著者
遠藤 晶
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.25-34, 1998-04-10
被引用文献数
1

手あそびは手や身体を動かす歌のあそびで, 歌詞を表現する動きや, リズムを表す動きを歌を歌いながら行うものである。保育の中で手あそびは, 頻繁に活用されてきた。保育者と一緒に手あそびをするという日常行為の中に, 認知とパフオーマンスの発達を促す童要なシステムが機能していると推測される。パフオーマンスというのは遂行行動のことであり, すでに学習されている行動を実行に移し動作として表すことで, 外にあらわれた単なる行動や行為を示すものではなく知的な側面を含む活動である。知っている手あそびの刺激が与えられたときに, 幼児が提示された手あそびに対して, 知覚的認知をコントロールし幼児自身で手あそびを生み出したパフオーマンスを「手あそびのパフォーマンス」と定義し, 幼児の年齢ごとにどのように変化するのかを調べた。既に知っている手あそびとして『げんこつやまのたぬきさん』の刺激が与えられた。幼児のパフオーマンスについて検討した結果, 「動きの再生度」では, 2歳児と5歳児で差が見られ, 「動きの順序性」は, 1歳児から3歳児の間に高まるが3歳児から5歳児にかけて差はなくなり, 「リズムの再生度」は2歳児から3歳児の問にリズムに合うことが示された。手あそびは, リズムに合わせて身体を動かしたり歌うことを獲得する幼児期に, 動きや歌の模倣を促し, さらに幼児が自発的にあそびの発展を楽しむことを促すものであることが示唆された。
著者
山本 泰由 大庭 寅雄
出版者
The Weed Science Society of Japan
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.33-38, 1977
被引用文献数
1

主要な畑雑草14種を供試し, 3段階の土壌水分条件下での発生相を調査した。<br>1) 冬雑草では, 高土壌水分区での発生が早い時期から多かった。また, 各草種の発生量は低土壌水分区より高土壌水分区で多かった。<br>2) タデ科雑草では, 発生パターンは3土壌水分区とも大差なかったが, 発生量は高土壌水分区で多かった。<br>3) 夏雑草では, メヒシバ, ザクロソウは高土壌水分区での発生が早い時期から多かった。オヒシバ, スベリヒユは種子埋土直後の発生が, 高土壌水分区ほど多かった。ホナガイヌビユ, コゴメガヤツリは土壌水分によって発生パターンはほとんど変らず, 発生盛期には高土壌水分区ほど発生が多かった。
著者
高村 圭子
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.21-28, 2005-06-10

延慶本『平家物語』の末尾にある建礼門院譚には、女性としての「業障」や、驕りによって国を傾けた平家一門としての「悪業」が繰り返し強調されており、また女院が後白河法皇を「善知識」と呼ぶという特色もある。ここには進んで過去を語り懺悔することによって煩悩から救われるという、謡曲におけるシテとワキのような構造が現れていると考えられる。このような特殊な女院像について、近年注目されるようになった小野小町造型との比較をも視野に入れつつ、作中における役割やその造型を考えていきたい。
著者
浜田 哲也 渡辺 聡一 田中 利幸 多氣 昌生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMCJ, 環境電磁工学
巻号頁・発行日
vol.97, no.37, pp.15-21, 1997-05-14
被引用文献数
17

携帯電話使用時を想定したマイクロ波の近傍界曝露における頭部SARに対する人体頭部形状の影響について検討した.単純な形状の頭部モデルとして,球と立方体を想定し,それぞれの頭部モデルの局所ピークSARに対する組織の電気定数および携帯電話モデルの形状への依存性を示した.さらに,単純な頭部モデルとこれまでに報告されたリアルな頭部モデルの局所ピークSARを比較した.その結果,球と立方体の形状の違いが局所ピークSARのアンテナ〜頭部間距離特性に影響を与えることが示されたが,携帯電話モデルが頭部に非常に接近する場合には,球モデルと立方体モデルでの局所ピークSARはほぼ同程度であった.これらの単純なモデルで得られた局所ピークSARは耳がないリアルな頭部モデルで得られた局所ピークSARともほぼ同程度であった.
著者
新町 貢司
出版者
筑波大学
巻号頁・発行日
2001

標題紙、目次、凡例 -- 序論 -- 第1章 近代ヨーロッパの神話学 -- 第2章 ドイツ・ロマン派の神話学 -- 第3章 進歩史観と二元論に基づく神話解釈 -- 第4章 非合理への洞察と二元論の否定 : ニーチェの『ツァラトゥストラ』 -- 第5章 母権制とオリエント・アジア的なものの表象 : ホーフマンスタール、ヘッセの場合 -- 結論 非合理の発見とヨーロッパ精神の動揺 -- 註 -- 引用文献・参考文献一覧表
著者
初島 住彦
出版者
九州帝国大学
巻号頁・発行日
1942

博士論文
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1029, pp.92-95, 2000-02-21

日本長期信用銀行の事業推進部長、鈴木恒男からイ、アイ、イ(EIE)グループの総帥、高橋治則に電話が入ったのは、うっとうしい梅雨空が広がる1993年6月30日のことだった。長銀がEIEグループを管理下に置き、リストラ計画に着手してから、2年余りが過ぎようとしていた。
著者
黒澤 幸弘 高橋 かおり 伊藤 廉 河辺 信秀
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100682-48100682, 2013

【目的】医療系養成校における臨床実習は,もっとも心理的ストレスが加わるカリキュラムである.先行研究では,看護師の臨床実習中の新版State Trait Anxiety Inventory(以下STAI)の状態不安が高いことが報告されている.理学療法士の臨床実習では,実習中のストレス強度と短い睡眠時間に関連がみられたとする報告がある.このような心理的不安は実習自体の中断につながりかねない.一方で,心理的不安を軽減させる方法に有酸素運動がある.竹中らは, 心理的不安の高い学生に対する有酸素運動がProfile of Mood States(以下POMSとする)の緊張および鬱の得点を減少させたとしている.これらを踏まえ,本研究では臨床実習前の不安が高い理学療法学科学生に対して有酸素運動を行い,臨床実習に対する不安の軽減が可能であるか明確にするために研究を行った.【方法】対象は本学第4学年第3期臨床実習(7週間)前の14名であった.全例精神科への通院歴がなかった.2週間の有酸素運動への参加意志を確認し,積極的に同意した7名をAE群に,同意なしや消極的であった7名をNA群とした.AE群,NA群共に男性6名,女性1名であり,年齢は24.3±4.1歳,22.3±2.6歳であった.実習開始2週間前に全例でSTAIとPOMSを実施した.STAIは特性不安と状態不安における不安存在項目,不安不在項目,合計を得点化した.POMSは「緊張-不安」「抑うつ-落込み」「怒り-敵意」「活気 」「疲労」「混乱」の各尺度を測定した.AE群の運動内容はベンチステップエクササイズ,縄跳び,反復横跳びを各5分とし15分間行った.これを2セット30分間実施した.運動強度はV(dot)O<sub>2</sub>max60%とし,脈拍数とBorg scale を用いて管理した.運動は実習開始2週間前からの2週間で,週3回,計6回実施した.NA群は運動介入なしとした.介入終了後,実習開始2日前,実習開始21日目,実習終了2日後にSTAIとPOMSを測定した.統計解析は2群間の比較では対応のないt検定,各時期の比較ではScheffeの多重比較を用いた. 【説明と同意】研究目的,方法,個人情報保護に関して口頭にて説明し同意を得た.【結果】2群間の比較において,実習開始2週間前ではすべての項目に差がなかった.実習開始21日目には,STAI特性不安および状態不安の不安不在項目得点,合計点でNA群よりAE群で有意に不安が軽減していた(28.9±4.4 vs 19.4±6.9, 29.1±2.1 vs 19.1±6.3, 49.0±6.6 vs 39.4±8.5;P<0.05).AE群における各時期の比較では,STAI特性不安および状態不安の不安不在項目得点で実習開始2日前と比べて実習開始21日目に有意な不安の軽減がみられた(28.3±4.9 vs 19.4±6.9, 27.7±4.6 vs 19.1±6.3;P<0.05).STAI状態不安の不安存在項目で実習開始2週間前および実習開始21日目と比較して実習終了2日後に有意な不安の軽減がみられた(20.0±2.7 vs 15.9±4.3,20.3±6.3 vs 15.9±4.3;P<0.05).POMSの緊張-不安得点では実習開始21日目と比較して実習終了2日後に有意な不安の軽減がみられた(15.7±8.1 vs 9.4±8.3;P<0.05).NA群の各時期の比較では差がなかった.【考察】本研究では,心理的ストレスが高いと予測される実習開始21日目に,NA群と比較してAE群で不安の軽減がみられた.AE群では実習開始2日前と比較して実習開始21日目に不安不在項目得点が減少し,実習終了後にも不安の軽減がみられた.NA群では心理的不安の変化がみられなかったことから,臨床実習前の有酸素運動によって臨床実習に対する心理的不安が軽減したと推測できる.NA群と比較してAE群は,ポジティブな情動の変化を捉えるSTAIの不安不在項目得点が低下していたことから,臨床実習を前向きに捉えることができていたといえる.このように有酸素運動が臨床実習での心理的不安を減少させるならば,積極的に臨床実習に望む学生にストレスマネージメントとして有酸素運動を実施すべきであろう.今後は,臨床実習中の運動実施による不安軽減効果の確認が必要であろう.【理学療法学研究としての意義】本研究では,有酸素運動が臨床実習中の心理的不安を軽減する可能性が示唆された.理学療法教育における臨床実習の課題である学生のストレスマネージメントの構築に寄与する研究であると考えられる.
著者
黒原 正人
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.E3P1252-E3P1252, 2009

【はじめに】<BR> 「食べる」ことは生命活動の根幹であり、生きていくために不可欠な行動として日常生活の中で行われている.しかし、高齢者は様々な理由で、咀嚼能力の低下や嚥下障害を起こすことが多い.そのため、咀嚼に問題がある場合は軟らかい素材の選択や、すりつぶして噛まずに飲み込めるような工夫を行う.このように、質の高い食生活を送るには、安全で適切な食形態を選択することが必要となる.食形態は噛むことを包括した口腔機能を反映するとされる.従来、口腔機能と全身状態との関係には何らかの関連があることが指摘され、全身状態の低下に伴い食形態が変化することは臨床でもよく経験する.そこで本研究は、全身状態の指標としてADL能力に着目し、食形態とADL能力の関係を調べる目的で行った.<BR><BR>【対象・方法】<BR> 対象は、2006年4月から2008年4月までに当院の回復期リハビリテーション病棟から退棟した症例のうち、再発症例や状態悪化等で転院・転科した症例及び嚥下障害の認められる症例を除いた129例を対象とした.方法は、食形態の評価は摂食機能と食形態に応じて3区分(並食群・軟食群・粥食群)に分類、ADL能力についてはFIMを用いた.統計処理は、食形態とFIM得点の関係にSteel-Dwass検定を用いた.統計解析にはR Ver2.7.0を用い、統計学的有意水準は5%未満及び1%未満とした.なお、本研究は当院倫理委員会での承認を得て行った.<BR><BR>【結果】<BR> 食形態とFIM得点(合計点)の関係において、並食群と粥食群の間に有意差(p<0.05)が認められた.なお、食形態別のFIM得点(合計点)の中央値は、並食群=106.5点、軟食群=96.5点、粥食群=93.0点であった.<BR><BR>【考察】<BR> 食形態が軟らかくなるにしたがって、ADL能力が低下する傾向が認められた.したがって、食形態とADL能力には何らかの因果関係があり、食形態はADL能力に影響を与える可能性があると考えた.しかし、臨床場面において口腔機能とADL能力との関連性を検討する場合には、口腔機能がADL能力へ影響を与えるのか、逆にADL能力が口腔機能へ影響を与えるのか、さらには他の要因なのかを患者個々に考察する必要がある.したがって、食形態だけで全てが決定されるわけではなく、種々の周辺症状に影響されることにも注意が必要である.多くの高齢者は、食事は一番の楽しみであり、より快適により安全なものにする必要がある.しかし、食形態の選択は、口腔機能を考慮しない安易な選択が多いのが現状で、食べさせてみた結果から判断しているのが大部分であると思われる.しかしながら、本研究で食形態はADL能力に影響を与える可能性があると考えたように、食形態の適切な選択は非常に責任あることであり、患者一人ひとりの特徴と状態を理解し、それぞれに合った選択が必要である.
著者
上村 さと美 西田 裕介 大嶽 昇弘
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, 2005-04-20

【はじめに】要介護高齢者を介護する介護者の介護に対する負担感は、要介護高齢者の日常生活能力との関係もあるが必ずしもそれだけではない。今回、介護者の介護負担感をZarit介護負担尺度日本語版(以下、ZBI)と、その下位尺度であるPersonal strain(介護を必要とする状況に対する否定的感情の程度を示す介護負担感)及びRole strain(介護によって社会生活に支障をきたしている程度から生じる介護負担感)を用い、介護期間と介護負担感との関係を検討した。<BR>【方法】対象は訪問看護ステーションを利用している中枢神経疾患既往の要介護高齢者22名(男性11名、女性11名、平均年齢79.1歳、要介護度平均3.9)の主介護者22名(男性4名、女性18名、平均年齢63.5歳)であった(続柄は配偶者10名、嫁4名、子供6名、血縁者2名)。介護者に対しZBI、介護期間、介護者の健康状態を質問紙に記し自記式にて調査した。結果をもとにZBIの総得点(合計88点)を算出した。また、ZBIをPersonal strain項目に該当する項目(合計48点)と、Role strain項目に該当する項目(合計24点)に分類し、各々を合計点数で除して介護負担感(%)を算出した。統計学的手法としてはピアソンの相関係数検定を用い有意水準を5%未満とした。また、介護者の健康状態の把握は良好、不良の2択での記載とした。<BR>【結果】平均介護期間は6.0±5.03年、ZBI総得点平均は30.3±14.7点であった。Personal strain該当項目の介護負担感は35.0%(17.0±8.3点)、Role strain該当項目の介護負担感は33.0%(8.0±4.6点)であった。介護期間とZBI総得点(r=0.43)及び介護期間とPersonal strain項目点(r=0.45)においては有意な関係が認められた(p<0.05)。また、Personal strain項目点とRole strain項目点間でも有意な関係が認められた(r=0.74、p<0.05)。介護者の健康状態は良好9名(平均年齢58.2歳、ZBI総得点平均25.5点、平均介護期間3.9年)、不良13名(平均年齢67.1歳、ZBI総得点平均33.6点、平均介護期間7.9年)であった。<BR>【まとめ】介護期間が増すごとに介護負担感総得点及び、Personal strain項目の点数の増大が認められた。また、Personal strain項目とRole strain項目間においても有意な関係が認められた。よって、介護期間が増すにつれ現状のPersonal strain項目の負担感の把握と軽減が、Role strain項目の介護負担感の軽減に関与し、ZBI総得点の減少を得られると考えられる。さらには介護者の継時的な体調管理も必要と考えられる。
著者
鏡 宣昭 高江洲 義矩
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.31-39, 2000-01-30
被引用文献数
2

学校歯科保健は,児童生徒が歯・口腔の健康に関する知識・習慣・態度への変容を期待して行われる保健活動の1つで,養護教諭は常にその要として「保健教育」と「保健管理」に携わってきた。また,平成7年度に学校保健法の改正が行われ,健康診断票や健診内容は大幅に変わった。これは,従来からの検診を中心とした健康管理から,本来求められていた健康教育を積極的に取り入れるものとして注目されている。そこで,千葉市内の養護教諭171名を対象に,児童生徒への口腔保健教育の進め方や学校健診の評価など10項目について,Delphi法によるアンケート調査を行った。その結果,(1)健診時の器具の消毒についての回答では,公的機関が診査器具を一括管理し必要な時期に必要な量を配送してもらうことを希望するものが1回目は51.8%であったが,2回目以降は71.5,72.8%と回を追うごとに回答率が上昇した。(2)学校現場で行える事後措置としては,「保健だより」などを利用した「家庭との連絡」と回答したものに集中して72.3〜83.1%であった。(3)学校でのフッ化物洗口については,「必要ない」と回答しているものが50.4〜57.8%で,「実施が望ましい」は12.7〜17.7%あった。Delphi法の特徴の1つである収束傾向は,「新しい健診法の全体的評価」,「要観察歯の導入」,「年間の健康診断の回数」,「診査器具の消毒」,「学校保健委員会の活動」および「学校歯科医とかかりつけの歯科医との関係」の設問にみられたが,特に診査器具の消毒についての「業者に依託する」応答に顕著に示された。