著者
梅干野 成央 土本 俊和
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会北陸支部研究報告集 (ISSN:03859622)
巻号頁・発行日
no.47, pp.296-299, 2004-07-17

近世の封建制から中央集権国家を目指した明治維新という近代化の初期装置は、領主であった藩や寺院の解体を図るために神仏分離,版籍奉還,廃藩置県を行った。これらを前提として地租改正が行われた。本論は長野県飯山市小菅に鎮座する小菅神社を事例として、もっぱら神仏分離令を契機とした転換を扱い、これを規定した地域個別の背景を所有の観点から明らかにした。近世後期に小菅神社の支配していた境内地や建物は、村落総体ともいうべき所有のもと置き換えられた。近世の建築遺構の多く残る小菅において、所有権の転換は近世の封建制から中央集権国家に移項した時代の変容を乗り切る一つの建築維持手段であった。

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著者
早坂 義文
出版者
Japanese Academy of Budo
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.55-55, 2013
著者
宮家 準
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.1083-1107, 2005-03

日本の宗教的伝統はこれまで神道、仏教、道教など成立宗教の側から論じられることが多かった。けれども日本人は自己の宗教生活の必要に応じて、これらの諸宗教を適宜にあるいは習合した形でとり入れてきた。民俗宗教はこうした常民の宗教生活を通して日本の宗教的伝統を解明する為に設定した操作概念である。この民俗宗教は自然宗教に淵源をもつ神道と、創唱宗教である仏教、中国の道教、儒教、これらが混淆した習合宗教、さらに日本で成立した修験道、陰陽道、萌芽期の新宗教などが民間宗教者によって常民の宗教生活の要望に応じるような形で唱導され、彼らに受容されたものである。けれどもこれまでの研究では民俗宗教は単に形骸化した残存物と見られがちであった。本論文ではこの民俗宗教の成立と展開に関する先学の研究を特に民間宗教者の活動に関するものを中心に検討した。そして常民の民俗宗教史の中に日本の宗教的伝統の解明の鍵があることを指摘した。
著者
鍵和田 聖子
出版者
東洋英和女学院大学
雑誌
東洋英和大学院紀要 (ISSN:13497715)
巻号頁・発行日
no.1, pp.53-72, 2005

This is a study of mandalas unique to Esoteric Buddhism and the influence they had on religious developments in Japan, especially in terms of movements toward a union of Buddhism and Shintoism. Several sites of esoteric Buddhism are examined, including Koyasan, Hieizan, Kumano, and stone images of the Buddha found in Oita Prefecture. Since ancient times, natural phenomen, especially mountains, were considered as gods or kami in Japan. This polytheistic nature of Shinto agreed with Buddhism, and allowed Japanese to believe that the Buddha could be identified with the Japanese gods.This identification between Buddhist deities and nature influenced the themes portrayed in Buddhist iconography, particularly the mandala. The lack of a sense of the absolute also contributed to change in the construction of mandalas. Furthermore, these "emblems of the other world" were somewhat more malleable in Japan, perhaps because Japanese themselves felt so close to the other world. In was through this indigenization of the mandala that we can see the indigenization of Buddhism, that is the transformation of Buddhism into a Japanese religion.
著者
外川 昌彦
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.25-43, 2006-06

異質な宗教文化の接触や混交は、従来「シンクレティズム」と呼ばれて説明されてきた。日本では「神仏習合」としてなじみのある「シンクレティズム」概念は、しかし宗教学者や人類学者の間で様々な批判にさらされている。本報告では、ベンガル地方の聖者信仰に見られる多元的な宗教実践が構成される条件を明らかにすることで、「シンクレティズム」概念の再検討を試みるものである。具体的には、バングラデシュ東部のモノモホン廟での多元的な宗教的実践のあり方を検討し、聖者廟をめぐる地域社会の多様な言説を検証する。特に、シンクレティックな理念を体現する聖者としてのモノモホンの宗教性を尊重しつつ、同時にイスラームの観点を強調するイスラーム知識人の見解が検討される。これらの分析から、モノモホン廟を中心としたシンクレティックな宗教世界の構成が、一方で信徒による多元的な宗教的実践を可能にする条件を与えると同時に、他方では異なる解釈を通した多元的な言説の生成をも妨げないという意味で、近代のコミュナルな対立とも容易に結びつくことが明らかにされる。
著者
平井 美津子
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.115-122, 2007

日本は歴史や文化の基盤が欧米と大きく異なる。そのため英語で日本を理解してもらうには、文化的背景を加えたわかりやすい説明が必要となるが、このとき特徴的なキーワードが見出される。本稿ではこれらのキーワードを指摘し、例文を提示して文化的背景を織り交ぜながら解説し、それらについて検証する。
著者
編集委員会
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.i-ii, 2007-09-30
著者
菅野 覚明
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.309-332, 2007-09

この論文の狙いは、日本の神話的世界の中に、仏教がどのような径路を経て入り込み、どのような形で定着したのかを明らかにすることにある。神仏習合という現象についての従来の研究は、教義や制度の側面に重点が置かれがちで、信仰者の内面の問題として本質を探究した研究は数少ない。本論文は、人間精神の最深部、すなわち意識と実在との関係において、神と仏の結合が何を意味していたのかを考察する。日本神話に登場する理想的人間は、神と交わる人々である。彼らに共通する特徴は、激しい感情(これは和歌を詠む能力に対応する)と、生への執着(死への恐怖)である。本居宣長は、この特徴を「真心」という概念であらわした。仏教は、神話的人間の内面を、新たな知によって捉え直し、彼らの内面のある部分を深め、またある部分の不足を補うものとして登場した。そのことによって仏教は、神を信仰する精神にとって不可欠なものとして、日本に定着したものと考えられる。
著者
猪口 教行
出版者
近畿大学文芸学部
雑誌
文学・芸術・文化 (ISSN:13445146)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.1-10, 2008-03
著者
古川 利通
出版者
大阪健康福祉短期大学
雑誌
創発 (ISSN:13481576)
巻号頁・発行日
no.8, pp.43-52, 2009-03

明治初年から開始された神仏判然政策は、古代から現代にいたる国民の宗教生活には本質的な影響を及ぼさず、一種の"エピソード"と位置付けられているが、明治の政治神学すなわち近代「祭祀」国家の創造と近代天皇制的「神聖さ」にとっては不可欠な重要な意義を有していた。それは、仏教や神道などの「教団」の在り方に決定的な影響を与えたのみならず、明治近代国家の精神的「機軸」である天皇制を支える皇室祭祀、神社の再編と創建、氏子政策、「大教」政策などを左右した規律であって、国家的虚構である「神社非宗教」システムを生みだすための前提条件であった。