著者
大脇 康弘 西川 潔
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第IV部門 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.167-180, 2014-02-28

学校組織開発論の中で佐古秀一教授が構築した「学校の内発的改善力を高める学校組織開発論」を取り上げ,その理論構成と実践展開を考察した。佐古教授は学校組織の個業化を縮減し,学校の内発的改善力を高めることを課題とし,教員の自律性を高めると共に学校の協働化を促進していくことをめざす。その方略として,教員が実態認識→課題生成→実践展開というサイクルを個人レベルで辿ると共に集団レベルで共有し連携していくことが必要であるとして,学校の組織形態として,コア・システムとプロセス・ファシリテート・チームを提起する。 この学校組織開発論は,理論モデルを実践で活用して,理論の再構成を行う中で構築されている。理論と実践が往還する中で,日本の学校文化に即した理論構築に取り組んでいる意義は大きい。しかし,教員の同僚性・協働性を軸にした組織開発であり,確かなミドルリーダーの存在を前提とした組織開発論であるため,学校組織の統制化はその個業化を縮減することへと限定されており,校長の役割も制約的である。The purpose of this article is to explicate the significance and problems on theory of organizational development in schools by Professor Hidekazu Sako at Naruto University of Education. Sako's Theory is focused on enhancing spontaneous improvement in school to develop organizational development. The principles of organizing school is based on teacher's collaboration for reducing individualization and restricting managing control in school. His theory of organizational development is applied to school management practice in several elementary schools and junior high schools. The effectiveness of his theory were verified and categorized into the following three types. Type 1 : school organizational development for enhancing collaboration in phase of education practice, Type 2 : school organizational development for producing practical problems or goals, Type 3 : school organizational development for producing value oriented goals. The characteristics and problems of Sako's theory of organizational development are discussed in theory building and practical reflection. In conclusion, his theory is build in linking theory model and school practice, the core system and the process facilitate team system are placed as key functions for school improvement originally. However, his theory is based on teacher's collegiality for reducing isolation tendency among teachers, the role of principal is restricted in switching on school improvement.
著者
村上 詠子
出版者
目白大学
雑誌
目白大学短期大学部研究紀要 (ISSN:13462210)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.A1-A26, 2011
著者
濱口 健太 福井 俊介 狩野 淳 高見 友幸
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.37, no.17, pp.161-162, 2013-03-08

近年,マイクロコンピュータで制御できるLEDテープが開発されている.LEDテープはテープ形状を活かした3次元的な配置が可能であり,フルカラーで発色を制御できる.これにより従来の電飾としての展示用途だけではなく,インタラクション可能なメディアアート作品を制作可能となった.本研究ではマイクロコンピュータにCortex-M3を使用し,本研究で開発したActionScript3.0用ライブラリでプログラム記述をしている.LEDテープを用いたアミューズメントは,単に観賞するだけでなく,アプリと対話して楽しみ,またその様子を観賞するという新たなモデルが想定される.本研究は,このモデルのもとに数m〜10m規模の範囲で行うアミューズメントアプリケーションを制作した.
著者
村上 宣寛 福光 隆
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.170-182, 2005-03-31
被引用文献数
1 3

研究Iでは, 担任教師が指名した攻撃性の著しい児童23名を基準群, 攻撃性の認められない児童567名を対照群とした.参加者は8つの小学校の3-6年生1701名と担任教師59名であった.問題攻撃性尺度は二群を弁別する13の質問項目から構成された.研究IIでは, 児童の攻撃性についてクラスの担任教師が5段階評定を行った.参加者は小学校3-6年生224名と担任教師8名であった.担任教師の評定の信頼性は.93であった, 問題攻撃性尺度と評定との相関は.46, 再検査信頼性は.85であった.814名のデータをIRTで分析すると, 尺度の高得点側で測定精度が高かった.研究IIIでは, 実験群でアサーション・トレーニングによる攻撃性の適正化教育を行った.参加者は, 実験群が3年生38名, 統制群が3年生35名であった.事前・事後の尺度得点の3要因分散分析の結果, アサーション・トレーニングは攻撃性の低い児童で弱い介入効果があった.
著者
吉川 延代 今野 義孝 会沢 信彦
出版者
文教大学
雑誌
人間科学研究 (ISSN:03882152)
巻号頁・発行日
no.34, pp.169-182, 2012

It has been argued that there is a close relationship between bullying and self-esteem. This study sought to determine the relationship between having been bullied or bullying others and present levels of self-esteem. Participants were 349 students (194 male and 155 females) attending two private colleges in the Tokyo area. Participants completed a questionnaire measuring the frequency, degree, age, and types of bullying behavior experienced or committed. The Japanese version of the Rosenberg Self-esteem Survey was also used to measure the levels of self-esteem. This Survey consisted of 10 items that revealed student self-worth, attitudes, and satisfaction with oneself. Results were as follows. In term of the frequency of bullying, approximately 30% of the participants reported having been bullied, 30% had bullied others, and 14% had neither been bullied or bullied others in school. The peak frequency of bullying was during elementary school and it decreased as students progressed from middle to high school. Participants who reported having been bullied or bullying others had lower self-esteem than the participants who had neither been bullied or bullied others. Participants who had been severely bullied verbally and physically had lower self–esteem than the participants who were not bullied. These findings indicate that being bullied in school has a long-term impact on one's self-esteem. Lower self-esteem may lead to psychological health problems that carry into adulthood. Therefore, measures to prevent bullying and restore the self-esteem of bullied students must be taken.本研究では、大学生349名(男子194名、女子155名)を対象にいじめの被害―加害経験と自尊感情との関係について質問紙調査を行なった。いじめ質問紙調査では、「いじめ被害と加害の有無」「いじめの時期」「いじめの様態」「いじめの程度」「いじめの原因」「いじめについての考え」を質問した。自尊感情の測定には、Rosenberg (1965)の日本語版自尊感情尺度を用いた。いじめの経験に関して、被害経験者は29.8%、加害経験者は30.9%、被害と加害の両方の経験者は14.3%、どちらかの経験者は32.1%という結果が得られた。いじめの経験者数は、被害に関しても加害に関しても小学校が最も多く、年齢が高くなるにつれて減少する傾向が見られた。いじめと自尊感情の関係については、被害経験者は、被害の経験がない者と比較して、自尊感情が有意に低かった。いじめの様態との関係については、言語的な暴力被害や身体的な暴力被害を経験した者の自尊感情は、これらの被害経験のない者よりも有意に低かった。また、これらのいじめ被害の程度が激しかったと答えた者は、いじめ被害経験のない者と比較して有意に自尊感情が低かった。いじめ被害の時期との関係では、小学校中高学年から高校にかけていじめ被害を経験した者は、経験しなかった者よりも自尊感情が有意に低かった。この点については、今後の検討が必要である。本研究では、いじめ被害経験といじめ加害経験と自尊感情の間には一定の関係のあることが見いだされた。今後、ポジティブな学校や学級風土づくりを通して自尊感情の強化・育成を図り、いじめの予防・改善に努めていく必要が指摘された。
著者
桐沢 力雄 竹山 愛 小岩 政照 岩井 涼
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.471-476, 2007-05-25
被引用文献数
1 24

日本の子牛におけるウシトロウイルス(BoTV)の糞便への排出状況と下痢との関連性を調べた.同時にウシロタウイルス,ウシコロナウイルスとクリプトスポリジウムの排出状況も調べた.BoTVのスパイク遺伝子を標的としたRT-PCRにより,北海道の子牛下痢便99例中15例(15.2%)からBoTV遺伝子が検出された.正常便では114例中8例(7.0%)がBoTV陽性であった.北海道外の38例の子牛下痢便では9例(23.7%)が陽性を示した.北海道のBoTV陽性15例のうち11例では今回検査対象とした病原体のうちBoTVのみが検出された.BoTV陽性15例中11例の子牛は2週給以下であった.今回の調査で,ウシロタウイルスと下痢との関連性は認められたが,ウシコロナウイルスとクリプトスポリジウムと下痢との関連性は認められなかった.17例のBoTV陽性のRT-PCR産物をランダムに選択し,それらの塩基配列を決定して進化系統樹を作成したところ,日本のBoTVは少なくとも2グループに分類されることが示された.今回の結果から,ウシトロウイルスは日本に広く浸潤し,子牛,特に2週齢以下の子牛下痢の原因ウイルスの一つであることが示唆された.
著者
木之内 秀彦
出版者
鈴鹿大学
雑誌
鈴鹿国際大学紀要Campana (ISSN:13428802)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.55-75, 2015-03-10

The purpose of this article is to understand the robustness and resilience of contemporary authoritarian regimes. Since the collapse of Communist regimes in the Soviet Russian region including eastern Europe and the end of the Cold War, most of the democratic theorists and researchers on regime transition have tended to regard today's authoritarianism as inherently fragile, and then often fail to recognize the resilience of authoritarianism. However, many of twenty-first-century authoritarianism continue to exist, even flourish and expand its power in an age of democratization. This article argues what factors contribute to the survival of today's autocracy. Although essentially authoritarian, contemporary authoritarian regimes also adopt democratic institutions such as election, but use (abuse?)these institutions for their authoritarian purposes. This article discusses the new, sophisticated skills and techniques of today's dictators' survival strategies.
著者
嶋崎 量
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.75-82, 2015-03-30

若者を使い潰すブラック企業の被害救済と根絶のため,若手弁護士を中心に約200名の弁護士によりブラック企業被害対策弁護団が設立され,活動している。具体的な活動内容は,ブラック企業被害者に対する相談活動や,個別事件の訴訟活動だけでなく,ブラック企業対策プロジェクトを通じて他分野の専門家と連携しながら,ブラック企業被害に関する各種セミナーや相談会の開催,書籍の執筆,学校現場などでのワークルール教育の実施など多様な社会的活動を行っている。ブラック企業被害者を救済し,ブラック企業を根絶するためには,本稿に掲載するような具体的な被害実例を社会に周知させ,多くの労働者が声をあげやすくする状況を作り出すだけでなく,様々な専門家と連携して,社会的な取り組みを進めていくことが重要である。
著者
パーク チョル
出版者
Japanese Society for Engineering Education
雑誌
工学教育 (ISSN:13412167)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.8-11, 1998-01-30
被引用文献数
3 3

独創的な科学技術者を育てるための将来の日本の教育制度をここに提案する。独創性は個人の差を認め,それを助長する事により達成される。米国が1957年のスプートニクの時に覚醒し採択した英才教育を日本が今から採択するべきである。その内容の重要な点は:(1)大学新入生選抜には個人の特技を優先的に考慮する。(2)小学校より大学卒業までセンターテストを専門家を集めた常設組織で作る。大学入学筆記試験は年数回行う。(3)筆記試験問題は個人の進度の差を測る事が出来る様広範囲にし,一つの科目に優れた学生に有利な様にする。(4)学年制度は廃止し個人の能力によりどの学年でも入れるようにする。高校の上級では資格ある学生に大学の教科を教える。(5)大学学部の募集人数は大学が任意に決める。(6)大学の質と水準を透明化し大学問の転学編入を容易にする。(7)政府は個人特技競争会の公平な運用,奨学金分配,各大学の評価の透明性の維持などの役割を担う。(8)ハイテクのための特殊税を賦課し,その収入を奨学金と企業の研究所や大学への助成金として使う。
著者
Jacqueline Banerjee
出版者
神戸女学院大学
雑誌
女性学評論 = Women's studies forum (ISSN:09136630)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.33-53, 1994-03

ヴィクトリア朝時代には、子供であるというだけでもつらいことだった。女の子であるというのはもっとつらいことだったのであろう。この時代の女性小説家たちはその満たされぬ思いを、器量がよくなくて反抗的なジェーン・エアや(シャーロット・ヤング作『ひなぎくの花輪』の)エセル・メイのような女性主人公に注ぎこんだ。わたしたちはこのような少女に共感を覚えるのだが、彼女たちが成長するにつれてその反抗が鎮まっていく傾向に気づく。男性作家も女性作家も、結婚と家庭生活を女性主人公たちの究極の到達点と定めていたのである。この定型例はディケンズの作品に明らかに見られる。『荒涼館』の苦悩する子供キャディ・ジェリビーはあっさりとかわいい善良な主婦になってしまう。しかしさすがはディケンズ、キャディやリトル・ドリットのような人物の奉仕は心からのものであり、深い満足感をもたらしている一方、愛がなければ(『つらい時勢』のルイザ・バウンダービーの場合のように)家庭にも幸福の可能性はないことを明示している。とは言え、他の作家たちはもっと模範例のかげから反抗をのぞかせ、束縛のもとで苦悩したり(たとえばジョージ・エリオット作「エイモス・バートン」のパティー・バートン)、より大きな世界にエネルギーのはけ口を見つけようとする年長の女性主人公を描いてみせる備えができていた。しかし、そのような主人公たちの努力は、ハンフリー・ウォード夫人の描くマーセラや、ヤングの描くレイチェル・カーチス(『家族のなかの賢い女』)の慈善事業的な冒険で例証されるように、悲惨な結果に終わりがちである。ヴィクトリア朝時代の女たちがよりよき教育や職業の機会を必死に求めていたことは、ヤングのようながんこな伝統主義者の作品からですら、明白になる。そういう機会がないので、女主人公たちは、シャーロット・ブロンテの描くシャーリーのようにダイナミックにも、エリオットの描くダイナ・ポイサー(『アダム・ビード』)のように決然ともなりうるのだが、やはりその活動を家庭の炉辺に限定しなければならないのだ。