著者
小笠原 祐子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.165-181, 2005-06-30
被引用文献数
1

家事・育児・介護分担に関する研究が多数報告される中で, 生計維持分担に関する調査は十分になされてきたとは言えない.従来の研究では, 雇用と生計維持は必ずしも区別されず, 働く行為の意味が看過されてきた.本調査では, 同じようにフルタイムで継続就業する共働き夫婦といえども生計維持分担意識はさまざまであり, 分担意識の低い夫婦と高い夫婦が存在することが明らかになった.分担意識の低い夫婦においては, 生計維持者たる夫の仕事が妻の仕事より優先され, 家庭と仕事の両立が問題となるのはもっぱら妻の方であった.これに対し, 生計維持分担意識の高い夫婦は, 2人がともに生計維持者として就業を継続できるよう働き方を調整していた.これは, 夫婦両者の就業に一定の制約をもたらす一方で, 生計維持責任を1人で負担しなくてもよいことからくる自由度も与えていた.前者の夫婦は, どちらかと言えば旧来型の企業中心の生活を送る傾向が見られたのに対し, 後者の夫婦は, 脱企業中心のライフスタイルを希求するケースが多く, 働き方やライフスタイルが一部の階層で夫婦の選択となってきていることが示唆された.
著者
大井 奈美
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.32-38, 2009-09-15

本稿は,基礎情報学を理論的枠組とする,俳句分析のためのオートポイエティック・システム論的アプローチを提案する。基礎情報学では,言語ではなく「情報」,個人ではなく「オートポイエティック・システム」にもとづき,意味形成やコミュニケーションが考察される。具体的には,身体的体験に根差し,論理的な思考過程を超えて生成する各人に固有の意味を「生命情報」,心をオートポイエティック・システムである「心的システム」として捉え,分析の土台にするのである。俳句の重要な特徴の一つは,その簡潔な定型が,必ずしも理性的個人による推論や言語操作のみに還元されない意味形成をひきおこす点にある。したがって俳句の分析には,基礎情報学の理論的枠組が有用と考えられる。従来,俳句はおもに(A)文献学的アプローチや(B)テクスト論的アプローチによって研究されてきた。さらに,両者に対して批判的視座をあたえる,(C)認知心理学的アプローチも登場した。しかしこれらの研究では,論理的思考を超えた意味形成について考慮することは難しい。提案する(D)基礎情報学的アプローチによって,無意識的・直観的な側面をふくむ俳句の創作と解釈について考察することが可能となる。
著者
小林 伸行 高野 正博 金澤 嘉昭 濱川 文彦 中島 みどり 霜村 歩 西尾 幸博 山田 一隆
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1018-1024, 2013-11-01
被引用文献数
1

肛門からガスが漏れていると信じる自己臭症(自臭)患者に対して,肛門括約筋を強化するバイオフィードバック(BF)訓練を行った.対象と方法:大腸肛門科を受診した自臭患者でBF治療に同意した20名(男性9名,女性11名,平均年齢36.4±12.9歳)を対象とした. BF前後にWexnerスコアの算定,肛門内圧検査を行った.患者の自己申告をもとに総合改善度を評価した.結果:13.4±8.6回のBFを行い,自覚的漏れはWexnerスコアで8.1±3.7点から5.8±3.2へと有意に改善した(p<0.01).最大肛門静止圧は治療前後で差はなく,最大随意圧(MSP)は男性では325.2±57.6cmH_2Oから424.4±105.8へと有意に増加したが(p<0.05),女性では差はなかった.総合改善度は消失5名,改善11名,不変4名であったが, MSPの増加量とは相関しなかった.結語:自臭患者にBFを行い80%に有効であった. BFの直接的効果ではなく治療構造自体が治療的と考えられた.妄想が強くても適応可能な新しい試みである.
著者
山﨑 瑞己 櫻井 美緒 三浦 雅展
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.182-189, 2016

<p>音楽作品の時代変遷を信号処理により調査するため,音響信号で表されたアニメソングを対象として公開年代の推定可能性を検討している。618通りのアニメソングに対し音響パラメータを算出しクラスタリングを行うことで,10年及び20年での年代における傾向の変化が示されている。また,年代推定に有効な音響パラメータを検証している。得られたパラメータセットを用いてアニメソングの公開年代を自動推定したところ,55.3%の正解率が得られている。人間による公開年代の評価精度は,被験者10人による平均が48.3%であることから,提案手法は人間の判断に近い水準で推定できることが確認されている。</p>
著者
Yazaki Euki Ishikawa Sohta A. Kume Keitaro Kumagai Akira Kamaishi Takashi Tanifuji Goro Hashimoto Tetsuo Inagaki Yuji
出版者
日本遺伝学会
雑誌
Genes & Genetic Systems
巻号頁・発行日
2017
被引用文献数
25

<p>All members of the order Trypanosomatida known to date are parasites that are most likely descendants of a free-living ancestor. Trypanosomatids are an excellent model to assess the transition from a free-living to a parasitic lifestyle, because a large amount of experimental data has been accumulated for well-studied members that are harmful to humans and livestock (<i>Trypanosoma</i> spp. and <i>Leishmania</i> spp.). However, recent advances in our understanding of the diversity of trypanosomatids and their close relatives (i.e., members of the class Kinetoplastea) have suggested that the change in lifestyle took place multiple times independently from that which gave rise to the extant trypanosomatid parasites. In the current study, transcriptomic data of two parasitic kinetoplastids belonging to orders other than Trypanosomatida, namely <i>Azumiobodo hoyamushi</i> (Neobodonida) and <i>Trypanoplasma borreli</i> (Parabodonida), were generated. We re-examined the transition from a free-living to a parasitic lifestyle in the evolution of kinetoplastids by combining (i) the relationship among the five orders in Kinetoplastea and (ii) that among free-living and parasitic species within the individual orders. The former relationship was inferred from a large-scale multigene alignment including the newly generated data from <i>Azumiobodo</i> and <i>Trypanoplasma</i>, as well as the data from another parasitic kinetoplastid, <i>Perkinsela</i> sp., deposited in GenBank; and the latter was inferred from a taxon-rich small subunit ribosomal DNA alignment. Finally, we discuss the potential value of parasitic kinetoplastids identified in Parabodonida and Neobodonida for studying the evolutionary process that turned a free-living species into a parasite.</p>
著者
小宮 友根
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.192-208, 2009-09-30

J. バトラーの理論は社会学にとってどのような意義をもっているだろうか.本稿では「パフォーマティヴとしてのジェンダー」という考え方の検討をとおして,この問いに1つの答を与える.<br>はじめに,パフォーマティヴィティ概念がJ. デリダの「反覆可能性」概念に接続されていることの問題点を指摘する.1つは,「行為をとおした構築」という主張の内実が不明確なままにとどまっていること.もう1つは,それゆえ「攪乱」という戦略が採用されるべきであるという主張にも十分な根拠が与えられていないことである.<br>だが,バトラーがなぜ「社会的に構築された性差」という意味でのジェンダー概念を批判していたかに注目するなら,パフォーマティヴィティ概念についての異なった解釈を導き出すことができる.ここでは,人間の行為を因果的に説明する議論のもつ限界の外で「性別の社会性」を論じることの重要性を考察することからその作業をおこなう.<br>そのうえで,私たちが言語による記述のもとで行為を理解していることと,私たちが多様なアイデンティティをもつことの論理的関係へと目を向けるものとしてパフォーマティヴィティ概念を解釈するなら,その内実は経験的にあきらかにしていくことができるものになり,それゆえ社会学にとって重要な課題を示唆するものになることを論じる.
著者
角田 三枝
出版者
日本語教育方法研究会
雑誌
日本語教育方法研究会誌
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.10-11, 1994

日本語では、「ありがとうございます」と「ありがとうございました」という表現がある。両者の違いは丁寧さの度合いが異なるとか、あるいは感謝の気持ちが現在であるか過去であるか、といったようなことではない。「ありがとうございました」はひとつの場面を終わりにするという話者の意向を表す印である。時制の違いによって場面の切り替えを表す例は、この他にもいろいろある。特に挨拶表現、応答表現などの時制の切り替えが、場面の区切り、会話の区切りの合図として有効な働きをする。小論ではこのような、時制の切り替えがもたらす語用論的効果を述べると共に、この視点が日本語教育の中でも必要かつ重要であることを述べる。
著者
松本 悦宜 満永 拓邦 近藤 伸明 力宗 幸男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. LOIS, ライフインテリジェンスとオフィス情報システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.375, pp.99-104, 2011-01-13

JavaScriptコードをWebサイトに埋め込むクロスサイトスクリプティング(Cross Site Scripting:XSS)と呼ばれる攻撃手法により,Webサイトが改ざんされ,閲覧者がマルウェアをダウンロードさせられる事件が増加している.また近年では,難読化されたJavaScriptをWebサイト内の入力フォームに送信する事で脆弱性をつく攻撃も発見されている.この論文ではウェブアプリケーションファイヤーウォール(Web Application Firewall:WAF)を構築し,Webサーバへのリクエスト内の難読化されたJavaScriptを自動的に判別する事で,攻撃の検出及び遮断を可能にした.
著者
林 直保子 与謝野 有紀
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.27-41, 2005
被引用文献数
6

高信頼者は低信頼者に比べ他者の信頼性の欠如を示す情報に敏感に反応するという小杉・山岸(1998)の結果を4つの研究で検討した。調査1では,小杉・山岸(1998)で用いられた一般的信頼感の指標が,一般的信頼感のレベルと他者の信頼性情報への反応パターンの間の関係を検討するための適切な指標となっていなかった点を指摘した。調査1の結果に基づき,2つの実験とひとつの郵送調査では,一般的信頼感として異なるものを用いた。結果は,低信頼者が他者のポジティブ人格情報に敏感に反応し,対象となる人物を信頼するようになることを示していた。3つの研究から,高信頼者と低信頼者は対称な反応パターンを有しており,いずれも社会的な機会を拡大するという点で適応的であることが示唆された。<br>
著者
小宮山 誠一 目黒 孝司 加藤 淳 山本 愛子 山口 敦子 吉田 真弓
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.336-342, 2002-11-20
参考文献数
13
被引用文献数
4

デンプン含量は,ジャガイモ調理・加工後の調理特性に大きな影響を及ぼす要素である。本試験は,産地および流通段階におけるデンプン含量のばらつきを明らかにするとともに,各種調理法別にデンプン含量で仕分けした試料(デンプン含量12〜16%)を用いて,デンプン含量が調理特性に及ぼす影響について検討を行った。その結果は次のとおりであった。1)個々のいもに対するデンプン含量は,株内,株間および産地間で大きく変動し,その分布幅は6.4〜20.0%であった。2)粉ふきいも,ふかしいも,電子レンジ加熱およびフライドポテトでは,デンプン含量が高いいもほどほくほく感が増し,食味総合評価は高かった。肉じゃがおよびカレーに見られる煮物調理では,デンプン含量の低いいもほど煮くずれが少なく,食味総合評価は高かった。ポテトサラダは,デンプン含量の高いいもの評価が高かった。3)デンプン含量が高いいもほど遊離アミノ酸含量は低く,とりわけうま味を呈するグルタミン酸含量は,デンプン含量15%以上で顕著に減少した。