著者
中井 眞人 角田 善彦 孫 財東 村越 英樹 林 久志 網代 剛
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

昨年夏にCVPR2017 で発表されたOpenPoseは,簡単なWeb カメラを使ってリアルタイムで多人数の同時姿勢認識ができる.OpenPose の応用研究としてバスケットボールの投入予測と脳梗塞初期診断判定(FAST)システムを構築した.その結果、投入予測モデルでは先行研究と比較してかなり優位であることが分った.従来は全体の姿勢データを時系列で取得するにはモーションキャプチャーの様なセンサーが必要で、サンプリングが極めて少なく回帰分析等の統計モデルを使った分析ができなかった.OpenPoseでは容易に多くの姿勢データが取得でき統計モデルを使った分析が可能になった.さらにOpenPoseを使った投入予測モデルでは有意な精度が得られたので、OpenPose の認識するリアルタイムの姿勢データは統計モデルに耐え得る精度を持つことも判明した.もう一つのFASTシステムの成果については今後報告する予定である.
著者
小松 里奈
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

オフライン手書き文字認識は、AIによる技術・アルゴリズムにとって未だに残る難しい課題となっている。これは手書きのドキュメントにて、スキャン処理を行う間に、画像内で頻繁にノイズがいくつか生じてしまうためである。スキャンされた画像にあるノイズの存在は、画像を濁らせたりぼやけさせたりし、読みにくくなってしまう。本研究では、3,036種類の日本語を含んだ607,200枚のサンプル画像の分析に、U-Netと呼ばれるCNNアーキテクチャの一つを用いて試みた。結果を通じて、U-Netには多種多様な手書きのスタイルに対しても、文字からノイズを除去し、ストローク部分を強調できるという十分な能力を持つことを示すことができた。
著者
太田 貴久 南 拓也 山崎 祐介 奥野 好成 田辺 千夏 酒井 浩之 坂地 泰紀
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

本研究では,発明の新たな用途先を探す手法を提案した.提案手法では,はじめに,技術的特徴とそれに対応する効果を抽出する.その後,ユーザが指定した発明と,技術的特徴が類似し,かつ効果が類似しない他の特許を検索する.このような手法によって,発明の新たな用途先を探索する.提案手法に対して実験を行った結果,実際に別用途へ展開された特許の例を再現することでできた.
著者
大木 聖子 永松 冬青 所 里紗子 山本 真帆
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

本発表では,高知県土佐清水市立清水中学校にて実践されている「防災小説」の効果について考察を行う.筆者らは2016-2017年度の2年間,清水中学校にて防災教育の実践研究を行ってきた.土佐清水市は,2012年に内閣府から発表された南海トラフ巨大地震の新想定で最大34m以上という全国一の津波高が算出された地域である.これを受けて地域住民からはあきらめの声も聞こえていたが,清水中学校が始めた「防災小説」作りはこの絶望的な状況を打破しつつある.「防災小説」とは,近未来のある時点で南海トラフ巨大地震が発生したというシナリオで,生徒ひとりひとりが自分が主人公の物語を800字程度で執筆したものである.発災後のどの時点を綴ってもいいが,物語は必ず希望をもって終えなければならない.この「防災小説」は,執筆した生徒自らの変化をもたらしただけでなく,教員・保護者・地域にも大きな影響を与えた.なぜいわば架空の物語にすぎない「防災小説」がこれだけの影響力を持つのかを探るべく,防災小説の分析と並行して,その後の生徒や教員・保護者の行動変容を一年間にわたって追跡することで,防災小説の理論的考察を行った.結論から言うと,「防災小説」には大きく2つの効果があった.ひとつは,防災の範疇を超えて生徒たちが自己実現を果たすことに寄与した点,もうひとつは,生徒自身やその周辺を含むコミュニティを防災の理想的な状態に先導した点である.「防災小説」はナラティヴ・アプローチの防災分野への応用と位置づけられる.内閣府の発表した新想定はドミナント・ストーリーに相当し,事態の硬直化を招いている.防災小説が,南海トラフ巨大地震が発生したときの描写を「最後は必ず希望を持って終える」物語として綴られたものであることを考えれば,まさにこれがオルタナティヴ・ストーリーとなり,硬直化した事態を解消しつつあると説明できる.また,防災小説は小説の中では過去であっても実際には未来に相当する地震発生までの期間をどのように過ごすべきかを,自ら綴った言葉で制約している(ナラティヴの現実制約作用).「防災小説」執筆後の防災教育活動やひいては日常生活にも良い影響がもたらされたのは,自分で具体的に描写した目指すべき自分像を,生徒ひとりひとりが持ったことによると考察できる.矢守・杉山(2015)は,もう起きたことをまだ起きていないかのように語る「Days-Beforeの語り」と,まだ起きていないことをもう起きたかのように語る「Days-Afterの語り」という概念を導入し,両者が両立されたとき「出来事の事前に立つ人々をインストゥルメンタル(目的志向的)に有効な行為へとより効率的に導くことができるのではないだろうか」と予測している.防災小説は言うまでもなく「Days-Afterの語り」である.そして,自らの死に匹敵しうる出来事を「防災小説」の中において経験する生徒たちは,実際にはまだその出来事が起きていない「今この時」を思うときまさに「Days-Beforeの語り」の状況におかれており,コンサマトリー(現時充足的)の重要性に気づいている.つまり,「防災小説」は「Days-Afterの語り」であると同時に,「Days-Beforeの語り」にもなっており,矢守・杉山が予測していた状態を実証したものと言える.そして,この状況を効率的に導くことができる理由も,上記のナラティヴ研究の文脈において明らかにできたといえる.さらには,防災小説は学校現場で実施されることで,終わらない対話(矢守, 2007)に導いている.その結果,防災の理想的状態と位置づけられているステータスである,〈選択〉を重ねてなお残るリスクを〈宿命〉として住民全員で引き受ける未来に向かって,防災小説が生徒とその周辺コミュニティを先導していると結論した.
著者
田中 大貴 馬場 雪乃 鹿島 久嗣 齋藤 朋也 大久保 雄太
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

本研究では、運転時の位置情報や速度・加速度等の運転データを用いたドライバー識別に取り組む。既存研究では十数人のドライバー識別を対象にしていたのに対し、本研究では、最大1万人という大規模なドライバー識別を扱う。実データを用いた実験により、提案法がベースラインよりも精度良くドライバーを識別できることを示した。特に、位置や時間に関する特徴量が大規模ドライバー識別に極めて有効であることを示し、また、速度や加速度情報もドライバーの識別に一定の寄与があることを示した。
著者
飯塚 重善 高森 千恵子 山浦 美輪
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

将来の人間とロボットの共存のため,双方の円滑なコミュニケーション,インタラクションを実現するためのロボットのデザイン要件を導出することを目的に,SF映画を素材にして,ロボットと相対する人間の対ロボット心理を考察し,そこから,『70デザイン項目』をベースにしてロボットデザイン原則の導出を試みた.その結果,『70デザイン項目』に当てはまる項目を多数見いだすと共に,既存項目のロボット向けアレンジ,そして新たにロボット向けに必要と考えられるデザイン原則を提案するに至った.そして自律型ロボットに関して,インプリメントすべきと考える倫理的なデザイン項目を導出することができた.
著者
赤間 怜奈 渡邉 研斗 横井 祥 小林 颯介 乾 健太郎
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

本研究は,教師なし学習によりスタイル(言葉遣いや文体など)の類似性を捉えるを試みる初めての研究である.本研究では「スタイル」の類似性を捉えるベクトル空間を構築するに当たり,「同一発話内に含まれる単語は同一のスタイルを持つ」という仮定を置く.この仮定に基づき,同一発話内の単語を予測できるようなベクトルを構成することで,スタイルの類似性を捉えた単語ベクトル空間を獲得する手法を提案する.我々が期待する単語ベクトル空間とは,(「意味」は近くとも)「スタイル」が大きく異なる``俺''と``私''は遠くに配置され,(「意味」は異なっているとしても)「スタイル」が似ている``俺''と``だぜ''が近くに配置されるような空間である.さらに本研究では,スタイルの類似性を包括的に定量評価する手法を提案し,そのための評価データセットを新たに作成する.提案手法により獲得した単語ベクトルが,スタイルの類似性を捉えていることを定量的および定性的に示す.
著者
吉田 剛 鷲尾 隆 大城 敬人 谷口 正輝
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

急速に発展している先端計測技術の膨大な出力は複雑でノイズが多く,計測対象の高精度推定やノイズ除去のために機械学習技術を適用する必要性が高まっている.ところが既存の標準的機械学習は対象の母集団分布が変わらないことを前提とするベイズ推定を基にしている.そのため例えば,統計的に非定常な計測ノイズを除去するには,対象分布に依存しない最尤推定原理に基づいた新しい手法が必要となる.本研究では計測ノイズ除去のために,最尤推定原理に基づき多数のラベルなし事例と少数の正例からPU分類器(Positive and Unlabeled Classification)を学習する原理の検討を行った.そしてこの検討PUC手法を,現実の計測ノイズ除去問題に適用し,高精度・高ロバストな性能を得た.
著者
尾崎 僚 谷口 忠大
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

幼児の語彙獲得の過程において,連続音声信号からの単語分割が重要なタスクであると知られている.音声言語は,音素と音素の組み合わせによって単語を構成する二重分節構造を持つ.二重分節構造を持つ時系列データを解析する手法の一つに,ノンパラメトリックベイズ二重分節解析器がある.ノンパラメトリックベイズ二重分節解析器は計算コストが非常に大きく,大規模な音声データの解析には非常に長い時間を要するという問題があった.本研究では,ノンパラメトリックベイズ二重分節解析器の高速化を図る.本研究ではルックアップテーブルを導入することで,ノンパラメトリックベイズ二重分節解析器の高速化を実現する.本研究では,推論計算過程の効率化により,計算量オーダを3 次オーダから2 次オーダに削減し,実行時間を90%削減した.
著者
佐藤 信夫
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

我々は人間の行動やコミュニケーションの定量計測を可能にするセンサデバイスの研究を2007年から行っている.研究内容は,センサデバイスの開発だけでなく,行動分析からその利活用までと多岐にわたる.本報告では、我々が今まで取り組んできた行動計測/行動分析手法,及び,ビジネスの事例から,顧客の課題をどのようして解決に導いてきたのかを実例を交えて紹介する.
著者
小田 利彦 今井 紘 内藤 丈嗣 竹林 一
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

IoTデバイスから集まるセンシングデータに基づくアプリケーションを開発するデータ利用者に対して、センシングデータ流通市場に対するニーズが高まりつつある。データ利用者に対しては、AIなどのデータ分析を行うために、センシングデータのみならず、そのメタデータも重要な情報である。我々は、センシングデータのメタデータの定義、生成・配信し、データ利用者が活用に関する課題を検討するとともに、Iotシステム上にプロトタイプを作成して評価した。
著者
中川 慧 今村 光良 吉田 健一
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

時系列およびクロスセクションの属性を持つデータセットに対する時系列勾配ブースティング木を提案する。我々の時系列勾配ブースティング木は、内部ノードに時系列およびクロスセクションの属性を持つ弱学習器をもち、時系列間の非類似度に基づく基準例分割テストまたは通常の不純度に基づく分割を行う。時系列間の非類似性は、Dynamic Time Warping(DTW)または金融時系列に対してはIndexing DTWによって定義される。TOPIXを対象とした株価予測の結果は、提案手法は収益性、精度ともに優れていることが確認できた。
著者
亀岡 孝治 塚原 茜 亀岡 慎一 伊藤 良栄 橋本 篤
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

従来の鮮度・品質計測手法の多くは分離分析であり,計測に非常に時間が掛かる等の問題点が多数存在した.そこで,本研究では元素と有機物に着目し,レタスの劣化過程の定量を試みた.さらに表面色彩と水分計測から,外観品質による鮮度(劣化)評価と客観的評価の関係性を把握し,将来的に機械学習に繋がる鮮度評価のためのデータセットと評価方法を検討した.この結果、レタス表面色彩(色相,彩度)の変化と内部品質の関係性が認められたため,実験データを蓄積し機械学習・深層学習を用いて色彩の変化点と内部品質の関係性の解析を行うことで、表面の色彩情報だけを用いてレタスの鮮度を定量・予測できる可能性が示された.
著者
小山 真人
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

火山防災対策を進める上で、岩屑なだれ等の低頻度大規模現象の扱いは悩ましい問題である。富士山火山防災マップ(2004年)では、過去の実例(2900年前の御殿場岩屑なだれの流下範囲)を図示するにとどめ、ハザード予測図は描かれなかった。このため、このマップをベースとした現在の地域防災計画や避難計画は岩屑なだれを想定していない。ところが、1707年宝永噴火の際に生じた宝永山隆起(宮地・小山2007「富士火山」)をマグマの突き上げによって説明するモデル(Miyaji et al., 2011, JVGR)から類推して、噴火が長引けば山体崩壊に至った可能性がある。宝永山隆起のような肉眼でも観察可能な山体の隆起は、1980年セントヘレンズ火山の山体崩壊前にも生じた。つまり、現実問題として宝永山隆起のような現象が起きれば麓の住民を避難させざるを得ないだろう。この点をふまえた富士山火山広域避難計画対策編(2015年)には、「本計画で対象外とした岩屑なだれ(山体崩壊)等については、具体的な場所や影響範囲、発生の予測等が明らかになった時点で対象の是非について検討を行う」と記述され、ハザードマップ改訂の議論を始めた富士山火山防災対策協議会の審議課題のひとつとなっている。同協議会の作業部会(2016年)では、御殿場岩屑なだれ(11億立方m)の約1/30にあたる1984年御嶽山伝上崩れ(3500万立方m)程度の崩壊体積であっても、山頂付近で発生した場合には岩屑なだれが山麓に達する計算結果(産総研)が提示された。これまで岩屑なだれのハザード予測を描いた火山防災マップは、北海道駒ヶ岳の例などわずかである。低頻度大規模現象の想定は、住民や観光客に過度の恐怖や誤解を与えると懸念されたからであろう。しかし、自然災害リスクを発生頻度だけから判断するのは適切でない。日本の主要な地震・噴火のリスクを「平均発生頻度×被災人口」によって定量化した試算によれば、富士山の山体崩壊リスク(避難なし)は1立方kmクラスすなわち貞観噴火級の大規模溶岩流リスクと同程度である(小山2014科学)。つまり、山体崩壊は対策されるべきリスクとする考え方も可能である。岩屑なだれを、被災範囲が広すぎて対策不能な現象と単純に考えてはいけない。山腹から生じた場合や発生点の標高が低い場合の流下範囲は限られるし、宝永山のように小さな崩壊体積を想定できる場合もある。さらに、山体崩壊の要因として(1)マグマの突き上げ、(2)爆発的噴火、(3)大地震の3つが考えられるが、(1)は予知が期待できるので避難が可能である。つまり、山体崩壊に対して思考停止しない姿勢が望まれる。日本の防災対策は、ハザードの種類や規模を想定した上で対策を立て、それが完成すれば危機管理はできたと判断する想定主義に従って実施されている。しかしながら、ひとたび想定を超えた災害が発生すれば、その対策は「お手上げ」となりやすく、実際にそれが起きた3.11災害で数々の悲劇が生じた(関谷2011「大震災後の社会学」)。岩屑なだれを想定しない現在の富士山の避難計画においても、それが起きた場合は「お手上げ」となって大きな被害が生じることは想像に難くない。そもそも富士山の火山防災マップは過去3200年間(その後のデータ増により3500年間に相当)の履歴にもとづいて作成されており、御殿場岩屑なだれはこの期間内に起きた現象である。前述した宝永山の山体崩壊未遂の可能性も考慮し、山体崩壊を現象ごと想定から外すのではなく、「お手上げ」状態を避けるために、予知できた場合に備えた現実的な避難対策を立てておくことが望ましい。 岩屑なだれの速度は火砕流並みかそれ以上と考えられるので、山体の変動や亀裂の有無を注意深く監視し、一定以上の異常が生じた場合は麓の住民に事前避難を呼びかけるしかない。その際の危険区域を事前に計算しておけば、異常検知から避難完了までの時間を短縮でき、住民の被災リスクを下げられるだろう。具体的には山体の各所で3ケース程度の崩壊体積を仮定し、到達範囲の数値シミュレーションをおこなってデータベースを作成しておく。実際の運用としては、異常が検知された地点と、異常の程度から推定した崩壊量を上記データベースと照合し、避難を要する範囲を多少の余裕をもって決めることになるだろう。国交省雲仙復興事務所は、平成新山溶岩ドームの山体崩壊対策を検討する委員会を2011年に立ち上げ、作業を続けている。複数の崩壊規模を仮定した上で岩屑なだれの流下範囲を計算し、ハード対策と避難対策を検討した上で、住民を巻き込んだ避難訓練まで実施している。他火山の山体崩壊対策が参考とすべき先行事例であろう。
著者
井村 隆介
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

住民への聞き取り調査によって,奄美大島における1960年チリ地震津波波高を明らかにした.奄美大島では情報の得られたすべての地域で1m以上の津波があったことがわかった.奄美大島本島の南西部や西部の沿岸においても奄美大島本島北部地域同様に3m-4mの津波があったこと,奄美大島南部の加計呂麻島俵で最大波高を記録していたこと,が新たに明らかになった.
著者
二宮 和彦 北 和之 篠原 厚 河津 賢澄 箕輪 はるか 藤田 将史 大槻 勤 高宮 幸一 木野 康志 小荒井 一真 齊藤 敬 佐藤 志彦 末木 啓介 竹内 幸生 土井 妙子 千村 和彦 阿部 善也 稲井 優希 岩本 康弘 上杉 正樹 遠藤 暁 大河内 博 勝見 尚也 久保 謙哉 小池 裕也 末岡 晃紀 鈴木 正敏 鈴木 健嗣 高瀬 つぎ子 高橋 賢臣 張 子見 中井 泉 長尾 誠也 森口 祐一 谷田貝 亜紀代 横山 明彦 吉田 剛 吉村 崇 渡邊 明
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

日本地球惑星科学連合および日本放射化学会を中心とした研究グループにより、福島第一原子力発電所事故により放出された放射性物質の陸域での大規模な調査が2011年6月に実施された。事故より5年が経過した2016年、その調査結果をふまえ放射性物質の移行過程の解明および現在の汚染状況の把握を目的として、福島県の帰還困難区域を中心として、100箇所で空間線量の測定と土壌の採取のフィールド実験を行い[1]、同時に計27箇所で土壌コア試料を採取した。本発表では、このコア土壌試料について分析を行ったので、その結果を報告する。土壌採取は円筒状の専用の採土器を用いて行い、ヘラを用いて採取地点で2.5 cmごとに土壌を切り取って個別にチャック付き袋に保管した。採取地点により、土壌は深さ20-30 cmのものが得られた。土壌を自然乾燥してからよく撹拌し、石や植物片を取り除いたのちにU8容器へ高さ3 cmに充填した。ゲルマニウム半導体検出器を用いてガンマ線測定し、土壌中の放射性セシウム濃度を定量した。なお、各場所で採取した試料のうち最低でも1試料は、採取地点ごとに放射性セシウム比(134Cs/137Cs)を決定するために、高統計の測定を行った。深度ごとの測定から、放射性セシウムは土壌深部への以降が見られているものの、その濃度は深度と共に指数関数的に減少していることが分かった。一方で土壌深部への以降の様子は土壌採取地点により大きく異なることが分かった。また、本研究の結果は同一地点で表層5 cmまでの土壌を採取して得た結果ともよく整合した[1]。[1] K. Ninomiya et. al., Proceedings of the 13th Workshop on Environmental Radioactivity 2017-6 (2017) 31-34.
著者
脇山 義史 恩田 裕一 ゴロソフ ヴァレンティン コノプレフ アレクセイ 五十嵐 康記 高瀬 つぎ子
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

浜通り北部を流れる新田川では、原発事故により上流域に比較的多量の137Csが沈着した。一方で、その下流域には市街地や農地が存在するため、この河川を通じた137Csの移動を把握することは地域住民の安全を担保するうえで重要な課題である。本報告では、新田川流域における137Cs動態の把握を目的として行った、浮遊土砂の137Cs濃度変化の観測結果を示す。観測は支流である比曽川(蕨平地点)、新田川上流(野手上北地点)、新田川下流(鮭川橋地点)に浮遊土砂サンプラーを設置して2014年7月から行っている。観測初期(2014年7~12月)の浮遊土砂の137Cs濃度は、それぞれ28.3、13.4, 17.5 kBq kg-1であったのに対して、2017年後半(2017年5月~10月)には、それぞれ11.9、6.8、5.9 kBq kg-1まで低下していた。137Cs濃度の時間変化傾向は、事故からの経過時間を変数とする指数関数によってあらわされた。これらの137Cs濃度の時間変化を表す式によって推定される値と実測の137Cs濃度の差は、浮遊土砂のFe2O3の割合が高いほど大きいという傾向が見られた。さらに、2016年8月、2017年10月の台風接近時に野手上北において採取した浮遊土砂の137Cs濃度は、水位上昇時において水位低下時により高いという結果が得られた。一方で、2016年8月の台風時に下流域の新田橋地点で採取した浮遊土砂の137Cs濃度は水位のピーク時に最も高い値を示した。これらの結果は土砂の供給源の違いが浮遊土砂サンプラーによる各観測期間の137Cs濃度変動に影響していることを示唆している。今後、浮遊土砂の粒径や元素組成の測定結果を踏まえて、137Cs流出プロセスを考察する予定である。
著者
福田 美保 青野 辰雄 Zheng Jian 石丸 隆 神田 穣太
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

After the accident at the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Station (FDNPS) happened in March 2011, large amounts of radionuclides released from the FDNPS into the terrestrial and marine environments. The total amounts of 134Cs and 137Cs released from the accident were estimated as 18 PBq and 15 PBq, respectively. In contrast, those of 238Pu, 239Pu and 240Pu amounts were estimated as 0.0019 PBq, 0.0000032 PBq and 0.0000032 PBq and these amounts were not many compared to abundance before the accident (Report of Japan government to the IAEA Ministerial Conference on Nuclear safety, 2011). Based on the Pu atom ratio, it was estimated that the release of Pu from the accident was negligible in the marine environment (Bu et al., 2015). However, previous reports focused on the river (Evard et al., 2014) and offshore area (e.g. Zheng et al., 2012, Bu et al., 2013, 2015) and the lack of information on the distribution and behavior of plutonium in the estuarine area hampered the understanding of the process of radionuclide transport from river to ocean. In this study, the Niida River estuary was focused on, because the upstream portion of this river is located in Iidate Village, which was an area of high radiocaeasium deposition from the accident. We discussed temporal and vertical distributions of radiocaeasium and plutonium based on the results of the radiocesium (134Cs, 137Cs) and plutonium (239Pu, 240Pu, 241Pu) activity concentrations and plutonium atom ratios (240Pu/239Pu, 241Pu/239Pu) according to grain size in sediments.Sediment core samples at three monitoring stations (NR1: 37°39' N, 141°04' E, water depth: 25 m, NR2: 37°41' N, 141°09' E, water depth: 30 m, NR4: 37°38' N, 141°08' E, water depth: 35 m) were collected in mid-October 2013. Collected sediment cores were cut into 1 cm thick slices and dried. Then, the dried sediments were separated into four classes, based on grain sizes, using several mesh sizes: granules (grain size larger than 2 mm); very coarse to coarse sand particles (1-2 mm); coarse to very fine sand particles (0.063-1 mm); and silt to clay particles (smaller than 0.063 mm). Radiocesium (134Cs and 137Cs) activities were measured for each grain size class using high-purity gamma ray spectrometry and then corrected to the sampling date. Plutonium (239Pu, 240Pu and 241Pu) were extracted and concentrated based on Wang et al. (2017) and measured using SF-ICP-MS (Zheng et al., 2006; Zheng, 2015).Fractions for the classes of granules, very coarse sand, coarse to very fine sand, silt to clay particles were: 0.0-35%, 0.013-35%, 38-99%, and 0.0-29%, respectively. The fractions for coarse to very fine sand particles represented more than 70% of the total particle amount for each sediment layer and the highest fractions were obtained at NR1 and NR2, which are located northward from the river estuary. In contrast, fractions for granules and very coarse sand particle at NR4, which is located in an area of the same latitude as the river estuary, were relatively high and the total fraction for these particles ranged from 20-62 %. The 137Cs activities for very coarse sand, coarse to very fine sand, and silt to clay particles were in the ranges of 2.8-14 Bq/kg-dry, 4.1-751 Bq/kg-dry, and 731-837 Bq/kg-dry, respectively, and these activity concentrations tended to be higher with decreasing grain size. However, the profile patterns for the sand particles and silt to clay particles fraction were similar. In this presentation, we also report the results of grain-size distributions of Pu activity concentration and Pu atom ratio. This work was partially supported by Grants-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas, the Ministry of Education Culture, Sports, Science and Technology (MEXT), Japan (Nos. 24110004, 24110005), the JSPS KAKENHI (grant number JP17k00537) and Research and Development to Radiological Sciences in Fukushima Prefecture.
著者
乙坂 重嘉 福田 美保 青野 辰雄
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

In the coastal region of Fukushima, 137Cs concentration which is higher than before the accident is detected from the seabed even though the concentration in seawater has declined sufficiently. From this fact, it is pointed out that seabed sediment can be a source of radiocesium to coastal areas. In this study, behavior of dissolved radiocesium near the seafloor is discussed from the distributions of 137Cs in seawater, seabed sediment and pore water collected from the area around Fukushima. Between October 2015 and September 2017, seawater and surface (0~10 cm) sediments were collected at 17 stations at 1.5~105 km away from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant. Seawater was collected at the surface layer (0~3 m depth), intermediate layer (5 m above the seabed), and the layer immediately on the seabed (overlying layer with 0.3 m in thickness). At four stations, pore water in sediment was also collected. The 137Cs concentration in seawater and sediment was measured by gamma-ray spectrometry. The 137Cs concentration in the overlying water ranged from 5 to 283 mBq L-1, and was 2~3 times higher than that in the intermediate layer water. The 137Cs concentration in the pore water was 33~1166 mBq L-1, which was 10~40 times higher than that in the overlying water. The 137Cs concentration in the overlying water did not show clear differences regardless of the pore size (0.45 μm, 0.2 μm and 1 kDa) of the filter used for filtration. From these results, it was confirmed that radiocesium in the seabed sediment was "dissolved" in pore water and diffused to the benthic layer. The 137Cs abundance in the pore water in the surface sediment corresponded to 0.1~0.6% of the 137Cs existing in the solid phase of sediment. At most stations, the 137Cs concentrations in the overlying water and the pore water were approximately proportional to those in the sediment. The apparent distribution coefficient between pore water and sediment was [0.9-4.2]×102 L kg-1, with no difference depending on the year of sampling. These results indicated that equilibrium of 137Cs between pore water and sediment has established in a relatively short period. From the above-mentioned results and kinetic parameters such as 137Cs desorption rate from sediment obtained from laboratory experiments, we estimated the mass balance of 137Cs in the sediments and the overlying water along the coast of Fukushima. The results showed that the 137Cs in the sediment was reduced by about 4~9% per year by desorption/diffusion of 137Cs from the seabed. This rate was lower than the reduction rate of 137Cs in sediments (~29%) observed in this region, and it was estimated that this process was not the main factor of decreasing the 137Cs inventory in sediments. In addition, as of 2017, since the 137Cs concentration presumed to migrate to benthos via the pore water will not exceed the regulatory limit of fishery products, the impact of supply to the benthic environment of 137Cs is considered to be limited.