著者
中川 裕
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.32-41, 1993

アイヌ文学中の「散文説話」と呼ばれるジャンルはさらに四つに分けられ、その中心となるのは「人間の散文説話」であるが、日本をふくむ他民族の伝承と関係づけられるものは「和人の散文説話」と「パナンペ・ペナンペ譚」に集中する。これは、前者において主人公の人称が四人称であるのに対し、後者が三人称であることと密接に関係する。それを立証する過程で、アイヌ文学における「一人称叙述体」という定説化した概念を再検討する。
著者
北條 具仁 船山 道隆 中川 良尚 佐野 洋子 加藤 正弘
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.434-444, 2009-12-31 (Released:2011-01-05)
参考文献数
21
被引用文献数
1

脳損傷後に距離判断が困難となった症例の報告は非常に少ない。今回われわれは,脳損傷後に距離判断が困難となった 2 症例 (1 例目は右頭頂-後頭葉の脳出血,2 例目は両側頭頂-後頭葉の脳梗塞 )を報告する。本 2 症例は,Holmes の提唱したvisual disorientation (1 例目は不全型)を呈し,その1 症状として距離判断の障害が出現していた。過去の報告例における距離判断の障害の根拠は主に主観的な訴えであったが,われわれはより客観的な距離判断の障害を検出する目的で,1 例目の症例に対して,大型車や 2 種免許を取得・更新する際に用いられる距離判断の検査機種 (KowaAS-7JS1) を用いて距離判断の検査を行った。その結果,健常者群および左半側空間無視群と比較して有意な成績の低下を認めた。本 2 症例および過去の報告例から,距離判断の神経基盤は,右側を中心とした頭頂-後頭葉の後方,すなわち,上頭頂小葉,下頭頂小葉後部,楔部にある可能性が考えられた。
著者
林 美沙 中川 幸延 遠山 知子 平野 亜由子 佐藤 彩子 瀬口 道秀 杉本 麗子 東山 真里
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.123, no.9, pp.1787-1796, 2013

インフリキシマブが奏効した乾癬に伴う難治性ぶどう膜炎の2症例を報告する.54歳,男性.28歳時に乾癬性紅皮症と診断されたが,不十分な治療により皮疹のコントロールは不良であった.38歳時に右眼ぶどう膜炎を,45歳時に左眼ぶどう膜炎を発症した.プレドニゾロンの内服で加療されるも難治であり右眼は失明に至った.2010年乾癬の皮疹,及びぶどう膜炎のコントロールが不良のため,インフリキシマブを開始した.治療開始後より皮疹,及びぶどう膜炎の症状は速やかに改善した.経過中に軽度の眼症状の再燃を認めるも,インフリキシマブを増量することで眼症状は改善した.34歳,女性.19歳時に乾癬を発症し,外用治療にて経過良好であった.2010年,産後より急速に体幹の皮疹の増悪を認め,多発関節炎が出現した.ステロイド軟膏とビタミンD3軟膏の外用,及びメトトレキサートの内服を開始するも難治であり,右眼のぶどう膜炎と視神経炎も発症した.インフリキシマブを開始し,皮疹,関節炎,及びぶどう膜炎は速やかに改善した.経過中に関節症状とぶどう膜炎の再燃を認めたが,インフリキシマブ,及びメトトレキサートを増量することで経過良好である.当院で経験した乾癬に伴うぶどう膜炎5例及び過去の報告症例から,ぶどう膜炎発症の危険因子,及びTNFα阻害剤の有効性につき若干の考察を加えて報告する.乾癬に伴うぶどう膜炎は難治で時に失明に至るため,免疫抑制剤に対し効果が得られない症例には,TNFα阻害剤は有効な治療として考慮すべきである.
著者
古巣 克也 尼子 龍幸 中川 稔章 浜辺 勉 青木 典久
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集A編 (ISSN:18848338)
巻号頁・発行日
vol.79, no.801, pp.573-581, 2013 (Released:2013-05-25)
参考文献数
12
被引用文献数
2 8

Recently, high strength steel material is used increasingly for plates which constitute the frame structures of vehicles. Since these plates become thinner, the buckling on the plates has been recognized as an important issue for automotive industries. In this paper, the expression is derived to obtain simply the shear stress on plates at torsional buckling for the box beams which represent the frame structure. Assuming the deflection shape of the buckled plate simply supported on all sides and the right angle at four corners, the precise expression is derived based on the energy method. However, this expression is complicated and hard to use easily. Therefore, the approximate expression is proposed by the knowledge from the aforementioned derivation. The accuracy of that expression is investigated as compared with the results acquired in the buckling eigenvalue analysis by FEM. As the results, the difference of shear stress at torsional buckling is less than about 5% as for the aspect ratio of the cross section between 0.4 - 1.0.
著者
河合 成文 中川 勝利 中川 大樹 土橋 孝政 小林 千恵子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>近年,共働きや少子高齢化により近隣同士の繋がりや,新旧住民の交流,多世代の交流,さらに家庭内でも交流が減少傾向である。各家庭で多くの介護問題を抱えている現状がある。奈良県橿原市では,「地域の課題は,地域自らが解決する」との観点から,市民が自主的かつ自発的に取り組む公益性のある活動や社会貢献活動を支援しており市民活動の活性化を図るとともに,市民と行政とが協働して地域課題の解決に取り組み,住民サービスの向上を目指している。今回,イベントを通し橿原市,行政,企業,住民同士,自治会,近隣の商店に至るまでの広くて強い繋がりをつくる事を最重要目的とした。地域全体で助け合える地域力向上を目指し,その第一歩として,海のない奈良県で海の日に「第1回橿原ウォーターガンバトル」を実施した。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>地域で暮らす現役子育て世代を中心に34名で橿原市から公認された市民活動団体(WAKUWAKU@橿原)を立ち上げた。キャラクターを作成し,ポスターを市内の商店や遊技場,施設などに設置した。SNSを使い参加の募集をした。競技は,5人で1チームとし,子供,大人の部をそれぞれ16チーム,未就園児40名の計200名が参加。勝敗は,頭にポイを装着し,制限時間は2分間とし水鉄砲で打ち合い破れると負け。最終,コートに残った人数が多いチームを勝ちとした。昼食は地域の名店街などでとってもらい交流を図った。コート横に応援スペースを設置した。大会開催場所は橿原市資産経営課に使用許可を得て県立橿原文化会館前広場で実施した。さらに県立橿原文化会館の更衣室,控え室,トイレも使用許可を得た。使用する水は,橿原市水道局と連携し,競技用の水を給水車から直接使用。さらに防災意識の啓発活動も実施。イベント終了後に参加された方や孫を見に来た方にアンケートをとった。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>応援スペースには孫を見ようと自ら会場まで足を運ぶ高齢者の方が多く,直接外に出ようというのではなく,2次的に外出意欲がでることが分かった。アンケートからは①家族で話す時間が増えた②近隣の人と話をするいい機会になった③近所にある飲食店やお店を知った④市役所や行政の方と話がしやすくなった⑤相談窓口などの存在を知った⑥楽しかったので是非来年も参加したいという意見が多かった。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>橿原市,橿原市教育委員会,橿原市水道局,近鉄八木駅前商店街振興会,近鉄八木駅名店街,橿原市市民協働課,橿原市資産経営課,橿原市水道局,奈良県中和保健所,橿原警察署,橿原消防署と我々理学療法士含め,地域住民が関わることで,市役所や行政の職員とも話がしやすくなったのではないかと考えられる。近隣でも介護の工夫などを共有することや,助け合える関係に近付いたと考えられる。来年はシニアの部や障がい者の部も実施し,地域住民が顔見知りで相談できる環境になり,地域力向上に繋がると考えられる。</p>
著者
小田 隆弘 磯野 利昭 中川 英子
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.180-185, 1983

1981年8月28日から30日まで韓国 (釜山) を旅行した福岡市内一民間会社職員27名のうち16名 (発症率59.3%) が在韓中の8月29日昼すぎから帰国後の9月1日朝にかけて, 下痢 (93.8%), 腹痛 (87.5%), 脱力感 (68.8%), 頭痛 (62.5%), 発熱 (37.5%), 吐気 (12.5%), 嘔吐, 悪感 (各6.3%) を訴える集団下痢症例が発生した.下痢は水様ないしは粘液便, 回数は最高10回, 平均4.5回で, 発熱は最高38.5℃, 入院を含めた臥床者が7名いたが死亡者はなく, 経過は良好で数日後に全員回復した. 患者の発生は31日をピークとする一峰性を示した. 在韓中の食事または飲料水が疑われたが感染源の推定はできなかった.<BR>細菌学的検査の結果, 患者13名中10名の便より毒素原性大腸菌 (ST<SUP>+</SUP>LT<SUP>-</SUP>) が検出され, 血清型別により, 034: H10と型別不能の2種の毒素原性大腸菌による複合感染事例である事が判明した.
著者
中川 優奈 三上 かつら 三上 修
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.133-143, 2017
被引用文献数
4

近年,都市の鳥類多様性に関する注目が高まってきている.河川は鳥類の群集構造に大きな影響を与えうる環境であるにもかかわらず,都市の鳥類多様性にどのような影響を与えるのか,定量的に評価された例は少ない.そこで本研究では,函館市内を流れる亀田川において,上流から下流にかけて,およそ1 kmごとに河川付近に調査地点を設定し,それぞれの地点で見られる鳥の種数と個体数を,繁殖期と越冬期の2つの時期で調査した.ここから,上流下流のどこで種数が多いのか,それらが季節によって異なるのかを検証した.調査の結果,河川沿いと住宅地では,繁殖期,越冬期ともに,河川沿いの方が有意に種数が多かった.このことは亀田川のような河川の存在が都市の鳥類の種の多様性を高めていることを示している.河川沿いにおける種数は,繁殖期には上流ほど種数が多いのに対し,越冬期では逆に下流の方で種数が多かった.これは繁殖期にはカッコウをはじめとした山に近い上流側の環境で繁殖する鳥が多く見られたのに対し,冬季はカモ類が流れの緩やかな下流の環境を利用したためと考えられた.このような種数の多さが季節によって逆転するということは,面積の影響が強くでる孤立した緑地と河川では都市の生物多様性に与える影響が異なっている可能性を示している.
著者
中川 幹子 藤野 孝雄 高橋 尚彦 石田 修二 渡邊 真理 丹羽 裕子 伊東 康子 桶田 俊光 犀川 哲典 伊東 盛夫
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.177-188, 1994-06-30 (Released:2010-09-09)
参考文献数
32
被引用文献数
1

糖尿病患者の心拍変動およびQT間隔と, 自律神経障害および心臓死との関連を検討した.対象は健常人13例 (C群) , 糖尿病群は自律神経障害を合併しない生存群9例 (AN (-) 群) , 自律神経障害を合併する生存群21例 (AN (+) 群) および心臓死群10例 (CD群) である.ホルター心電図より低周波数成分 (LF) , 高周波数成分 (HF) , LF/HFおよびRR間隔標準偏差の平均 (SD) を, 標準12誘導心電図よりQTc間隔およびQTc dispersion (最大QTcと最小QTcの差) を求めた.AN (+) 群とCD群は, C群に比しLF, HF, LF/HFおよびSDの24時間平均値と, その日内変動は著明に低下していた.最大QTc間隔はC群に比し糖尿病群では有意に延長していたが, 糖尿病の3群間には有意差を認めなかった.QTc dispersionはC群に比しCD群のみ有意に大であった.CD群は時間経過とともにHFの低下とQTc dispersionの増加が認められた.以上の成績から, 糖尿病患者の心臓死と自律神経障害およびQTc dispersionによって示される心室筋再分極の不均一性との関連が示唆された.

1 0 0 0 OA 地方之書

著者
中川, 賀充
出版者
岩崎常正写
巻号頁・発行日
1804
著者
牧野 夏樹 中川 大 松中 亮治 大庭 哲治
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.345-353, 2010 (Released:2017-11-29)
参考文献数
11
被引用文献数
2

近年、モータリゼーションの進展に起因する様々な都市問題への対策としてコンパクトシティの考え方が注目されており、大小様々な都市においてコンパクトシティ施策が検討されている。本研究では、都市の人口規模に着目し、人口規模の異なる仮想都市を対象として数値シミュレーションを行い、コンパクトシティ施策の効果について分析することで、人口規模の違いが各施策の効果へ及ぼす影響を明らかにした。また、郊外店舗が立地した場合についても分析し、施策実施前の都市構造により施策効果に明確な差がみられることを明らかにした。