著者
阿萬 弘行
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

投資家タイプごとに、ニュース情報に対する反応がどのように相違するかを明らかにするために、多種多様な情報ソースへの投資行動の反応を分析した。主な成果として、テレビ報道や企業広告による幅広い投資家層への情報量増加は、取引高を活性化することが示された。これは、投資家の注意力仮説と一致する。得られた結果は、決算などのハードなタイプの企業情報だけでなく、より一般向けのソフトな情報もまた、個人投資家の意思決定に影響を及ぼすという意味で、新たな知見である。
著者
平木 岳人
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

アルミニウム産業の持続可能な発展を指向し、アルミニウムドロス残灰についてその構造的および化学的特性について調査した。そこでは特に、ドロス残灰の簡易アップグレーディング法確立のため、粒径と構成相の関係について明らかにした。ドロス残灰は発生元によらず平均100-200μmの粒径であった。また種類によらず、粒径が大きくなるほど金属アルミニウム含有率は高くなり、窒化物および塩素含有率は低くなる傾向であった。メッシュサイズ200μmのふるいを用いた分離により、効果的に有価な金属アルミニウムを回収しつつ、リサイクルにおいて不純物となりやすい窒化物および塩素含有率を低減可能であることを示した。
著者
星合 泰治
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

我々はモード解析を用いて、金属床上顎顎義歯にはチタン床が最適であると報告した。しかし、まだ異なる支台装置が設置された金属床上顎顎義歯を装着した上顎欠損患者における上顎歯列の振動特性の比較検討は十分に行われていない。本研究は、間接支台装置の設計に着目し、金属床上顎顎義歯の最適設計を明らかにすることを目的とした。研究の結果、モード解析の観点から上顎前歯に設置した間接支台装置は歯列に加わった振動を止めやすくして変位量の大きさも小さく抑えることから、間接支台装置は金属床上顎顎義歯において重要な設計である可能性が高いことが示唆された。今後は症例数を増やし、さらなる検討を行う必要がある。
著者
熊木 俊朗
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度は、昨年度から引き続きモヨロ貝塚資料の調査と分析を行った。調査対象はモヨロ貝塚調査団が過去に調査した資料である。詳細は以下のとおりである。1.東京大学文学部所蔵資料の調査東京大学文学部には、モヨロ貝塚調査団が昭和22・23年に発掘調査を行った際に出土した考古資料が収蔵されている。それらの資料のうち、特に土器について実見・図化・写真撮影を行った。これらの一部についてはすでに図版の浄書や各種属性の統計解析等を行っている。2.昨年度調査データの分析昨年度作成したデータのうち、ガラス乾板のデジタル画像データについては整理と内容の分析をほぼ終了し、CD-Rにデータベース化した。また、函館市立博物館・北海道立北方民族博物館の収蔵資料のデータについても、土器図版の浄書や各種属性の統計解析等のデータ分析を行い、考古学的解釈のための基礎データを整えた。3.画像資料の解析モヨロ貝塚の地形や遺構に関する過去の画像データについて、(株)タナカコンサルタントに画像解析の協力を依頼し、研究代表者立ち会いのもと画像から平面図データを作成した。これらの平面図は、遺跡・遺構の立地や分布を分析するための基礎データとして活用が期待される。
著者
実山 豊
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

ダイズの湿害は農業上重要な障害だが、その発生メカニズムには不明な点が多い。本研究では、水耕栽培法により過湿土壌の一様態「低酸素」を人工的に再現し、経験的に圃場耐湿性が既知な多種ダイズ品種を1ヶ月間栽培、その反応性を詳細に調査した。その結果、低酸素反応性と圃場耐湿性とに密接な関係性を検出し、湿害発生の主な理由の1つが低酸素であることを確認した。更に圃場耐湿性が弱い品種の中には、低酸素環境によって葉面積や細根の減少、根における吸水能力の減衰などの特徴的な反応を見出した。
著者
相葉 佳洋
出版者
独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

日本人PBCの新規疾患感受性遺伝子として同定されたTL1Aは、PBC患者の血中・肝局所において顕著に増加していた。血中TL1Aは、治療薬であるウルソデオキシコール酸によりPBC非進行群において有意に減少するが、PBC進行群では持続高値であることが明らかとなった。これらの結果は、TL1AがPBC、特に進行群患者において新たな治療標的である可能性を示唆する。また、in vitroとin vivoの解析から、単球、マクロファージ、胆管上皮細胞から産生されるTL1Aは直接的に胆管障害に関与するよりも、Tリンパ球を介しPBCの病態形成に関与する可能性が示唆された。
著者
福原 史子 奥山 清子 蜂谷 里香 岡本 純子
出版者
ノートルダム清心女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

コスミック教育は、あらゆる事物は宇宙の一部で、一つの全体的調和を形成するよう相互に結びついていることを発達段階に応じて学習、認識するよう促す教育である。まず、研究の第一人者C.M.トルードゥーの業績研究をもとに、今日的意義をキャリア教育やESDと関連づけて検討した。加えて、幼稚園における2年間の実践研究から、命の誕生や持続のために必要な要素を感じ、興味・関心をもち、コミュニケーションを図りながら協同して学び合えるコスミック教育の実践方法を導きだした。
著者
富田 晃彦
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

園児・保育者・保護者に宇宙への興味、そして科学的な見方・考え方をもっと持って欲しいという目的で、保育園での「天文あそび」活動を行った。その結果、宇宙の話は園での保育活動に取り入れられるものであり、考えを言葉にする、それを人とやり取りするということを含め、科学的な見方・考え方を園児に育てるのに有効であることがわかった。宇宙が対象であるが、都市域、昼間、部屋内でも十分な活動が展開できることも示した。
著者
高橋 仁大
出版者
鹿屋体育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は.テニスの電子スコアブックを用いた新しいパフォーマンス評価法の開発を目的とした.2007年度は各種データとゲーム結果との関連を検討した.その結果,プレーの高速化や時間的要素がプレーヤー個人の特徴を示していることを明らかにした.2008年度はスコアブックの機能追加として時間的要素と最終ショットの頻度を出力するプログラムを開発した.これにより,試合修了後即座にパフォーマンスの結果を出力することが可能となった.
著者
奥田 晶彦 折茂 彰
出版者
埼玉医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

F9あるいはP19細胞は、哺乳動物(マウス)の発生初期を反映する培養細胞であり、これらの細胞にレチノイン酸等を加えることにより、細胞が分化し、神経あるいは心筋を成す細胞等に変化させることができる。それ故、これらの細胞は哺乳動物の初期発生を研究する上でよいモデルシステムとなっている。また、これらの細胞を用いた研究から転写に関して興味深い報告が数多く成されている。その1つがレチノインレセプター(RAR)β2遺伝子の発現に関するものである。この遺伝子のプロモーターは、RAR認識配列を2つ有しており、この遺伝子の発現は自分自身の遺伝子産物により自己調節されている。但し、この遺伝子の発現にはRARだけでは十分ではなく、初期胚特異的に発現する転写補助因子が必要であることが実験的に証明されている。私は、1998年に初期胚特異的転写補助因子UTF1をクローン化した。UTF1のアミノ酸配列を注意深く見てみると、種保存領域の中にLxxLLモチーフが2つ存在していることがわかった。そこで、私はUTF1が、上記の初期胚特異的転写補助因子に相当するのではないかと考え研究を始めた。まず、COS細胞への遺伝子導入実験によりUTF1が確かにRARβ2遺伝子のプロモーターを活性化する能力をもつタンパク質であることがわかった。且つ、この活性化は、プロモーター上に存在するRAR認識配列を介したものであることが確認された。また、GSTプルダウンアッセイによりUTF1とRARが直接結合することが確認された。但し、この結合は、レチノイン酸及びRARのAF2領域に非依存性であることが明らかになり、TIF-2等のステロイドホルモンレセプター補助因子とは、異なる様式で結合することがわかった。
著者
早尾 貴紀
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

ヨーロッパ近代思想史上の最大の課題とも言える国民国家/多民族共存の問題が、現在のパレスチナ/イスラエルに転移しているという認識、つまり、ユダヤ人問題の外部化によってユダヤ人国家イスラエルが誕生し、同にパレスチナ人が難民化したという認識から、二つの課題に取り組み発表論文を執筆した。一つは、パレスチナとイスラエルのあいだで際限なく繰り広げられる暴力(テロリズムもその一つ)の所在を突き止めること。パレスチナ/イスラエルにおける暴力は、端的に、相手の存在を否定し、自らの存在を確保するために行なわれる。だが、相手との対称性をもつその論理は無限に反転し、「暴力の連鎖」は止まることがなくなる。また、それぞれの暴力は同時に自らの存立基盤をも崩壊していく。それに対して、たんに絶対平和主義に立つのでもなく、またどっちもどっちという相対主義の立場に立つのでもない、暴力批判の倫理のあり方を考察した。もう一つが、ユダヤ人とアラブ人の、イスラエルとパレスチナの共存の枠組みを探ること。一般に宗教対立と思われがちなパレスチナ/イスラエルの民族問題の解決は、ヨーロッパ近代的な理念である、世俗国家・民主国家によって得られるのか。あるいは、それとは異なる国家原理はありうるのか。これまでの歴史のなかで実際に謳われたいくつかの国家理念(それには、二民族が一つの国家の中で共存をすることを目指す「バイナショナリズム思想」も含まれる)を検討しながら、それらがどれだけの現実可能性と批判力をもつのかを検討した。
著者
鈴木 拓央
出版者
横浜国立大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

本研究では、外出時に薬の飲み忘れや飲み過ぎを検知するため、スマートフォンに内蔵されたセンサーを使用して食事や睡眠の未来の状態を予測するアルゴリズムを開発した。加速度センサーやジャイロセンサー、環境光センサー、タッチパネル等で計測したデータは、主成分分析により互いに相関のない特徴データへ変換したあと、ベイジアンネットワークへ入力した。しかし、目標とした正答率70%を達成することはできず、上記のセンサーだけでは食事の状態を正確に予測できないことを明らかにした。
著者
串田 淳一
出版者
広島市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

Differential Evolution (DE)は進化計算に分類される,個体群による確率的な多点探索手法であり,実数値関数を対象とした最適化手法である.本研究では,DEの組合せ最適化への適用を目的とし,決定変数が離散値となる問題を扱うためのDEのアルゴリズムを提案する.また,並列コンピューティングに適する進化モデルである島モデルを拡張し,効率的に複数の個体群を進化させるための超多点DEを開発する.勤務表作成問題のベンチマーク問題を用いた数値実験を通して,開発手法が多目的・多重制約性を有するにおいて短時間で実用的な勤務表を作成できることを示す.
著者
嶋田 繭子 荻 朋男
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ヌクレオチド除去修復機構 (NER)は、DNA修復機構の1つで、紫外線により誘発されるDNA損傷の修復に機能する。NERの欠損により発症する遺伝性疾患には、本邦で罹患頻度が高い色素性乾皮症 (XP)や、2015年に指定難病に認定されたコケイン症候群 (CS)などが含まれる。NER欠損性疾患が疑われるが疾患責任遺伝子変異が未確定の症例について解析を実施し、新規の疾患関連因子を同定することを目指した。その中で、2例の興味深い症例を見いだした。
著者
猿渡 洋 鹿野 清宏 戸田 智基 川波 弘道 小野 順貴 宮部 滋樹 牧野 昭二 小山 翔一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では、高次統計量追跡による自律カスタムメイド音声コミュニケーション拡張システムに関して研究を行った。具体的なシステムとして、ブラインド音源分離に基づく両耳補聴システムや声質変換に基づく発声補助システムを開発し、以下の成果が得られた。(1)両耳補聴システムに関しては、高精度かつ高速なブラインド音源分離及び統計的音声強調アルゴリズムを提案し、聴覚印象の不動点を活用した高品質な音声強調システムが実現できた。(2)発声補助システムに関しては、データベース間における発話のミスマッチを許容する声質変換処理を開発した。実環境模擬データベースを用いてその評価を行い、有効性を確認することが出来た。
著者
柴里 弘毅
出版者
熊本高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

振戦とは、筋肉の収縮と弛緩が不随意に繰り返されることにより生じるリズミカルなふるえである。本研究では、振戦患者のQOL向上を目的として、書字アシストシステムを提案する。提案システムは、不随意運動に由来する乱れた筆跡を補正してディスプレイに表示する提示部と、ふるえをペンに伝えないようにする振戦抑制機構で構成される。提示部については、振戦フィルタと描画補完より振戦の影響を軽減するアルゴリズムを提案した。抑制機構については、ペン操作時の運動のモデル化を行い、不随意運動のみを抑制することを目的とした外乱制御手法を考案した。
著者
山岡 由美 安藤 寛美
出版者
岩手県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究で明らかになったことは、在宅勤務を希望する精神障害のある人たちは増加しているが、在宅勤務の対象者としての社会的認知は低く、先駆的な取り組みはあるものの支援の方法については模索段階であると言える。早急の課題として実現可能なことは、在宅就業障害者支援制度における登録支援団体の位置づけを明確にし、少なくとも福祉施設と同等な財源的保障を行うことである。さらに、地域の福祉施設との交通整理の役割を担う機関の必要性である。障害者就業・生活支援センターは、医療、教育、福祉そして雇用に関係する機関の連絡調整および総合的援助を行うものであり、本業務が遂行できるよう機能強化を図ることであろう。
著者
内山 博之
出版者
標茶町立虹別小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

調査地区の1つでもある春国岱では、砂嘴の先端部の付け根に当たる部分が地盤沈下、風波・侵食等の影響により予想より幅広く大きく亀裂して決壊をしていた。今回先端部分へは海水の中に入ってかろうじて対岸へ渡れたが、予想より潮流も速く、今後さらに侵食されることが予想される。護岸工事等の修復についても地理的に工事の難しい場所でもあった。今回、研究目的である風蓮湖岸の塩湿地植物群落の分布や立地環境について湖岸踏査により調査を行った。特に塩湿地植物群落の指標となるアッケシソウ群落を中心に分布状況の把握に努めた。調査地については、ヤリムカシ川、ソウサンベツ川、アッコンベツ川、厚床川、別当賀川、風蓮川等の大きな河川河口部を中心した湖岸を含め、根室海峡から海水が入り込む海の近い湖岸から湖の深部湖岸まで歩いて調査を行った。風蓮湖岸調査を通して海水の入り込む海に近い場所にアッケシソウ群落が多く見られた。また、湖の深部湖岸では、川からの真水流入と塩分濃度が下がるため、アッケシソウ群落は多く見られなかった。アッケシソウ群落は、走古丹付近の砂嘴部の湖側に数多く確認された。また春国岱の第1砂丘、第2砂丘、第3砂丘ともに先端部までアッケシソウ群落が数多く見られた。湖岸のすぐそばまでヨシが来ている地形や潮干満潮での流れの速い湖岸については、特に風蓮湖深部となる風連川左岸やヤウシュベツ川河口域左岸や木村川左岸域についてはアッケシソウ群落を確認することができなかった。その他の主な塩湿地植物群落として別当賀川左岸域はシカギクの大群落、アッコンベツ川右岸ハマシオンの大群落を確認することができた。
著者
角ヶ谷 典幸
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究により、日本が財務報告のコンバージェンスをより慎重に進めてきたのは、会計制度および周辺制度が整備されればされるほど、会計制度とその周辺制度との擦り合わせが必要となるためであること、また近年、日本国内の会計および周辺制度の機能分化――金融商品取引法と会社法、財務報告と課税所得計算、上場企業と中小企業の会計の分化――が促進され議論されるようになったのは、グローバルな要請に機動的に応えるためであったことが明らかにされた。さらに、日本の固有性は、日本の伝統的な会計制度や周辺制度とIFRSやアングロ・アメリカンモデルとの擦り合わせから創出されていることが明らかにされた。
著者
大場 昌子 佐川 和茂 坂野 明子 伊達 雅彦
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ユダヤ系アメリカ人作家がアメリカ社会で注目されるようになった1950年代から21世紀の現代に至るまで、第二次世界大戦中にナチス・ドイツによって引き起こされたユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)が、彼らの小説の中で表現方法を変えながらも、創作上のテーマとして絶え間なく継承されている事実を確認した。さらに、その表現方法の一つとして、ユダヤの伝説上の人造人間である「ゴーレム」が現代作家の創造力をかきたて、ホロコーストの表象として扱われている事実を分析し、図書『ゴーレムの表象』としてまとめた。