著者
浜本 一知 田原 康之 大須賀 昭彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.11, pp.1812-1824, 2011-11-01

ライフログなどの個人情報を提供し,プロバイダより情報推薦などの個人サービスを受ける場合,多くの個人情報を提供することで更に品質の高い個人サービスを受けることができる反面,情報の漏えいや流用などによるプライバシ侵害の危険性も増える.そこで本論文では,ユーザごとに設定する希望匿名度に対応する属性を開示する前に,匿名度に影響を及ぼす二つの要素,(1)プロバイダのユーザ背景情報,(2)コミュニティの状況,をチェックし匿名度に反映させることで開示属性を調整し,結果,無用な情報開示を避けることを特徴とするプライバシ保護エージェントを提案する.(1),(2)それぞれにおいて,課題を分析し,解決への提案手法について述べ,(1)は事例モデルによる実験的机上検証,(2)は歩行者モデルを用いたコミュニティを想定し机上検証により,提案手法の妥当性と有効性を確認した.
著者
清水 彰一 西尾 和晃 木村 誠 藤吉 弘亘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.11, pp.1909-1918, 2011-11-01

人の行動意図を認識しようとするFirst Person Visionでは,人の状態とその人が何を見ているのかという情報が必要となる.そこで我々は,人の眼球と人の視界映像を同時に取得するInside-Outカメラを提案し,そのカメラの構成を活かした注視点の推定法も提案する.Inside-Outカメラはハーフミラーを介して眼球を正面から,視界映像を眼球と同等の位置から撮影することができる.Inside-Outカメラでは,眼球を撮影した画像から得られる視線ベクトルと視界を撮影した画像から得られる注視点位置の関係を変換式で表すことが可能である.そのため,変換式のパラメータをあらかじめ推定することにより,視線ベクトルから注視点を推定する.評価実験では,指標を注視した際の両眼,両視界映像を撮影し,視界画像の指標位置を真値として視線ベクトルから推定された注視点との誤差を算出した.評価実験から視野角において約1.5度の平均誤差で注視点を推定可能であることを確認した.人間は1点を注視しているとき,注視箇所だけではなく視野角で約2度の範囲がはっきり見えていることが報告されていることから,この範囲を評価基準とすると,提案手法は,十分な精度をもつことが分かる.
著者
松岡 俊佑 日野 善規 市川 周一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.10, pp.1696-1700, 2011-10-01

AES暗号とCamellia暗号について,暗号鍵を定数に固定した回路を設計し,FPGAによる実装評価を行った.その結果,従来回路と比較して論理規模が削減され,最大動作周波数が改善された.
著者
米津 遥 石井 大介 岡本 聡 大木 英司 山中 直明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J94-B, no.10, pp.1323-1331, 2011-10-01

近年,インターネットの普及に伴いトラヒック量及びネットワークの消費電力が増加していることにより,ネットワークの省電力化が重要な課題となっている.そこで,ネットワーク内のトラヒックを特定リンク上に集約し,未使用リンクの電源を落とすことによって省電力化を実現するMiDORiが提案されている.MiDORiネットワークでは,一定時間ごとにトラヒック量に応じて物理トポロジーの最適化を行うために,実用的な省電力トポロジーの計算手法が必要となる.そこで本論文では,元のトポロジーから一定数のリンクを削減するごとに,ネットワーク性能を維持可能なトポロジーを局所最適解として選択することで,省電力トポロジーを導出可能な計算手法を提案する.また,トラヒック集約により,1リンク当りのトラヒック負荷が高い省電力ネットワークにおける障害回復方式として,protection方式及びrestration方式を提案する.計算機シミュレーションにより,提案する省電力トポロジー計算手法の省電力効果・計算時間における有効性を示し,二つの障害回復方式を比較検討する.最後に,自律的なトポロジー最適化を可能とするMiDORiネットワークのプロトタイプシステムを紹介する.
著者
持永 大 小林 克志 工藤 知宏 村瀬 一郎 後藤 滋樹
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J94-B, no.10, pp.1293-1302, 2011-10-01

本研究は2030年までのネットワークが消費する電力を検討することを目標とする.消費電力の低減を検討するためにネットワークの構成を見直して,現在のパケット交換方式だけでなく,消費電力削減効果が期待できる光回線交換方式やコンテンツ配信ネットワークも活用した将来のネットワークの構成を想定する.この構成の特徴はアクセス回線網,広域中継網,中核拠点網に階層化することである.本論文では,インターネット上で転送されるコンテンツの大きさによって通信方式を変化させる手法を活用して,提案する方式の消費電力を従来のパケット交換方式と比較する.この消費電力の算出にあたっては,通信方式による効果だけでなく通信量・利用者数の将来の伸び,技術進化による省電力化効果も算入している.従来のパケット交換方式に加えて光回線交換方式,コンテンツ配信ネットワーク(CDN)方式を組み合わせたネットワーク構成の消費電力を検討した結果,いずれの方式においても消費電力を削減可能であり,パケット交換方式と回線交換方式を併用すれば,従来のパケット交換方式と比較して,67.7%の省電力化が達成できることが分かった.
著者
新井 俊希 北村 和也 米内 淳 大竹 浩 林田 哲哉 丸山 裕孝 バン クイク ハリー 江藤 剛治
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J94-C, no.9, pp.252-260, 2011-09-01

最高撮影速度が200万枚/秒の30万画素超高速度CCDを開発した.この超高速度CCDはフォトダイオードと読出し用垂直転送路の間にフォトダイオード1個につきそれぞれ144個のCCDメモリを配置した特殊な構造により構成される.全画素一斉の並列動作で信号電荷をCCDメモリに記録することで超高速度撮影が可能になった.超高速度CCDの最高撮影速度を見積もるため,フォトダイオード中の電荷の移動時間により制限される最高撮影速度と,CCDメモリに印加される電圧波形がなまり,電荷転送容量が低下しその結果飽和信号レベルが低下することで制限される最高撮影速度について検討を行った.その結果,電圧波形なまりに起因する飽和信号レベルの低下が最高撮影速度を制限する主要因であることが明らかになった.対策として分割駆動と配線抵抗の低減について検討を行い,いずれも効果的であることを示した.計算結果を踏まえて,分割駆動の分割数を8とし画素配線抵抗を2分の1に低減することを行った超高速度CCD-V6を新たに設計し素子を試作した.駆動評価実験の結果,飽和信号レベルは30万枚/秒まで100%を維持し,100万枚/秒において50%,200万枚/秒において13%が得られていることを確認した.200万枚/秒におけるダイナミックレンジは36.8 dBであり,映像信号6ビット相当が得られていることを確認した.
著者
松田 一朗 橋本 峻弥 須田 貴志 池田 悠 青森 久 伊東 晋
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.8, pp.1486-1495, 2011-08-01

本論文では,JPEG方式で記録されている静止画像のデータサイズを削減するため,画質を保持したまま再符号化する手法を提案する.JPEG方式は離散コサイン変換(DCT)を用いた非可逆符号化アルゴリズムを採用しており,符号化に伴う画質劣化はDCT係数の量子化ひずみによって生じる.したがって,JPEG画像データより抽出された量子化済みDCT係数を再量子化せずに可逆符号化することで,再符号化の前後で再生画像を完全に一致させることが可能となる.提案方式では,ブロック間の相関を利用したイントラ予測を導入するとともに,適応的な確率モデルに基づいた算術符号を用いることで,量子化済みDCT係数の効率的な可逆符号化を実現している.シミュレーション実験の結果,提案方式によって既存のJPEG画像データの符号化レートを19~33%削減できることを確認した.
著者
山澤 一誠 鈴木 可奈 横矢 直和
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.9, pp.1561-1569, 2011-09-01

近年,付箋の直観性・操作性を模倣した電子的な付箋システムが開発されている.本研究では電子的な付箋の利点であるマルチメディアへの対応と,紙媒体の付箋の利点である一覧性や直観的な操作感を,拡張現実感(AR)を用いて融合するシステムを構築した.マルチメディア情報の管理はブログシステムを採用することにより,閲覧・編集を簡単に行えるようにし,紙の付箋にマーカとしてQRコードを描くことで,ブログデータベースへのアクセスを容易にする.これによりユーザは紙媒体の付箋と同じように実環境に付箋を貼り,PCを通して実環境に重畳表示されたマルチメディア情報を閲覧・編集することで,効率的にメモを残すことが可能となる.
著者
宮地 隆雄 長谷川 まどか 田中 雄一 加藤 茂夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.9, pp.1513-1521, 2011-09-01

現在のユーザ認証方式は,文字入力による認証方式が主流である.しかし,セキュリティの強化を目的に,パスワードとして長くランダムなテキストをユーザに要求するシステムが多く,記憶がユーザにとって負担になっている.これに対し,画像は人間にとって認識及び記憶が容易であるという特性に着目し,テキストの代わりに画像をパスワードとして用いる画像認証方式が近年提案されている.しかし,多くの画像認証方式は,認証時にパスワード画像がディスプレイに表示されるため,第三者によるのぞき見攻撃に脆弱である.そこで,我々は,離散ウェーブレット変換を使用し,パスワードの代わりとなる画像の高周波成分とおとりとなる背景画像の低周波成分を合成した画像を認証に使用する方式を提案する.一般に画像の高周波成分は,離れた位置から見るほど認識しにくくなるという性質があるため,ディスプレイから離れてのぞき見を行う者に対しパス画像の認識を困難にすることが期待できる.本論文では,提案方式による認証システムを試作し,本方式と既存方式とのユーザビリティ及びのぞき見攻撃耐性の比較を行ったので報告する.
著者
近藤 一晃 西谷 英之 中村 裕一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.8, pp.1206-1215, 2011-08-01

人間とシステムが協調することで画像認識の適用範囲や精度を高める「協調的認識」の考えが提案されている.本研究では協調的物体認識を効果的に形成して認識を改善するインタラクションの設計について提案する.具体的には,認識結果やシーンの状況といった項目をシステムが評価し,認識を行う上で悪状況であった場合には,その説明とともに協力してほしい内容を人間に提示する.これにより,どうすれば認識が良い方向に向かうのかを簡単に知ることができるため,小さな負担で認識が改善されるとともに,人間にとって分かりやすい道具となることが期待される.協調的認識を行うための状況評価,提示インタフェースの設計・構築,及び実験を行い,認識困難な状況の検出が行えること,また人間の協力により認識が改善されることを確かめた.
著者
石原 達也 中村 幸博 武藤 伸洋 阿部 匡伸 下倉 健一朗
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.8, pp.1434-1449, 2011-08-01

住居におけるユーザとユーザ周辺の家電・家具等のモノの位置を取得できるセンサシステムを屋内に導入するためには,センサの導入コストを抑える仕組みが必要となる.本論文では,そのような要求を満たすものとして,ユーザ周辺の家具・家電等にユニークなIDが付与されたタグを配置し,ユーザが所持する計測端末で得られたタグのIDとタグとの相対距離情報を用いてそれら空間配置を推定する手法を提案する.具体的には,SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を応用し,距離のログデータから選択された距離情報の集合から計測端末位置を算出するモーションモデル用いて,計測端末とタグの位置並びにタグの推定位置に対するゆう度を同時に算出する.本提案手法の特徴は,計測端末とタグとの相対関係のみから各タグ位置を独立に推定すること.そして,タグのゆう度を監視することでタグが設置されたモノの移動を検知し,日常生活において起こり得るモノの移動に対して適応的な位置修正を行うことにある.超音波センサを用いた実験では,タグが設置されたモノを移動させた場合においても,計測端末とタグの位置推定誤差が200 mm程度で推定できることを確認した.
著者
高橋 勇 宮川 勝年 小高 知宏 白井 治彦 黒岩 丈介 小倉 久和
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J90-D, no.11, pp.2989-2999, 2007-11-01

従来,不正な剽窃行為は学習者間で行われていた.しかし,近年ではWebページの一部をコピー&ペーストして不正なレポートを作成する学習者が増えている.このような不正なレポートへの対策には,剽窃元のWebページの探索から剽窃箇所の学習者への提示までを含めたトータルな支援システムが必要である.本研究では,Web検索機能,剽窃評価機能,剽窃箇所特定機能の三つの機能からなる支援システムの枠組み,及び,n-gramを用いた類似度評価手法を応用したシステムを提案し,実装した.更に,これを用いてWebから擬似的に作成した剽窃レポートと,実際の授業で回収されたレポートを用いた評価実験を行った.その結果,前者の実験ではすべての剽窃元Webページが検出され,後者の実験では,本システムで剽窃の可能性が高いと判断されたレポートは,手作業・主観的評価による評価でも剽窃と判断されることが示された.
著者
森本 雅和 三好 卓也 藤井 健作
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J94-A, no.7, pp.548-551, 2011-07-01

本論文ではマイナー成分分析を用いてパンの種類を画像から自動識別する手法を提案する.パンは製造工程において発酵や焼成を含むため,個体差が発生しやすい.また,店舗レジへの導入を考えた場合,環境光変化に頑健であることが求められる.本研究では学習用パン画像から様々な特徴を抽出し,主成分分析をもとに特徴の選択を行う.このとき,パンの個体差や環境光変化が固有値の大きな主成分として現れることを考慮し,より分散の小さいマイナーな成分のみを用いて識別を行うことで,通常の部分空間法よりも識別率を改善できることを示す.
著者
佃 洸摂 中村 聡史 山本 岳洋 田中 克己
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J94-A, no.7, pp.476-487, 2011-07-01

本論文では,あるレシピに対して,追加・削除可能な食材を発見し推薦する手法を提案する.Web上にある料理レシピを閲覧しているときに,レシピに対して食材をあと一つ追加または削除したいということはよくあるが,従来のシステムではこうした食材の発見は困難である.本研究では料理レシピの構造を分析することで,追加・削除可能な食材を推薦するシステムについて述べる.例えばこれにより,ある料理レシピに対して食材を追加・削除することで,典型的なレシピに近づけたり,一風変わったレシピに近づけたりすることが可能となる.また,検証実験により,システムによるレシピの構造分析の評価や,システムが推薦する追加・削除食材の妥当性の評価を行った.また,追加・削除食材に基づいたレシピ探索を実現するシステムの実装,実装システムを用いたユーザヒアリングにより得られた提案する検索方式の利点・問題点を述べる.
著者
五十嵐 洋介 福井 和広
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.7, pp.1125-1134, 2011-07-01

時系列画像において抽出・追跡された特徴点集合の座標情報から因子分解法によって得られる形状空間は,特徴点集合の三次元的な幾何関係を表現しており,視点や対象物の動きに対して不変である.本論文ではこの形状空間の特性に着目し,形状空間同士の構造的な類似度に基づく物体認識のフレームワークを提案する.形状空間は特徴点数を次元とするベクトル空間中の三次元部分空間として得られるので,二つの形状空間の構造的な類似度は両者のなす正準角によって測ることができる.しかしながら,この類似度が意味をもって定義されるためには,二つの特徴点集合同士で特徴点が対応づけられている必要がある.この問題に対して,形状空間に付随して得られる直交射影行列を並べ換えることで対応付けを行う方法を提案する.提案する物体認識のフレームワーク及び対応付け法の有効性は,合成データを用いた性能評価,及びホクロなどの微小特徴に基づく顔認識実験により確認する.
著者
武川 直樹 徳永 弘子 湯浅 将英 津田 優生 立山 和美 笠松 千夏
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J94-A, no.7, pp.500-508, 2011-07-01

人と一緒に食事をすることは人のコミュニケーションにおいて重要な役割を果たしているが,研究例は少ない.ここでは,3人が食事をしながら会話をする映像から食事動作,視線,発話の行動を定量的に調査して共食会話の構造を分析した.人は,共食会話中,一つの口を,食べる行動,話す行動のどちらかのために選択していると考えられたが,分析の結果,口に食べものが入っている状況でも他人の行動と自分の行動を照らし合わせて話すべきときには発話を行っていることが示された.食事によって会話に沈黙を生じないようにしていることが分かった.また,箸,食器をテーブルに置いて話す動作は食事の開始,終了以外では見られず,食事にも関与し続けることが分かった.以上の分析の結果,共食会話では会話を優先しつつ,食事をするという構造が明らかになった.
著者
西本 一志 天野 健太 千葉 慶人
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J94-A, no.7, pp.488-499, 2011-07-01

食卓は,単なる食事のための場ではなく,コミュニケーションのための場としても非常に重要な役割をもつ.近年,情報メディアを食卓に持ち込む試みが多数なされつつあるが,それによって食卓における共食者コミュニケーションを促進することを主な目的とする試みは見当たらない.本論文では,筆者らのこれまでのインフォーマルコミュニケーション支援メディアに関する研究から得られた知見に基づき,複数の人々が持ち寄った写真等の情報を話題の種とする食卓コミュニケーション支援メディアの機能要件について検討した.その結果,写真等の情報を閲覧するための情報メディアと会話の話題とするための情報メディアとは全く似て非なるものであり,両者に求められる機能要件は大きく異なることが明らかとなった.具体的には,情報を会話の話題とするための情報メディアには,低い操作性や低い一覧性など,一般的には好ましくないとされる機能特性が要件となることを示す.
著者
遠山 毅 松本 勉
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.6, pp.957-967, 2011-06-01

ステガノグラフィは,通信している事実を第三者に悟られないことを目的とし,無害なデータに真に伝えたい情報を埋め込む技術である.広く使われる可能性のあるXML文書はステガノグラフィの媒体として魅力的であり,その研究においては,埋込手法の埋込効率性の評価に加え,埋込の検出攻撃に対する安全性も評価する必要がある.本論文は,オフィススイート文書保存形式の一つであるODTファイルを,幅広く用いられるXML文書の例として埋込媒体に採用する場合,既存の埋込手法により達成し得る安全性の評価を行う.また,ODTファイルの編集ソフトウェアがODTファイルに与える特徴を考慮した新たなステガノグラフィの埋込手法を提案する.更に,この提案手法は既存の手法に比べ高い安全性をもつことを確認する.
著者
鶴田 雅信 増山 繁
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.6, pp.977-988, 2011-06-01

手掛り語「会社概要」,及び,企業の公式ページのトップページURL一覧を入力とし,企業の基本情報を含むページの探索を行いながら,基本情報の属性を属性名,属性値の組の形で自動的に抽出する手法を提案する.提案手法は,企業の公式Webサイト全体からの属性抽出というタスクの一部を,基本情報ページの探索問題に置き換え,属性抽出の対象となるページ数を削減した上で,属性抽出を行う.そのため,Webサイト全体から属性抽出を行う場合に比べ,属性抽出手法そのものが単純であっても,良好な抽出を行うことが可能となることが特徴である.評価実験の結果,抽出された属性の精度は0.656,再現率は0.416,探索に成功したページのみにおける抽出結果の精度は0.781,再現率は0.625となり,幅優先探索によりページを探索するベースライン手法,及び,幅優先探索によって探索したページから,ナイーブベイズ分類器を用いて基本情報ページを選択するベースライン手法と比較して,良好な結果を示した.