著者
牧野 幸志 マキノ コウシ Koshi MAKINO
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.1-10, 2009-02

本研究は,親しい関係にある男女が,どのようなデート状況において,どの程度の性行動を正当と考えるかを検討した。実験計画は,被験者の性別(男性,女性)×デートに誘う側(男性,女性からそれとなく,女性)×デート内容(映画,飲み会,相手のアパートへ,自分のアパートへ)の3要因被験者間計画であった。被験者は,大学生・短大生240名(男性120名,女性120名,平均年齢18.42歳)であった。従属変数は,性行動レベル別に,キス,ペッティング,性交の3測度であった。 3要因分散分析の結果,いずれの性行動測度においても,女性よりも男性のほうが,性行動を正当と認知していた。また,デート内容がより親密なものになるにつれて,性行動の正当性認知が高くなった。さらに,性行動レベルが進むにつれて,正当性の認知は低くなった。特にペッティングと性交については正当性認知が低かった。予想された被験者の性別とデートに誘う側の交互作用,3要因の交互作用は見いだされなかった。
著者
眞砂 薫
出版者
近畿大学教養・外国語教育センター
雑誌
近畿大学教養・外国語教育センター紀要. 外国語編 = Kinki university center for liberal arts and foreign language education journal. foreign language edition (ISSN:21856982)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.131-148, 2012-03-01

[要約] 2010年から2011年にかけて、グロービッシュという言葉が注目された。これは、国際共通語としての英語(EnglishasanInternationalLanguage:EIL)として提案されてきた英語の最新形である。グロービッシュは、過去に提案されてきたEILや人工言語など、異言語・異文化の人々を繋ぐ中間言語に比べて、最もよく現代の英語をめぐる世界状況を反映するものでもある。言語の歴史を振り返れば、異言語・異文化間交流のために発生し、活用された言語は多くあり、それらはピジン言語と呼ばれてきた。本論では、ピジン言語、特にピジン英語とグロービッシュの比較検討を行う。ピジン英語とグロービッシュは、英語非母語話者(非ネイティブ)の英語として共通点も多い。そうであれば、ピジン言語使用者が置かれた社会環境や、英語母語話者および白人支配社会が英語非母語話者に与えた不利益を、グロービッシュ話者は受けないとは言えない。その可能性についても考察を進める。21世紀の世界では、国策として英語を公用語とし、国民の英語運用能力を向上させようという国も多い。グロービッシュもまた、その思潮にのって現れたことは確かである。しかし世界的な英語公用語化の動きに問題はないのか。この点を検証し、世界的な英語公用語論を批判的に考察する。
著者
倉林 利行 吉村 優 切貫 弘之 丹野 治門 富田 裕也 松本 淳之介 まつ本 真佑 肥後 芳樹 楠本 真二
雑誌
ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.143-152, 2020-09-03

本論文ではソフトウェア開発における実装の自動化に向けたファーストステップとして,プログラミングコンテスト AtCoder の正解プログラムを自動生成する技術の開発を目指す.自動プログラミングの既存研究としては,生成したいプログラムの入出力例からプログラム部品を合成する手法などが存在するが,プログラム部品の組み合わせ爆発により入出力例を満たすプログラムが生成できない,また生成できたとしても入出力例は満たすが正しいプログラムではないというオーバーフィッティングしたプログラムが生成されてしまうという課題が存在した.本論文では深層学習を用いて過去の問題情報から問題文と正解プログラムの関係性を学習することで上記の問題を解決する.具体的には学習済みモデルを用いて過去の問題情報から解きたい問題と類似した問題を検索して取得し,その正解プログラムを雛形としてプログラムを複数個合成し,再び学習済みモデルを用いて生成されたプログラムから最も問題文との関係性が近いプログラムを判定して出力する手法を提案した.提案手法は AtCoder の配点が 100 点の問題 92 問に対して評価を行い,24 問の正解プログラムの自動生成を確認した.
著者
溝口 薫 KAORU MIZOGUCHI
雑誌
神戸女学院大学論集 = KOBE COLLEGE STUDIES
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.29-46, 2021-06-20

本論はディケンズの「ドクター・マリゴールドの処方箋」に登場する聾唖の少女とそれを支える主人公に注目しアフェクト研究の手法を用いて物語に現代の読者にも通じる倫理の提示があることを複数の視点から明らかにするものである。マリゴールドが深い共感を持って育てる聾唖の少女像は一見受動的に見えるが、彼女は、障害の自覚を持ち、なお独立した他者性をもって父に対する応答の意志を表す積極的な内面を形成している。この物語は、当時の聾教育のコンテキストに照らしてみると、少女が障害に寄り添う手話教育によって豊かな内面的成長を遂げている点で、当時隆盛になりつつあった障害者不在の口話教育推進に対する否定と読むことができる。またマリゴールドの物語としては、リベラルとしての自覚を持つ英国人の共感欠如を問題としている。彼は家庭の崩壊と再生を通して、人生における共感の重要性、ならびに他者への無関心や反対のエゴイスティックな独占を自制する必要性を学んでいる。この意識は、ある意味で今日の読者においても重要な感情の秩序と関わる倫理的認識であり、それゆえにこの物語は21世紀において再び注目されている。
著者
野澤 秀樹 Hideki Nozawa
雑誌
放送大学研究年報 = Journal of the Open University of Japan (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.127-142, 2009-03-19

柳田國男は、周知のように日本民俗学の創設者であり、日本近代の学問形成に大きな影響力を及ぼしたひとである。小田内通敏は、日本の近代人文地理学の成立に大きく貢献したひとりである。小田内は、人文地理学の確立をもとめて柳田農政学の門をたたいた。かれが師と仰ぐ新渡戸稲造と柳田によって創設された「郷土会」は、「土地と人の結びつき」から郷土、地方の形態・基盤の研究を行っていた。郷土会の活動を通して柳田は民俗学の、そして小田内は人文地理学の確立を目指したのである。柳田はやがて郷土会のあり方に不満を持ち、「郷土研究」をより総合的な学問に位置づけ、その「総論」として民間伝承論・民俗学の確立を目指した。それは郷土(村)の生活を生活の外形、生活の解説、生活の意識などの三つの資料から総合的に捉えようとするものであった。柳田は、各郷土、地方の調査研究から得られえたこれらの結果を比較総合することによって日本の民族に固有の思想と信仰と感情を明らかにすることを最終目標としたのである。郷土研究はそのための「手段」と位置づけられた。したがって柳田においては、郷土の個性を追求することではなく、それらを貫く、一般性、共通性を追求する科学研究が目指されていた。一方小田内は、郷土、地域の特性、個性を追求することをかれの学問―人文地理学の目標においていた。彼らの方法に基づいて行われた研究が、柳田民俗学を結集した日本の山村・海村生活の調査・研究であり、また小田内指導下の文部省郷土教育の綜合郷土研究であった。前者では村をひとつの有機体として捉えていない点に、後者では郷土の綜合、個性を捉えていない点に問題があった。いずれにしても二人の「郷土研究」の方法の違いはかれらの学問観・科学観の違いによるものであった。
著者
李 月 Yue Li
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.91-107, 2020-08-01

本論の目的は、小学校における多文化共生教育の現状と課題を提示しつつ、理論的アプローチや社会実験を通じて、異なる言語的・文化的背景を持つ児童同士の相互理解を促進するための教育モデルを考案することである。筆者は、この「他者受容力」を育成していく教育プログラムとして「見立て遊び」を独自に考案し、実践した。検証作業を通じて、「他者受容力」を育成できる、より効果的で持続的な多文化共生教育プログラムのさらなる可能性を展望して結論とした。
著者
松田 睦彦
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.210, pp.171-185, 2018-03-30

小稿は,これまでおもに考古学的見地から進められてきた中世から近世にかけての花崗岩採掘技術や労働体制等の解明に,民俗学的手法によって寄与することを目指すものである。花崗岩採掘にかかわる知識や技術は,現在の職人にも保有されている。しかしながら,従来の研究は,それが十分に参照されないまま遺構や遺物の解釈が進められてきた傾向にある。そこで小稿では,現役の石材採掘職人から聞き取った花崗岩採掘の基本的な技術を提示するとともに,この石材採掘職人をともなって行なった小豆島の大坂城石垣石切丁場跡の調査で得られた職人の所感を紹介した。花崗岩採掘の基本的な技術については,①花崗岩の異方性,②キズの見きわめと対処,③石を割る位置,④矢の大きさと打ち込む間隔,⑤矢穴の形状,⑥矢穴の列と方向,の六点に整理して提示した。また,大坂城石垣石切丁場跡に対しては,割りたい石の大小等に関係なく,大きな矢穴が狭い間隔で掘られている点,矢穴底の短辺が長いことに合理性が見いだせない点,完成度の高い矢穴と低い矢穴が見られることから,熟練の職人と非熟練の労働者が混在していた点等が指摘された。現役の職人から得られたこれらの情報は,花崗岩採掘にともなう遺構や遺物の分析・解釈に資するものである。さらに,こうした試み自体が,民俗学と考古学との新たな協業関係を構築するものである。
著者
竹内 誠
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.51-70, 2015-03-31

音楽を専門とする大学は、クラシック音楽だけではなく、ポピュラー音楽や、音源などの音楽機材を使用する音楽制作など、様々な学生を受け入れるようになった。 その結果として今では、音楽の経験が少なく、楽典の知識も乏しい学生も、入学を許されることとなっている。 音楽理論の学習には、音程の理解と聴き取る能力が不可欠である。 しかし、音楽経験の少ない学生の多くは、音程の理解が不十分であり、音程を聴き取る能力も無い。 この問題に対処するために、音階のナンバリングを用いて、音感教育を行う教育手法を考案した。 英語圏の国々では、ナッシュビルナンバリングシステムという、音階のナンバリングによる音感訓練を行っているが、 階名の習慣と言語の問題から、これをそのまま日本で行うには問題がある。 今回考案した教育手法は、ナッシュビルナンバリングシステムを基本としているが、日本の音楽習慣に合わせた変更を行い、 私の経験による工夫を加えたものである。 ナンバリングによる音感訓練は、子供への音感教育には当然として、大人の音感訓練に特に効果的な教育システムである。 この論文により、多くの方の意見をいただき、さらなる工夫を重ねてゆきたいと考えている。