著者
菊池 啓一
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.14-30, 2020 (Released:2020-07-31)
参考文献数
15

本稿は、アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス政権の閣僚構成と政策課題への対応の特徴を検討したものである。マクリ政権下での経済状況に対する市民のネガティブな評価とクリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル前大統領の選挙戦略の妙によって誕生した同政権は、いわば正義党「連立政権」である。2020年4月時点では新型コロナウイルス対策に対する評価から高い支持率を得ていたが、債務再編交渉と経済再生については政権内での経済政策をめぐる調整不足が目立っている。有権者はフェルナンデス政権に対する評価を大統領個人に結びつける傾向があるが、今後政権の支持率が低下した場合にキルチネル派を重用するのは得策ではないと考えられる。
著者
山上 俊彦
出版者
日本福祉大学福祉社会開発研究所
雑誌
現代と文化 : 日本福祉大学研究紀要 = Journal of Culture in our Time (ISSN:13451758)
巻号頁・発行日
vol.135, pp.1-21, 2017-03-31

北海道庁が2015 年に公表した「科学的手法に基づくヒグマ生息数」はヒグマ生息数が爆発的に増加しているという結果となっている.この計算機実験に基づく推定結果について検討を加えたところ,断片的情報を基にしたシミュレーションであり,生息数の水準の根拠が希薄であること,生息数が安定する環境収容力が考慮されていないといった問題点があること,推定値の幅が広く信頼性の低い推定値であるということが判明した.ここで公表された生息数を基にヒグマの保護管理政策を推進した場合,北海道のヒグマは絶滅への道を辿ることが予想される.北海道のヒグマ保護管理計画は目標と手段の関係が調和していない政策であり,総捕獲数管理は個体数管理と本質的に変わらない補殺一方の政策である.北海道は政策の基本思想を根本から改める必要性がある.

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著者
坪内逍遥 著
出版者
改造社
巻号頁・発行日
1941
著者
久我 秀功 太田 健太郎 伊川 雄希 坂下 泰靖 西田 周平 溝兼 通矢 岡本 哲
出版者
マツダ株式会社
雑誌
マツダ技報 (ISSN:02880601)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.102-106, 2019 (Released:2019-12-02)
参考文献数
1

新型MAZDA3の開発では,CO2排出量低減技術の一環として,実際の市場環境に近い走行状態で車両全体の風流れの運動エネルギーマネジメントを行い,空気抵抗の低減とサーマルマネジメント効率化の両立を目指した。この実現にむけ,フロントグリルを通過する風を用いてラジエーターを効率的に冷却するための導風構造を設定し,無駄な風を極限まで減らした。そして,アクティブエアシャッターをラジエーターの全面に配置し,シャッター開度を6段階で制御することで,走行シーン毎にエンジンルーム内の部品温度をコントロールするとともに,排出する際に生じる風流れの運動エネルギー損失が最少となる風量にコントロールした。更に,冷却に用いた風を排出する際,車両周りの風流れの運動エネルギー損失量が最少となるように構造を作り込むことで,クラストップレベルの空気抵抗係数とCO2排出量の低減に貢献した。
著者
田中 康広
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-7, 2012 (Released:2012-03-29)
参考文献数
47

近年,樹状細胞を用いた悪性腫瘍に対する免疫療法は特に注目を集めており,腫瘍抗原特異的な抗腫瘍効果の誘導を目指した臨床試験が世界各国のさまざまな施設で行われてきた。樹状細胞は生体内において最も強力な抗原提示細胞であり,T細胞を中心とした免疫担当細胞を調節し,腫瘍特異的な免疫反応を誘導するうえで重要な存在だと言える。この樹状細胞を用いた免疫療法は1996年に悪性リンパ腫に対して初めて臨床試験が行われ,2010年4月にはホルモン療法抵抗性の転移性前立腺がんに対する樹状細胞療法(sipuleucel-T)の製造販売が初めてFDAにより認可された。これまでのところ樹状細胞を用いた抗腫瘍免疫療法は腫瘍抗原が明らかとなっているペプチドのパルス療法が主体となっており,その他腫瘍抗原自体やその溶解成分,またはRNAをトランスフェクトする方法なども行われてきた。これらの方法は腫瘍抗原の同定が必要であるが,腫瘍抗原が未だ同定されていないものも多く存在する。このような腫瘍に対しては腫瘍細胞と樹状細胞をポリエチレングリコールにて処理した融合細胞によるワクチンが有効と考えられる。本稿では現在までに筆者らが行ってきた樹状細胞と腫瘍細胞からなる融合細胞を用いた免疫療法とその抗腫瘍免疫の機序について概説し,頭頸部腫瘍に対する免疫療法の現状についても言及したい。
著者
舘田 一博
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.3, pp.572-579, 2015-03-10 (Released:2016-03-10)
参考文献数
4
著者
石川 浩康 宮原 信哉 吉澤 善男
出版者
Atomic Energy Society of Japan
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.452-461, 2008 (Released:2012-03-02)
参考文献数
7

Supercritical carbon dioxide (CO2) is being investigated as a material for a secondary cooling system of sodium (Na)-cooled fast reactor to avoid Na/water reaction. In this type of reactor, however, it is necessary to consider the consequences of Na/CO2 reaction, which might occur in the case of tube rupture in a heat exchanger between primary and secondary systems. Experiments were carried out with test equipment for the Na/CO2 reaction, which can handle 1-5 g order of Na and measure temperatures using thermocouples. The solid products of the Na/CO2 reaction sampled from the equipment were analyzed by X-ray diffraction (XRD) and chemical analysis. The parts of exhaust gases were analyzed by gas chromatography. From these experimental results, we proved that the reaction proceeded between liquid Na and CO2. The Na/CO2 reaction stopped only the pool surface reaction with a small quantity of aerosol emission when the initial temperature of Na was lower than 570°C. On the other hand, the reaction continuously proceeded with an orange-colored flame and aerosol release when the Na initial temperature was higher than 580°C, and the reaction products expanded to the margin of the Na pool tray.
著者
田中 厚子 高井 史比古 西川 幸江 本田 孝行 川本 敦子 中島 勇 堀越 節子 小川 隆司
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.269-275, 2022-07-01 (Released:2022-07-01)

日本EPI協議会のワーキング活動において,IPランドスケープをテーマに,知財関連の解析手法について研究を行った。テーマとしては炊飯器を題材に,3チームに分かれ,それぞれが異なる炊飯器メーカーを担当した。国内市場をターゲットに分析を行い,市場におけるポジションの確認や,事業戦略,経営層への提言を検討した。各チームでまずは市場における外部要因を確認し,ベンチマークを行った上で,SWOT分析,ファイブフォース分析,ポジショニング分析,特許分析,テキストマイニング,ワードクラウド等の手法を駆使し,それぞれの結論へと導いた。本稿では,研究活動を通して得られた分析手法の知見を紹介する。
著者
矢島 道子
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.3_22-3_27, 2010-03-01 (Released:2010-10-25)
参考文献数
6
著者
樋口 洋平 石川 祐聖 工藤 新司 柏村 友実子 和泉 隆誠
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

花ハスの開花期・花型を決定する分子機構を明らかにするため、花芽・花器官形成関連遺伝子を単離し、発現動態を解析した。フロリゲン/アンチフロリゲンをコードするFT/TFL1ファミリー遺伝子を14種類同定した。このうち、FTグループ4種類、TFL1グループ4種類について開花特性の異なる2品種において遺伝子構造と発現パターンを比較した結果、NnFT2がフロリゲンとして機能する可能性、およびNnTFL1が抑制因子として機能する可能性が示唆された。花器官形成に関与するABCEクラス遺伝子(全12種類)の発現解析の結果、ハスの八重咲きはNnAG (Cクラス)の発現低下が原因である可能性が考えられた。
出版者
東京図書
巻号頁・発行日
vol.[第26], 1969
著者
菅野 礼司
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.290-297, 2003-12-20 (Released:2017-02-10)
参考文献数
5
被引用文献数
1

自然科学は全体として一つの理論体系をなし,その扇の要に物理がある。それゆえ,理科教育は物理を基礎に据えた包括的体系として教えるべきである。その「物理を基礎とした包括理科」を組立てるための基礎概念と骨組みは,自然の階層性と,その全ての階層を貫いて成立する普遍法則であることをまず示す。自然の階層性には,物質の階層性と相互作用(力)の階層性とがある。そして,理科科目の物,化,生,地をそれら階層と対応させ,理科の四科目が「包括理科」の中で占める位置と相互関係を述べる。最後に,情報との関連にも言及する。
著者
日本生態学会編
出版者
地人書館
巻号頁・発行日
2002
著者
原田 智也 西山 昭仁 佐竹 健治 古村 孝志
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

慶長十六年十月二十八日(1611年12月2日)の三陸地震(以下,「慶長三陸地震」)は,地震動による被害の記録は未発見だが,東北地方・北海道の太平洋岸で津波による犠牲者が多数出たと記録されている.この特徴が,1896年明治三陸地震(M8.1)や1933年昭和三陸地震(M8.1)の特徴と似ていることから,慶長地震は,これらと同タイプの地震であったと考えられてきた(羽鳥,1975;相田,1977;渡辺,1998).ところが,2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0;以下,「東北地震」)の発生後,慶長三陸地震による津波が,東北地震による津波と同様に広域的に高かったと判断し(例えば,蝦名,2014;岩本,2013),この津波を再現するためには,東北地震と同規模の断層面を持つプレート間地震(Mw8.4〜8.7)(今井・他,2015),あるいは,Mw9.0の津波地震(福原・谷岡,2017)を考える必要があることを,津波シミュレーションに基づき議論している.この判断は,三陸地方や仙台平野に伝わる津波の伝説や伝承を含む歴史記録に基づく津波高や浸水範囲(例えば,羽鳥,1975;都司・他,2011;蝦名・今井,2014)の推定が,東北地震と同等以上であることを主な根拠としている.しかし,津波高や浸水域の推定方法,推定に使われた歴史記録の信頼性について十分な検討が行われたとは言い難く,歴史研究者からも疑問が呈されている(例えば,菅野,2014;佐々木,2014;斎野,2017). そこで本研究では,同時代史料による慶長地震の特徴と東北地震を比較することにより,慶長三陸地震の震源像を考察した. 東北地震の発生時,東京は震度5弱〜5強の強い揺れに長時間見舞われ,本震後24時間以内の有感地震は200回を越えた(気象庁震度データベースによる).さらに,長野県北部でMw6.7,静岡県東部でMw6.4の誘発地震が発生し,被害も出た.よって,慶長三陸地震が東北地震と同規模のプレート間地震であれば,江戸では長時間の強い揺れとそれに伴う大被害,さらに,数日以上にわたる余震・誘発地震による揺れが記録されている可能性がある.実際に,寛政五年一月七日(1793年2月17日)の宮城県沖の地震(M8.0〜8.4)では,江戸で小被害と地震後2日間で約50回の有感地震が記録されている(宇佐美・他,2013). 慶長三陸地震発生時の江戸には,京都の公家の山科言緒と舟橋秀賢が滞在しており,それぞれ,『言緒卿記』に「(廿八日)辰刻大地振,(廿九日)至夜地動」,『慶長日件録』に「(廿八日)午刻地震,(廿九日)丑刻地動」と記している.本震の震度は3程度と推定され,長時間揺れたという記述はない.また,余震によると思われる揺れは,本震翌日の“地動”が1回記録されているのみである.さらに,両日記には,地震翌日に武蔵野見物に行った様子が記されており,有感地震が続発した状況はみられない.『駿府記』によれば,徳川家康は十月廿六日以降に現埼玉県内で何事もなく鷹狩りを挙行している.また,東北地震後のような誘発被害地震の記録もない.したがって,関東において,本震の揺れが弱く,活発な余震活動や誘発地震の記録がない慶長三陸地震が,東北地震と同規模の断層面を持つプレート間地震であったとは考え難い. 斎野(2017)によれば,仙台平野の考古遺跡からは,岩沼市の高大瀬遺跡を除いてこの地震によると考えられる津波堆積物は確認されていない.また,岩手県宮古市の沼の浜,福島県南相馬市の井田川低地においても確認されておらず(Goto et al. 2019; Kusumoto et al. 2018),慶長三陸地震の津波の規模は東北地震より小さかった可能性が高い. 以上より,この地震は,三陸海岸で10m以上の高い津波を発生させたが,東京において本震の揺れが弱く,余震もほぼ感じられなかった明治三陸地震か昭和三陸地震と同タイプの地震であった可能性が高い. なお,後世に成立した史料や成立年不明の史料の中には,慶長三陸地震の5年後の元和二年(1616年)十月廿八日に地震と津波があったことを示す史料が含まれる.例えば,『大槌古館由来記』では「元和二年丙辰年大津波,其日十月廿八日八日市日ニて,朝よりゆり出度々地震仕候,」の記述がある. 元和二年には,七月廿八日に仙台城の石垣・櫓に大被害を与えた大地震が記録されており,(『伊達治家記録』),時刻は異なるが江戸における長時間の地震の揺れの記述もある(『イギリス商館長日記』).商館長日記には,翌日にも江戸で2,3回の地震があったと記述されている.したがって,『大槌古館由来記』のような史料では,慶長三陸地震と元和二年の大地震とが混同されている可能性がある.今後,慶長三陸地震の地震像を考えるに当たり,元和二年の大地震を含めた検討が必要である.
著者
井本 立也 原納 淑郎 西 泰英 益田 悟
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.106-109,A7, 1964-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
9
被引用文献数
2

酸化亜鉛を水素で還元する反応を,温度範囲665°~738℃,酸化亜鉛量40.0~70.0mg,初期水素量5~9cmHgで行ないつぎの結果を得た。酸化亜鉛量が水素量とくらべて少ない場合には,反応速度は酸化亜鉛の表面積に比例するが水素圧には依存しない。したがってこの反応は酸化亜鉛の分解過程が律速しており,その活性化エネルギーは17.0kcal/molであることを知った。これらの事実は酸化亜鉛量が水素量にくらべて多い場合について報告した既報の結果(酸化亜鉛の水素による還元反応の機構は,まず酸化亜鉛が酸素と亜鉛蒸気とに分解し,その酸素と水素とが反応して水蒸気となる)を支持する。
著者
町田 貴胤 町田 知美 佐藤 康弘 田村 太作 庄司 知隆 遠藤 由香 福土 審
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1134-1139, 2016 (Released:2016-11-01)
参考文献数
9

副腎皮質機能低下症は食欲不振, 悪心・嘔吐, 易疲労感など非特異的症状を呈することが多く, うつ病との鑑別が難しい. うつ病を疑われ心療内科に紹介され, 下垂体性副腎皮質機能低下症と判明した3例を報告する. 症例1 : 59歳男性 : 特に誘因なく悪心嘔吐が出現し体重が6カ月で18kg減少, 抑うつ気分や倦怠感がみられた. 一般血液検査, 内視鏡検査, 腹部CTにて異常なしとして紹介された. 低血糖・低ナトリウム血症のほか, cortisol 1.03μg/dl, ACTH<5.0pg/mlと低値, ACTH単独欠損症と判明した. 症例2 : 77歳男性 : 愛犬の死後に抑うつ気分や腰下肢痛が出現, 一般血液検査や腰部X線で異常なく紹介された. cortisol 4.21μg/dl, ACTH 5.7pg/mlと低値, 脳MRIでRathke囊胞を認め, 続発性副腎皮質機能低下症と診断した. 症例3 : 47歳男性 : 東日本大震災で被害を受け悪心嘔吐や倦怠感が出現, 抑うつ気分がみられ一般血液検査で異常なしとして紹介された. cortisol<0.8μg/dl, ACTH<2.0pg/mlと低値, 部分的下垂体機能低下症と甲状腺機能亢進症の合併と判明した. 心療内科において非特異的な身体症状や抑うつ気分を呈する患者には, 一般検査で異常がなくとも副腎皮質機能低下症とうつ病を早期に鑑別すべく副腎皮質機能検査が推奨される.