著者
有江 賢志朗 奈良間 千之 福井 幸太郎 飯田 肇
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

福井・飯田(2012)と福井ほか(2018)は,近年の小型化かつ高性能化した観測機器を用いて,氷厚の実測と流動観測をおこない,飛騨山脈北部に分布する御前沢雪渓,内蔵助雪渓,三ノ窓雪渓,小窓雪渓,カクネ里雪渓の6つの多年性雪渓が現存氷河であることを明らかにした.北アルプス北部には,氷河調査がおこなわれていないが,氷河の可能性が高い雪崩涵養型の多年性雪渓がいくつか存在する.そこで,本研究では,7つ目の氷河の可能性が高い唐松沢雪渓の氷厚と流速をGPR観測とGNSS測量により測定し,唐松沢雪渓の氷河の可能性について検討した.その結果,唐松沢雪渓では約30mの氷厚と流動現象が確認できた.
著者
清水 利彦 柴田 護 鈴木 則宏
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.103-109, 2011 (Released:2011-02-17)
参考文献数
43
被引用文献数
4 4

Cortical spreading depressionは片頭痛の前兆への関与に加え三叉神経血管系を活性化させ頭痛発生のtriggerとなる可能性が示されている.脳硬膜および三叉神経節にはcalcitonin gene-related peptide(CGRP)に加え,侵害刺激受容体transient receptor potential cation channel, subfamily V, member 1(TRPV1)の存在が明らかにされ片頭痛の病態への関与が考えられている.本稿では片頭痛における基礎研究の進歩およびCGRP受容体アンタゴニストをふくむ最近の治療について概説する.
著者
中塚 幹也 秦 久美子 江國 一二美 高馬 章江 江見 弥生
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.404-411, 2005-07

性同一性障害の外来診療システムに関して当事者に自記式質問紙調査を行った。調査期間は2003年9月〜2004年2月, 対象は同意の得られた108名で, Female to Male Transsexuals(FTM)症例が68名, Male to Female Transsexuals(MTF)症例が40名であった。診察券上の氏名や性別の記載の変更は可能としているが, 性別を変更していた症例では, 診察券に満足している症例が多かった(FTM症例82.4%, MTF症例62.3%)。診察室への呼び込みは, 戸籍上未改名の症例では, 通称名や姓のみで呼ばれることを希望する症例が多かった。待合に満足していた症例は, 受付, 会計, 薬局, 各診察室とも70%以上であったが, FTM症例では産婦人科の待合が「恥ずかしい, 居づらい」という意見が多く, 満足している症例は34.6%と低率であった。トイレに関して満足している症例は, FTM症例, MTF症例とも30%台であり, 「男女共用にして欲しい」との意見がみられた。また, FTM症例では, 「男性用トイレの個室を増やして欲しい」「男性用トイレの個室に汚物入れを置いて欲しい」などの意見があった。これらの結果を検討し解決することで, 外来診療システムの改善につなげる必要がある。
著者
清 佳浩 飯塚 正男 秋久 俊博
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.309-316, 2005

脂漏性皮膚炎患者22例を対象に,ツバキ油およびツバキ油配合シャンプーの安全性と有用性について検討した。期間は4週間,使用頻度は週2回以上とした。紅斑,湿潤,鱗屑,痂皮,掻破痕,そう痒の皮膚症状について観察した結果,全ての皮膚症状に有意な改善が見られた(p<0.01)。有用性は,やや有用以上が95%,副作用は全症例に認められなかった。<BR>脂漏性皮膚炎の発症に関る癜風菌の菌数と頭皮脂質の分析を行った。菌数は試験終了後有意に減少しており(p<0.01),頭皮脂質は炭化水素群(炭化水素,スクワレン)と遊離脂肪酸量に有意な減少がみられた(p<0.05)。癜風菌数,遊離脂肪酸量ともに減少していた症例は18例中14例あり,皮膚症状の改善もみられた。<BR>以上のことから,ツバキ油とツバキ油配合シャンプーは脂漏性皮膚炎患者の頭皮・頭髪のケア剤として有用であると考えられた。
著者
安達倭雅子著
出版者
北海道新聞社
巻号頁・発行日
2009
著者
鈴木 信
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.152, pp.401-440, 2009-03-31

続縄文文化の遺構・遺物には,「変異性が強く・現地性が弱く・転移は容易・伝達する際に欠落しにくい」という表出的属性,「変異性が弱く・現地性が強く・転移は容易でなく・伝達する際に欠落しやすい」という内在的属性,それらの中間的属性が備わる。また,属性における不変性・現地性の強弱は「遺構の内在的属性≧遺物の内在的属性>遺構の表出的属性>遺物の表出的属性」である。そして,内在的属性の転移は親密な接触によって伝わり,表出的属性の転移は疎遠な接触においても成立する。そのため,内在的属性の転移は型式変化の「大変」といえ,表出的属性の転移は型式変化の「小変」といえる。遺構・遺物の型式変化とは時空系における属性転移であり,空間分布の差異として第一~五の類型で現れる。そして,属性はコト・モノ・ヒトの授受に付帯して転移し,転移先において文化同化・文化異化・文化交代を起こす。物質交換は文化接触の一種であり,異質接触(渡海交易)においては「もの」を動かすために「かかわり」があり,社会的関係を緊密にすることで物理的距離を克服する(「ソト」関係の「ウチ」化)。同質接触(域内交易)においては「かかわり」の結果として「もの」が動き,基底には社会的距離が恒常的に縮んだ関係(「ウチ」の関係)において行われた。渡海交易と域内交易と生業の関係は弥生後期に東北地方に起こった利器の鉄器化が誘因となり,その後,鉄器の流通量が増加することで,域内交易は交換財の調節機能の強化が求められ,生業は交易原資のための毛皮猟とそれを支える生業の二重構造を生み出す。渡海交易Ⅱa段階に渡海交易・域内交易・生業が直結して文化異化がおこる。渡海交易Ⅱb~Ⅳ段階には鉄器・鋼の需要が恒常的となり文化異化が継続する。Ⅳ段階には文化異化が収束し,交易仲介の役割を失った東北在住の北海道系続縄文人が故地に帰ることで新たに東北地方から北海道への属性転移が生じる(擦文文化の成立)。
出版者
青土社
巻号頁・発行日
1991

3 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1925年10月22日, 1925-10-22
著者
熊野 七絵 川嶋 恵子
出版者
独立行政法人国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.7, pp.103-117, 2011-03

今、世界中で日本のアニメ・マンガは大人気であり、日本語学習者の多くがアニメ・マンガをきっか けに日本語を学び始めると言われている。しかし、アニメ・マンガの日本語には、教科書や辞書には載 っていない表現も多く、アニメ・マンガを日本語で理解するのは難しい。そこで、関西国際センターで は、趣味から日本語学習への橋渡しとなるサイトをめざし、海外で人気のあるアニメ・マンガに現れる キャラクターやジャンルの日本語を楽しく学べるE ラーニングサイト「アニメ・マンガの日本語」を 開発した。海外の現状や学習者のニーズ調査に基づき、(1)アニメ・マンガと日本語学習をつなぐ(2) 学習者の好きなアニメ・マンガの世界観を生かす(3)楽しく学べ、自律学習につながるをサイト開 発の基本方針とした。サイト公開後、8ヶ月で168カ国から155万ページビューを超えるアクセスがあり、 ユーザーの声をサイト改善に生かしている。
著者
福士 元春 名郷 直樹
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.209-215, 2012 (Released:2012-10-09)
参考文献数
15
被引用文献数
1

要 旨目的 : 後期研修医から相談された事例を分析することで, 研修医が直面する臨床上の問題を分析・構造化し, ポートフォリオを用いた指導・評価のための方法論を模索する. 方法 : ポートフォリオ作成支援のための個別面談でのやりとりを音声記録したものをデータとし, Steps for Coding and Theorization (SCAT) を一部改変した方法にて質的分析を行った. 結果 : 研修医は<医療行使主義>と<医療虚無主義>の両極端の間に立たされ迷う場面に遭遇する. その両極端に悩みながら, <説得の儀式>や<希望つぶし>といった, どちらかの極端に誘導するための方法を用いる傾向がみられる. 結論 : ポートフォリオを介した研修医との面談から, 臨床現場で起きている問題構造の一端を明らかにできた可能性がある. 臨床上の決断の傾向を構造化することで, 臨床現場での指導に役立つ可能性が示唆された.
著者
三浦 宏文
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子大学短期大学部紀要 = The bulletin of Jissen Women's Junior College (ISSN:21896364)
巻号頁・発行日
no.38, pp.63-72, 2017

本稿では、明治期の哲学者・仏教学者・教育者であり、日本で初めて妖怪学を研究したという多彩な顔を持つ井上円了(1858~1919)の哲学者としての側面に注目し考察を加えた。円了の哲学は、民衆が極端な思想にとらわれることなく自らの頭で考え判断していくことを促すことをねらいとしていた。したがって、妖怪学研究も民衆の迷信を取り除くためのものであった。あくまで哲学を民衆とつながったものとしていく所に、円了の在野の哲学者としての真骨頂があったのである。