著者
清水 芳見
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.166-185, 1989-09-30

本稿では, ヨルダンの北部のクフル・ユーバーという村の邪視信仰について, 記述, 考察する。この村では, 邪視は妬みと不可分に結びついており, 妬みが生じるような状況下では, どんな人間でも邪視を放つ可能性があるとされている。邪視除けの方法として, この村でもっともよく行なわれるのは, 邪視にやられると思われたときに特定の文句を唱えることであり, 邪視にやられて病気になったときの治療法としては, sha' ir al-mawlidと呼ばれる植物などを焚きながら特別な祈念をしたり, クルアーンの章句を唱えたりすることがよく行なわれる。この村では, 邪視を放った者を公に告発するようなことは行なわれないが, この告発ということに関連して, 邪視を放ったという疑いをかけられないようにするための方策がよく巡らされる。最後に, この村では, 邪視がつねにイスラームというコンテクストのなかで理解されているということが, 本稿全体を通して明らかになった。

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1888年05月08日, 1888-05-08
著者
田中 智仁
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.42-56, 2018-10-20 (Released:2020-03-20)

2010年から全ての万引きが警察へ通報されることになったが,万引き対策には多様な価値観が反映されており,店舗内処理も残存している.本稿の目的は,万引き対策の歴史的変遷を概観し,文化的側面と保安警備業務に着目した上で,万引きに関する有識者研究会(東京都)の報告書の意義と課題を明らかにすることである.16-19世紀の欧米では主に百貨店で中流階級以上の女性による万引きが多発し,被疑者を捕捉するために警備員が配置されるようになったが,階級とジェンダーの意識が根強く,穏便な対応をせざるを得なかった.日本でも20世紀前半に万引きが女性犯罪と見做され,その要因は店舗にあると指摘された.戦後は万引きが少年犯罪と見做されるようになり,保安警備業務成立後も就業や就学に支障がないように店舗内処遇が一般化した.しかし,万引きが高齢者犯罪となったことで,従来の対策を転換する必要に迫られた.報告書は高齢者の万引きに特化した稀少な研究成果であり,認知症の影響や店舗要因説をエビデンスに基づいて検証したこと等に大きな意義がある.一方で,警備員が高齢者を選んで捕捉する可能性を検証すること,被疑者像を高齢者に固定化しかねないことが課題である.
著者
齋藤 道彦
出版者
中央大学経済研究所
雑誌
中央大学経済研究所年報 (ISSN:02859718)
巻号頁・発行日
no.46, pp.551-565, 2015

琉球と台湾で秘密組織として結成された琉球青年同志会は,中華民国軍のために沖縄に駐留する日本軍の情報を収集するスパイ機関だった。日本の敗戦後は,「琉球」(沖縄)を中国に吸収することを目的として活動し,琉球革命同志会と改名,中国国民党中央委員会,外交部などとも直接連絡を取りあっていた。琉球革命同志会などの中心人物は蔡璋であり,同会は中国国民党/中華民国政府の意を受けた「琉球」吸収工作機関だった。
著者
齋藤 道彦
出版者
中央大学経済研究所
雑誌
中央大学経済研究所年報 (ISSN:02859718)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.551-565, 2015-09-30

琉球と台湾で秘密組織として結成された琉球青年同志会は,中華民国軍のために沖縄に駐留する日本軍の情報を収集するスパイ機関だった。日本の敗戦後は,「琉球」(沖縄)を中国に吸収することを目的として活動し,琉球革命同志会と改名,中国国民党中央委員会,外交部などとも直接連絡を取りあっていた。琉球革命同志会などの中心人物は蔡璋であり,同会は中国国民党/中華民国政府の意を受けた「琉球」吸収工作機関だった。
著者
青柳 みどり 兜 真徳
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.167-175, 2006-03-31 (Released:2011-03-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1

本論文では,一般の人々の電磁波問題に関するリスク認識認知や態度形成について,社会的なガバナンスの観点から議論を行う。電磁波問題は,新しく出現したリスクの典型である。それは,熱による影響以外の,特に超低周波(Extremely Low Frequency:ELF)の健康影響については,専門家の間での科学的評価が未だ合意に至っていない問題であるためである。暴露の周波数によって異なる健康影響がもたらされるのであるが,それがどの周波数の場合はどのような影響なのか,不確定なのである。このような状況下で,我々は,「予防的方策・予防原則」が社会的なガバナンスを考える上で重要な原則となると考えた。そして,この予防的方策・予防原則についての支持をみるために,インターネット調査を全国5000人の一般の人々を対象として実施した。この予防的方策・予防原則の支持についての要因をロジット回帰分析によって抽出したところ,予防的方策・予防原則を支持する有意な要因として,携帯電話への依存指数(常に携帯電話を使っているなど携帯電話への依存度を表す指数),携帯電話不安指数(携帯電話がないと不安,等不安度を表す指数)があがったが,送電線への不安は有意な変数としてはあがらなかった。これは,携帯電話については個人の使用状態を制御することでリスクの制御が可能であるが,送電線については個人ではまったく制御不可能であるためであると考えられた。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1314, pp.114-116, 2005-10-31

「来年4月に始まる携帯向け地上デジタル放送を"ワンセグ"と名づけました」。地上デジタル推進大使を務めるNHK、民放5局の女子アナウンサー6人は9月27日、新サービスの概要を披露した。 「ご覧になった印象はいかがですか」。テレビ朝日の丸川珠代アナウンサーが掲げた新型携帯電話は、東京タワーの試験電波を受信したもの。
著者
坪原 紳二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.221-232, 2015-10-25 (Released:2015-10-25)
参考文献数
23
被引用文献数
1

自転車の走行空間としてオランダの自治体は近年、街区の中を通り、あえて狭い幅員の中で自転車と車を混在させることで車の速度の抑制を図る通り、フィーツストラート(fietsstraat)の整備を急速に進めている。本稿はこのフィーツストラートについて出されている複数の設計指針と、整備事例を整理し、それらの間の共通点と相違点を明らかにすることで、日本における同通りの導入のための基礎データを提供することを目的とする。自転車・自動車交通量等のフィーツストラートの立地条件については、設計指針は一貫した方針を示しており、それに整備事例は基本的には従っていた。一方、道路設計については、特に自転車走行面の幅員等の断面構成について、設計指針間、事例間で大きな違いが見られた。またフィーツストラートの整備事例が増えるにつれて、利用者が道路空間における正しい位置取りを理解するようになる、といった傾向も確認された。