- 著者
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中村 剛治郎
- 出版者
- 経済地理学会
- 雑誌
- 経済地理学年報 (ISSN:00045683)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, no.4, pp.275-298, 2012-12-30 (Released:2017-05-19)
- 被引用文献数
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現代においては,既存の経済活動を維持することが難しくなり,経済発展を牽引する革新的な経済活動を創出すること,そのための制度的な環境を準備することが重要になっている.結果としての経済地理を描くだけでなく,経済発展のための制度的環境を創り出して,経済と地理の新しい結びつきを生みだすことが,経済地理研究の現代的課題になっている.筆者は,経済と地理の間に,経済発展のための制度的環境としての地域(地域社会・文化・政治・環境・経済)という概念を入れて,地域における諸アクターの関係性の蓄積が作りだす地域の制度や制度的構造が経済発展にどのような影響を与えるか,それらを部分的に変えようとする制度的設計,地域的制度的仕掛けが新たな経済発展の経路を拓けるかを検討する方法が必要と考える.筆者は地域政治経済学的アプローチを,主体重視の発展論的で動態的な比較地域制度アプローチとして展開しつつある.本稿は,この視点から,筆者のこれまでの事例研究のうちのいくつかを整理し直して紹介し,現代の経済地理あるいは地域経済の抱える構造的問題と政策研究の課題を明らかにしようとするものである.はじめに,筆者の動態的比較地域制度アプローチに言及した上で,内発的発展という地域の論理をもちえずに外発的成長の国民的論理に翻弄された山間地域,地域の論理をもちながら国民的論理に組み込まれた大都市地域,国民的制度構造のもとで独自の内発的発展をしてきた地方都市,東京一極集中の問題性,外発的成長から内発的知識経済に変わった米国の都市,辺境の分工場経済から内発的知識経済に発展した北欧の都市を取り上げ,最後に震災復興の地域産業政策に言及する.