著者
杉本 厚夫
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.35-47, 2017-03-25 (Released:2018-04-06)
参考文献数
21
被引用文献数
3

本論の目的は、スポーツを見る行為の意味を解読したうえで、実際に競技場で観る場合とメディアを通して視る場合を比較し、さらに、スポーツを見ることに伴った応援という行為に注目し、主に駅伝・マラソンを分析対象として、スポーツを見るという社会的行為における相克を明らかにすることである。 スポーツを見るという行為は、「興奮」を求める社会的行為であり、それは、パフォーマンスとゲーム展開という競技性における挑戦と、ゲーム展開にみる物語性にあるといえる。 また、スポーツのリアリティはテレビというフレームによって転形され、メディア・リアリティをつくりだす。そして「臨場感」のあるものにするために、元のスポーツ・リアリティに回帰される。さらに、スポーツ・リアリティと差異化するために、テレビの技術を使って競技場では見られないような視線を提供する。しかし、それらはあくまでテレビがつくりだした視線であり、見る者が主体的に選択した視線ではない。また、競技場で身体が感じる雰囲気や、プレイヤーからみられているという身体感覚は、テレビでは味わうことはできない。そこには「みる」ことは同時に「みられている」という間身体性は存在しない。 さらに、スポーツを見ることによって発生する応援は、興奮を呼び覚ませる。とりわけ、応援のための集合的なパフォーマンスが人々の身体に共振し、一体感によって興奮は高まる。しかし、その興奮が暴走しないように、日本の場合は応援団が鎮める役割を果たしている。また、応援による興奮が許されるのは非日常の世界であり、いったんそこに日常性を見出すと興奮は鎮まる。駅伝や・マラソンの場合は、もともと日常の道路を非日常に変えてレースをするわけであるから、ランナーが通りすぎてしまえば、その興奮は日常世界の中で鎮められるのである。 結局、スポーツを「観る」ことと「視る」ことの相克は終わらない。
著者
浅見 和彦
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.57-72, 2020-03-20 (Released:2022-04-04)
参考文献数
50

安倍政権の「一億総活躍社会」政策では,労働者の代表としての労働組合の役割について触れられることがない。また,研究者のあいだでも,長期にわたって後退する日本の労働組合の問題への関心は乏しいものである。 そこで,この論文は,日本の労働組合の組織と活動の変貌と現況について,主要なセクターごとに――すなわち,民間大企業の中核労働者,中小企業の労働者,国家・地方公務員,専門職・技能職,そして非正規労働者にわけて――分析し,要約する。 そして,後半では,それぞれのセクターの労働組合が直面している構造的・長期的な問題と改革のための主要な課題を議論する。また,職場・産業・地域の視点から見て,雇用関係を規制するために相応しい方策を示唆する。 最後に,さまざまな階層の労働者のあいだにおける「有機的連帯」を確立する必要性を主張する。

2 0 0 0 OA 意識障害

著者
卜部 貴夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.5, pp.1082-1089, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
5
著者
佐藤 健二
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.516-536, 2003-03-31 (Released:2010-04-23)
参考文献数
18

本報告では, 安田三郎『社会調査ハンドブック』を素材に, 戦後日本の社会学における方法意識の歴史的な変容を論ずる.数量的研究/質的研究の対立の一方の典型としてではなく, むしろ調査テクノロジーの特質に焦点をあて, 読者の理解をも視野にいれた分析が必要であろう.4冊の内容構成の変遷から, 問題の設定の局面で重要な役割を果たす〈書かれたもの〉, すなわち研究論文や統計文書など文献データに対する感度が低下し, 社会調査の社会調査ともいえるような展開をはらんでいた質問分析の意味が, 単純な例示に切り縮められていったという変容が浮かびあがる.しかし, 社会調査が行われる「社会」という場それ自体が, さまざまなデータがすでに書き込まれ刻み込まれている資料空間である.このハンドブックの構想に学ぶべき可能性を3つ挙げておこう.第1には安田自身が感じた「一寸した知識」への驚きを共有するという期待が込められていること, 第2に流れ作業的なマニュアルとしてではなくフィードバックを含む複合的な認識形成のプロセスを構築しようとしたこと, 第3に戸籍の読み方や内容分析など盛り込めなかった調査テクノロジーの領域についての明晰な自覚が少なくとも始めの段階ではあったことである.『社会調査ハンドブック』を共有すべき書物として編むという実践それ自体が, 盛られた情報内容以上に, 社会という資料空間に内属しつつデータを収集し処理し再構成せざるをえない, 「方法」のもつ手ざわりをしっかりと伝えている.
著者
大河内 直彦
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.135-152, 2017-09-25 (Released:2017-09-28)
参考文献数
113

This paper reviews the principles and applications of the compound-specific radiocarbon dating developed mainly during the last two decades. This methodology requires two technical challenges: 1) purification of target compounds from natural samples, and 2) small-scale radiocarbon dating with accelerator mass spectrometry. Since its establishment, the compound-specific radiocarbon dating has been successfully applied not only to geochronology of marine and lacustrine sediments, but also to various fields including biogeochemistry, environmental science, and archaeology. Here I describe some of these applications of this approach that provided unique information and revolutionized our knowledge. Variable ages of the organic compounds from the marine sediments have clearly suggested that the transport and deposition processes of the organic matter in the ocean are more complex than that had been expected. Source apportionment has also successfully conducted for organic pollutants from various environmental samples. I end this review with a call for continued efforts including technical improvements for evaluating the purity of the target compounds and extension of the target compounds to variable compounds like amino acids.
著者
児玉 実優 酒井 浩之 永並 健吾 高野 海斗 中川 慧
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.3K4GS1001, 2022 (Released:2022-07-11)

近年, 投資家は, ESG(E:環境,S:社会,G:統治)情報を投資判断において重視しており,ESG関連情報をテキストデータから抽出する技術が必要とされている. ESG関連情報は統合報告書に多く記載がある. しかし, 企業によってレイアウトや内容が異なり, 学習データの作成が困難である. そこで本研究では, まず有価証券報告書(有報)から ESG関連情報を抽出する. 有報にも統合報告書ほどではないが, ESG 関連情報の記述がある. また, レイアウトはどの企業も同じであり, さらに XBRL 形式と呼ばれるテキスト形式で配布されているので, テキスト処理を行いやすい. 次に有報から抽出したESG関連情報を学習データとして,BERTモデルをファインチューニングする. 最後に当該BERTモデルを用いて統合報告書からESG関連情報を抽出することで,統合報告書から直接学習データを作成する困難を解決できた. 実際に, 本手法で各企業の統合報告書から ESG 関連情報を抽出した.結果, E,S,Gに関する情報をそれぞれ93.3%,91.7%,77.4%の適合率で取得でき,良好な結果が得られた.
著者
田渕 史 渡部 祥山 Stanislav L. Karsten 籔内 研佑 佐原 義基 髙里 実 藤本 和也 横川 隆司
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌E(センサ・マイクロマシン部門誌) (ISSN:13418939)
巻号頁・発行日
vol.143, no.9, pp.306-312, 2023-09-01 (Released:2023-09-01)
参考文献数
14

Main function of glomerulus is to filter plasma and waste products from blood. The filtration function is known to be impaired and irreversibly damaged by a disease or a drug administration. Therefore, nephrotoxicity assessment is essential for a new drug development. However, conventional animal models for drug screening cannot appropriately assess toxicity of drugs to human glomerulus. In this study, we constructed a glomerulus-on-a-chip using human podocytes and evaluated the selectivity of inulin and albumin for filtration function.
著者
野上 道男
出版者
日本地図学会
雑誌
地図 (ISSN:00094897)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.1-13, 2021-09-30 (Released:2023-09-14)
参考文献数
10

The surveying method used by Ino is called as “Dosen-Ho”,a kind of open traverse method. “Dosen”,that is to say,surveyed polygonal lines along coasts and main roads compose a net. Nodes on the net are points of bifurcation and/or points of confluence because the lines are directed. Then errors of closure would be apparent at the confluence points of the surveying lines. This paper deals with the error handling by Ino to make maps. He distributed the revealed error at the confluence point among adjacent points on the newly surveyed line and did not modify existing lines already surveyed.