著者
森 宣雄
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、戦後70年にわたる沖縄現代史をトータルに把握する歴史叙述・哲学をまとめるとともに、それを理論的に〈下から〉のグローバル・ヒストリーとして位置づけ、さらにそこで見出された歴史上の社会思想を現在のグローバルな社会実践へと展開する新たな方法論を開拓した。その成果は専門的研究に裏打ちされた学術一般書をふくむ8件ほどの著書、国内外での多数の講演、多くの新聞雑誌での論考によって社会発信することができた。
著者
石崎 泰男
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

男体火山の末期活動と沼沢火山の沼沢湖噴火の噴出物についての岩石学的解析により、これらの大規模火砕噴火が3つ以上の複数マグマ溜りに由来するマグマ間の相互作用を経て発生したことが明らかになった。末期噴火では、2つのデイサイト質マグマ溜りが比較的短時間で形成され、各々へ独立したマグマ溜りから供給された苦鉄質マグマが注入し噴火が発生している。沼沢湖噴火のデイサイト質マグマ溜りは、この噴火の約2万年前には形成されており、先行噴火期には溶岩噴火を起こした。その後、独立したマグマ溜りから供給された2種類の苦鉄質マグマが順次デイサイト質マグマ溜りに注入し火砕噴火を発生させた。
著者
飛田 博順
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ハンノキ属樹種は放線菌のフランキアと根で共生し大気中の窒素を利用する窒素固定能力を持つ。1984年に発生した木曽御嶽山の岩屑流跡地に更新したハンノキ属数樹種の窒素固定能力を、窒素安定同位体比を用いた手法により評価した。その結果、植生の回復が早い低標高(約1100 m)に生育するケヤマハンノキが、高標高(約2000 m)のミヤマハンノキとヤハズハンノキに比べて窒素固定能力が低いこと、高標高の2樹種間では窒素固定能力に差がないことが明らかになった。撹乱後30年たった現在、植生回復に伴う土壌の肥沃化の影響があるものの、依然としてハンノキ属樹種の窒素固定能力が高く維持されていることが示唆された。
著者
中道 治久
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

御嶽山では2007年3月下旬に小噴火がおこった.小噴火に至るまでの山頂直下の地震活動を調べ,山頂直下地震は深さ0.5-2.0 kmで発生していたことが分かった.また,御嶽山にて発生した超長周期地震をモーメントテンソル・インバージョン解析した.その結果,超長周期地震の震源は山頂直下の海抜上600 mに決まり,そのメカニズムは傾斜した開口クラックであった.そして,マグマ貫入により地下水が急激に熱せられたことによって,超長周期地震が発生したと考察した.さらに,2007年3月の小噴火前後のS波偏向異方性の時空間変化を調べたが,マグマの貫入に伴う応力場変化は検出出来なかった.
著者
倉根 一郎 高崎 智彦 松谷 隆治 鈴木 隆二
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

デングウイルス感染症は世界で最も重要な蚊媒介性ウイルス感染症である。デングウイルス感染におけるデング出血熱の発症機序の解明のため、マーモセットを用いてデングウイルス感染モデルの確立を行った。マーモセットは感染後高いウイルス血症を示し、また抗体反応、臨床的所見、血液学および生化学的検査所見もヒデング熱患者と同様の変化が見られた。また、マーモセットにおけるT細胞免疫応答の詳細な解析のため、サイトカインや細胞マーカー解析のツールを確立した。
著者
倉根 一郎 高崎 智彦 正木 秀幸
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

デング出血熱の病態形成におけるフラビウイルス交叉性免疫応答の役割を解明することを最終的な目的とし、デングウイルスと日本脳炎ウイルス交叉性T細胞の解析をヒトおよびマウスのリンパ球を用いて詳細におこなった。日本脳炎ウイルスとデングウイルス間には免疫ヒトリンパ球を用いてのバルクカルチャーにおいては交叉反応性が認められた。しかし、CD4陽性T細胞クローンレベルでは日本脳炎とデングウイルス間に交叉反応性が認められなかった。一方、日本脳炎ウイルス反応性T細胞クローンの一部は西ナイルウイルスとの間に交叉反応を認めた。これは、日本脳炎ウイルスと西ナイルウイルス間でのアミノ酸の相同性の高さによると考えられる。従って、ヒトT細胞においてフラビウイルス交叉反応性は存在するが、日本脳炎とデングウイルス交叉性のものは低頻度であると考えられる。これらCD4陽性ヒトT細胞クローンのT細胞レセプターはユニークなモチーフは認められなかった。一方、マウスにおいてもデングウイルスと日本脳炎ウイルス間のT細胞交叉反応性を検討する目的で、まず、日本脳炎ウイルス反応性キラーT細胞の誘導と認識するエピトープの解析を行った。マウスを日本脳炎ウイルスで免疫することにより、日本脳炎ウイルスに対するキラーT細胞が誘導される。これらのキラーT細胞が認識するエピトープはエンベロープ蛋白質のアミノ酸60-68番上にあり、H-2K^d拘束性であった。現在、このエピトープを確認するT細胞のフラビウイルス交叉性、およびマウスキラーT細胞が認識する他のエピトープの同定が進行中である。
著者
今 孝悦
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、河口域において、外洋及び河川から運ばれる流入資源が、その場の生物群集にどの程度寄与しているのかを検討した。その結果、河口域の生物群集は海洋由来と河川由来の双方から流入する餌資源に依存し、両者の資源量が豊富な河口域には多様な生物群集が形成されていた。河口域に形成される生物群集には有用種が多数含まれ、従って、それらの生物資源の持続的利用には、海洋と河川の両者の繋がりが重要であることが示唆された。
著者
的場 正美 柴田 好章 近藤 孝弘 松下 晴彦 杉本 憲子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

【研究目的】本研究は、教授・学習活動の諸現象を叙述する記号ないしコードを開発し、それにもとづいた授業諸要因を抽出する分析手順と解釈方法および解釈に伴う諸問題を明らかにすることを目的としている。特に次の4の具体的な課題を解明することによって、上記の目的を達成する。1)記号の開発と可逆性による記号の妥当性の検証、2)要因の抽出と顕在化による記号の機能の検証、3)解釈に伴う諸問題の解明、4)国際比較による記号の標準化。【記号の整理と新しい記号の開発】事例に即して開発してきた40の記号を論理的に整合性があるように整理した。関係性、概念、例示、付帯などの観点から40の記号を8のグループに分類した。それを基礎に、2007年度には、特定の概念に関する個人間のズレを表すために、次の新しい記号を開発した。『A』/(W)[B〕説明:『A』という特定の概念に(/)ついて、(W)という人物が〔B〕という意味ないしイメージを込めている。【可逆性の検証】記号の妥当性については、記号による記述から現象をどの程度再現できるか、その可逆性によって検証した。単純な記号の場合に、可逆性の幅が広いことが示された。【叙述の可能性】他の教育研究の方法と比較すると、中間項(記号)を使用する点で、カテゴリー分析の方法と類似している。叙述の記号の開発は、教育現象を記述する可能性を示している。
著者
松田 達也
出版者
名古屋工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

(1)粒子法による津波-構造物-支持地盤連成解析手法の開発および拡張 : 粒子法のひとつであるSPH法を用いて、津波・海岸構造物・海底地盤の力学的相互作用に着目した、大変形問題に適用可能な解析手法の開発および拡張を行った。津波浸透による支持地盤の強度低下に加え、越流水塊により支持地盤の状態変化を考慮して安定性を検討した結果、越流および浸透により地盤内に過剰間隙水圧が発生し、支持地盤表層付近で液状化に似た状態となることがわかった。この現象により、支持地盤の強度低下に伴って支持力の不安定化が3割増加することを明らかとした。また、地盤の大変形と破壊後の剥離・接触問題へと適応可能な解析手法の開発を試み、防波堤構造が津波外力を受けて、防波堤が大きく滑動する様子や防波堤がマウンドにめり込む様子が再現可能となった。(2)海岸構造物における耐震・耐津波化に向けた抜本的対策工法の考察 : 本研究により明らかとなった混成堤の被害メカニズムより、抜本的な耐震・耐津波化対策として既存の液状化対策を施すことが有用であると考えた。そこで、液状化対策工法と期待できる効果に分類した。特に、構造条件は新設および既設に分け、地盤改良については改良効果ごとに分類した。また、ケーソンの滑動および転倒に対して対策効果が想定される抑え盛土およびアンカー、洗掘防止策として被覆工にっいても対策工法として示した。各工法にっいて破壊制御設計の概念を踏まえた上で、より有用な対策手法について検討した。(3)性能設計に向けた現行の設計を援用した設計チャート : 地震動レベル1や発生頻度の高い津波に対しては、これまでの設計手法により構造物の安定性を検討することが十分可能である。地震+津波については従来と同様に動的判定を行い、地震動・液状化による構造変形を考慮した形状に津波外力を作用させて安定性を検証するという従来の設計法を援用する方法と地震動・液状化によって損傷した地盤に津波の波力・越流・浸透の作用を連続的に検討する方法の二通りの検討チャートを設けた。
著者
戸村 佳代
出版者
明治大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本研究では、主節が省略された複文が発話された際に、日本語話者がその省略部分を復元し正しく理解するのに関与しているメカニズムを、語用論・関連性理論などの観点から明らかにすることを目的とし、次の4つの視点で研究を進めた。(1) 日本語の母語話者が省略された主節の復元に利用する語用論的情報を明らかにする。(2) 主節の省略を許す接続助詞の意味情報と文脈の関わりを分析する。(3) 主節の省略を促す要因と主節の省略が可能となる条件を明らかにする。(4) 学習上の困難点をより明確にし、学習者に与えるべき情報を特定する。主節が省略された複文の主節を日本語話者が頭の中で復元し理解する際には、次の意味情報が大きく寄与している。(1) 問題となる複文に用いられている接続助詞が持つ意味情報(2) 問題となる複文に先行する文脈から得られる意味情報(3) 問題となる複文に続いて現れる文脈からの意味情報これらの情報の実態を捉えるために、従属節(S_1+接続助詞)のみの情報が主節(S_2)をどの程度まで規定し得るかを見るための調査を行い、調査結果をデータベース化した。分析にあたっては、(1) 特殊な文脈の中に入らず、従属節だけが単独で提示された場合、(2) 従属節がさらに条件節を伴っている場合(3) 文脈情報がさらに付け加わっている場合(4) 同一の文脈・同一の従属節に対して異なる接続助詞を伴わせた場合に、主節の解釈がどのように変化するかなどに分類し、接続助詞の機能と文脈の役割を明らかにする試みを行った。この研究の詳細については『明治大学教養論集』に発表の予定である。。
著者
古関 潤一 宮下 千花 並河 努
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

2011年東日本大震災では東北から関東地方にかけて広域で多数の液状化が生じ、道路・住宅・産業施設や下水管路などのライフラインが甚大な被害を受けた。これらの液状化被害は、埋立て地盤のなかでも特に浚渫土砂をポンプ輸送して造成した砂質地盤で著しい一方で、自然堆積した砂質地盤での被害は限定的であった。そこで本研究では、浚渫埋立てにより造成した砂質地盤の特殊な堆積構造に着目した実験的検討を系統的に実施した。その結果、分級構造を有する砂質土の液状化特性とこれに影響を及ぼす要因、および効果的な改質方法を明らかにするとともに、これらを精度良く評価するための各種の実験・計測手法を確立させた。
著者
仲程 昌徳 前城 淳子
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ハワイへ移住した沖縄県人は数多くの琉歌を残している。また、那覇市、浦添市、恩納村等が主催する琉歌大会ではハワイの琉歌作者たちの詠歌が上位を占める。移民の表現を研究する上で、さらには現在の琉歌を研究する上で、ハワイ「琉歌」は見過ごすことの出来ないものである。ハワイで発行されている新聞『ハワイパシフィックプレス』(1977~2004年)、『ハワイ報知』(1980~2006年)に掲載されているハワイ「琉歌」の集成を行い、ハワイ琉歌の特質について明らかにした。
著者
堀之内 妙子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

【発芽停止因子(Germination Arrest Factor : GAF)であるFVGの全合成研究】現在広く用いられている除草剤は作物と雑草間の選択性が低く、また除草剤の利用という行為自体が耐性株の出現リスクを負うことが問題となっている。そのため、今後は新たなメカニズムによる優れた選択性を有する除草剤の開発が望まれる。4-Formylaminooxyvinylglycine(以下FVG)は、根圏バクテリアの一種Pseudomonas fluorescence WH6から単離された二次代謝産物である。FVGは、雑草として広く知られるスズメノカタビラなどの単子葉類の種子の発芽を停止する一方で、ニンジンやタバコなど双子葉類の生長にはほとんど影響を与えない。そのため選択的除草剤としての可能性を有している。そこで筆者は、FVGが有する特異なホルムアミドオキシビニル構造の構築法の確立、作用メカニズムの解明に貢献しうる環境に依存しない恒常的な試料供給、類縁体展開による優れた除草剤候補化合物の創製につながると考え、FVGの合成研究に着手することとした。L-メチオニンからチオアセタールを調製し、SMe基を脱離させることでFVGの骨格構築を試みた。しかしながら塩基存在下で銀塩や水銀塩を作用させたところ、アルデヒドが少量得られるのみであった。そこでチオアセタールを酸化して得たスルホキシドの熱分解によるFVGの骨格構築を試みたが、この際は系中で生じたFVGの保護体がN-O結合の開裂を伴い分解したことを示すような副生物が得られた。この知見をもとに、よりマイルドな反応によるFVGの骨格構築法を考案し、L-メチオニンから調製したデヒドロ体に対し、ヒドロキサム酸を用いてオキシマーキュレーションと続く逆チオマーキュレーションを行うことでFVGの保護体をE体選択的に得、保護基の除去によりFVGを重水溶液として得た。水銀を用いた本反応は新規性を有し、ビニルグリシン類縁体など他の天然物を始めとする生理活性有機化合物の合成研究に応用可能であると考えられる。本研究成果はFVGの類縁体展開も可能とするものであり、新規除草剤開発に向けてその礎を築くことができたと考えている。
著者
山口 博史 大久保 克己
出版者
滋賀大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

複素コークッド空間【C^n】の領域D(t)が複素助変数t(∈B)と共に、函数論的に自然に歪曲しながら、変化しているとしよう。今、各D(t)は原点0を常に含んでいると仮定しよう。このとき、D(t)の0に極をもつグリーン関数G(t,z)が、一意的に定まる。0のちかくではG(t,z)=1/(||Z||)+λ(t)+H(t,z)但し、λ(t)は定数項、H(t,z)はZの調和函数でH(t,0)=0と表わせる。このλ(t)はD(t)はロバン定数とよばれて、電磁気学での容量に対応するもので、重要な量である。我々は次の主定理を得た。直積空間B×【C^n】の領域{(t,z)∈B×【C^n】1t∈B,z∈D(t)}が擬凸状域ならば、λ(t)はtについてBでの優調和函数である。これを用いて、任意の滑らかな境界を有する擬凸状領域D(⊆【C^n】)に、函数論的なケーラー計量を具体的に作った。その応用は今後の課題である。次に、【C^n】を複素多様体Mに拡張した場合に、同様の考察を行った。そして、Mのケーラー計量【dλ^2】については、同様の結果が成立することを見た。このことは大きな展望を広げたように思える。例えば、一例として、等質空間でのレビの問題(ミッシェルの定理)に新たな視点を与えた。また、【C^n】での領域のロバン定数が古典電磁気学に関係した如く、Mでの領域のロバン定数は、電磁気学を量子論的に見たときのものに関係しているのではないかと思える。新しい研究問題を提供したように思う。
著者
難波 愼一 岸本 牧 長谷川 登
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

高強度プラズマX線レーザーと物質との相互作用,特に,非線形X線吸収現象を電子分光により明らかにすることを目的として実験を行った.ここで,X線レーザーの発振波長は13.9 nmであり,Xe原子の場合には4d内殻電子を光電離することができるため,内殻電離誘起強結合プラズマが発生する.本研究では原子・クラスターを対象とし,この非線形光学効果の寄与,及び,発生するプラズマの特性を明らかにした.
著者
簔原 俊洋
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

初年度の主たる研究実績は、海外における資料調査・収集であった。必要な資料が膨大であることにくわえ、その所在地が分散しているため、まず研究の中心を成す通信諜報(SIGINT)関係の文書を渉猟することにした。その結果、まずメリーランド州の国立公文書館(National Archives II)とヴァージニア州の国家安全保障局資料館(National Security Agency Library)に二カ所にて所蔵されている資料を収集することができた。国立公文書館では、国務省(RG59)、及び国家安全保障局(RG457)の資料を中心に調査を行ったが、その結果、アメリカの通信諜報の歴史や対日諜報の実態について多くを明らかにすることができた。他方、国家安全保障局の資料館では、部分的に秘密指定が解除されているTarget Intelligence Committee (TICOM)の資料、及び解読作業に携わった主要関係者のオーラル・ヒストリー(William Friedman, Frank Rowlett, Laurance Safford)のコレクションを調査し、必要な部分を入手することができた。なお、こうした調査の研究成果は学術論文としてまとめて公表する段階には到達していないが、一般の関心が高いため、2005年1月に、二回に渡って『産経新聞』にて新たに明らかとなった米国の対日通信諜報の実態に関する記事を掲載した。くわえて、この夏には、ある歴史雑誌にも記事が掲載される予定となっている。秋からは、米国に次いで通信諜報関係の資料が豊富であるイギリスにおける資料収集にシフトし、英国立公文書館(旧Public Records Office、現National Archives)にて「対日暗号情報」(通称、BJシリーズ)の調査を行った。しかし、より肝心なブレッチリー・パーク(Bletchley Park)にある国立暗号資料センター(National Codes Centre)での調査はまだ手付かずの状況であり、来年度に持ち越されることになる。なお、2月と3月には、集中して研究報告の機会に恵まれ、リーズ、ケンブリッジ、エジンバラ、アバディーン、ノッティングハムの各大学にて研究の途中経過について公表した。
著者
白水 繁彦 中野 克彦 李 里花 城田 愛 野入 直美
出版者
駒澤大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

白水は沖縄系文化的架橋者のストラテジーを分析することにより、彼らが日系等他エスニック集団を準拠集団として文化的表象を構成していることを見出した。中野は中国系とフィリピン系の民族祭が彼らの文化創生に資していることを明らかにした。李は戦前から戦後にかけてコリア系移民の舞踊活動の変化を歴史的に明らかにした。城田はハワイ、沖縄、福岡における障がい児・者のための芸術療法の現場にて参与観察を実施し、各地域での特徴点と共通点および民族芸術療法の可能性と課題の検討を行った。野入はアメラジアンと帰米2世のナラティブ分析を通じて、ハワイの“ローカル”の構築とディアスポラとの相互行為との関連を検討した。
著者
足立 崇
出版者
大阪産業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

書院志や地方志に見られる詩や文をとおして、嶽麓書院と背後の嶽麓山との関係について考察した。嶽麓山に登る文人たちは、飛来石において聖なる衡山を拝するとともにその風景によって開放されていた。また禹碑の前に立っては、いにしえの聖帝に想いをはせていた。文人たちは嶽麓山において、空間的、時間的に遠くの聖なるものを自らの近くに感じていたといえる。嶽麓山はそのように聖なるものを分有する山として、嶽麓書院の背後に意味を与えていたことを明らかにした。
著者
内藤 克彦 水野 幸男 林 和彦 山ノ井 基臣
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

日本およびメキシコにおける避雷器適用による電力供給の高信頼化を図るために、両国の研究者が共同し、送電線用避雷器設置効果のシミュレーション、変電所用避雷器の人工汚損実験などを実施した。具体的成果を以下にまとめる。1.メキシコ首都電力電灯公社および国家電力庁を訪問し、雷事故および避雷器に関して討論・調査を行った。雷事故記録に関する資料を入手するとともに、400-kV変電所などにおいて避雷器の設置状況の実地調査を実施した。2.4回線併架送電線を対象とし、避雷器の設置個数・場所と避雷効果との関連をEMTP(過渡現象解析プログラム)を用いたシミュレーションにより評価した。避雷器の設置個数が多いほど効果的ではあるが経済性も含めた検討が必要であること、同じ設置個数の場合には効果的な設置場所があること、がわかった。また、接地抵抗や雷道インピーダンスに関する評価も実施した。3.変電所用避雷器の人工汚損試験を実験室で行い、避雷器がい管の抵抗を8つの部分に分けて抵抗の時間変化を測定した。避雷器表面は全体が時間とともに一様に乾燥して行くのではなく、ある部分のみが乾燥し、他の部分は湿潤したままであることがわかった。4.前項の試験結果を基に避雷器表面抵抗の時間変化を数式で表わし、避雷器の物理・数学モデルを構築して避雷器表面および内部素子の電位・温度分布の時間変化をシミュレーションにより求めた。表面が乾燥する部分の分担電圧がかなり大きくなるが、素子損傷に至るほどの素子温度は上昇しないことがわかった。また、がい管と内部素子との間の放電発生を想定しても、素子損傷には至らないことがわかった。5.実験室で避雷器碍管表面の電位分布を実測する方法を調査・検討し、ポッケルス効果を利用した光電界センサが適しているとの結論に達した。発・受光回路の設計・製作をして動作を確認した。
著者
玉井 由樹 西澤 昭夫
出版者
福山市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、東日本大震災で被災した中小企業の再建過程において疑似エクイティ型クラウドファンディングがどのような役割を果たしえるのか、その機能を明らかにすることである。本研究では主に以下の2点を実施した。第1に、クラウドファンディングに関する既存研究の整理、検討を通じて、定義、分類、分析枠組みを提示した。第2に、事例研究調査を通じて得られた定性分析を行い、震災時におけるクラウドファンディングの機能、資金調達企業に与えた影響、出資者の出資目的について明らかにした。