著者
中鹿 亘 滝口 哲也
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:21888663)
巻号頁・発行日
vol.2015-SLP-109, no.2, pp.1-6, 2015-11-25

本研究では,音響特徴量・音韻特徴量・話者特徴量の3つを変数とする Three-Way Restricted Boltzmann Machine(3WRBM) を用いて音声モデリングを試みろ.3WRBM はそれぞれの変数のユーナリーポテンシャル,2 変数間のペアワイズポテンシャル,そして 3 変数間の Three-way ポテンシャルを総和したエネルギーに基づく確率密度関数である.本研究では,音響・音韻・話者特徴量の Three-way ポテンシャルを話者正規化学習・話者適応の観点から適切に設計する.一度モデルの学習が終われば 3 変数間の関係性が捉えられ,各特徴量の相互条件付確率を簡単に計算することができる.3WRBM による音声モデリングの性能を評価するために,本稿では声質変換実験と話者認識実験の結果を報告する.話者認識実験における話者特徴量は与えられた音響特徴量から尤度最大下基準により推定することで求めることができ,声質変換は,推定された音韻'情報と,切り替えた話者情報から音響特徴量を推定することで実現される.
著者
クリストファー リン
雑誌
崇城大学芸術学部研究紀要
巻号頁・発行日
no.7, pp.167-174, 2014

精神の概念には、一つの国や地域の人々の思想である。それは、長い時間をかけて積み重ねられた文化の一部である。親や先輩の教え、育った環境の影響、幼い頃から自然に染み込んだ思想概念、倫理と道徳などを含め、多くの人が認める共通の価値観ともいえる。アジア地域には華夏文化の儒釈道を中心にすえた、「五常」「八徳」「四維八徳」などの思想がある。ヨーロッパ地域には、民族の精神の一つ「騎士道」が存在している。他の地域にも多数の精神が存在している。いずれも地域の文化と歴史に沿って、長い年月をかけて育まれた民族精神である。現代社会は、経済的な国の発展を求めている。一方、人々の倫理道徳の欠如が問題になってきている。今後、文化精神を後世に伝達していくことが重要であると考え、民族の精神として人間社会において大切に受け継がれていくべきものである。本研究は同様に日本においては代表的な精神概念の一つとして武士道があげられる。武士道精神は時代の変遷によって、社会に受け取る変容を考察する。メディア技術の進歩が著しい現代、メディアの種類が増えるにつれて表現手段が増え、抽象的な精神概念を表現することが以前より可能になった。ここで映画のメディアを取り上げ、研究の資料として研究を展開する。映画は、芝居、音楽、服飾、照明、背景、映像など、複数の要素を含むメディアである。映画は抽象的な精神概念を具体的に表現することを可能と考えた。例えば、どんなことが起こっても、決して仲間を見捨てられない、ある場面で仲間は握手したり、笑顔で向き合い話したり、合い言葉を言ったりなどの演出で仲間の絆、友情や信頼を表現する。又は、敵討ち場面で登場人物は、敵の前に激怒な表情で叫ぶ、無慈悲なやり方で相手を斬る演出は恨み、憎悪を表現する。この様に映画は抽象的なことを具体的に表現できると考えられていた。武士道精神も抽象的な概念なので、映画のメディアを研究の情報発信メディアとして取り上げる。映画コンテンツにおいては、作品がよくリメイクされている。例えば、シェイクスピアの台本『ロミオとジュリオット』を題材として用いられ、リニューアルやストーリーの再創作などのリメイクの手法を使って幾度も映画化されている。日本映画においても、2000年以降、小林正樹が製作した『切腹』をはじめ、50年代後半から60年代前半に作られた多数の時代劇映画がリメイクされている。リメイク版が製作される理由としては、次のようなことが挙げられる。まず、原作自体が優れた普遍的な価値を持っていると考えられる。その価値を現代及び後世の人々にまで伝えたいと願う製作者もいる。次に、よく知られたストーリーは観客の興味を呼びやすく興行収入が上がりやすい。観客にとっては前作と比較するという楽しみもある。更に製作者にとっては、前作が作られた時代にはなかった映像技術を駆使したり、前作とは違う独自のアイディアを取り入れたりして、前作を超える作品を世に問うことができる。本研究は二本の『十三人の刺客』を取り上げオリジナル版とリメイク版を比較し、武士道精神の時代性の変遷や社会の人々の受け取り方がどう変わってきているのかを映画での表現を通して考察する。
著者
佐々木健 伊藤一成
雑誌
第77回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, no.1, pp.983-985, 2015-03-17

平成24 年度より中学校の技術家庭科で,計測や制御を伴うプログラミングが必修化された.これまで様々な取り組みが報告されてきたが,社会教育や家庭教育も含めた視点での一層の整備が急がれる.そこで本稿では,プラレールに着目した.世代を超えて親しまれるプラレールを使用することで,親と子が共に学習への興味を持続する事が可能だと考えられる.さらに,各種センサを利用した情報機器の多様化や低価格化が進んでおり,一般の人でもセンサデバイスを,身近なものとして捉えるようになってきた.本研究ではこれら両者を組み合わせた学習教材を試作したので,報告する.

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著者
前田 将希 池上 陽一郎 久保田 彰 佐藤 文宏
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.390-392, 2015-09-18

日本のドラマや漫画で甘酸っぱい青春シーンの定番と言えば,自転車 2 人乗りである.誰しも一度は憧れるが,気恥 ずかしさに邪魔をされたり,そもそも道交法違反であったりと実行に移すのは難しい.そこで本企画では,腰に回さ れる腕,予期せぬスキンシップ,ドキドキを生む不安定なバランスという 2 人乗りの必須要素を自転車型装置で再現 し,擬似青春体験を提供することを目的とする.また,女性には本企画を通して男性が求める女性の理想像に触れて もらい,参考にしてもらうことを目指す.
著者
林 鎭代
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.14, pp.113-121, 2013-03-31

民話など昔話に登場する“鬼”は,山奥に住まい,村に来ては食べ物や財産,娘をさらっていく悪しき存在であることが多い。しかし, 筆者の「『読みがたり』に登場する“鬼”」1)には「鬼の田植え」のように,“善い鬼”が登場する話もある。そして,青鬼集落にも“善い鬼”の話が伝えられている。“善い鬼”の話は,非常に稀な例である。“善い鬼”は,どのような事情で生まれたのか。人間と鬼の関係性は,どのようになっているのか。また,子どもには,何を伝えているのかを探った。
著者
荒井 勇亮 佐藤 功人 滝沢 寛之 小林 広明
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.2010-HPC-124, no.11, pp.1-7, 2010-02-15

近年,従来の CUDA に加えて,GPGPU プログラミングのための新たな標準プログラミング環境として OpenCL が利用可能となった.本論文では,CUDA と OpenCL のプログラムの実行性能差を定量的に評価する.まず,ほぼ同等の処理を行う CUDA と OpenCL のプログラムを実装し,性能を比較する.次に,その性能差の主要因を調査し,CUDA コンパイラではサポートされているいくつかのコンパイラ最適化手法が,現在の OpenCL コンパイラではサポートされていないことを明らかにする.最後に,OpenCL コンパイラで生成されるコードを手動で最適化することによって CUDA と同等の性能を達成できた結果から,今後の OpenCL コンパイラの最適化機能が強化されることにより,CUDA コードを OpenCL に単純変換するだけでも,CUDA と同等の性能を達成できる可能性が示された.
著者
渡邊 純一郎 藤田 真理奈 矢野 和男 金坂 秀雄 長谷川 智之
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1470-1479, 2013-04-15

組織の生産性をいかにして向上させるかということは,リーダやマネージャにとって大きな関心事である.しかしながら,生産性向上に向けたこれまでの施策は,マネージャの経験や勘など定性的な評価に基づくものが主であった.我々は,ウェアラブルセンサを用いて物理的な人間行動を長期的に計測し,身体的な動きの度合いである活発度や対面コミュニケーションと生産性との関係を定量的に評価した.アウトバウンド型コールセンタにおいて受注率に影響を与える要因を調べた結果,休憩中の職場の活発度と受注率が相関することが分かった.両者の因果関係を明らかにするために少人数のチームごとに休憩時間を合わせる施策を行った結果,休憩中の対面コミュニケーションに起因するチームの活発度が生産性に影響することが分かった.本研究の結果は,センサにより職場の活発度を定量的に計測しマネジメントすることにより,生産性を向上させられる可能性を示唆する.
著者
武田 礼子
出版者
国際基督教大学
雑誌
国際基督教大学学報. I-A 教育研究 = Educational Studies (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.121-127, 2016-03-31

一般的にフェイス(面子)研究の原点は,コミュニケーション研究であるが,外国語教育研究において,フェイス研究の実証研究は稀少であるため,未だに発展途上の分野である。本稿では,フェイスと外国語学習を考察する。まず背景にある,ゴフマン(1967)のフェイス理論,またその影響を受けたブラウンとレヴィンソン(1987)のポライトネス理論を論じる。次にゴフマンと同様,フェイスを普遍的だと論じるリンとバウワーズ(1991)が提唱する構成概念を紹介する。また中国発祥と言われる文化特有のフェイスの具体例として,中国人留学生を対象とした研究も紹介する。本稿では普遍的・文化特有,それぞれの立場のフェイスの諸研究を考察し,感情とフェイスの関連のように潜在的可能性のある分野にも触れ,外国語教育への応用も検討する。
著者
島森 哲男
出版者
宮城教育大学
雑誌
宮城教育大学紀要 = Bulletin of Miyagi University of Education (ISSN:13461621)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.333-352, 2015-01-28

武田信玄は漢詩を17首残している。本稿はその校訂、注釈、現代語訳である。これらの注釈作業を通じて、我々は武田信玄の中国文学とりわけ宋詩に対する該博な知識と、日本の五山文学からの影響・継承関係、そして日本の王朝文学の流れを汲む伝統的な花鳥風月の美意識を窺い知ることができる。
著者
サンキュー タツオ
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, 2016-03-15
著者
大場光一郎 大場寧子 須藤功平
雑誌
デジタルプラクティス
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.36-44, 2011-01-15

XML処理をRubyを使って行うときの第一の課題は, XMLを正しく処理し目的を達成することであるが,もう一つの大きな課題は, Rubyの特性を活かし,オブジェクト指向的に美しい設計を行い,プログラムのインターフェイスを直感的で使いやすくすることである.本稿では,ライブラリRSS Parser の開発を通じてこれら2つの課題にどのように取り組んだかについての経験を通して,広くRubyにおけるXML処理の設計・実装について考慮すべき事柄について論じる.ことに,現在国内では開発者が最も多く,実際の開発に頻繁に使われているJavaとの対比を通し,Rubyの特性を活かした設計についての知見を述べる.
著者
西尾 隆
出版者
国際基督教大学
雑誌
社会科学ジャーナル = The Journal of Social Science (ISSN:04542134)
巻号頁・発行日
no.79, pp.143-162, 2015-03-31

Modern governments have shifted their major functions from coercion to service delivery. Even in such a coercive policy field as correction administration, where the security issue is still a top priority, the style of prison management is changing towards a softer and more responsive system in accordance with new demands from inmates, who are aging, more multicultural and diverse. Having reviewed the characteristics of Japan’s prison management in a comparative perspective, this paper will focus on the recent changes in the correction administration system, with special focus on human resource management and the introduction of the PFI institutions.Historically, Japan’s postwar prison management had been decentralized and flexible, while not well-standardized, but since around 1970 a tightly-controlled prison management system was institutionalized across the country. However, the government started reforming this system’s, legal and practical components, when injuries and fatalities occurred at Nagoya Prison in 2002. In order to put more emphasis on rehabilitation and to mitigate overcrowding, four PFI prisons were established from 2007 to 2008, where prison guards as public servants andstaff of private companies are collaborating in rehabilitation and occupation training of the inmates. Although it is still at an experimental stage, this new style of correction administration seems to replace the traditionally “tight-controlˮ system.When one observes the reality of inmates comparing with patients or handicapped people outside the prison walls, it is becoming harder and harder to draw a clear line between prisons and welfare or medical institutions. While the PFI prisons were introduced to meet the urgent, short-term needs, the reform can have a longer-term impact on the shift of nature of correction administration from a simple coercion for inside safety to a mixture of services including education, training, and welfare for inmates, as well as security for people at large.
著者
谷口 由希子
雑誌
人間文化研究 = Studies in Humanities and Cultures (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.63-75, 2016-01-31

本論文は、子ども時代の貧困の持続性について考察する。具体的には、子ども時代に児童養護施設などの社会的養護を経験し、なおかつ施設退所後にホームレス生活を経験した11名を対象にインタビュー調査を行い、子ども時代からホームレス生活に至るまでの生活史を分析した。その結果、第1に、ほとんどのケースにおいて社会的養護からの離脱後には施設や家族との関わりはなく、勤務先の寮などで生活している。保護者も頼ることができず「帰る場所がない」居住環境にあるため離職がホームレス経験に直結している。第2に、子ども時代から大人になりホームレス生活に至るまで社会的養護の事由となる家族基盤の脆さは一貫してある。すなわち、子ども時代は社会的養護というシステムに包摂されるが、社会的養護が発生する問題自体は、子ども時代を経て大人になった時点においても解決されず、施設での生活や高校卒業等の教育歴を獲得することによっても生活の立て直しが容易ではないことが示唆された。
著者
古瀬 徳雄
出版者
関西福祉大学研究会
雑誌
関西福祉大学研究紀要 = The Journal of Kansai University of Social Welfare (ISSN:13449451)
巻号頁・発行日
no.3, pp.149-182, 2001-03

Sibelius,Johan(Jean)Julius Christian (1865~1957) は、フィンランドの作曲家として自国の民族を主題とする作品を始め、ピアノ小品から歌劇までの領域を持ち、正統的な作曲法によって普遍的な評価を得ている。とりわけ絶対音楽からなる彼の完成交響曲は《7番》まであり、《8番》については初演の契約までこぎつけながら作品を破棄したとされている。彼は91歳まで生き、日本の年号では江戸終末期から昭和32年までに及び、西洋音楽史では〈トリスタンとイゾルデ〉の初演からホヴァネスの〈日本の浮世絵による幻想曲〉を小沢征爾がシカゴで指揮した年までに相当し、シューベルトの3倍生きたことになる。しかし、実際の創作期間は1929年まででその後30年近くは創作活動が空白となっている。このことについては様々な推測がなされ、多くの書では鬱病を中心とした精神疾患によるものとしているが、そこには明確な証拠が見出せない。そこで彼の《交響曲第7番》と歴史的にも空間的にも音楽的にも距離のある〈マタイ受難曲〉を対比させ論を展開し、創作を停止した原因を新たな視点から追求していくことにする。
著者
ACHARYA Chakra P. LEON-GONZALEZ Roberto
出版者
GRIPS Policy Research Center
雑誌
GRIPS Discussion Papers
巻号頁・発行日
vol.15-25, 2016-03

Using primary field data from recently developed urban areas of Nepal, we identify households who migrated from rural to urban areas and analyze the impact of international remittances on their investment in education. The results show that rural-urban migrant households who receive international remittances have lower income and consumption but higher human-capital investment, measured by the level and budget share of expenditure on children’s education and the time their children spend studying at home, in comparison to local households and other types of migrant households. The findings suggest that an important motivation for rural-urban migration is the search for higher-quality education, because the experience of international migration helps households to know the higher returns to education abroad and international remittances help to finance the costs of both internal migration and education. We also observe that the quality of education is an increasingly important concern in contemporary Nepalese society, possibly due to the anticipated higher returns to education in the global labor market.
著者
梶田 将司
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.286-289, 2016-02-15

「教育の情報化」とも言われる大学教育におけるICT利活用は,コース管理システム/学習管理システム (Course Management System/Learning Management System, CMS/LMS),教務システム等を通じた「従来の教え方・学び方の電子化」から,組織的な情報環境の整備の中で実際の教育現場で ICT を活用しながらデータを蓄積し,エビデンスに基づいて教えや学びを高度化する「情報環境と利活用のスパイラルな進化」という新たなフェーズに入った.本稿では,変わりつつある現在の潮目をまとめながら,長期的な視点でこれまでの大学における情報環境整備の歴史を俯瞰することで,オープンソースとオープンスタンダードを根幹とした次世代ディジタル学習環境のあり方を語る.
著者
太田 裕也 金岡 晃 森 達哉
雑誌
研究報告セキュリティ心理学とトラスト(SPT) (ISSN:21888671)
巻号頁・発行日
vol.2016-SPT-17, no.19, pp.1-6, 2016-02-25

視覚障害者や高齢者は今日の情報社会における基本ツールであるパソコンやウェブの利用においてハンディキャップを抱えている.このようなハンディキャップを技術的手段によって克服するためには,アクセシビリティの確保が急務である.一方,そのようなハンディキャップを持つユーザに対してもセキュリティを確保する必要がある.しかしながらアクセシビリティとセキュリティがどのような相関を持つかは自明ではない.本研究は特に視覚障害者に焦点をあて,アクセシビリティとセキュリティの相関に着目する.そのような視点に基づく研究は非常に数が少なく,著者らが知る限り唯一の例が 2015 年に米シラキュース大学の研究者らによって報告されている [4].本研究は上記の先行研究をベースとして,異なる人種,異なる言語,異なる支援ツールにおいても同様の結論が得られるかを検証する.具体的には 10 名の視覚障害者と 9 名の健常者からなる被験者グループを構成し,ウェブサービスの認証にかかわる操作をする際の成否や成功するまでに要する時間を計測する.実験の結果とインタビューを通じた質的分析を組み合わせ,認証を必要とするウェブページを利用する際に障害者が経験する困難性や解決すべき技術的課題を明らかにする.また,先行研究になかった新規な知見として,視覚障害者の中でも異なる世代間では結果に大きな差異が存在することを示す.