著者
久本 博行
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.133-146, 2008-03

第1世代の行動療法は、不適応行動を改善するために行動を操作しようするものであった。さらにうつのような不快な気分や感情を治療する必要から、思考を操作することによって気分や感情を改善しようとする第2世代の認知療法が生まれた。そして、第3世代の行動療法として注意を操作し、気分や感情をコントロールするマインドフルネスな治療法が生まれてきた。マインドフルネスな治療の具体例として、マインドフルネス・ストレス低減法とマインドフルネス認知療法を紹介した。<特集>感情心理学の応用
著者
太田 健一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.117, 2004

1.はじめに大雪山国立公園では,近年の登山ブームによる登山客の増加により,土壌侵食による登山道の荒廃が問題となっている.これまで,後藤(1993),渡辺・深澤(1998),沖(2001)らの研究によって登山道における土壌侵食のメカニズムや,侵食に影響を与える環境因子との関係が解明されてきた.それにより,登山道のきめ細かな維持管理の必要性が議論されるようになった(沖,2001)が,国立公園内全域に渡る登山道の現状把握調査や適切な侵食対策に関する議論はまだ行われていない.そこで本研究では,大雪山国立公園の中でも多くの登山者が利用すると思われる,旭岳,間宮岳,裾合平,沼の平,愛山渓を結ぶ登山道の侵食状況を明らかにし,適切な侵食対策について考察を行った.2.調査地と方法調査地である大雪山国立公園は,北海道の中央に位置し,総面積226,764 haにおよぶ日本最大の国立公園である.調査は2003年8月_から_9月にかけて行った.調査対象地域は,旭岳ロープウェイの終着駅がある姿見を起点として,姿見_-_旭岳山頂_-_裾合平_-_間宮岳山頂_-_沼の平_-_愛山渓を結ぶ登山道約12 _km_とした.この登山道は標高1230 mから2185 mに位置する.この登山道上のほぼ100 mおきにプロットを設置し,各プロットにおいて登山道の両側にアルミアングルを打ち込み,登山道の形状を測量した,測量は,近年,注目を浴びているデジタル写真測量を行った.これは,写真測量の応用で,_丸1_市販のデジタルカメラを用いて被写体を2方向から写しこみ,_丸2_得られたステレオ写真を三次元計測ソフトに入力し三次元座標計算を行い,_丸3_登山道の三次元モデルを作成して断面図を出力し,断面積を求める,という方法である.この測量法は,_丸1_ある区間の侵食量を体積で示せる,_丸2_高い精度が期待できるという利点がある.本研究では,多くの三次元計測ソフトの中でも最も信頼性が高いといわれている倉敷紡績株式会社製の三次元計測システムKuraves-Kを使用した.次に,現地踏査および地形図を用いて登山道が位置する斜面形を谷形斜面,平滑斜面,尾根形斜面の3タイプに区分し,さらに登山道の横断面形をその形態的特徴から平型,ガリー型,谷型,複合型の4タイプに区分した,3.結果と考察 調査の結果,AからHまでの8コース計108地点についてステレオ写真が得られた.それより,Kuraves-Kを用いて各プロットの侵食量を求めた.侵食量は,登山道の両側にあるアルミアングル同士を結んだ線を中心として,登山道の平面図上にアングル幅×1 mの方形区を想定し(図),方形区内における登山道側面の植生と裸地の境界から下の部分の体積を登山道の侵食量として算出した.その侵食量は最大で3453657.4 _cm_<sup>3</sup>(裾合平,D-10),最小で1248.6 _cm_<sup>3</sup>(沼の平,G-10)であった.B,C,Dコース(裾合平_-_間宮岳)において侵食量が大きく,A,Gコース(旭岳,沼の平)において侵食量が小さい傾向が示された.また,コースごとに登山道幅と侵食度合い(侵食量/断面積)を平均し散布図を作成したところ,F,Hコースは登山道幅が狭いにもかかわらず侵食を受ける強度が強く,B,Cコースは登山道幅が広い上にある程度の侵食を受けやすいことが示唆された.これらの登山道には早急な対応策が必要である.
著者
片岡 聡子 畑田 早苗 宮本 謙三
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.285-293, 2019-06-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
14

育児中・非育児中および男女を4群に分けて比較することにより,育児中の作業療法士(以下,OT)の生涯学習の現状と課題を明らかにする目的で,高知県作業療法士会所属のOTを対象に,私生活や生涯学習についてアンケート調査を行った.結果,育児中の女性OTは他のOTと同程度に生涯学習への関心があるにもかかわらず,生涯学習の機会への参加と,それに対する満足度は有意に低い状況が明らかとなった.育児中のOTが生涯学習の機会への参加に必要な要素として,本人の意欲,家族の理解や協力,時間の工面など,自助努力に依存するものが挙げられた.自助努力だけでなく,育児中のOTを取り巻く環境的側面からの支援の必要性が示唆された.

2 0 0 0 OA 随筆頼山陽

著者
市島謙吉 著
出版者
早稲田大学出版部
巻号頁・発行日
1925
著者
竹田 仰 金子 照之
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.1935-1940, 1996-12-20
参考文献数
18
被引用文献数
42 10

視覚情報によって生じる運動感覚は, 視覚誘導自己運動感覚(Vection)と呼ばれている.Vectionが人の生体生理に及ぼす影響について測定することは, 人工現実感における臨場感の効果を把握する上で重要である.我々は, Vectionに関する知見を深めるために, 非常に広い視野角を有する, ハーフドーム型スクリーンを用いて, 映像の揺れに対する被験者の直立姿勢時の重心動揺の測定を行った.本論文では, 水平面・垂直面を強調した2種類のCG映像, ロール・ピッチ・ヨーの3種類の揺れ方向, 0.1〜0.4Hzの4種類の揺れ周波数, 15〜45゜の3種類の揺れ角度に対する重心動揺の影響を調べた.その結果, 垂直面を強調した映像をロール方向に大きく揺らすなど, 重心動揺に及ぼす影響が大きいことが明らかになった.また, 映像の揺れ周波数が低いときは, 映像と重心動揺の位相は一致しているが, 揺れ周波数が高くなるにつれて, 位相のずれが大きくなり, 0.3Hzを越えたところで90゜の位相遅延を生じることが示された.
著者
岡部 繁男 橋本 浩一 渡辺 雅彦
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

学習や経験依存的な脳機能は、生後の臨界期に獲得され、この時期に脳回路はシナプスリモデリング・刈り込みを受ける。イメージングと電気生理学により、臨界期の回路改変へのグリアの影響を解析した。大脳皮質ではミクログリアが組織体積を複数の領域に区切り、それによって錐体細胞樹状突起をシナプス動態の異なる領域に分節することが明らかになった。一方で小脳の登上線維の刈り込みにおいてミクログリアが重要な役割を果たすことがミクログリア特異的なCsf1r-cKOマウスの関与により明らかとなった。ミクログリアによる制御は貪食以外の機序による可能性が高く、抑制性シナプスの機能を介して影響を与える可能性を示唆した。
著者
長野 東
出版者
東京理科大学
雑誌
理学専攻科雑誌 (ISSN:02864487)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, 1996-12-14
著者
Flache Ursula 杉原 早紀
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.148, pp.587-621, 2008-12

本論文ではドイツ語圏の神仏分離研究の三つの側面を扱う。序論として「神仏分離」の独訳に関する問題点を述べる。第1ポイントとして,ドイツおよび欧米の日本研究におけるこれまでの神仏分離の扱いについて概略を記す。神仏分離が一般の歴史著作や参考図書で取り上げられるようになったのは最近の動きである。明治時代における神道研究では二つの傾向が見られる。一つは客観的批評する研究者(シュピナー,チェンバレン),もう一つは国家神道の視点を引き取る研究者(アストン,フロレンツ)。第二次大戦前の指導的な神道研究者(グンデルト,ボーネル,ハミッチュ)がナチスのイデオロギーに近い視点から研究結果を発表したため,戦後には神道についての研究がタブー視され,当分の間完全に中止となった。1970年代に出版されたロコバントの研究に続いて,1980・90年代にいくつかの神仏分離に関する研究文献(グラパード,ハーディカ,ケテラー,アントーニ)が発行された。最近の研究(ブリーン,サール,アンブロス,関守)ではケーススタディーや地方史が注目される傾向にある。ドイツには宗教改革時代の偶像破壊という,明治時代の日本の神仏分離と非常によく似た出来事があったために,ドイツの研究者は神仏分離に特別な関心を寄せている。そこで,第2のポイントとして,ヨーロッパにおける宗教改革と絡めて偶像破壊運動を詳しく取り上げ,ヨーロッパの宗教改革と日本の廃仏毀釈の比較を行う。共通点として両者が宗教的美術に大きな障害をもたらした改革運動であることが挙げられる。相違点としてヨーロッパにおける宗教改革が宗教的な動機をもった運動で,神仏分離が政治的な動機をもった政策であった。終わりに第3ポイントとして,簡単に筆者の個人的な意見をまとめ,神仏分離が実際どの程度「成功」したのか,そして神仏分離の今日の日本における意味を考察する。In this paper three aspects will be discussed. After an introductory remark concerning the various German translations of the term shinbutsu bunri, firstly an overview will be given on how the separation of Shintô and Buddhism has been treated in German research literature. As Anglo- American research is also widely received in Germany, selected works in English are included. It is a very recent development that the topic of shinbutsu bunri is taken up in general works on Japanese history as well as in reference works. Among the intellectuals of the Meiji period, some scholars such as Spinner or Chamberlain take a very critical position, whereas other scholars such as Aston or Florenz are closer to the official doctrine of State Shintô at the time. The point of view of State Shintô is also adopted in pre-war studies by Rosenkranz and Gundert. Because of the close relationship of Germany and Japan before and during World War II, studies on Shintô in post-war German Japanology are regarded as being related to Nazi ideology. Therefore the topic of Shintô becomes a taboo after the war. In the 1960s and 70s the topic is finally taken up again and Lokowandt publishes a detailed study of State Shintô that also deals with the separation of Shintô and Buddhism. During the 1980s and 90s several works (Grapard, Hardacre, Colcutt, Ketelaar, Antoni) on shinbutsu bunri appear. In recent studies on the separation of Shintô and Buddhism there is a tendency to focus on case studies and local histories (Breen, Thal, Ambros, Sekimori). To a German scholar of Japanology the events occurring during the separation of Shintô and Buddhism are of special interest because they have much in common with the iconoclastic movement of the Reformation in 16th-century Europe. Therefore, secondly, shinbutsu bunri will be compared to reformatory iconoclasm. Both have in common that they were reform movements that led to the destruction of countless works of religious art. However, the Reformation was fuelled by religious motives whereas shinbutsu bunri was carried out for political reasons. Thirdly, as a personal comment, the question of how successful the separation of Shintô and Buddhism ultimately was will be discussed. Although temples and shrines are separately organised even today, coexistent worship of both Shintô deities and Buddhas by the Japanese people continues.
著者
村田 伸 中野 英樹 安彦 鉄平 岩瀬 弘明 豊西 孝嘉 松倉 祥子 児島 諒
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.109-113, 2017

<p>本研究は,開発した下肢がむくみ難いパンプス(開発パンプス)を紹介するとともに,そのむくみ抑制効果について検証した。方法は,開発パンプスと一般パンプスを交互に履くクロスオーバーデザインを採用し,かつそれぞれのパンプスが対象者に分からないようブラインド化して効果を検証した。なお,下肢のむくみは下肢容積を水置換法によって計測することで判定した。対象とした女子大学生12名両下肢24肢の登校時と下校時の下肢容積変化量を比較した結果,開発パンプス装着日は-15.4±19.5ml,一般パンプス装着日は41.7±14.0ml であり,有意差(p<0.05)が認められ,開発パンプス装着日の下肢容積の減少が確認された。このことから,開発パンプスの下肢のむくみに対する一定の抑制効果が確認された。</p>
著者
Atsushi Hirayama Shizuya Yamashita Andrea Ruzza Hyoe Inomata Marcoli Cyrille Chen Lu Andrew W. Hamer Masayuki Yoshida Arihiro Kiyosue Tamio Teramoto
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.971-977, 2019-04-25 (Released:2019-04-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1

Background: Treatment with evolocumab reduces mean low-density lipoprotein cholesterol (LDL-C) up to 75% and cardiovascular events by 16% in the first year and 25% thereafter. Methods and Results: Japanese patients with hypercholesterolemia enrolled in the parent YUKAWA-1-2 studies could enroll, once eligible, in the OSLER studies (n=556). OSLER re-randomized patients 2:1 to evolocumab plus standard of care (SOC; evolocumab+SOC) or SOC alone for 1 year; after year 1, patients could enter the all-evolocumab+SOC open-label extension of OSLER. Patients received evolocumab+SOC from the 2nd year through up to 5 years. Long-term efficacy and safety, including antidrug antibodies, were evaluated. Of 556 patients, 532 continued to the all-evolocumab+SOC extension: mean (standard deviation [SD]) age 61 (10) years, 39% female. A total of 91% of 532 patients completed the studies. Mean (SD) LDL-C change from parent-study baseline with evolocumab from a mean (SD) baseline of 142.3 (21.3) and 105.0 (31.1) mg/dL in OSLER-1 and OSLER-2, respectively, was maintained through the end of the study: −58.0% (19.1%) at year 5 in OSLER-1, −62.7% (25.6%) at year 3 in OSLER-2. The overall safety profile of the evolocumab+SOC periods was similar to that of the year-1 controlled period. Antidrug antibodies were detected transiently in 3 patients. No neutralizing antibodies were detected. Conclusions: Japanese patients who continued evolocumab+SOC for up to 5 years experienced sustained high LDL-C level reduction. Long-term evolocumab+SOC exposure showed no new safety signals.
著者
榎 久仁裕
出版者
広島大学法学会
雑誌
広島法学 (ISSN:03865010)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.71-85, 2008-06
著者
赤堀 将孝 亀山 一義
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.325-334, 2019-06-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
21

本研究は,日常生活圏域ケア会議に参加する他職種を対象に,作業療法士が果たせる役割を調査し,テキストマイニング手法により,個別ケア会議,日常生活圏域ケア会議,地域ケア推進会議に共通する役割と,それぞれに異なる役割を明らかにすることを目的とした.その結果,共通する役割は,生活のアドバイスをすることであった.また,個別ケア会議では身体機能や動作に対するアドバイス,日常生活圏域ケア会議では集団に対する関わり,地域ケア推進会議では施策の取り組みを考えることが,役割として明らかになった.そのため,これらの役割を把握した上で,それぞれの地域ケア会議へ参画していく必要性が示された.