著者
海沼賢 宮下 芳明 西本 一志
雑誌
情報処理学会研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.24(2006-EC-003), pp.113-120, 2006-03-14

本研究では3Dマップ上を自由にウォークスルーしつつ,その地形に触発されて思いついたコメントを書き捨てて行けるシステムを開発し,小説創作における支援を試みた.まずオーサーは自分のイメージする物語の舞台となるマップを作成し,物語構築に協力してもらいたいビジターに配布して,思い思いの「妄想」を書き込んでもらう.オーサーは作品執筆の際,ビジターによって多くのコメントが書き込まれたマップ上を歩き回り,他者の妄想を拾い読みながら自らの発想の糧にしていく.これにより一人の人間による発想の限界を超えた多種多様なアイデアを得ることが可能となり,発想の行き詰まりを打開すると期待される.本稿では,マップをビジターに配布して発想を集めるビジター実験と,それを用いて実際小説の執筆を行うオーサー実験によってシステムの評価を行った.
著者
横山 泰子
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.174, pp.43-55, 2012-03-30

江戸時代に日本で作られた手品の解説本の中には、手品のみならずまじないの情報が掲載されている。こうした記事は手品史の観点からはあまり注目されないが、奇術と呪術が渾然一体となっていた当時の人々の感覚を知るうえで面白い研究対象といえる。本論では、中国の『神仙戯術』の翻訳からはじまる近世日本の手品本を概観し、その中に記されたまじないを取り上げた。初期の『神仙戯術』や『続神仙戯術』は、手品をはじめ、呪術や生活術などを集めている。もともと中国でも、種や仕掛けを用いて不思議な現象を見せる娯楽としての手品と、まじない等の情報が混在していた。日本の手品観は、中国の手品観の影響を受けていると思われる。また、中国の呪術と似たものが日本の本にも見られるので、文献を通じて中国のまじないが日本人の日常生活の中に浸透していったと考えられる。ただし、まじないの方法には日中で異動がある。外国の呪術は、日本の生活環境にあうよう、改変されて伝えられたのだろう。本来まじないは口頭で秘密裏に伝えられるものだったと考えられるが、江戸時代においては生活上の実用的な知識として本に記されて流布した。奇しくも、まじない本や手品本、占い本等のいわゆる「秘術」を公開する文献は、十七世紀後期に刊行されはじめる。この時期を日本における秘術公開時代の幕開けと考えてみたい。手品本のまじないは、先行の呪術系の書物に類似するものが見られる。専門書の中のまじないの情報が、手品本の中に流入していったものと思う。手品本に記されたまじないには、呪歌を伴うものや、書記行為を伴うものがある。近世日本では、十七世紀から民衆の識字率が向上したが、そうした社会的背景が、手品本の存在や字を書くまじないのあり方と関係している。行為者の能力や資質にあわせて、様々なまじないができるようになっているところに、江戸時代のまじない文化の大衆性を感じる。
著者
古勝 正義
出版者
北九州大学外国語学部
雑誌
北九州大学外国語学部紀要 (ISSN:02878062)
巻号頁・発行日
no.89, pp.1-22, 1997-03

陳淏「花鏡」と古呉墨浪子「西湖佳話」とを比較検討してみると、ともに杭州西湖へのつよい思いが表現されており、南京と深い関係をもつ書物であり、書中には釈道二家への傾斜、文人趣味(山水園林、隠逸)など共通する人生観や生き方が現われており、また細部の措辞においても類似・同一性が認められる。古呉墨浪子の自序および図版の跋語の書きぶりなどを考え合わせると、「西湖佳話」の作者は陳淏その人と見なすほかない。
著者
籏本 恵介 土田 芳彦 辻 英樹 川上 亮一
出版者
北海道整形外科外傷研究会
雑誌
北海道整形外科外傷研究会会誌 = The Journal of Hokkaido Orthopaedic Traumatology Association (ISSN:09146083)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.57-62, 2004-03-31

横紋筋融解症は様々な原因により生じる筋肉組織破壊とその結果生じる二次的なtoxemiaの状態である. 外因性, 内因性に関わらず, 筋組織の崩壊を示す言葉である. Crush injuryは圧挫による局所の損傷を意味するが, Crush Syndromeは崩壊した細胞より放出される細胞毒性物質により生じる全身症状を示す. 従って, 外因性の横紋筋融解症はCrush Syndromeの一部と考えられる. 骨折はなくても, 外因性の横紋筋融解症では軟部組織の腫脹と皮膚の壊死あるいは神経症状を合併するため, 受傷初期には整形外科疾患として取り扱われることが多い. そして全身状態あるいは血液データ上異常が認められた場合, 全身管理目的に三次医療施設へ搬送されることになる. 今回我々は, 1999年1月より2003年6月までに経験した28例の横紋筋融解症に対して, 原因とその治療法について検討し報告する。
著者
長尾 真
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.1043-1044, 2017-10-15
著者
村田 志保
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.119-133, 2012-12-21

「お忙しいですね。」「お元気ですか。」など、ごく自然に会話のなかで使われる。これらは形容詞の敬語表現であり使用頻度も高いのだが、日本語教育において、形容詞の敬語教育を体系的に導入している教材は数少ない。また「お/ご」の選択に関しても、「お」は和語で「ご」は漢語であるといった語種による判別しか今のところ基準はないので、その基準を導入せざるを得ない。しかし実際には語種だけでは判別しにくい、「?おおもしろい」「?おシンプルな」「?ご危険な」というような、「お/ご」の付きにくい例もある。本稿では初級教材で扱われている形容詞を抽出した約150語を初級形容詞とし形容詞の意味的な側面、そして文法的な側面より「敬語としての形容詞分類」、「形容詞の敬語表現」、「「お/ご」の付加」の3点を軸に考察を進め、2つの考察結果が得られた。「(お/ご)~ て/でいらっしゃる」は「?社長のおかばんは大きくていらっしゃる。」のように、高めようとする人を主語にはせず、「もの」のときには「お/ご~ です」を選択する傾向が強いことがわかった。また「お/ご」は初級形容詞の範囲では「外来語」「「お」で始まる語」には付かず、その他の条件である「モーラ数の多い語」「悪感情を持つ語」「ある意味の語」はあくまで付かない傾向にあるというに留まり、条件として提示するには例外も多いことがわかった。
著者
松嶋 祐子
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-9, 2021-03-15

犯罪報道については,古くから事前に事件についての情報を知ることで,公判前に特定の印象形成をさせるのではないかとの問題視がある。メディア研究では,メディア報道の在り方が議論の争点づけを行うことをメディア・フレームという。本稿では,新聞による犯罪報道が事件により取り上げられ方が異なっていないかどうか,交通事犯を報じた記事を取り上げて検討した。東池袋自動車暴走事故と,神戸市バス事故を報じられ方(掲載件数,時期,新聞記事のテーマなど)から比較を行った。その結果,事故自体については新聞は淡々と報じていることが読み取れたが,東池袋自動車暴走事故については,高齢者の運転の安全性への疑問,特に自動車運転免許返納の議論へと発展しており,メディアでの露出度が高いことがわかった。
著者
清水 裕介 大西 鮎美 寺田 努 塚本 昌彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.468-481, 2022-02-15

本論文では,パソコンを利用した作業時のキー入力を身体動作で置き換えることにより,運動不足を解消するシステム,DeskWalkを提案する.長時間の座位作業は健康に悪影響がある.歩行や立ち上がりを行うことでその影響を低減できるが,これらは作業の中断をともなう.DeskWalkは下肢に取り付けたストレッチセンサで歩行と同等に筋肉が動く動作を認識し,それらの対象動作にあらかじめ割り当てたキーの入力を行う.これにより,ユーザは座位作業を続けながら運動ができる.さらに,日常生活での運動を記録しておき,座位作業時にDeskWalkを用いて不足分の運動を補わせるアプリケーションを提案,実装した.評価実験の結果,DeskWalkは対象動作を平均F値0.98と高精度に認識できた.システム使用時は未使用時と比較して2割から3割程度入力速度が減少したが,通常のパソコン作業において問題のない速度で入力ができていた.
著者
原田 忠四郎
出版者
日本体育大学
雑誌
日本体育大学紀要 (ISSN:02850613)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.87-101, 1973-06-10
著者
松田 外志朗 栗原 敏修 浅沼 博司 中江 晴彦 冨吉 浩雅 森田 正則 嶋津 岳士 平出 敦
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical journal of Kinki University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1-2, pp.71-79, 2012-03-01

[抄録] 糖尿病患者の増加及び高齢化に伴い, 低血糖症例は増加している.重症症例は, 意識障害などのため他者の援助を必要とし, 救急搬送されることが多い.低血糖症例にいかに対応するかは救急医療の現場において重要な問題である.近畿大学医学部附属病院では, 低血糖症例のほとんどが救急診療部門(ER)において初期治療がなされている.当院ERにおいて, 2008年4月から2010年3月までの2年間で84回の低血糖によるER受診があった.意識障害あるいは意識消失を主訴とする症例が多く, 高齢者の割合も高い.内分泌代謝内科で治療されている症例は半数以下であり, 糖尿病以外の疾患のために他の診療科かかりつけとなっている症例が多かった.低血糖症例に対し適切な初期診療を行うために, 当院における低血糖症例の特徴を検討し, 初期診療において必要な情報について解説する.また, 初期診療において, 注意を要する症例として, 低血糖が10時間以上遷延した7症例, 糖尿病治療を受けていなかった非糖尿病の12症例をとりあげる.さらに, 患者の高齢化や社会的な要因から留意すべき点について考察する.
著者
山崎 誠
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = National Institure of Japanese Literature (ISSN:18802230)
巻号頁・発行日
no.34, pp.1-24, 2008-02-28

願文は神仏に宛てられた文書であり、妄語を恐れる心性から、その内容は世俗化した現代とは異なり信憑性が高いといえよう。この点に注目してみると、解決済みとされたり、見過ごされた問題について、願文はなお有力な証拠を提供していると見做なされる。その例証を大江匡房の家族関係について試みる。The people devoted "Ganmon" documents to Buddha, Devas and the deceased in customs of other days. When they describe for themselves, awed to offend the commandment against lying, therefore the description must be hightly reliable. "Ganmon" which composed by Oe no Masafusa could vouch for illuminating the unsettled issues on his family.