著者
有山 啓之 FRANSEN Charles H. J. M. 中島 広喜
出版者
大阪市立自然史博物館
雑誌
大阪市立自然史博物館研究報告 = Bulletin of the Osaka Museum of Natural History
巻号頁・発行日
vol.75, pp.1-14, 2021-03-31

トゲシャコ Harpiosquilla harpax (de Haan, 1844) は本邦から記載された口脚目の1種で,日本から はよく似た H. japonica Manning, 1969も記載されている.大阪湾と紀伊水道産の標本を正確に同定する ため,45個体について形態と色彩を詳細に観察した.タイプ標本との比較により今回の標本はトゲシャ コと同定され,H. japonicaは形態的特徴が合致しタイプ産地が紀伊水道に含まれることからトゲシャ コの新参異名となることが分かった.本種は顕著な突起を欠く額板と長さが幅よりも大きい尾節で特 徴付けられ,本邦以外に台湾,中国,ベトナム,ニュ-カレドニアとオーストラリアから記録されて いる.沖縄本島産のトゲシャコ属の標本を調べたところ,額板に突起を持つものが含まれ,その尾節 の長さは幅とほぼ同じであった.同様の特徴を持つ標本はインド・西太平洋の各地から記録されトゲ シャコに誤同定されてきたが,それらの中には複数種が混在する可能性があるため,沖縄本島産の種 名は決定できなかった.
著者
安木 新一郎
出版者
函館大学
雑誌
函館大学論究 (ISSN:02866137)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.11-32, 2020-10

「森の民」の中には集団名がその居住する河川名によるものがあり、モンゴル高原と同じく、チョルゲ(漢語では路)という流域ごとに集団を把握するという統治手法が採られていたことがわかる。また、地名をテュルク語で表しており、シベリア統治においてリンガフランカ(族際共通語)、あるいは行政用にテュルク語が使われていたか、もしくはサモエード語話者のテュルク語への移行が見られる。さらに、ジョチ朝・シビル国の影響はエニセイ河中下流域にまで及んでおり、のちにロシアはシビル国が利用してきたイルティシュ、オビ、エニセイ河流域の既存の河川網を伝って侵略し、各地でヤサク(毛皮税)を取り立てることができたと考えられる。参考書や資料集に載せられたモンゴル帝国の版図を表す地図では、元朝やジョチ朝の範囲がシベリアの真ん中あたりまでとなっているものが多い。しかしながら、『元朝秘史』の記述を前提とするならば、14 世紀第1 四半期の元朝の版図はエニセイ河とアンガラ河の合流域より南までで、西シベリアおよびエニセイ河口域にいたる北極圏はジョチ朝の版図となる。
著者
藤野 清次
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.6(2002-CH-057), pp.73-80, 2003-01-24

ベクトル解析において,記号∇はHamiltonの演算子またはナブラと呼ばれ,スカラー場とベクトル場を対応づけるベクトル微分演算子である,ことはよく知られている.しかし,一対何故ナブラと呼ばれるのか十分わかっていないように思われる.そこで,本研究では,ナブラの語源に溯りその後の歴史を辿りながら,記号∇とその呼び名ナブラが徐々に定着した経緯について述べる.
著者
青田 寿美
出版者
青田寿美
雑誌
国文学研究資料館 2014年6月 特設コーナー 蔵書印の愉しみ
巻号頁・発行日
pp.1-5, 2014-06-13

平成26年6月13日~7月10日 、国文学研究資料館通常展示特設コーナーにて開催された「蔵書印の愉しみ」の展示リーフレット。平成24年に公開を開始したNIJL「蔵書印データベース」作成過程で知り得た印顆の中には、従来の印譜類に採録されていない印影や印主も少なくない。今回の展示では、これまで陽の当たることのなかった蔵書印を中心にとりあげ、印影とその背景にある様々な情報を“読む”ことの愉しみを伝えるべく、以下の4つのテーマで構成した。〈東京大学附属図書館移管資料の蔵書印〉〈印影あれこれ〉〈書癖と印癖〉〈蔵書への思い ―印影を“読む”〉巻末に出品目録を附す。
著者
中村 聡史 鈴木 正明 小松 孝徳
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.2599-2609, 2016-12-15

綺麗な文字を書くということに日本人の多くは興味を持っていると考えられる.さて,綺麗な文字とはどのような文字だろうか?本研究では,人の手書き文字をフーリエ級数展開によって数式化し,その式の平均を計算することによって,平均的な文字を生成することを可能とした.また,その平均文字を利用した実験により,実際に書いた文字よりユーザの平均的な文字が高く評価されること,ユーザの平均文字より全体としての平均文字が高く評価されることを明らかにした.さらに,ほとんどの人が自身の文字を高く評価する傾向があることも明らかにした.
著者
大澤 弘典 H. OHSAWA
出版者
東京理科大学
雑誌
理学専攻科雑誌 (ISSN:02864487)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.6-10, 1996-12-14

生徒に現実場面を基にした問題解決の体験をさせるために、陸上競技のリレー場面を取り上げた。生徒自身でデータを抽出し、そのデータから回帰線を予想・判断させた。その過程でグラフ電卓を問題解決の道具として利用した。また、総合的に生徒の学習を捉え、数学の授業に限らず他教科(体育)との合科として指導展開した。その結果、(1)グラフ電卓を利用することにより、扱いの困難であった現実場面問題の教材化が、例えば関数的な内容において、中学生(3年)に対しても可能である。(2)生徒の情意面では、単に数学の有用性の感得・体感に留まらず、原題材への再検討や新たな問題抽出の意識の高まりが少なからず発生する。(3)合科的授業展開により、問題解決の有機的な効率化が図れる等が明かになった。
著者
丹治 光浩 Mitsuhiro TANJI 花園大学社会福祉学部 THE FACULTY OF SOCIAL WELFARE HANAZONO UNIVERSITY
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-11,

スタートレックとは、22~24世紀の宇宙を舞台にした冒険物語である。その魅力は、最新の宇宙論を取り入れたリアルな未来世界の構築に止まらず、登場人物が織り成す人間関係や精神哲学にあることはいうまでもない。一般に芸術作品には作者の個人的な心理が反映されると同時に、さまざまな形で現実社会が反映されることが少なくない。たとえば、スタートレックにおいて人類が出会うさまざまな異星人は我々人間の一面をデフォルメして表現されたものであり、人類と異星人との間に生じるさまざまな誤解や葛藤は、そのまま現代社会における国家間の対立や人種問題の反映と考えることができる。本論では、臨床心理学的視点からTNG第9話を心の構造、TNG第79話を児童虐待、TNG第111話をPTSDとして解釈した。映画「GENERATION」は対象喪失と喪の作業として解釈し、平行宇宙はユング心理学における「影」として解釈した。そして、ボーグは無意識、ボーグドローンから人間世界への再適応は精神疾患の治療プロセスとして解釈した。