, それらのすべてにおいて有意な改善が得られた。局所所見の改善率は60.3%であつた。自覚症状と局所所見の改善の有無の間には有意な相関が認められた。以上の結果から, 上咽頭炎に対しては局所治療がきわめて有効であると考えられた。日常臨床においては, 常に本疾患を念頭に置き, 診断と積極的な治療が行われるべきであると思われる。