著者
樋口 尚吾 Shogo Higuchi
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2016-03-25

公営競技等の賭事では,勝負事の結果に関わる有利な情報を持った参加者による特異的な投票行動を,他の参加者が垣間見ることのできる場合がある.本研究では,競馬での時系列オッズデータに基づき,競馬予想について優れた情報を持った投票者の意思決定を窺い知る(知識察知する)ことで,競馬市場参加者のための合理的な投資を行うことを目指す.競走結果に関わる有利な情報であり,なおかつ多くの競馬ファンに知られていない情報を持った投票者(インサイダー投票者)がオッズの変化を促した可能性が高い勝馬投票券を抽出する既存手法を,パリミュチュエル方式でのオッズデータに用いる際の課題を明らかにしたうえで,投票券抽出に係る新たなパラメータを考案した.投票行動データが豊富なものとして,日本中央競馬会(JRA)に許諾を頂いた上で,JRAが主催した競走への競馬市場参加者による投票データを解析対象とした.評価実験ではSimulated Annealingを適用することで勝馬投票券抽出に係るパラメータの最適化をおこない,1着賞金2000万円以上のレースに関して収益率が最大3000%以上となる条件が存在することが判明し,これより知識察知の可能性が明らかとなった.比較実験では,決定木を用いた分類モデルの構築により,知識察知を行わない場合での投資判断も併せて行い,提案手法の有効性を評価した.評価実験で得られた結果に基づき,インサイダー投票者の投票行動についての考察および,よりコンスタントに利潤を得るための投資戦略について議論を行った.最終的に,投票行動が公に利用できる代表的なドメインである株式市場への適用をおこない,株価予測に関わる有利な情報を持った投資家による株の売買の痕跡を検知する知識察知を目指すことで,本手法の一般性について考察を行った.
著者
田中 克明
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.347-352, 2011 (Released:2011-05-02)
参考文献数
14

灌流指標Perfusion Index(PI)とはマシモ社のパルスオキシメータRadical-7TMで計測可能な末梢灌流の定量的な指標であり,脈波変動指標Pleth Variability Index(PVI)とはPIの呼吸性変動をもととした循環血液量の動的指標である.従来の動的指標は侵襲的で測定が煩雑であったが,PVIは非侵襲的で測定が簡便であり,実用性が期待されている.一方で痛みや呼吸状態,測定部位の違いなどにより,PI・PVIの測定値は大きく影響される.今後,基礎的・臨床的データの蓄積が進めば,PI・PVIのモニタリングは麻酔中の血行動態の最適化に大きく寄与するものと考えられる.
著者
遠藤 幸子 成瀬 真理生 近藤 博史 田村 淳
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.102, no.3, pp.147-156, 2020-06-01 (Released:2020-09-16)
参考文献数
60

人工林は日本の森林の約40%を占めており,木材供給だけでなく生物にとっての適した生息場所として機能することが期待されている。しかしながら,人工林内の生物の多様性およびその生態について十分に理解されているとはいえない。本研究ではスギ・ヒノキ人工林で観察される鳥類種を明らかにし,その生態的特徴について考察した。調査は2014年から2018年の鳥類の繁殖期にあたる5月から6月にかけて神奈川県西部の3山域57地点において実施した。観察調査から8目26科45種がスギ・ヒノキ林を利用していることが明らかとなった。確認された種数およびその種組成は,スギ林とヒノキ林との間で有意な違いはみられなかった。確認された鳥類のうち留鳥10種と夏鳥2種を含む2目9科12種は,全ての山域で年を経ても繰り返し確認されており,これらはスギ・ヒノキ人工林を利用する確率の高い種であると示唆された。これら12種のうち11種は昆虫食であった。さらに,10種は樹上と樹洞に営巣する傾向があった。このように,人工林を利用する確率の高い種では,食性と営巣場所の選択において高い共通性がみられた。
著者
関口 浩二 遠山 哲次郎 荒田 崇 清水 敏晶
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海洋開発論文集 (ISSN:09127348)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.853-858, 1997 (Released:2011-06-27)
参考文献数
4
被引用文献数
1

Lake Saroma is an inland sea-lake on the Sea of Okhotsk. As the lake's environment is suitable for aquiculture, it is widely used for natural sea farming.Ice floes usually reach Okhotsk Sea coast of Hokkaido from late January through early February. When ice floes arrived before Lake Saroma had sufficiently frozen up, the inflow of ice into the lake damaged aquiculture facilities. As a countermeasure for this, construction of ice booms to control ice floes began in 1994 and 10 spans out of 13 planned have since been completed.In this study, the effectiveness of ice booms in controlling ice floes in an actual sea area is confirmed, factoes concerning the tension of the main wire, an important point in design, are analyzed using research results, and the design and actual values are compared.
著者
伊藤 毅志 杵渕 哲彦 藤井 叙人
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.196-201, 2014-10-31

人間はゲームをプレイするときにミスを犯す.人間がプレイするゲームでは,ミスを犯すことが織り込み済みであると言える.本報告では,ゲームにおけるヒューマンエラー(ミス)を分類し,その認知的なメカニズムのモデルを提案し,将棋を題材に検証を試みる.
著者
盛山 和夫
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.111-126, 1994-10-01 (Released:2016-08-26)
参考文献数
34
被引用文献数
1

女性の地位や階層をどう位置づけるかは、今日の階層研究の最重要課題の一つであるだけでなく、階級階層理論の根本的再編を迫るものでもある。1980年代にイギリスのSociology誌上を中心に展開されたゴールドソープとその批判者たちとの論争は、表面上はどちらがデータ分析上より有効な階級概念であるかをめぐるたたかいであったが、実際上は経済秩序の中で女性が層としておかれている状況を従来の階級理論が無視していることに関するものであった。社会的閉鎖理論は階級、性、人種等の社会的亀裂を捉える統合的な概念図式を提供しようとしているが、その説明力は期待できない。本稿はこうした問題状況の中で、女性を位置づけるために階層理論がどのような変貌を遂げなければならないか、そしていかなる具体的な探求課題が存在するか、を示すものである。
著者
卜部 繁俊 佐藤 航平 堀 朋子 川﨑 寛子 荒木 智徳 竹下 茂之 楠本 浩一郎 大畑 一幸 重野 賢也
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.145-151, 2018 (Released:2018-02-20)
参考文献数
25

症例1は74歳男性.2015年6月,胃癌に対し胃全摘術及びRoux-en-Y再建術施行.高度逆流症状を呈し,上部消化管内視鏡検査にて食道内に胆汁を含む黄色の腸管内容物貯留と逆流性食道炎が認められた.膵酵素阻害薬や蠕動促進薬も効果不良であったが六君子湯追加により摂食可能となり退院し得た.症例2は75歳男性.2011年11月,胃癌に対し腹腔鏡下幽門側胃切除術及びBillroth-Ⅰ再建術を施行.嘔吐・吃逆,摂食不良,体重減少を呈し,術後5年の時点で当科紹介.同様に逆流性食道炎と診断され,六君子湯追加で軽快した.六君子湯の効果として消化管運動改善や食欲増進の他,胆汁吸着作用が報告されており,胃切除術後逆流性食道炎の症状改善に寄与すると考えられる.
著者
阪本 真基 上野 敦志 田窪 朋仁
雑誌
研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:21888736)
巻号頁・発行日
vol.2016-GI-35, no.12, pp.1-6, 2016-03-01

本論文では,自然言語によって対話を行うコミュニケーションゲーム 「人狼」 において,機械学習を用いてプレイヤの発言から役職の推定を行う手法を提案する.学習データはオンラインで提供される 「人狼 BBS」 のプレイログを用いた.プレイヤの発言を文書としてまとめ,word2vec を用いて単語の意味の類似性を考慮したベクトル表現を獲得する.獲得したベクトル表現を用いて,進行中のプレイヤの発言に基づいてプレイヤのベクトルを求め,k 近傍法,SVM により人狼の役職の推定を行い,交差検証により評価し考察した.

4 0 0 0 OA 司法資料

出版者
司法省調査課
巻号頁・発行日
vol.第211号, 1936
著者
辻 泰岳
出版者
Architectural Institute of Japan
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.79, no.704, pp.2291-2298, 2014

This paper investigates the 1966 exhibition "From Space to Environment," held at Matsuya Department Store in Tokyo, Ginza, involving the architects Isozaki Arata and Hara Hiroshi. This exhibitions subtitle was "Synthesized Exhibition of Painting + Sculpture + Photo + Design + Architecture + Music," which was instrumental in introducing the terms Intermedia and Environment Art (<i>Kankyo geijutsu</i>) to Japan. This paper examines the exhibition installations studying primary sources and clarifying the formation of the collective named Environment Society. This paper analysis the impact generated by the topic of "Environment" seen through a different point of view rather than the one of art movement establishment of the time.
出版者
日本評論社
雑誌
経済評論 (ISSN:02878801)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.p142-145, 1981-01
著者
海野 敏 影浦 峡 戸田 愼一
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.205-221, 2006-12-20
被引用文献数
1

本研究の目的は,近代における図書館の存在意義と社会的機能を明らかにすることである。そのために,主体とメディアの関係を手がかりとし,哲学,社会学,メディア研究等の先行研究を照査した。メディアが近代的主体の成立に寄与するための客観的条件を考えたところ,すべての条件を初めて満たしたのは印刷本であった。また,現在に至るまで印刷本だけが近代的主体の成立に寄与してきたことがわかった。さらに,19世紀に欧米で成立した近代図書館は,理念的には近代的主体の理想を純粋に体現していた。以上より,近代における図書館の本源的な社会的機能は,印刷本を媒介として近代的主体の成立,維持,強化に寄与するものであることを示した。
著者
代居 敬 金子 雅一 林 宗廣 窪田 秀治 古本 啓一
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科放射線学会
雑誌
歯科放射線 (ISSN:03899705)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.213-222, 1992-12-31 (Released:2011-09-05)
参考文献数
16

Six cases of so-called maxillary sinus mucous retention cysts are reported here, focusing mainly on X-ray CT and rotational panoramic examinations. The originating wall and the CT number of the lesions are studied.The results are as follows:1. Alternate positioning of the patient in the CT examination seemed to present valuable information on the origin and the contents.2. The probability of occurence seemed to be more than previously reported because three mucous retention cysts were found during CT examination.3. Mucous retention cysts seem to originate from all of the walls of the maxillary sinus except the upper with equal probability.4. According to the CT number, the mean value seemed to be around 80. There seemed to be a tendency for small mucous retention cysts to have a rather large CT number.It is also reconfirmed that the CT examination seems to be valuable for diagnosing the diseases occuring on the maxillary sinus.