著者
野村 久光 テンシリリックン シラ 池田 心
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2013論文集
巻号頁・発行日
pp.27-34, 2013-11-01

疑似乱数生成の研究は古くからあり,偏りのなさや周期の長さ,生成速度などの改良が進められてきた.メルセンヌツイスタなど最近の手法は数学的な意味で真の乱数に十分近いと言え,確率的最適化やモンテカルロ法などさまざまに応用されている.テレビゲームでも疑似乱数が必要になることは多く,例えばすごろくではサイコロの目をコンピュータが決めなければならない.このとき,出た目およびその系列によっては,プレイヤはそのサイコロの目が自分に都合の悪いようにコンピュータに操作されていると感じる.本稿では,数学的な意味で良い乱数と,標準的なゲームプレイヤにとっての自然な乱数は異なるという仮定をおき,どのような特徴を持たせれば自然に“見える”乱数が作れるのかを考察,実装する.被験者実験の結果,標準的な乱数よりも自然に見え,またすごろくで使ったときの不満が小さい乱数列を生成できていることを確認した.
著者
興野悠太郎 米澤拓郎 野崎大幹 小川正幹 伊藤友隆 中澤仁 高汐一紀 徳田英幸
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL)
巻号頁・発行日
vol.2014-MBL-70, no.26, pp.1-7, 2014-03-07

本論文では,着脱可能な電線によって充電,給電しながら上空をセンシングするプラットフォームである EverCopter を提案する.バッテリー駆動による UAV(Unmanned Aerial Vehicle) は,地上の障害物を気にする事無く,広大な範囲をセンシングできる事が最大のメリットであるが,バッテリー容量による制限を受けてしまう.EverCopter は以下の 2 つの特徴により,長時間かつ広範囲なセンシングを可能とする.まず,複数に接続された EverCopter の一方は,地上の電源装置に接続され,給電されている.このことで,それぞれの EverCopter はバッテリー無しで飛行する事ができるため,半永久的な飛行が可能となる.また,末端の EverCopter はバッテリーを備えており,任意のタイミングで着脱が可能である.よって,UAV 本来の自由なセンシングも可能である.
著者
杉森 健 三武 裕玄 佐藤 裕仁 小栗 賢章 長谷川 晶一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1697-1707, 2020-11-15

VRメタバースやVTuberなどのように,モーションキャプチャデバイスを用いてリアルタイムにアバターを操作する機会が増えるにつれて,アバター同士接触することでコミュニケーションをとったり,アバターと物体が衝突する機会が増えている.しかし,現状ではアバター同士やアバターと物体が接触しても貫通してしまうか,不自然な動作になってしまう.そこで本研究では物理シミュレーションを用いて自然な接触動作を自動生成する.その際に問題となる追従遅れをフィードフォワード制御により解決する.提案手法により,これまでできなかったアバター同士やアバターと物体の自然な接触が可能であることを示す.さらに,提案手法ではこれまで一般的であった接触している振りの演技が不要になることで,演者の負担が軽減されることを示す.
著者
酒居 敬一 光成 滋生 成田 剛 石田 計 藤井 寛 庄司 信利
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.1028-1038, 2002-04-15

近年の汎用パーソナルコンピュータに多く使われているIA-32プロセッサは過去との互換性のために命令体系はCISC的である.しかし内部動作はRISCマイクロ命令への変換,ハイパーパイプライン,アウトオブオーダ,などRISC的アーキテクチャが多数取り入れられている.さらにSIMD的演算命令の搭載によりデータ並列処理を実現している.とはいえその新しい機構に応じたコードを生成するコンパイラはまだまだ少数であり,また対応していたとしてもコンパイラ独自の拡張C言語による記述が必要であることが多い.そのため通常のC言語による記述を主体としたベンチマークではプロセッサの正当な評価を行いにくい.そこで我々は実用的なアプリケーションとしてMP3エンコーダを選択しコード全般にわたってアセンブリ言語による最適化処理を行った.その結果C言語によるコードに対し2倍から3倍の高速化を達成した.
著者
野口 陽来 松井 利樹 小森 成貴 橋本 隼一 橋本 剛
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2007論文集
巻号頁・発行日
vol.2007, no.12, pp.144-147, 2007-11-09

朝日放送が製作しているテレビ番組に「パネルクイズアタック 25」がある. このクイズ番組を見る限り, 解答者は全ての問題に答えようとしている. しかし, クイズの正解が分かっても解答しないほうが有利な状況があるのではないかと考えた. そこで局面の解析にはモンテカルロ法を用いて, どのパネルを獲得しても不利になる状況を見つけ出した. その結果不利になる局面は全体の 3.8%に上ることが判明した. また不利になる局面の代表的な例として一問目を答えた人は二問目を答えない方がよいという例を示した.さらにパネルを選択する戦略についても提案した.
著者
森栗 茂一
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.95-127, 1994-03-31

仏教には,水子を祀るという教義はないし,水子を各家で祀るという祖先祭祀も,前近代の日本にはまったくなかった。にもかかわらず,今日,「水子の霊が崇るので水子供養をしなければならない」と,人々に噂されるのはなにゆえであろうか。いわゆる1970年代におこり,80年代にブームを迎えた水子供養が,すでに20年を経過した今日,これを一つの民俗として研究してみる必要があろう。前近代の日本では生存可能数以上の子供が生まれた場合,これをどのように処理してきたか。一つには,予め拾われることを予期して,捨て子にする風があった。捨て子は,強く育つと信じられ,わざわざ捨吉などの名前をつけたこともあった。しかし,社会が育ててくれる余裕がないと思えるとき,間引きや堕胎がおこなわれた。暮らしていけないがゆえの間引きや堕胎を,人々は「モドス」「カエル」と言って,合理化してきた。実際,当時の新生児の生存率は低く,自然死・人為死に関わらず,その魂が直ちに再生すると信じて,特別簡略な葬法をした。それでも,姙娠した女が子供を亡くすということは,女の心身にとっては痛みであり,悩みがないわけではない。しかも,明治時代以降の近代家族が誕生するにあたって,女は「良妻賢母」「産めよ増やせよ」「子なきは去れ」と,仕事を持たない「産の性」に限定された。そのため,女は身体の痛みの上に,社会的育徳という痛みを積み上げられた。そんな悲痛な叫びが,水子供養の習俗に表れている。ところが,この女の叫びは,宗教活動の方向と経営を見失った寺院のマーケットにされてしまう。寺院や新宗教の販売戦略,心霊学と称するライターによって演出され,読み捨て週刊誌に取り上げられてひろまった。明治時代以降の近代家族は,男の論理による産業システムのためのものであった。その最高潮である60年代の高度経済成長が終わった70年代に入って,水子供養が出てきていることは興味深い。産業社会の幻影が,女を水子供養に走らせた。その女を,寺院は顧客として受け入れた。こうして,女は金に囲いこまれて,水子という不安に追い込まれ,水子供養という安心に追い込まれていったのである。そこで,彼女らの残した絵馬を分析することで,女の追い詰められた心理の一端を,分析してみたいと思う。
著者
城所 宏行 末廣 芳隆 ブルシュチッチ ドラジェン 神田 崇行
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.1203-1216, 2015-04-15

公共の場で活動するソーシャルロボットが期待されている.ソーシャルロボットは人々の興味を引き,かつ有意義なサービス提供ができる可能性がある.しかし,興味を引かれてロボットと相互作用を始めた子供たちの行動が,ときに行き過ぎ,ロボットに対して攻撃行動を起こすことが明らかになってきた.観察実験によって,ロボットに関心を示した子供のうち,合計で117回の執拗な攻撃行動を観測した.子供たちはロボットに暴言を吐き,蹴り,叩くなどの行動でロボットの活動を執拗に妨害していた.本論文では,ロボットに対する執拗な攻撃行動を「ロボットいじめ」と名付け,この現象の緩和を試みる.この目的のために,子供のロボットいじめ行動をモデル化し,ロボットがモデルを用いてロボットいじめ行動を事前にシミュレートし回避可能にさせる.モデルを歩行者シミュレーションへ導入することで,子供のロボットいじめ行動をシミュレーション上で再現できるようにした.また,本論文では,ロボットいじめ行動のシミュレーションをロボットの将来行動の計画に用いる,というシミュレーションに基づいた行動計画方法を提案する.ロボットは,センサシステムから現在の状況を取得し,自らの行動に対して子供たちがどのような行動をして,その結果,近い将来どのような状況が生じるのかをこのシミュレーション上で検討する.このシミュレーション結果を比較することで,ロボットいじめが起きにくい行動を選択する.この「ロボットいじめのシミュレーションに基づいた行動計画」システムを構築した.実際のショッピングモールでシステムを用いた実験を行ったところ,ロボットいじめの生起を抑制できたことを確認した.
著者
桜井 芳生
出版者
九州地区国立大学間の連携に係る企画委員会リポジトリ部会
雑誌
九州地区国立大学教育系・文系研究論文集 = The Joint Journal of the National Universities in Kyushu. Education and Humanities (ISSN:18828728)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.No.13, 2013-10-01

この論文は「鹿児島大学法文学部紀要 人文学科論集」(第77号2013年p1-17)に掲載された論文を査読により加筆修正し、「九州地区国立大学教育系・文系研究論文集」Vol.1, No.1(2013/10)に採択されたものである。