著者
石川 清子 イシカワ キヨコ Kiyoko ISHIKAWA
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 = Shizuoka University of Art and Culture bulletin
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-10, 2010-03-31

ウジェーヌ・ドラクロワ『アルジェの女たち』(1834)は、オリエントのハーレムの女性を画材にしたオダリスク絵画の代表的名画であり、以降のオリエンタリズム絵画、裸婦像に多大な影響を及ぼした。しかし、1830年のフランスのアルジェ占領があってこそ、画家はハーレム内部に入ることができ、ゆえにこの絵を描くことができた。フランスのアルジェリアに対する植民地支配の産物とも言える。また名画として鑑賞されてきたこの絵を、アルジェリア自身のフランス語表現女性作家はどのような視点で見て、どのように自己の作品に反映させ、自らのアイデンティティを構築していくか。アシア・ジェバール、レイラ・セバール、二人の作家の作品を具体的に検証していく。この論考はその前半部で、ジェバール『アルジェの女たち』(1980)の後記と表題作中編を扱う。
著者
庵原 俊昭
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第41回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S5-4, 2014 (Released:2014-08-26)

インフルエンザワクチンによるアナフィラキシーの原因として、発育鶏卵由来のタマゴ成分が関与していると考えられていた。しかし、本邦のインフルエンザワクチンに含まれるオボアルブミン濃度は1ng/mlであり、アナフィラキシーを引き起こす濃度(600ng/接種量以上)ではない。2009年のパンデミック時にタマゴを食べてアナフィラキシーを起こす小児41人に、発育鶏卵由来インフルエンザワクチンを接種したが1人もアナフィラキシーを発症しなかった。 2011/2012シーズンにおいて、2-フェノキシエタノール(2PE) を含むインフルエンザワクチンを接種した小児(主として3~5歳)は、2PEを含まないインフルエンザワクチンを接種した小児よりも高頻度にアナフィラキシーを発症した。アナフィラキシーを発症した小児は、インフルエンザワクチンに対するプリックテストが陽性であり、インフルエンザワクチンに対する高いIgE抗体を有しており、児から採取した好塩基球はインフルエンザワクチン刺激により活性化された。また、低濃度の刺激では、2PE入りインフルエンザワクチンの方が高い好塩基球活性化が認められた。以上の結果から、2PEがHAの構造をなんらか変化させ、結果として好塩基球や肥満細胞に付着した抗インフルエンザワクチンIgE抗体が架橋形成し、これら細胞を活性化させアナフィラキシーを誘発したと推論した。 2012/2013シーズンから防腐剤を2PEからチメロサールに変更したところ、小児のアナフィラキシーの頻度は他のメーカーは同等となった。一方、インフルエンザワクチン接種後に腕全体が腫脹した小児では即時型のプリックテストは陰性であったが、インフルエンザワクチンに対する高いIgE抗体が検出された。次に小児のインフルエンザワクチンIgE抗体を測定したところ、2歳~5歳で高値を示し、その後低下する傾向が認められた。 インフルエンザワクチン接種後のアナフィラキシーや腕全体の腫脹を予防するためには、IgE抗体を誘導しにくいインフルエンザワクチンの開発が必要である。
著者
吉成 浩一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.654-658, 2014 (Released:2016-09-17)
参考文献数
12
被引用文献数
1

薬物代謝は,化学物質(医薬品や食品成分,環境汚染物質等)の体内からの消失に主要な役割を果たしており,この過程には薬物代謝酵素と総称される多数の酵素が関与する.薬物代謝酵素の大きな特徴として,基質特異性の低さと化学物質の曝露に伴う酵素量の増加(酵素誘導)が挙げられる.ヒトが曝露され得る化学物質の種類は無限であり,それらを速やかに解毒する必要があることを考えると,このような性質は非常に都合がよい.一方で,このような性質は薬物代謝過程における薬物―薬物間および薬物―食品間の相互作用の原因となる.薬物相互作用は様々な機序で生じるが,本稿では,薬物代謝酵素がかかわる薬物相互作用について,発現機序を中心に概説する.
著者
布川 由利
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.49-70, 2019-11-30 (Released:2021-07-10)
参考文献数
22

本稿の目的は,選抜・配分システムにおける「冷却」研究の新たな方針を提示することにある。特に本稿では,「冷却」の社会学的研究の端緒となったErving Goffmanの議論に立ち返ることで,人々が選抜・配分されるということがその当人たちによっていかに経験されるのかを,彼ら自身の理解を通して明らかにする研究の方向性を示す。 Goffmanは,社会生活において人々が経験するある種の「失敗」を,個人が他者とのかかわりのなかで特定の役割や地位を持っていることを提示するのに失敗している状態として捉え,そしてその「失敗」を受け入れる過程を「冷却」としている。Goffman の観点に立てば,ある個人が獲得することを望んでいた/当然視していた役割や地位が,いかなる事実によってもはやその人のものではないことがわかるのか,そしてそれをどのように受け入れるかは,相互行為に参与する当人たちにとっての問題なのであり,よって「冷却」は本質的にその過程に参与する人々の理解からは切り離しえないものなのである。 しかし「冷却」を主題とする教育社会学研究は,「冷却」を選抜・配分システムの秩序維持を説明するための道具として使用してしまうことで,多様な現象を取り逃している。本稿ではGoffmanによる議論の意義をあらためて確認し,また高校で行われた履修相談の会話データの分析を通して,選抜・配分の過程を経験する人々の理解のありように基づく「冷却」研究が可能であることを示す。
著者
前田 哲也
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.253-256, 2017 (Released:2017-10-14)
参考文献数
12

People living with Parkinson's disease are stuck in the driving issues in Japan. Parkinson's disease is the most common movement disorder, in which dopamine replacement therapy (DRT) can relieve the severity of motor symptoms. There are two independent aspects in the driving problems, such as driving skills associating with motor deficits and sudden onset of sleep at the wheel associating with DRT. Instead of on road assessment of driving fitness, a driving simulator is increasingly used for clinical research and practice, which is expected supplying novel practical evidences. In contrast, DRT associating sleep problems are clinically delicate because DRT is essential for treatment of Parkinson's disease and is uneasy to be withdrawn even if sudden onset sleepiness was induced. Alternatively, people living with Parkinson's disease who need to drive in their daily lives are not so rare. There is neither legal restrictions in their driving nor practical guidelines of driving in Japan. This review summarizes such conflicting problems of the driving issues surrounding Parkinson's disease in Japan.
著者
有澤 優佳莉
出版者
金沢大学人間社会学域経済学類社会言語学演習
雑誌
論文集 / 金沢大学人間社会学域経済学類社会言語学演習 [編] (ISSN:21886350)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.51-64, 2018-03-22

<概要>歌詞はJ-POPのヒットの 一 因である。近年、消費者の音楽的嗜好が平均的なものになっており、歌詞に同じフレ ー ズが多用されると共に、差別化を図るために、他の曲には用いられない言葉を使用しているとされる。そこで、本研究では、 「近年、J-POP のヒット曲の歌詞において、差別化を図るため他の曲には使用されないような言葉を使用する傾向がある」と仮説を立てた。そして、1987 年から2012 年まで5 年ごとに、ヒット曲の歌詞の日本語使用語数と外国語使用語数、総使用語数がそれぞれ年数を重ねるごとに増加すると仮定し、検証した。結果は、それぞれ年々増加する形ではなかったが、おおよそ増加の傾向があり、日本語使用語数と外国語使用語数、総使用語数全てが増加の傾向が認められた。したがって、ヒット曲の歌詞は差別化が図られていると言 ってもよかろう。
著者
田戸岡 好香 石井 国雄 村田 光二
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.112-124, 2015 (Released:2015-03-26)
参考文献数
24

ステレオタイプ抑制後にはステレオタイプのアクセスビリティが増加するリバウンド効果が生起する。これまでの抑制研究では,スキンヘッド男性のような少数派や高齢者のような地位が低いとみなされる対象に関する抑制が扱われてきたが,本研究では嫉妬的ステレオタイプを抑制した後のリバウンド効果について検討した。ステレオタイプ内容モデルによれば,我々は成功した外集団に対して有能だが冷たいとみなすことがある。ただし,そうした対象をいつも冷たいとみなすわけではなく,特に競争意識を知覚した時にネガティブな特性が顕現的になることが示されている。そこで,本研究では,抑制対象に対する競争意識の知覚がリバウンド効果の生起を調整することを検討した。参加者はキャリア女性(実験1)もしくはエリート男性(実験2)が他者と働いている場面を記述した。その際,半数の参加者にはその人物の冷たいというイメージを抑制するよう教示し,半数にはそういった教示は与えなかった。その後,ステレオタイプのアクセスビリティを測定した。実験の結果,抑制対象に競争意識を感じやすい場合にはリバウンド効果が生起し,感じにくい場合にはリバウンド効果が生起しなかった。ステレオタイプ抑制を対人認知の観点から検討することの意義について考察した。
著者
松田 愛 松井 茂 外山 紀久子 伊村 靖子
出版者
松田愛(富山大学芸術文化学部)
巻号頁・発行日
pp.3-54, 2022-02-28

目次レポートアートと地域の協働をキュレーションする 松田愛・・・・・4レクチャー : 2020年12月18日@富山大学方法詩の実践と社会との関わりについて 松井茂・・・・・12レクチャー解題私的芸術体験試論 松井茂・・・・・23参考 : カタログ『松井茂個展 : 詩の原型展』2004年11月ネオ・ムーサのチェーン : 方法芸術私感 外山紀久子・・・・・24レクチャー : 2021年2月17日@オンラインポストモダンダンス×歩行芸術⇒ムーシケー型アートの自己治療的側面? 外山紀久子・・・・・30レクチャー : 2021年2月11日@オンライン生活の芸術化 建築と市民を結ぶ『記憶』のアーカイブ 伊村靖子・・・・・41
著者
野村 竜也
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.73-86, 2000-07-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本稿は, オートポイエーシス理論とその数理的記述モデルを紹介し, オートポイエーシスの数理的記述が社会心理学においてもたらす含意を検討することを目的とした。最初に, オートポイエーシス理論を概観し, その特徴を明らかにした上で, 社会心理学の隣接分野での展開について記述した。次に, オートポイエーシス理論の難解さの原因について, 外部観察主義者の定義を含めてこの視点から検討し, 現時点での数理的記述モデルについて外部観察主義的視点から紹介を行ない, その問題点について検討した。最後に, 現在の社会心理学分野の状況におけるオートポイエーシスの数理的記述の持つ含意について検討した。

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著者
日高巳雄 著
出版者
良栄堂
巻号頁・発行日
1942
著者
高橋 昇太 阿原 一志
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2021論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.46-48, 2021-11-06

トレーディングカードゲーム (TCG) には,手札枚数や個々のカードの攻撃力など様々なパラメータが存在する.一般にこれらの値は勝敗に大きく関わるとされているが,科学的実証はほとんど報告されていない.そこで本研究では,パラメータ変更による勝率の変化についてサンプリング手法を用いた調査を試みた.本論文では特に,初期手札の枚数差を意図的に生じさせ,どのように勝率が変化するかをこの手法を用いて調査した.その結果,初期手札枚数が多いプレイヤーは勝率が高くなる傾向を数値化できることが分かった.