著者
福井 トシ子
出版者
医学書院
雑誌
看護管理 (ISSN:09171355)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.254-261, 2009-04-10

はじめに 医療技術の進歩,患者の高齢化,重症化に伴い,看護師の役割はますます複雑多様化してきている。さらに,看護基礎教育の変容なども関連し,新人看護師の能力はすでに報告されているように医療環境の変化に対応するニーズに応えられなくなってきている。 各施設では,新卒看護師の教育に多くの時間を費やし,努力している一方で,経験年数の比較的短いプリセプターに新卒看護師教育への責任や実際の業務が任され,教える側も教わる側も余裕のない状況で新卒看護師教育が行なわれているのが現状である。また,実際に新卒看護師あるいは経験の少ないスタッフによるインシデントやアクシデントが起きていることからも,安全が確保され,かつスタッフの負担の軽減ができるような,教育システムをつくることが急務であろう。 厚生労働省も,こうした臨床現場における卒後教育・看護基礎教育における現状と課題をうけて,新人看護師到達目標と指導指針を提示し,新卒看護師研修制度の必修化に向けて動き出している。 しかし,臨床の現場では,マンパワーの確保や教育体制の質的な問題から,研修制度を取り入れている施設はごくわずかである。また,新卒看護師の教育に関する報告は,厚生労働省などの調査や,各施設・教育機関からの報告など多数みられ,新卒看護師の教育方法・内容の実態や,新卒看護師の実践能力(技術の習得状況)の経時的な変化,基礎教育での教育のあり方などが述べられてきた。しかし,施設の教育方法・内容,新卒看護師の背景,実践能力の経時的な変化を合わせて検討したものは見当たらない。つまり,どのような教育体制でどのような教育方法をとれば,厚生労働省の提示した指針,研修制度を実践できるのか,具体的な方法はまだ明らかにされてはいないということである。 そこで,教育体制,教育方法・内容,新卒看護師の背景,技術習得の経時的な変化を明らかにすることを目的に,日本私立医科大学協会看護部長会議で実態調査を行なったので報告する。
著者
池岡 義孝
出版者
医学書院
雑誌
看護研究 (ISSN:00228370)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.700-704, 2015-12-15

日本家族社会学会と機関誌『家族社会学研究』の歴史 日本家族社会学会(以下,本学会)の機関誌『家族社会学研究』は1989年の創刊で,2015年10月末時点で第27巻第2号まで刊行されている。本学会は,家族に関する理論的・実証的および実践的な研究を推進し,個人と社会の発展に寄与することを目的として1991年に設立された学術団体であり,日本学術会議協力学術研究団体となっている。現在の会員数は約700名で,家族に関わるさまざまな分野を専攻する大学・短大・専門学校などの教員,研究機関の研究員,家庭裁判所の調査官,ジャーナリスト,大学院生などの会員によって構成されている。学会の活動は,年1回の学会大会,機関誌『家族社会学研究』の年2回の発行を中心としており,これらを通じて,会員の研究成果の公表を行なっている。 このように,『家族社会学研究』は学会設立に先行して刊行された。学会は,1968年から毎年20年以上,夏に合宿形式で行なわれていた「家族社会学セミナー」を前身としており,1980年代半ば以降から,学会化が模索されていた。そのための一連の改革の中で,機関誌の定期刊行が大きな柱の一つになっていた。そこで,まず機関誌の定期刊行を学会の発足に先行させたのである。したがって,学会が発足するまでの4号の編集委員会体制は暫定的なものだった。1992年からは,選出理事の任期の3年ごとに理事会が交代し,現在は2013年から第8期の理事会によって運営されており,そのもとにある編集委員会も第8期となっている。当初は年1回の刊行だったが,2000年からは年2回刊行する2号体制となった。
著者
山本 真弓 鷲尾 昌一 入部 久子
出版者
日本看護倫理学会
雑誌
日本看護倫理学会誌 (ISSN:1883244X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.77-85, 2015-03-20

本研究の目的は、看護基礎教育における基礎看護学実習前後の看護倫理教育の実態を明らかにすることである。2007年5月〜7月看護基礎教育機関685施設の教育担当者に45項目の倫理教育実態調査を行った。結果、有効回答は85施設、回答率12%(内訳:看護学校56、短大3、大学26)。基礎看護学実習の開講時期は1・2年次が多く、実習前の倫理教育の報告は72施設(84.7%)に比べ、実習後の倫理教育48施設(56.4%)と少ない結果であり、実習後の臨床経験に基づく教育の機会が不足していた。また看護倫理教育は科目として構築されておらず、構築する必要あり53(62%)、必要ない13(15%)、どちらでもない16(19%)、無回答3(4%)であり、大学の教育担当者と看護専門学校の教育担当者間の科目構築の必要性に関する認識にはp値0.07と有意な差はないが、差の傾向が見られた。回答者の年齢は51±8.6、臨床経験年数13±7.4である。
著者
坂田 善政
出版者
日本言語聴覚士協会
雑誌
言語聴覚研究 (ISSN:13495828)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.3-10, 2015-03-15

本論文では,まず成人吃音の臨床において有用と思われる評価の枠組みを提案した.この枠組みは,吃音の問題を「吃音症状」「環境」「本人の受け取り方(認知・感情面)」という3側面から捉え,これらに「合併する問題」を加えた4側面から評価を行うものである.続いて,これら4側面に対して行い得る訓練・支援について概説し,訓練効果に関する研究についても紹介した.具体的には,流暢性形成法や吃音緩和法,統合的アプローチ,認知行動療法,年表方式によるメンタルリハーサル法,セルフヘルプ・グループといったアプローチについて言及した. 言語聴覚士は,吃音に関する授業が教育課程の中に明確に位置づけられた唯一の専門職である.それゆえに言語聴覚士は,吃音について悩んでいる方がいればその方々を支援する責任があり,また可能な支援の形は数多くある.
著者
吉田 穂波
出版者
医学書院
雑誌
助産雑誌 (ISSN:13478168)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.471-478, 2015-06-25

新人産婦人科医師として,分娩介助だけでなく母子の愛着形成のサポートの大切さを助産師から学び,母親として,妊娠中から産後まで助産師から大切に支援された経験のある筆者。 その経験と内閣府の少子化対策策定委員としての立場から,助産師だからこそできる少子化社会対策を述べていただきました。
著者
河合 蘭
出版者
医学書院
雑誌
助産雑誌 (ISSN:13478168)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.938-945, 2015-11-25

妊娠・出産の世界では「晩産化を食い止めなければ」という声が高まる一方だ。しかし,女性たちになかなか産まない理由を聞くと,「早く産んだほうがいいのはわかっているのですが,こればかりは相手がいることなので」と言う人が実に多い。 国の統計でも,たしかに,未婚率はどんどん上がっている(図1)。30〜34歳の未婚者は,1970年代までは男女とも10人に1人程度だったが,今や男性は約半分,女性は3人に1人となった。国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」によれば,「いずれ結婚するつもり」と回答する未婚者は今なお約9割を占めているが,実際には,相手が見つからないのだ。
著者
高木 俊輔 正木 秀和 大島 一成 車地 暁生 西川 徹
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.179-182, 2010-02-15

はじめに Cytochrome P450(CYP450)は肝臓において薬物の酸化的代謝を触媒する酵素群で,約20種類のサブタイプがあり,一般臨床において用いられる治療薬の多くがこの酵素群により代謝および分解される。また,こういった治療薬はCYP450酵素群に対してその酵素活性を抑制あるいは誘導することが知られており,複数の薬物が同時に用いられる場合はおのおのの薬物の代謝動態が複雑な相互作用によって影響される5)。たとえば,本症例のように関節リウマチ治療薬として抗ヒトtumor necrosis factor(TNF)αモノクローナル抗体製剤(infliximab)が使用される場合,この投与によって免疫力が低下するため,抗結核薬の予防的投与が必須となる。その場合,抗結核薬の1つであるrifampicinはCYP450酵素群を誘導し4),定型的抗精神病薬のhaloperidolの代謝を顕著に促進することが報告されている2,6)。 今回,関節リウマチを合併し,infliximab投与のためrifampicinを併用したところ,それまで投与されていたhaloperidolの血中濃度が多大な影響を受けた統合失調症の1例を経験したので,以下に報告する。 なお,個人情報保護の観点から,症例の細部においてはいくつかの変更を施した。また,本文中の薬剤量は1日投与量を記載した。
著者
河合 蘭
出版者
医学書院
雑誌
助産雑誌 (ISSN:13478168)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.410-415, 2015-05-25

2015年3月,5年ごとに見直される少子化対策の基本方針「少子化社会対策大綱」が新たに発表された1)。その内容は多岐にわたるが,これまでになかった新しい政策の1つに「妊娠・出産の医学的・科学的に正しい知識の教育」がある。 これには,次のような数値目標も示された。 「妊娠・出産に関する医学的・科学的に正しい知識についての理解の割合:70%」
著者
佐藤 拓代
出版者
医学書院
雑誌
助産雑誌 (ISSN:13478168)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.804-807, 2015-10-25

特定妊婦とはどのような妊婦で,その規定がなぜ必要になってきたのでしょうか。 助産師として知っておくべき対応のポイントとともに示していただきます。
著者
北村 邦夫
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.581-586, 2009-08-15

少子化の原因を探る 少子化の要因として,一般に強調されている子育て環境の問題などは他者の研究に譲ることとして,筆者は以下の4点を仮説として挙げ,これに答えるべく実証的な調査研究を進めてきた. 1) 結婚に対して消極的である 2) 妊孕力が低下している 3) 人工妊娠中絶実施件数が増加している 4) 性交頻度が減少している 本研究の目的を達成するために,公表されている厚生労働統計のうち,①人口動態統計(出生,死産,結婚,離婚),②保健・衛生行政業務報告(中絶),③妊娠届出報告などに加え,筆者らが実施した「男女の生活と意識に関する調査」結果1~3)を資料とした.
著者
久保 春海 臼井 彰
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.1365-1371, 2009-11-10

はじめに 女性の生殖可能期間は通常10代後半から45歳位までの約30年間と考えられている.しかし,生物学的にみて加齢とともに生殖能力が徐々に衰えていくことは明らかであり,妊娠の確率が低下するのは加齢に基づく生理的変化である.この生理的変化は20代後半ごろから始まるということをほとんどの女性は認知していない.卵母細胞は加齢とともに着実に減少するばかりでなく,質の問題として染色体異常(異数体)の頻度が増加し,その結果,流産率が上昇する.女性の卵巣予備能は20歳代前半がピークであり,20代後半から30代前半にかけて徐々に生殖能力は衰え始め,30歳代後半で急速に低下し始める.Menkenらによれば,加齢に伴う生涯不妊率では,20歳代では9%以下であるが,30歳前半で15%,30歳代後半で30%に妊孕力に問題が起きてくるし,40歳以降では64%が自然妊娠の望みがなくなるとされている(図1).これは生殖補助医療(ART)でも同様であり,不妊治療成績を左右する最も重要な因子が女性の年齢であることは明らかである.しかし,卵巣年齢〈卵巣予備能(ovarian reserve : OR)〉の低下速度は個人差があり,個々の女性の卵巣年齢を正確に判定する基準は確立されていないが,最近,ORを推測することが可能になってきた.また加齢不妊婦人に対するARTを含めた不妊治療の予後も推定することができる.加齢に伴う流産率の増加は,妊娠しても挙児が得られないという不妊症よりも悲惨な結果になる.
著者
広井 正彦
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.492, 1982-06-10

アメリカ合衆国の国勢調査によると,30歳以上で第1子を出産する母親の年齢は1960年で6.8%1),1979年で8%2)というように,高年齢出産化の傾向を示してきている。しかしこれらは社会的要因に由来すると考えられ,このデータから年齢と生殖能力との関係を論ずることは必ずしも容易なことではない。古いデータによると,出産年齢よりみた婦人の妊孕力は25歳がピークであるが,このピークは35歳まで持続するとされている。Jain3)は妊孕力の最高は24歳でその後は30歳まで減少すると報告しており,年齢と妊孕力との関係について月経が存在する期間は全く同じであるとは考えず,年齢と何らかの相関があると考えられてきた。また,Guttmacher4)によれば,初回の妊娠を希望した792例での妊娠までの期間は15〜24歳では2ケ月,35〜44歳では3.8ケ月と,若年者に比して高齢者にはほぼ2倍の期間を妊娠までに要するとし,高齢者の妊孕力の低下を示している。 このように一般には婦人がある年齢層に達すると妊孕力が低下することは認められているものの,この自然の生殖能に関する報告は少ない。すでに三つのデータを分析し,Leri—don5)は婦人の妊孕性は30歳をすぎると低下すると結論している。しかし,この妊孕性の低下は生物学的な意味で妊孕性が低下するのか,ただ単に性欲や性交回数の減少に由来するのかが判明しない。
著者
池松 弘朗 依田 雄介 大瀬良 省三 今城 眞臣 門田 智裕 加藤 知爾 森本 浩之 小田柿 智之 大野 康寛 矢野 友規 金子 和弘
出版者
医学書院
雑誌
胃と腸 (ISSN:05362180)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.1051-1053, 2014-06-25

はじめに 早期大腸癌の治療方針について,pTis(M)癌はリンパ節転移の報告がないことから,内視鏡的摘除の絶対適応病変とされている.しかし,その一方で,pT1(SM)癌は約10%の割合でリンパ節転移があることが報告1)されており,海外の多くの国ではリンパ節郭清を伴う外科手術が施行されている.また,過去の手術検体を対象にした,pT1癌のリンパ節転移のrisk factorに関する報告も多く認められる2). 本邦では,それらの報告を根拠に,リンパ節転移のriskの少ない病変を内視鏡的摘除の適応病変としている.「大腸癌治療ガイドライン2014年版」3)では,内視鏡的摘除後のpT1癌の経過観察条件として,垂直断端陰性例において,(1) 乳頭腺癌,管状腺癌,(2) 浸潤度<1,000μm,(3) 脈管侵襲陰性,(4) 簇出G1のすべてを満たすものとし,それ以外の病変は郭清を伴う追加腸切除を考慮すると記載されている. 内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection ; ESD)に代表されるような内視鏡治療技術の進歩に伴い,多くの早期大腸癌を内視鏡的に完全摘除することが可能になった4)5).その一方で,内視鏡的に脈管侵襲,簇出を診断することは困難であるため,完全摘除生検としての内視鏡的摘除を先行し,病理所見を確認した後でpT1癌の治療方針を決定したらどうかという意見も存在する.また,さらなる内視鏡的摘除の適応拡大が学会・研究会などで議論されており,今後ますます完全摘除生検としての内視鏡的摘除が議論の的になることが予想される. 本稿では,いくつかの側面から大腸pT1癌に対する内視鏡的完全摘除生検の必要性と問題点を概説し,現時点での筆者らの意見を述べたい.
著者
目黒 克己
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.39-42, 1967-01-15

Ⅳ.調査知見とその考察(その2)——主として症候移動について——1.CMIの実施とその知見 第1報において筆者は104例の戦争神経症患者の調査用紙の郵送と直接面接の予後調査知見を報告したが,筆者の予後調査の方法として,従来のものに比べて,特徴的な点は,との郵送調査にCornel Medical Index (CMI)を併用した点にある。
著者
目黒 克己
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.8, no.12, pp.999-1007, 1966-12-15

I.まえがき 神経症という病気が,素因と環境の両面から理解すべきものである事実は周知のとおりであるが,この問題を組織的に解明する一つの方法として,長期間にわたつて,同一人物の神経症の経過を追求するこころみがあげられる。 神経症の予後調査について: このような観点からみた場合,いわゆる戦争神経症の予後調査は,第一にそれが戦時,軍隊,戦場などの特異な社会的時代的な条件を契機として発生したという点,第二にそのような特異な状況が去つた一般社会のなかでの戦後20年間のわが国の社会文化的条件の推移に伴つてこれらの人々の神経症がどんな変わりかたを示しているかは,神経症と社会文化的環境の関係を解明する一つの手がかりとなるという点,第三に神経症の,いつたいどんなレベルがこのような社会文化的変動の影響を受けるか,どんなレベルが比較的不動であるかを調査する機会となるという点で,さまざまの興味ある精神医学的問題を含んでいる。すでにわが国でも,戦争神経症と社会文化的な環境について,井村1)が言及し,一般神経症の社会文化的条件の推移に伴う病像の変化について桜井,西園2)らの報告があり,また神経症の予後調査について中川3),大原4),またこの問題をいわゆる症候移動(Syn-drome Shift)の観点から組織的に研究している小此木5)の報告がある。
著者
菊地 龍明 後藤 隆久 相馬 孝博
出版者
医学書院
雑誌
病院 (ISSN:03852377)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.562-566, 2014-07-01

要旨 横浜市立大学附属病院で発生した医療事故に対して,医療安全管理室が中心となった院内での事故調査と,それに引き続き外部委員を加えた事故調査委員会による調査とが行われ,それぞれ報告書が作成された.後者の事故調査委員会では,ロンドン・プロトコルに基づき寄与要因の枠組みに沿って網羅的・系統的な分析を行った結果,より客観的な寄与要因の同定と対策立案が可能になった.さらに事故における本質的問題を定め,寄与要因との関連性を明確化したことにより,より具体的な対策案も示された.
著者
長田 祐記
出版者
医学書院
雑誌
病院 (ISSN:03852377)
巻号頁・発行日
vol.74, no.8, pp.546-547, 2015-08-01

調査概要 厚生労働省が主体となって行っている「人口動態調査」は,その名の通り日本国内における人口変動の実態を把握するための調査です.動態を扱うという意味で,静態データを扱う国勢調査と位置づけが異なります. 人口動態調査票には出生票,死亡票,死産票,婚姻票,ならびに離婚票の5種があり,市区町村がそれぞれの届出に基づき作成します.これらを保健所が取りまとめ,都道府県を介して,厚生労働省に送付するという流れでデータが集約されていきます.
著者
神庭 重信 平野 雅己 大野 裕
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.481-489, 2000-05-15

はじめに—気分障害の生物学的構造 気分障害の脆弱性は遺伝子と環境により構築される‘脳構造’に内在化されるものである。この比較的永続的な成分(static成分)は,神経回路網,脳細胞とその構成物質の階層に局在すると考えられる15,16,18)。遺伝子の問題は後で扱うことにして,ここでは“環境”について若干の考察を加えておく。static成分にかかわる環境としては,主として脳の発達時期の環境(すなわち養育環境)が重要であると考えられることが多い。しかし脳の可塑性が作動し続けるかぎりにおいて,過度の心理社会的侵襲が度重なるならば,なんらかの病的な可塑性31)が発達後に生じても不思議はない。また,心理社会的侵襲が,液性因子などを介して,神経細胞を傷害することは事実であろうし,特定の神経細胞の死と再生にすら影響を及ぼす可能性も認められつつある。むろんこれらの環境因子が脳に与える影響の種類と程度は,ゲノム上の数多くの遺伝子との相互作用のもとに決定されるのであろう。さらにつけ加えるならば,老年期に初発する気分障害では,老化が招く多種類の異質な脆弱性も当然予想される。私たちは,このような複雑で異種なstatic成分を気分障害に認めないわけにはいかない。 一方,病相は,このstatic成分の上に,発症の引き金をひく因子により引き起こされる‘脳機能’の,一般的に,短期的・可逆的な変化(dynamic成分)が加わって生まれるものである。ここでいう発症の引き金をひく因子は,心理社会的環境因をはじめとして,内分泌障害,薬物やアルコールなどの物質,季節変動など多彩である。したがってその作用点は脳構造のあるゆる階層にわたりうる。
著者
横山 美江
出版者
医学書院
雑誌
保健師ジャーナル (ISSN:13488333)
巻号頁・発行日
vol.71, no.7, pp.598-604, 2015-07-10

はじめに フィンランド(図1)は北欧型福祉国家として,母子保健をはじめとした社会サービスが広く行き届いた国である。このような社会環境を反映してか,フィンランドはさまざまな指標で世界の上位にランクされており,セーブ・ザ・チルドレンの「お母さんに優しい国ランキング2014」でも世界第1位を獲得した1)。 このように,フィンランドでは,妊娠期から子育て期に至るまで切れ目ない支援がなされている。この切れ目ない子育て支援の中核をなしているのがネウボラである。 「ネウボラneuvola」とは,フィンランド語で「アドバイスの場所」を意味している(ネウヴォneuvoがアドバイス・情報の意味)。ネウボラは,妊娠期から就学前にかけての子どもと家族を支援するための地域拠点(ワンストップ)であり,かかりつけ保健師(担当保健師)が中心となって支援にあたっている。 今日,このようなフィンランドの子育て支援が,日本においても注目されてきており,「日本版ネウボラ」をめざした母子保健システムを構築する自治体も出てきている2)。 筆者(横山)は,フィンランドのヘルシンキ大学との共同研究を10年近く実施している。その関係で,フィンランド国立健康福祉研究所(National Institute for Health and Welfare)とも共同研究を始めており,フィンランドの母子保健について学ぶ機会を得た。このフィンランド国立健康福祉研究所は,研究機関であると同時に,母子保健をはじめとした国の健康政策に関するガイドラインの作成も担っている機関である。 共同研究者である同研究所のTuovi Hakulinen-Vitanenは,フィンランドにおける母子保健のガイドライン作成にも携わっており3-6),フィンランドの母子保健の専門家である。 本稿では,フィンランドの母子保健の専門家とともに,フィンランドの母子保健システムと切れ目ない子育て支援の中核をなしている「ネウボラ」について紹介する。