著者
柳澤 有吾
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、「テロとの戦い」や「人道的介入」も視野に入れつつ、現代における「正義の戦争」の可能性と現実性に関して原理的・哲学的考察とその歴史的な裏づけを図ることを目指すものである。中でも「非戦闘員保護の原則」に注目して、それが極限状況の中でどこまで維持できるのか、また維持できないときにそれはどう扱われるべきなのかに焦点を合わせて考察を進めてきた。今回はとくに、ドイツで憲法裁判所にまで持ち込まれることになった「航空安全法」をめぐる議論を集中的に検討した。ハイジャックされてテロリストの武器となった旅客機の撃墜命令を防衛大臣は出せることになっているが、それは正当な行為なのか不正なのか、正当防衛なのか緊急避難なのか、実行者あるいは命令者は免責されればよいのか、それともやはり正当化は欠かせないのか等々、疑問が次々と沸き起こる。これは、きわめて政治的な問題であると同時に、「人間の尊厳」や基本権としての「生命権」のもつ意味と限界が問われた事例であり、戦争倫理の観点からも重要な問題が提出されていることが確認された。「非戦闘員保護」の問題の射程は広い。研究期間内に参画することとなったS.G.ポスト編『生命倫理学事典』の翻訳作業を通して、戦闘員であると同時に非戦闘員でもある軍医務官のディレンマという側面からこの問題にアプローチする可能性とともに、生命倫理学における「戦争」の位置についても考えることができた。さらに、新たに浮上してきた課題として、戦争(倫理)をその表象ないし記憶という側面から捉え直す作業もまたひとつの重要な問題領域をなすと思われる。そこで報告集にはミュンスター「彫刻プロジェクト」における作品のいくつかを分析・検討した論文を収録した。
著者
稲葉 大輔 釜阪 寛 南 健太郎 西村 隆久 栗木 隆 今井 奨 米満 正美
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.112-118, 2002-04-30
被引用文献数
10

馬鈴薯澱粉由来のリン酸化オリゴ糖(カルシウム塩;POs)が,溶液中ミネラルの不溶化と沈澱形成を阻害することが確認されている。本研究では,リン酸化オリゴ糖を配合したシュガーレスガムがエナメル質の再石灰化に及ぼす効果を口腔内実験により検討した。健常成人12名(男6名,女6名;平均年齢:21歳)を被検者とし,ランダムに3群に分け(n=4/群),二重盲検デザインの口腔内実験を行った。各被検者は,3個の脱灰エナメル質試料を接着した口蓋プレートを装着して,キシリトールガム, 2.5%POs配合キシリトールガム,ショ糖ガムのいずれかのガムを1日4回組閣した。実験期間中,フッ化物は使用せず,また試料の乾燥を防止した。エナメル質試料は1,2および4週間後に順次回収し,マイクロラジオグラフィで脱灰深部ld(μm)を評価した。2週間後,POsガム群の脱灰深度は40±3μmで,ショ糖ガム群(58±13μm)およびキシリトールガム群(61±6μm)よりも有意に低い値を示した(pく0.05)。また,4週間後では,POsガム群の説灰深度は29±3μmで,ショ糖ガム群(72±16μm)の60%,またキシリトールガム群(56±14μm)の48%へと有意に減少していた(p<0.01,p<0.05)。 2.5%POs配合シュガーレスガムを毎日利用することは,エナメル質の再石灰化を著しく促進することが示唆された。
著者
三角 太郎
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.725-733, 2015-01-01 (Released:2015-01-01)
参考文献数
3

大学におけるアクティブ・ラーニングと電子教材の導入,大学学習資源コンソーシアム(Consortium for Learning Resources: CLR)の活動について紹介する。まずアクティブ・ラーニングが浸透したため講義の形態が変化し,大学の講義の場で紙媒体の指定教科書の利用が減ってきている現状を示す。次に一般的な電子教材の作成方法について説明し,大学における教材支援の体制,さらに電子教材の大学への導入事例について紹介する。最後にCLRの活動について報告する。特に著作物利用にあたっての包括的利用許諾,著作物利用のガイドライン策定,プラットフォームの仕様,サステイナブルなビジネスモデルについて考察する。
著者
松葉 類
出版者
京都大学文学研究科宗教学専修
雑誌
宗教学研究室紀要 (ISSN:18801900)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.82-98, 2014-12-05

Levinas est connu pour sa pensée sur l'« Autre » au sens éminent, mais il est aussi le penseur qui recherche la liberté du sujet, du « Même », comme les autres philosophes qui lui étaient contemporains. Mais la liberté levinassienne semble de prime abord totalement différente des conceptions de la liberté de ses contemporains, parce qu'elle acquiert fondamentalement un sens seulement en rencontrant l'Autre, c'est-à-dire dans la relation de responsabilité. Affirmant que « l'existance en réalité n'est pas condamnée à la liberté, mais est investie comme liberté. La liberté, nest pas nue. Philosopher, c'est remonter en deçà de la liberté, découvrir l'investiture qui libère la liberté de l'arbitraire. »(TI, 83), Levinas critique le concept sartrienne de la liberté pour esquisser la sienne. Nous allons d'abord considérer la place de son concept de « liberté » dans sa philosophie, en particulier dans Totalité et Infini (1961), puis examiner en trois points sa critique du concept sartrienne de la liberté: premièrement, la liberté sartrienne est l'arbitraire même; deuxièmement, la liberté sartrienne ne suppose pas l'altérité; troisièmement, la rencontre sartrienne avec l'autre est conflictuelle. Par cet examen de la critique levinassienne, nous verrons qu'en réalité, Levinas et Sartre partageaient des problèmes en commun. Nous devrons alors interpréter l'admiration que portait Levinas à Sartre dans Un langage pour nous familier (1980), le texte qui traite de la dernière pensée de Sartre.
著者
徳田 武
出版者
明治大学教養論集刊行会
雑誌
明治大学教養論集 (ISSN:03896005)
巻号頁・発行日
no.392, pp.33-83, 2005-03
著者
大谷 久美子
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.1-10, 2015-02
著者
山口 悟 西村 浩一 納口 恭明 佐藤 篤司 和泉 薫 村上 茂樹 山野井 克己 竹内 由香里 Michael LEHNING
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.51-57, 2004-01-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
6
被引用文献数
4

2003年1月5日に長野県南安曇郡安曇村の上高地乗鞍スーパー林道で起こった複数の雪崩は,死者こそ出なかったが車20台以上を巻き込む大災害となった.雪崩の種類は面発生乾雪表層雪崩であった.今回の雪崩の特徴は,従来雪崩があまり発生しないと考えられている森林内から発生したことである.現地における断面観測より,今回の雪崩は表層から約30cm下層に形成された“こしもざらめ層”が弱層となり発生した事がわかった.積雪変質モデル並びに現場近くの気象データを用いた数値実験でも,同様の“こしもざらめ層”の形成を再現することができた.弱層になった“こしもざらめ層”は,1月1日の晩から1月2日の朝に積もった雪が,3日早朝の低温,弱風という気象条件下で変質して形成されたと推定される.今回の研究結果により,雪崩予測における積雪変質モデルの適応の可能性が明らかになった.また,考えられている森林の雪崩抑制効果に関してより詳細に検討する必要性があることも示された.
著者
池長孟 編
出版者
創元社
巻号頁・発行日
1937
著者
矢野 暢
出版者
京都大学東南アジア研究センター
雑誌
東南アジア研究 (ISSN:05638682)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.269-274, 1974

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
森本 政之 藤森 久嘉 前川 純一
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.449-457, 1990-06-01
被引用文献数
26

音像の空間的な拡がりに、「みかけの音源の幅」と「音に包まれた感じ」の二つの性質があり、区別して知覚できることを示すため、初期部(直接音と初期反射音)の両耳間相関度と残響部の両耳間相関度を独立に変化させた音場を使用し2種類の聴感実験を行った。まず、空間的印象に関する非類似度実験を行い多次元尺度法により布置を求めた。次に個々の性質について一対比較法による評価実験を行い心理的尺度値を求めた。二つの実験結果を基に重回帰分析を行った結果、「みかけの音源の幅」と「音に包まれた感じ」の違いについて理解していれば、「みかけの音源の幅」と「音に包まれた感じ」を区別して知覚できることを明らかにした。
著者
上村 晃弘 サトウ タツヤ
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.33-47, 2006-08-30
被引用文献数
2

血液型性格関連説は日本で人気のある疑似性格理論の1つで,1920年代の古川竹二の仮説に由来する。現在では多くの提唱者がこの仮説を様々に解釈している。したがってこの説には多様性がある。本研究では,最近の「血液型ブーム」においてTV放送された説を伝統的説明,生物学的媒介,枠組利用,剰余特性付加の4つの型に分類した。伝統的説明型は古川の仮説の後継である。生物学的媒介型は,血液型と性格の関係を進化論や脳科学などの新しい学術的知識を用いて説明する。枠組利用型は単に占いに用いている。剰余特性付加型は提唱者の専門分野で見出された特性を追加した程度である。すべての提唱者の説は論理的妥当性をもたない。
著者
清水安次郎 著
出版者
日進堂書店
巻号頁・発行日
1915
著者
清水安次郎 著
出版者
日進社
巻号頁・発行日
vol.続, 1917