著者
岩坪 健
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.1-17, 2014-02

西洋音楽に使われる楽器とジェンダーに関する研究は、すでに欧米において進められていて、男性/女性向けの楽器や、男性/女性らしい楽器に分かれる。平安時代にもジェンダーの概念があり(千野香織氏の説)、源氏物語に描かれた絃楽器にもジェンダーが見られるか考察する。当時の絃楽器には和琴・箏の琴・琵琶・琴(きん)の琴(こと)の四種類があり、このうち和琴だけが日本原産で、ほかの三種は外来である。千野氏の論によると、中国は男性性-日本は女性性に分けられるので、日本産の和琴は女性性の楽器と仮定できる。また、和琴は東琴(あづまごと)とも呼ばれ、東国は都より下に見なされていた。よって和琴には、女性性と下位の要素が共存している。これは上位の中国は男性性、下位の日本は女性性と説く千野説にも合う。次に箏の琴は、源氏物語では「あやしう昔より箏は女なん弾きとる物なりけり。」(明石の巻)とあり、女性向きの楽器と捉えられていた。逆に琵琶は、「琵琶こそ、女のしたるに憎きやうなれど、」(少女の巻)により、女性には似合わない、と見なされていた。最後に琴(きん)の琴(こと)は、中国では君子の嗜む楽器として尊ばれていた。以上により、琴(きん)の琴(こと)と琵琶は男性性、箏の琴と和琴は女性性の楽器と定義され、それにより物語の新たな読みが拓かれるのである。
著者
永崎 研宣
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.1-10, 2016-11-28 (Released:2017-09-15)

本稿は、大学図書館におけるデジタル人文学の状況について、筆者の知る範囲での現状をお知らせするものである。とりわけ、紙媒体からデジタル媒体へと情報の伝達手段が大きく変化するなかで、情報伝達に大きく依存してきた人文学の変容と、そこにおける大学図書館の役割について、主に米国・英国の事例を参照しつつ、日本の状況とそこへの期待について述べている。
著者
山本 康司
出版者
神戸大学
巻号頁・発行日
2019
著者
吉田 實
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.102-108, 1988-03-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
16
被引用文献数
2

対照飼料の大豆粕や魚粉等と置き換えてビール酵母を16%配合した試験用飼料を,雌鶏に12週間給与した後種卵をとり,ふ化して雛を得て,その雛を親鶏と同じ飼料を給与して212週間飼育した。実際の養鶏場で採卵鶏をこれ程長く飼育することはないであろうから,100週齢で飼育を打ち切ったものとして成績をまとあた。試験には,NとOの記号で示した2種類のビール酵母を用いた。雛は昭和51年春に20週齢となり産卵を始めた。20週齢から100週齢までの80週間の産卵成績を,8週間を1期とする10期に区分して取りまとめた。産み初めの16週間は,対照区とビール酵母区の産卵率に差はなかったが,夏から秋に向けて対照区の産卵率が低下するときに,ビール酵母区の産卵率の低下が緩慢で産卵率に有意差を生じた。また翌年の昭和52年春の,冬季に低下した産卵率が回復する時期にビール酵母区の回復が著しく,再び有意差を生じた。結局,80週間の平均ではビール酵母区の産卵率が約7%高かった。飼料摂取量には大差がなかった。ビール酵母区の卵重は対照区の卵重より少し軽いが,産卵率が高いので,産卵日量ではビール酵母区のほうが約3g, 8%多い。ビール酵母には,対照区の産卵率が低下する時期に産卵率の低下を防ぐ活性化因子が含まれていることが示唆された。80週齢前後で,産卵鶏を更新する時期に,ビール酵母区は対照区より約10%高い産卵率を維持していて,更新時期を遅らせることができる。
著者
宇都宮 聡
出版者
大阪市立自然史博物館
雑誌
大阪市立自然史博物館研究報告 = Bulletin of the Osaka Museum of Natural History
巻号頁・発行日
vol.73, pp.23-35, 2019-03-31

日本国内で長頚竜類化石の発見事例は多いが,その多くが北海道・東北地域から産出した標本で占められている.今回報告する標本は,長頚竜としては九州地域から初めて産出した化石であり,鹿児島県獅子島の御所浦層群弊串層(上部白亜系セノマニアン階下部)から産出した.前頭骨と底後頭骨,保存状態の良い下顎の大部分,舌骨,環椎・軸椎複合体を含む頚椎などが保存されている.歯表面の隆線状の装飾や,頚椎が細長く頚肋骨頭が一つであることなどの特徴は,本標本がエラスモサウルス科であることを示している.大部分の椎骨で椎弓が椎体から分離していることから,本個体は Brown( 1981) の定義による“ juvenile”(幼体)と判断される.現時点で.獅子島標本は日本(東アジア)最古のエラスモサウルス科の標本であり,白亜紀後期初頭(セノマニアン期最前期)の太平洋北西部にエラスモサウルス科長頚竜が存在していたことを示す重要な標本である.

18 0 0 0 OA 大日本古文書

著者
東京帝国大学文学部史料編纂所 編
出版者
東京帝国大学
巻号頁・発行日
vol.家わけ 三ノ七, 1911

18 0 0 0 OA 群書類従

著者
塙保己一 編
出版者
経済雑誌社
巻号頁・発行日
vol.第拾貳輯, 1893
著者
熊倉 陽介
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.533-540, 2019-05-15

抄録 居場所ということばには心理的な意味合いが含まれており,自らのアイデンティティが確かめられる環境のことを意味する。居場所のなさはメンタルヘルスに大きな影響を与える。本稿では,ホームレス支援を居場所の臨床と位置付け,その新しい支援の方策であるハウジングファーストについて紹介する。ハウジングファーストは,「まず安定した住まいを確保した上で,本人のニーズに応じて支援を行う」という非常にシンプルな考え方であり,その根幹は「住まいと支援の分離(独立)」にある。治療を受けることや回復することなどの条件を求めず,居場所としての住まいを提供するという支援のあり方を考えることを通して,居場所について考察する。
著者
Hongzhou Lu
出版者
International Research and Cooperation Association for Bio & Socio-Sciences Advancement
雑誌
BioScience Trends (ISSN:18817815)
巻号頁・発行日
pp.2020.01020, (Released:2020-01-28)
参考文献数
18
被引用文献数
745

As of January 22, 2020, a total of 571 cases of the 2019-new coronavirus (2019-nCoV) have been reported in 25 provinces (districts and cities) in China. At present, there is no vaccine or antiviral treatment for human and animal coronavirus, so that identifying the drug treatment options as soon as possible is critical for the response to the 2019-nCoV outbreak. Three general methods, which include existing broad-spectrum antiviral drugs using standard assays, screening of a chemical library containing many existing compounds or databases, and the redevelopment of new specific drugs based on the genome and biophysical understanding of individual coronaviruses, are used to discover the potential antiviral treatment of human pathogen coronavirus. Lopinavir /Ritonavir, Nucleoside analogues, Neuraminidase inhibitors, Remdesivir, peptide (EK1), abidol, RNA synthesis inhibitors (such as TDF, 3TC), anti-inflammatory drugs (such as hormones and other molecules), Chinese traditional medicine, such ShuFengJieDu Capsules and Lianhuaqingwen Capsule, could be the drug treatment options for 2019-nCoV. However, the efficacy and safety of these drugs for 2019- nCoV still need to be further confirmed by clinical experiments.
著者
松山 正將 花渕 健一 菊地 清文 高橋 則雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.249-253, 1993-06-01 (Released:2010-06-15)
参考文献数
3

元仙台愛宕下発電所は、1920 (大正9) 年仙台電気工業 (株) が、現在仙台市域なっている名取郡六郷村を供給区域として事業認可を得、建設したものである。その発電用水は広瀬川に求め、大橋下流約320mの所に潜堰を築き、右岸に設けた取水口から地下に入り一度地上に出たあと、龍の口沢を越えたところで再び地下に入り、愛宕山のふもとに設けた発電所の開放型反動水車へ導いた。この導水施設の全長は約2kmである。本報告は、建設後70余年経過し忘れ去られようとしている土木構造物の現存するトンネル部分 (約1.3km) の現況調査を行い、その記録と共に利活用の可能性について述べるものである。
著者
竹下 俊郎
巻号頁・発行日
1998

筑波大学博士 (社会学) 学位論文・平成10年1月31日授与 (乙第1344号)
著者
平山 大作 藤井 範久 小池 関也 阿江 通良
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.225-232, 2010 (Released:2010-05-27)
参考文献数
24
被引用文献数
2 3

The purpose of this study was to investigate the changes on mechanical work of the lower limb joints during baseball pitching in a simulated game. One male college baseball pitcher threw 15 pitches in an inning for 9 innings (135 pitches) in an indoor pitcher's mound with two force platforms. Rest time between innings was 6 minutes. Three-dimensional positions of 47 reflective markers attached to subject were tracked by an optical motion capture system (Vicon Motion System 612, Vicon Motion Systems) with eight cameras (250Hz). For subject 75 fastball pitches (1st, 3rd, 5th, 7th, and 9th innings) were chosen for analysis.As the main results, the hip joint extension absolute and negative work of the stride leg decreased with increasing the number of pitches. The ankle joint extension absolute and negative work of the stride leg increased with increasing the number of pitches. These results suggest that the hip joint extension torque of the stride leg was needed to maintain for higher performance in baseball pitching.

18 0 0 0 OA 細菌の国

著者
福島伴次 著
出版者
時代社
巻号頁・発行日
vol.続, 1943
著者
吉原 博幸
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.767-778, 2018-02-01 (Released:2018-02-01)
参考文献数
8

EHR(Electronic Health Record)の始まりは1995年の医療情報共通規格(MML: Medical Markup Language)の検討開始にさかのぼることができる。2001年に,MMLをデータベース構造としたEHRが開発され,熊本,宮崎,東京,京都へ拡大していった(Dolphin Project)。その後,国家レベルでの医療情報管理の必要性が認識され,医療情報の2次利用のニーズとも相まって,2015年にDolphin Projectの国レベル版である「千年カルテプロジェクト」が始まった。2018年度までの4年間で接続病院を十分に増やし,2019年度から始まる医療情報の2次利用に備える。2次利用の収益による補助金に依存しないEHR部門も含めた独立採算を目指している。