著者
塩塚 大 鵜林尚靖 亀井 靖高
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.631-643, 2012-02-15

プログラマはデバッグに多くの時間を費やす傾向がある.プログラマはエラーの現象をチェックしたり,様々なコード上の箇所を行き来したり,あるいはバグ修正履歴を探索したりして,コードを修正する.このような一連のデバッグ作業を自動化することができれば,他の生産的な作業に時間を割くことができる.本論文では,この問題に対処する方法として,デバッグ支援のための関心事指向推薦システムdcNavi(Debug Concern Navigator)を提案する.dcNaviでは,リポジトリに含まれるプログラム情報やテスト結果,および修正履歴を活用することで,デバッグの関心事に応じた適切なヒントを提供する.本論文では,Eclipseプラグインプロジェクトに関する9つのオープンソースリポジトリを対象に,再利用性の観点からバグ修正履歴に基づいた推薦の有効性についても評価する.Programmers tend to spend a lot of time debugging code. They check the erroneous phenomena, navigate the code, search the past bug fixes, and modify the code. If a sequence of these debug activities can be automated, programmers can use their time for more creative tasks. To deal with this problem, we propose dcNavi (Debug Concern Navigator), a concern-oriented recommendation system for debugging. The dcNavi provides appropriate hints to programmers according to their debug concerns by mining a repository containing not only program information but also test results and program modification history. In this paper, we evaluate the effectiveness of our approach in terms of the reusability of past bug fixes by using nine open source repositories created in the Eclipse plug-in projects.
著者
倉田 尚美
出版者
母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究会
雑誌
母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究 (ISSN:21868379)
巻号頁・発行日
no.8, pp.57-76, 2012-03-31

オーストラリアでは近年の日本人永住者数の上昇にともない、永住者の子女を対象とした継承日本語教育への関心が高まりつつある。本稿ではメルボルン在住の高校・大学レベルの継承日本語話者11名を対象に行ったアンケート結果を主な資料として、彼らの学習ニーズ分析を行った。その結果、4技能の中で特に読み書きの力を伸ばし、また将来、語学力を生かした専門職につけるよう日本語能力を伸ばす必要性があることが明らかになった。また、どの技能においても、フォーマルな場面にふさわしい言語的知識を含めた年齢相応の日本語をマスターし、自信を待って家庭でもアカデミックな場面でも日本語を使えるようになることが期待されていることがわかった。この様なニーズに応えるべく筆者の所属する大学で行ったコースデザイン、またこのコース一期生のコース内容に対する評価を紹介する。
出版者
日経BP社
雑誌
日経レストラン (ISSN:09147845)
巻号頁・発行日
no.364, pp.28-33, 2006-01

経済に明るさが見える2006年は飲食店にとって実り多い年になりそうだが、いくつかの難題にも直面しそう。その対策をなおざりにはできない。 確かに、景気は回復傾向にあり、団塊や団塊ジュニアを中心に、抑圧されてきた消費意欲が解放されるとみられる。高齢者の増加や団塊世代の退職によって、「食の外部化」も進行しそうだ。
著者
安田 浩 小暮 拓世
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3, pp.225-236, 2008-03-01
被引用文献数
1

コンテンツ流通に必須とされる技術にDRM(Digital Rights Management)がある.コンテンツクリエータの創作意欲,プロバイダの事業意欲,コンテンツ消費者の消費意欲,等を共に満足するコンテンツ流通環境の確立には,DRM技術は不可欠である.一方,コンテンツの不正コピー事例は後を絶たず,プロバイダ事業者はその都度対策を迫られDRM技術を強化してきた.本稿は,比較的初期にDRMを立ち上げたDVDを例に,実用DRM技術を解説し,次いで,急速に普及した携帯電話の標準DRMであるOMA DRMについて言及し,更に蓄積メディアのDRMをSDカードを例にCPRM技術内容を記述した.最近のDRM標準化活動の状況については,国際標準化活動の例としてMPEG-21を中心にIPMP技術を解説し,デファクト標準化活動の例では業界主導DRMとしてコーラルを取り上げ,そのポイントどなる技術を解説した.DRMは,いまだ発展途上の技術であり,またその特殊性(秘匿性)から,公開情報が少ない.本稿ではできるだけ重点技術内容を取り上げ,公開情報の範囲で平易に解説し,最後にDRMの現状課題と将来展望について触れる.
著者
山田 知明
出版者
立正大学
雑誌
経済学季報 (ISSN:02883457)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.63-95, 2006-12

本稿の目的は,日本における公的年金制度によって引き起こされる「世代間」所得再分配効果と「世代内」所得再分配政策が,消費格差及び社会厚生にどのような影響を与えるかを,動学一般均衡モデルに基づいて,シミュレーションを用いて明らかにすることである.本論文の特徴は以下の4点である.(1) Abe and Yamada (2006)に基づいて恒常的所得ショックを設定し,日本経済の所得格差をカリブレートする.(2)基礎年金と厚生年金保険の二階建て構造を,緩衝在庫貯蓄モデルの下で,モデル化する.(3)政策シミュレーションから,基礎年金及び厚生年金保険が対数消費分散及び社会厚生に与える影響を詳細に分析する.(4)公的年金による世代間所得再分配だけでなく,同一世代内所得再分配政策の効果に関しても分析を行う.厚生年金保険料の変更は年齢・消費プロファイルを大幅に変更しその結果として全世代の対数消費分散を拡大させるが,世代内の消費格差には大きな影響をもたらさない.一方,基礎年金の変更は,全世代の消費格差への影響は非常に限定的であるが,同一世代内の消費格差を大きく低下させる事が明らかになった.また,シンプルな世代内再分配政策は全世代の家計の平均的な効用を高める事を示す.
著者
西橋 幹俊
出版者
プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会研究発表大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2001, pp.156-161, 2001-03-12

著書出版もプロジェクトの一種である. 本稿では, 最近出版された二つの著作の成立過程に着目し, それらが仕様学のあるスキームの適用例とみなされることを示しつつ, それらの対比の中で, プロジェクトマネジメントの知識体系や諸科学分野の知識体系とは独立な仕様学の意義を浮き彫りにする. また, このスキームがきわめて一般的でありながら, 現実的にかなり有効なツールとなりうるであろうことを示すと同時に, ある種「素朴な」疑問・設問がプロジェクトの達成に対して持つ現代的意義について考察する. また, ここで用いた例に登場する三者の役割を考察した上で, 将来の価値連鎖社会を垣間見る.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1332, pp.178-180, 2006-03-13

前日までの寒気が緩み、春を思わせる日差しが広がった2月6日午後。東京都中央区新川の東京住友ツインビル4階に、コニカミノルタフォトイメージング社長、宮地剛の姿があった。 1月19日、コニカミノルタホールディングスはカメラとフィルムという2つの創業事業からの撤退を発表した。宮地はその事業を担当する事業会社のトップだ。 「どうにか、時間を作ってもらえないか」。
著者
後藤 良造
出版者
化学史学会
雑誌
化学史研究 (ISSN:03869512)
巻号頁・発行日
no.12, pp.p20-30, 1980-03
被引用文献数
1
著者
後藤 良造
出版者
化学史学会
雑誌
化学史研究 (ISSN:03869512)
巻号頁・発行日
no.13, pp.p14-36, 1980-07
著者
加藤 光男
出版者
日経BP社
雑誌
日経アーキテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.838, pp.10-16, 2006-12-25

東京・三田。第一京浜道路に面したビルの背後には、都心とは思えないほどの豊かな緑の丘が広がる。外壁は赤のテラコッタタイル。住友不動産が作成したパンフレットには、「庭園1haの赤い広告塔」の文字が躍る。これらが三田ツインビル西館の設計コンセプトを物語る。
著者
河野 一郎 禰占 哲郎 上島 隆秀 高杉 紳一郎 岩本 幸英 岡田 修司 根岸 玲子 鈴木 理司 河村 吉章 石井 櫻子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.E0271-E0271, 2004

【目的】老人福祉施設では、利用者の増加に伴いそのニーズも多様化しており、独自のサービスを工夫し提供している。その一環としてゲームセンター用の業務用ゲーム機を導入している施設もある。ゲーム機には、楽しく夢中になることで自発的に身体を動かす効果が期待されているが、その身体機能改善効果の科学的検証はほとんどなされていない。今回、デイサービス利用者に対するゲーム機導入の有用性について検討した。<BR>【方法】対象は青森県八戸市のCデイサービス利用者のうち、痴呆を有する者を除き、ゲーム機導入時から1年間継続してデイサービスを利用した者27名であり、ゲーム機を継続的に使用した群(ゲーム機群)8名(男2名、女6名、年齢79.1±5.5歳)およびゲーム機を使用しなかった群(未使用群)19名(男1名、女18名、年齢79.4±6.6歳)に分類した。<BR> 両群とも各種体操や集団レクレーション等、一般的なデイサービスのプログラムを受けており、ゲーム機群ではこれに加え各人が自由選択したゲームを週1から3回行った。なおゲーム機群のすべての対象者は右手でゲームを操作していた。<BR> 使用したゲーム機は、namco社製 "ワニワニパニック"(ワニ叩き)、"ドドンガドン"(ボーリング)、"プロップサイクル"(自転車)、"ジャンケン倶楽部"(階段昇降)であった。<BR> 導入前および導入後2ヶ月毎に体力測定を行い、2群を比較検討した。体力測定の項目は、光刺激に対する反応時間(反応時間)、長座体前屈、Functional Reach(FR)、膝伸展筋力(両側)、握力(両側)、10m最大努力歩行(歩行速度)であった。<BR> 統計学的検討は、まずTwo-way ANOVAを行い、次に各群で、導入前と導入後の各月をそれぞれ対応のあるt検定にて比較検討した。<BR>【結果】ANOVAでは、すべての項目において両群間に有意差は認められなかった。しかし、t検定では、導入前に比べて複数の測定月で有意差を認めた。その項目は、ゲーム機群でFR、長座体前屈、左手握力、未使用群で反応時間、両手の握力であった。このうち両群とも握力は低下傾向で、他の項目は改善傾向であった。<BR>【考察】"ワニワニパニック"では出現するワニに対して前下方にハンマーを振り下ろす動作が、"ドドンガドン"では前方の目標物に対してボールを押し出す動作が要求されるため、前方への重心移動を反映するFRと前方への柔軟性を含む長座体前屈で改善傾向があったものと考えられる。また、握力についてゲーム機群の右手のみが有意な低下を示さなかったことは、ハンマーやボールを握ることで握力が維持されたものと考えられる。<BR> 楽しみながら行うアクティビティは内発的動機付けを促し、長期継続の効果が期待できる。今後は症例数を増やしゲーム機使用の効果をさらに明確にすると共に、心理面の評価も加味した研究を実施していく予定である。
著者
坂本 嘉弘
出版者
THE JAPANESE ARCHAEOLOGICAL ASSOCIATION
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.13, no.21, pp.125-138, 2006

中世大友城下町跡は戦国時代「府内」と呼ばれた瀬戸内海の西端部の別府湾に注ぐ大分川の左岸の自然堤防上に立地する中世都市である。近年この「府内」が大分駅周辺総合整備事業に伴い大規模な発掘調査が実施されている。その結果,これまで古絵図からの復元や,文献史料で知られていた「府内」について,さらに都市構造や変遷・性格などが明らかになりつつあることを報告した。<BR>発掘調査にあたっては,考古学的な時間軸を明確にするために,「府内」から出土する土師質土器の編年作業を行った。その結果,14世紀初頭から16世紀末まで約300年間にわたる大まかな編年案を提示することが出来,「府内」各所での遺構の時期の並行関係をとらえることが可能になった。<BR>また,古絵図には「府内」を南北に貫く街路が四本描かれているが,これを東から,第1南北街路・第2南北街路と順に名づけ発掘調査した。大分川沿いにある第1南北街路は上市町・下市町・工座町の名称が示すように,発掘調査でも街路に沿って短冊形の地割が確認され,商工業者が居住する地域であることが裏付けられた。第2南北街路は,大友館や萬寿寺沿いに「府内」を貫く最主要街路である。この街路の大友館東側や萬寿寺西側については,町屋の状況を示す古文書も残されている。発掘調査では,その町屋の実像だけでなく,成立までの経過も明らかにすることが出来た。第4南北街路は,「府内」の西端の街路であるが,古絵図には街路西側にダイウス堂と記載された場所があり,キリシタン施設が想定されていた。発掘調査の結果,小児墓やキリシタン墓を含む13基の墓が検出され,宣教師たちが報告した墓地の南端にあたる可能性が強いと想定している。<BR>「府内」からは,多量の貿易陶磁器が出土する。特に,第1南北街路と第2南北街路を結ぶ横小路町で検出された遺構からは,中国・朝鮮のみでなく,タイ・ミャンマー・ベトナムなど東南アジアの陶磁器が集中的に出土し,中国南部と直接関わる人物の存在が指摘されている。<BR>また,キリシタンの活動に関連する遺物としてメダイがある。ヴェロニカのメダイ以外は,「府内」の第2南北街路と名ヶ小路との交差点部で検出された礎石建物付近で,分銅と共に製作された可能性が強いと考えられる。<BR>このように,16世紀後半の「府内」は海外との結びつきの強い特異な中世都市として存在する。残された史料も,古絵図,古文書,宣教師たちの報告など多彩であるが,これに考古資料が加わり,「府内」の実像がより立体的に明らかにされようとしている。