著者
藤井 智康
出版者
日本水文科学会
雑誌
日本水文科学会誌 (ISSN:13429612)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.107-118, 2017-08-28 (Released:2017-09-20)
参考文献数
18
被引用文献数
3 4

大気および表面海水中の二酸化炭素(CO2)の長期的な動態を明らかにするために,2012年および2014年の8月~11月に大阪湾において連続測定を行った。表面海水の水温,溶存酸素濃度(DO), pHおよび大気中のCO2濃度を大阪湾の各地点で連続測定した。海水の二酸化炭素分圧(pCO2)は,測定されたpHと全アルカリ度のデータからCDIACが提供するCO2SYSを使って計算した。大気–海水間のCO2フラックス(放出・吸収量)は,連続測定から得られたデータと神戸空港で測定された風速データを用いて計算した。結果として,夏季の成層期では,CO2吸収フラックスが高く,大気CO2濃度は低かった。CO2フラックスは,日中の光合成と夜間の分解によって大きく日変化していた。この期間のCO2吸収フラックスの平均値は,0.09 g-C m-2 d-1,大気CO2濃度は397.7 ppmであった。一方,成層が消滅する秋季においては,CO2吸収フラックスの平均値は,-0.04 g-C m-2 d-1,大気CO2濃度は429.9 ppmであった。夏季には大気CO2は海水に吸収され,秋季には表面海水のCO2が大気へ放出するため,大気CO2は秋季が高い値となった。したがって,大気CO2濃度は,大気–海水間のCO2フラックスによって大きく変化する。

2 0 0 0 OA 古易断時言

著者
新井白蛾 著
出版者
亀谷竹二
巻号頁・発行日
vol.巻3,4, 1888

2 0 0 0 OA 古易断時言

著者
新井白蛾 著
出版者
亀谷竹二
巻号頁・発行日
vol.巻1,2, 1888
出版者
兵庫県立人と自然の博物館
雑誌
人と自然 (ISSN:09181725)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-11, 2007

1. 端午の節句に供えられる全国のかしわもち,ちまきについて,利用植物,もちの名称,葉の利用形態,もちの種類などの調査を文献や聞き取りによって行った.2. 46都府県よりかしわもち型224地点,ちまき型200地点の情報が得られた.3. かしわもち型の利用植物は17種類で,サルトリイバラ(127)がもっとも多く,カシワ(57),ホオノキ(7),ミョウガ(7),ナラガシワ(5),コナラ(4)であった.サルトリイバラの利用は西日本に多いが,佐渡や関東地方にも認められた.カシワは東京を中心とした関東地方で利用されていた.4. ちまき型の利用植物は21種類で,ササ類(108)がもっとも多く,ヨシ(28),ススキ(22),タケ類(14),マコモ(8),ゲットウ(7),トチノキ(4),ナラガシワ(4)であった.裏日本側ではササ類,表日本側ではヨシ,ススキ,マコモ,南九州ではタケ類,九州南端から琉球列島ではゲットウがよく利用されていた.5. カシワを除く節句もちの利用植物は,各々の地域の里地・里山景観を構成するノイバラクラス,コナラ-イヌシデ群団,アカマツ群団,ヨシクラス,ススキクラスなどの代表的な構成種であり,きわめて身近な植物であった.カシワの利用は17世紀に江戸で始まったが,その拡大は20世紀初頭も関東周辺で止まっていた.その要因として里地・里山の植物ではないカシワの入手が困難なためと考えられた.
出版者
[製作者不明]
巻号頁・発行日
vol.2, 1800
著者
福島 由衣 厳島 行雄
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.407-422, 2018 (Released:2020-03-15)
参考文献数
48

After an eyewitness undergoes the identification procedure, giving feedback (e.g., “Good, you identified the suspect”) regarding the accuracy of the identification inflates the eyewitness’s confidence in the identification, regardless of its accuracy. This phenomenon is called the postidentification feedback effect (PIFE) (Wells & Bradfield, 1998). The PIFE affects the eyewitness’s confidence, how good was the eyewitness’s view of the culprit, and the eyewitness’s willingness to testify at trial. An eyewitness’s high confidence in an identification is perceived as an indicator of its accuracy. Therefore, judges and lay-judges who hear the testimony of witnesses affected by PIFE may overestimate its accuracy, which may lead to a wrongful conviction. For approximately 20 years since the report of Wells and Bradfield (1998), substantial research has demonstrated this effect. In this paper, we reviewed the research and categorized the factors that cause PIFE and its nature. The mechanism responsible for PIFE is also addressed. We also provide some considerations and discuss the future direction of PIFE research.
出版者
兵庫県立人と自然の博物館
雑誌
人と自然 (ISSN:09181725)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.127-150, 2007

日本の食生活全集編集委員会(1984 ~ 1992e)などの文献および聞き取り調査によって,大正末期から昭和初期における植物の葉を包装用材料,食器あるいは調理時の下敷きなどに利用するカシワモチやチマキなどの食物の地域名,利用植物名,材料などの調査を行った.その結果,青森県から沖縄県に至る45 都府県よりカシワモチ,チマキなどに関する512 の情報を得ることができた.これらの情報を一覧表としてまとめ,伝統的食文化の保存,継続,復活のための基礎資料として報告した.
著者
河本 大地 吉田 寛 中谷 佳子 河原 和之
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 = Bulletin of Teacher Education Center for the Future Generation (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.177-188, 2021-03-31

本稿では、COVID-19 (新型コロナウイルス感染症) の世界的・全国的拡大による学校教育への影響をふまえた、地域学習 (郷土学習) の在り方を検討する。2020年7月19日に、「新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) とESD地域学習―『Withコロナ』の経験を共有し『Postコロナ』に活かそう―」をテーマに、Zoomを用いたオンラインシンポジウムを企画実施した。本稿ではまず、このシンポジウムの開催経緯と内容、実践報告を示す。そのうえで、シンポジウム内でおこなわれた議論および開催後の参加者アンケートをもとに、COVID-19の流行の経験をふまえた今後の地域学習の在り方を検討する。結果は3つに大別できる。第一に、地域をめぐるフィールドワークは、地域のリアルな状況を把握するうえで重要であり、関係者の理解を得たうえで積極的に実施する必要がある。第二に、オンライン環境の活用可能性が増していることは地域学習にとって好機になる。第三に、学びの対象としてのコロナ禍が加わった。ローカルな地域の様々な要素とグローバルな要素がリンクしていること、社会構造や政治が私たちの行く末を大きく左右することが実感できる。以上を組み合わせることで、地域学習を通じて、学習者は持続可能な社会の構築を自分事にできる可能性がある。
著者
岡崎 勝世
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.33-89, 2017

はじめに第1章 近代教育体制確立期における世界史教育(1886、明治19~1893、明治26)1.中学校令(1886、明治19)と世界史教育2.帝国大学と史学科の発足3.天野為之『萬國歴史』(1887、明治20) ―初期文明史型万国史―4.スウィントン『世界史概説』と木村一歩『萬國歴史』(1891、明治24)5.文明史型万国史教科書の二つのタイプ6.中国史の革新 (以上、前号)第2章 近代教育体制整備期における世界史教育(1894、明治27~1902、明治35)1.「完成期文明史型万国史」2.国史・東洋史・西洋史「三分科制」の提起3.「官学アカデミズム史学」の形成とドイツ近代歴史学4.万国史教科書の消滅と東洋史教科書、西洋史教科書の分立へ (本号)おわりに
著者
三好 準之助
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.21-50, 2014-03

1.「はい」とsí の辞書的なデータ 1.1.現代語のデータ:単一語辞書の場合 1.2.現代語のデータ:二言語辞書の場合 1.3.それらの語源的データ2.「はい」関連の研究について 2.1.相づちに関する研究 2.2.「はい」の用法 2.3.相づちの国際比較 2.4.日本語の否定疑問文への応答について3.sí の用法について 3.1.辞書的な情報 3.2.規範文法でのsí の使い方 3.3.語用論から見たsí の使い方4.対応と結論 4.1.「はい」の用法とsí との対応 4.2.sí の用法と「はい」との対応 4.3.結論注参考文献
著者
上野 修 前川 督雄 本田 学 仁科 エミ 河合 徳枝 大橋 力
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第24回全国大会(2010)
巻号頁・発行日
pp.2H1OS43, 2010 (Released:2018-07-30)

私たちは、現在の地球環境問題を自然だけでなく社会・文化を含む文明の次元で捉えることを試みている。<死生観>に関わる生命モデルを創り、増殖進化における優位性の検討が可能な人工生命研究と、モデルに対応する生命機構の実在性を検証する生命科学実験との相補的アプローチを進めてきた。その有効性を示す例として、不死の生命よりも有死の利他的生命の優越性を示した「プログラムされた自己解体モデル」を紹介する。
著者
伊藤 君男
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.137-146, 2002-04-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
20
被引用文献数
4 3 1

本研究の目的は, ヒューリスティック-システマティック・モデル (Chaiken, 1986) に基づき, 説得的メッセージのヒューリスティック処理とシステマティック処理との加算効果と減弱効果に対する関与の程度の影響を検討するものである。実験は関与 (高・中・低) ・論拠の質 (強・弱) ・説得者の信憑性 (高・低) を操作して行った。実験の結果, 話題への関与が高い場合には, 説得効果は論拠の質のみの影響を受けたのに対して, 話題への関与が中程度の場合には, 論拠の質と説得者の信憑性の影響が共に認められた。また, 話題への関与が低い場合には, 説得効果は説得者の信憑性のみの影響を受けていた。これらの結果より, 高関与はヒューリスティック処理の影響を減弱させる効果を導き, 中関与はヒューリスティック処理とシステマティック処理の加算効果を導くことが示唆された。
著者
片山 俊明
出版者
社団法人 可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.40, no.156, pp.19-24, 2020

生命科学・医科学の分野では多数の公共データベースが公開されているが、ライフサイエンス統合データベースセンターではこれらを統合的に利用するための技術開発を進めており、セマンティック・ウェブ技術を使ったデータ統合を行ってきた。セマンティック・ウェブではデータがグラフ構造で繋がっているが、本稿ではそのデータモデルResource Description Framework (RDF)、検索のためのSPARQL Protocol and RDF Query Language (SPARQL)、SPARQL検索の結果をREST API化するSPARQListを概説し、RDF/SPARQLを用いて構築した統合ゲノムデータベースTogoGenomeとその可視化モジュールTogoStanzaを紹介する。さらに、汎用化したMetaStanzaによる任意のSPARQLの検索結果の可視化と、可視化の際に必要なd3spraql.jsによるデータの形式変換および、現在利用可能な生命科学・医科学分野のRDFデータセットについて解説した。
著者
岩船 昌起
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

<b>【はじめに】</b>山での遭難事故は,①事故者(本人・集団)の要因(体力,技術,知識,判断力,疲労,人間関係や規約,装備,服装等),②自然環境等の外的要因(地形・地質,気象の季節変動・日変動,登山路面を中心とした事故者近辺の状況,落石・雪崩・噴石・動物襲撃等の突発的な「物理的外力」等),③両方を兼ねる要因があり,複合的に相互作用して発生する(青山2004,小林2015等)。従って,山での遭難事故の発生理由を考察するには,これらの要因にかかわる時空間的に整理された具体的な記録を収集・分析する必要がある。<br>発表者は,遭難事故等の事例収集を2009年から実施している。本研究では,霧島山高千穂峰で2008年8月22日に生じた遭難事故(アクシデント,レベル4,腰椎破裂骨折等)について,聞き取りと現地調査等からその実態をパーソナル・スケールで明らかにする。<br><b>【高千穂峰</b><b>2008</b><b>年</b><b>8</b><b>月</b><b>22</b><b>日遭難事故】</b>事故者(息子)A,父B,母Cに2010年10月18日に会い,2時間弱聞き取り調査した。その証言および現地視察から遭難事故時の行動の前半を,以下に記す。<br>&nbsp;前日21日に,県外から訪れた家族4人(A,B,C,娘D)は霧島市隼人町日当山の温泉旅館Yに宿泊し,当日22日にチェックアウトした。「暖かく,朝には晴れていた」が,「午後の天気予報は雨」。「(家族の)山の経験は,上高地を数時間歩いた経験1回のみ」。Aは「当時高1で,テニスを小5から週5日〔2時間半/日〕」行う運動習慣があり,「中1から片道11~12kmの自転車通学」していた。一方,娘Dは「当時小6で,部活等での運動経験なし」であった。父Bは「韓国岳に登ることも考えたが,(『天逆鉾をみたい』Aの望みを叶えたく,)高千穂峰でも1時間半くらいで行けるだろう」と考え,登山口がある高千穂河原に向った。<br>「11~11時半にビジターセンター脇の鳥居(標高約970m)から登り始めた」。「息子に,リュックを持たせた。中には,お茶〔500ml〕,アメ〔約100包〕,貴重品,帽子,カメラ,ビジターセンターからもらった地図,母Cの携帯電話が入っていた」。(地形的)森林限界(標高約1150m)から上がガレ場となり,CやDが滑って思うように上がれなかったが,Aは「余裕があり,頂上の剣(天逆鉾)をみたいと思っていた」。「12時過ぎ」で(御鉢の火口縁(標高約1330m)まで達しない)「時々滑る」場所にいた。「前を夫婦(BとC)で歩き」,「天候もあやし」かった。「12時15分くらい」に,Aは,家族と別れて先に山頂に向かった。Bは「木がないから見失わないだろう」「背中が見えていたから(大丈夫)」と考えていた。「12時30分頃」に,「急に霧が出てきて,湿気を感じ」,「(Aがみえなくなって)まずい」と思った。<br>「12時35分ころ」に,CとDは登山を諦めて「分かれて先に下山し始め」,Bは「ガレ場を御鉢の方に上がっていった」。しばらくしてAがBの携帯電話に「道に迷った」と連絡する。Bによると「後から聞くと、(Aは頂上に至る前に)御鉢の火口縁を一周したようだった」。「行き過ぎたところで、電話を掛けた様子だった」。BはAに「『分岐(標高約1420m)で戻ってこい』と伝えようと思い,電話をしたがつながらなかった」。そこで「上に息子がいると思い,仕方なく登っていった」。12時50分頃にAは「すべりやすいところで大雨」に遭った。「道を2・3回折れて登り切る」と,「〔山頂付近と思われる〕整備されたところ」に至った。周囲は「息ができないほどの大粒の雨」で「雷がすごく」,「雷というか、白くて光が見えない」状態だった。Bも「雷で、僕(B)も息子(A)も死ぬかもしれない」と思い,「冷静に判断できない状態」だった。そして,電話でAに「おりる。こわい。お前も降りろ」「御鉢の途中、滑るから気をつけろ」と伝えて下山した。途中の御鉢のガレ場では「〔土石流のような〕ものすごい川」で「大雨がすごく,視界があまりなかった」。<br>Aは「(下り)で来た道を戻ろう」と思ったが、「左右(≒方向)が分からなかった」。「視界1m程度」で周りがみえず,「御鉢のガレ場以上に滑る」状態であった。Aの靴はテニスシューズ。「横に大きな岩をみながら、2・3回折れて降りた後、目印がなくなった」が,そのまま下りた。「(草本に覆われた長さ1m強高さ数10cmの高まりが連続する)モコモコとした」斜面を下った。「急いで下って,滑り,走り,滑り,走りを繰り返した」。「前が見えずに走った」。「すべって、滑って、宙を飛んで、ドン」。「1回半回って、左足の踵から着地」した。<br>「(着信履歴から)13時10分」に,高千穂河原にほぼ到着した父Bの携帯電話の留守電に「崖から落ちた」「立てない状態、ちょっと休んでから行く」とメッセージを残した。