著者
中村 剛
出版者
関西福祉大学社会福祉学部研究会
雑誌
関西福祉大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:1883566X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.37-44, 2012-03

社会福祉は本来,ケアの1 つであるにもかからず,法制度化された社会福祉の思想においては,ケアの倫理ではなく自立,権利(生存権),正義(公正)といった正義の倫理が語られる.しかし,ケアの倫理は正義の倫理の言葉では語られていない福祉思想を補い,福祉思想の明確化と体系化に寄与することができると考える.このような問題意識のもと本稿の目的は,ケアの倫理は正義の倫理の言葉では語られていない福祉思想の重要な側面を言い表していることを示すことである.考察の結果,ケアの倫理は,①自立イデオロギーからの覚醒,②正義の外部の者への眼差し,③〈選びえない〉現実への眼差しといった,正義の倫理に対する批判的機能を有すること,および,ケアの倫理には正義の倫理にはない「傷つき易い人間存在を気づかい,その人の呼びかけ(ニーズ)に応える」といった内容を有していることを明らかにしている.
著者
中村 剛
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.1-12, 2018-05-31 (Released:2018-06-28)
参考文献数
38
被引用文献数
9

尊厳と人権は社会福祉の原理であり理念である.しかし,その意味は不明確である.そのため,本稿では尊厳と人権の意味を明らかにした.これらの言葉は,西欧で生まれた概念であり考え方である.よって,まず,それぞれの言葉の概念史や語源を確認した.その上で,尊厳については,聖の次元に思考を拓くことで,その意味の解明を試みた.一方,人権については,「human」の側面と「right」の側面とに分けることで,その意味の解明を試みた.考察の結果として明らかにした意味は次のとおりである.尊厳とは,“聖なるもの”の経験の中で実感する「かけがえのなさ」,「他者の存在の大切さ」,「他者への責任=倫理」といった,世俗の価値とは質的に違う価値のことである.そして,人権とは,「人間らしく生き暮らしたい」という叫び・要求が,正義そして道徳や自然法のような規範を通して,一定の正当性をもった叫び・要求として認知されたものである.
著者
YANG KAI 中村 剛士 加納 政芳 山田 晃嗣
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

日本のコミックにはオノマトペがよく現れる.また,新しいオノマトペは日々創造され,コミックに登場している.当然ながら,造語された新しいオノマトペは日本語辞書では見つけることができない.そのため,中国語を母国語とする人にとっては,その新しいオノマトペの意味や印象を理解することは難しい.そこで,本稿では,日本語オノマトペから中国語オノマトペへの機械翻訳を提案する.提案する翻訳システムは音象徴性仮説に基づくものである.この翻訳システムは現在構築中である.本稿では,システムの構成要素について述べ,それらの実現可能性について議論する.
著者
中村 剛之
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.121-130, 2016-07-05 (Released:2019-04-25)
参考文献数
7

昆虫の形態をスケッチする方法を鉛筆による下書きから,インクを使ったペン入れ,仕上げまで手順を追って解説した.スケッチは観察した内容を人の頭の中で咀嚼し,その内容を紙の上に描き写したもので,写真のような単なる色や明るさの転写とは大きく異なる.見えるものを見えた通りに描くのではなく,描き方を工夫することで写真ではとらえにくい構造を人に伝わりやすい形で描くことができる.これがスケッチの利点であり,面倒を排して図を描く意義である.
著者
中村 剛之
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

水生ガガンボ類の幼虫と蛹は河川や湿地など水辺環境の調査で頻繁に確認されるものの、種の同定ができないために調査研究が進んでいなかった。本研究では、野外で採集した幼虫を飼育し、成虫を得ることによって種の同定を行い、日本産ガガンボ類の代表的な種の幼生期の形態的特徴と生息環境を調査した。その結果、42種のガガンボ類の幼虫と蛹の形態を明らかにすることができた。中には、これまで海外での研究結果から推測されていた姿とは大きく異なる特徴を持つ種もあることが判明した。このように、代表的な種の幼生期形態が明らかになることで、今後の生態学データの蓄積がなされることが期待される。
著者
加藤 健太 加納 政芳 山田 晃嗣 中村 剛士
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第30回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.1-4, 2014 (Released:2015-04-01)

解決すべきヒューマン・ロボット・インタラクションの問題の1 つに,ロボットの外観をどのようにデザインするのかという問題が挙げられる.ロボットの外観はインタラクションしているユーザの感情に影響を及ぼすことが先行研究によって示されており,その1 つが,森によって提唱された「不気味の谷」である.この「不気味の谷」に陥るのを回避しつつ好感の持てるロボットをデザインするため,本研究では"萌え"の要素を取り入れることを提案する.しかし"萌え"という概念が曖昧なため,対話型進化計算(Interactive Genetic Algorithm: IGA) を用いた3Dのデザインシステムを構築し,それを用いて"萌え"の概念を調査した.
著者
中村 剛
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.3-16, 2008-08-31

「仕方ない」とみなされていることが,実は不正義なのではないか.このような問題意識の下,本稿では,「仕方ない」と思われ見放されている人がいる現実と,すべての"ひとり"の福祉を保障しようとする理念とのギャップを埋めるために要請されるものとして社会福祉における正義をとらえ,その内容を明らかにしている.最初に,正義の概念と社会福祉の理念を確認したうえで,社会福祉研究において正義を論じる理由を確認する.次に「仕方ない」という現実了解に抗するために,他の可能性へと思考を開こうとするデリダの哲学と,不正義の経験という観点から正義論を展開するシュクラーの正義論を取り上げる.そして,この2つの観点から導かれる倫理的正義と政治的正義を提示する・結論として,社会福祉における正義を倫理的正義と政治的正義から構成される倫理的政治的正義と位置づけ,その内容を(1)意味,(2)構想,(3)合意される理由という観点から記述している.
著者
中村 剛
出版者
関西福祉大学社会福祉学部研究会
雑誌
関西福祉大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:1883566X)
巻号頁・発行日
no.12, pp.11-18, 2009-03

社会福祉の最も原初的な場面は,実際に支援が行われている現場である.にもかかわらず,その現場について研究する社会福祉現場論が存在しないのは社会福祉学において問題ではないか.このような問題意識のもと,社会福祉現場の本質(潜在的可能性)を明らかにすることを通して,社会福祉現場論という研究領域を設定することを試みている.結果,社会福祉現場の本質として,①社会生活が営めるように支援する(現場実践論),②社会福祉政策・運営管理論・援助技術論において提示されている知の有効性を検証する(現場検証論),③現状の政策論,運営管理論,援助技術論として提示されている知の不備を改善・修正するように提言する(現場検証論),といった点があることを明らかにした.そして,この3 点により,社会福祉現場論は社会福祉における理論と実践を結びつける役割を果たす研究領域であることを示している.
著者
戸本 裕太郎 中村 剛士 加納 政芳 小松 孝徳
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18840833)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.545-552, 2012 (Released:2012-10-11)
参考文献数
23
被引用文献数
2 1

Onomatopoeia refers to words that represent the sound, appearance, or voice of things, which makes it possible to create expressions that bring a scene to life in a subtle fashion. In this paper, we propose an onomatopoeia thesaurus map to enable the construction of a map that visually confirms “similarity relationships between a number of onomatopoetic words” and “similarity relationships between unknown onomatopoetic words and existing onomatopoetic words,” which are difficult to grasp from a conventional thesaurus. It is also possible to label objects with onomatopoetic words and visualize the similarity relationships between the objects on a map. In this paper, we introduce an example of labeling onomatopoetic words relating to the textures of sweets (desserts).
著者
中村 剛
出版者
富山大学
雑誌
学園の臨床研究 (ISSN:13464213)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.32-54, 2002-03-20
著者
山田 永子 中村 剛
出版者
日本スポーツ運動学会
雑誌
スポーツ運動学研究 (ISSN:24345636)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.1-20, 2018-03-13 (Released:2020-05-08)
参考文献数
24

Notational analyses and observation systems provide useful information about opponents in sports. Game analyses are often reported, but how an individual athlete analyzes players before a match is unclear. The purpose of this study was to reveal the types of intervening abilities an individual athlete analyzes based on a phenomenologic interview. The subject was an elite female handball goalkeeper. The subject was questioned about the ‘what’ and ’how’ of shots her analysis. Results  What; Shooters’ characteristics of kinaestic intentionality, shooters’ grasp and intuition, and minimum images that she would see when standing in front of the goal. How; By the viewpoint of shooter and goalkeeper alternately. From the viewpoint of shooter not only visualize but also with physical feeling when shooting. The viewpoint of goalie is the shooters’ movements from whole body shooting movements to detailed movements, and back to whole body movements.
著者
浜渦 辰二 中村 剛 山本 大誠 福井 栄二郎 中河 豊 前野 竜太郎 高橋 照子 備酒 伸彦 竹之内 裕文 竹内 さをり
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

医療,看護,リハビリ,介護,福祉,保育,教育まで広がる「北欧ケア」を,哲学・死生学・文化人類学といったこれまでこの分野にあまり関わって来なかった研究者も参加して学際的に,しかも,実地・現場の調査により現場の人たちと研究者の人たちとの議論も踏まえて研究を行い,医療と福祉をつなぐ「ケア学」の広まり,生活中心の「在宅ケア」の広まり,「連帯/共生」の思想が根づいていること,などが浮かび上がってきた。
著者
伊藤 惇貴 有沢 怜士那 加納 政芳 中村 剛士 小松 孝徳
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.26, 2012

人型ロボットの動作編集は,自由度が多く容易ではない.そこで,物体の音の響きや状態を感覚的に表すオノマトペを用いて人型ロボットを直感的に操作する手法を提案する.具体的には,オノマトペが付与された既知の動作を用いてニューラルネットワークを恒等写像学習させることで人型ロボットの操作平面を作成する.この平面を用いることで,モーション編集に馴染みのない人でも直感的にモーションを変化させることができる.
著者
田村 謙次 鳥居 隆司 武藤 敦子 中村 剛士 加藤 昇平 伊藤 英則
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.791-799, 2008-10-15 (Released:2009-01-05)
参考文献数
18

遺伝的アルゴリズムには早い世代で多様性が損なわれてしまう初期収束や個体間に有効な遺伝子列であるスキーマを効率的に広めるために適用する問題の特性に合わせた交叉や突然変異と呼ばれる遺伝的操作が行われる必要があるという問題点がある.また,進化論の一つにウイルス進化論がある.ウイルス進化型遺伝的アルゴリズム(Virus Evolutionary Genetic Algorithm : VE-GA)は適用問題の解候補となる宿主と,部分解となるウイルスを遺伝子列として持つ二つの個体群から成り,それらの相互作用による共進化により,大域的探索と局所的探索行い,スキーマを個体間に高速に広めることができる.宿主はより高い適応度を得るための解探索を行い,ウイルスは宿主の適応度を上げるための部分解の探索を行う.また,一般的なGAにおいて,交叉は重要な役割を持ち,さまざまな手法が提案されている.各手法における解探索能力はそれぞれ異なり,適用する問題の性質や遺伝子のコーディング,個体数,進化の状況にあわせた適切な手法を選択することが重要であり,GAの施行中に適切な交叉方法を選択する手法が報告されている.したがって,個体の遺伝子列を部分的に変化させるという点において交叉と類似している感染は,交叉同様に重要であると考えられ,宿主に感染する際に,世代途中で適切な感染手法を選択することにより,効率的な探索を行うことが期待できる.本論文では,感染手法による個体進化の相違を比較,進化の状況により適応的に感染手法を切り替える一手法である適応的感染手法を提案し,数値シミュレーションによる従来手法との比較を行ったことを報告する.
著者
伊藤 惇貴 加納 政芳 中村 剛士 小松 孝徳
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.364-371, 2015-01-06 (Released:2015-01-06)
参考文献数
18
被引用文献数
4 2

Onomatopoeias refer to words that represent the sound, appearance, or voice of things, which makes it possible to create expressions that bring a scene to life in a subtle fashion. Using onomatopoeias therefore makes process of robot motion generation more easily and intuitively. In previous research, objective quantified values of onomatopoeias have been used as indices of robot motion. In Japanese language, however, onomatopoeias also include mimetic and emotive words. Impression of these words arises from the experience of each people, therefore, its impression might differ among people. In this paper, we propose a method for adjusting the objective quantified values (sound symbolism attributes) of onomatopoeias. Using our method, users of robots are able to create its motions representing the user's image better.