著者
渡部 数樹 中村 英樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_889-I_901, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
18
被引用文献数
7

本論文では,交通事故削減に向けた効率的な安全対策実施を目標として,道路交通や社会環境条件と事故発生との関係について事故類型別に統計モデル分析を行った.分析にあたっては,事故データに道路交通状況等の各種情報をGIS上で付与したデータベースを構築し,事故発生頻度を被説明変数とした負の二項分布回帰分析より影響要因の特定を試みた.分析結果より,幹線道路の事故発生頻度と混雑時平均旅行速度や交差点間距離が密接な関係にあることや,非幹線道路では道路幅員や用途地域等の要因が事故類型間で異なることを示した.さらに,非幹線道路の事故は旅行速度の低い幹線道路に近い位置で多発する傾向を示唆した.分析結果をふまえ,幹線道路の円滑性向上や階層化された道路ネットワークの再構築による安全性向上について考察した.
著者
久保 義郎 長尾 初瀬 小崎 賢明 加藤 礼子 中村 憲一 塩沢 哲夫 下平 耕司 中元 洋介 橋本 圭司
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.921-928, 2007-09-10

要旨:〔目的〕脳外傷者の不適応行動の構造を明らかにし,その程度を測定する「脳外傷者の認知―行動障害尺度」の構成を目的とした.ただし,専門的知識がなくても評価できるよう,質問項目を生活上観察可能な事項に限定した.〔対象・方法〕脳外傷者について,家族,もしくは本人の生活をよく知る福祉施設の支援員に調査を依頼した.〔結果〕因子分析の結果,7因子31項目が抽出された.因子は「健忘性」,「易疲労性・意欲低下」,「対人場面での状況判断力の低下」,「固執性」,「情動コントロール力の低下」,「現実検討力の低下」,「課題遂行力の低下」と判断された.〔結語〕本尺度の構成により,脳外傷者の不適応行動の構造が示され,定量的な測定が可能となった.このことで脳外傷リハビリテーションの標的が明らかになり,効果判定が可能となった.今後は本尺度に加え,障害への対処スキルを明らかにし,その修得度や頻度を評価する方法の開発も必要であろう.
著者
中村 紫織
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

「軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment: MCI)」は認知症の前段階とされ、Clinical Dementia Rating (CDR)でCDR0.5の「認知症疑い」に相当することがその診断基準の主要項目とされている。本研究は、先行研究でCDR0.5と判定された高齢者を追跡調査し、認知症に進行した人の割合を算出し、早期診断やハイリスク群の予測ができるかを検討する目的で実施した。本研究は疫学研究の要素を含むため、「疫学研究に関する倫理指針」(平成14年文部科学省・厚生労働省告示第2号)及び平成14年6月17日付け14文科振第123号文部科学省研究振興局長通知に定める細則に沿って東京慈恵会医科大学の倫理委員会の承認を得た。平成10年度に新潟県糸魚川市の高齢者への健康調査でCDR0.5と判定された252名のうち、生存者193名を対象とした。本人と家族に対し、本研究の目的、方法、意義、対象者への人権保護の配慮(守秘義務等)について十分に説明した文書と調査への協力の依頼状を送付し、賛同を得られた111人に対して精神科医師と保健師が訪問調査を実施した。その結果、33人はMCIにとどまっていると判断されたが、78人が認知症と診断され、アルツハイマー型認知症55.1%、血管性認知症29.5%、その他の認知症15.4%であった。7年間でMCIから認知症に進行した人の割合は70.3%、前回調査の時点で「直近一年間で進行性の認知機能変化がある」と判断された群では87.2%、「一年前とは変化がない」と判断された群では60.0%であった。CDR0.5に該当するというだけではなく、短期間における進行性の認知機能低下を認める場合にハイリスク群として経過を追うことが早期診断をする上で有効と考えられた。本調査の結果は第13回国際老年精神医学会、世界精神医学会国際会議2007で報告した。
著者
中村 一基
出版者
岩手大学語文学会
雑誌
岩大語文 (ISSN:09191127)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-9, 2006-12-08

日本において、《遺骨》はどのような思想史的な意味の中に置かれたのか。そのことを考える視点として、釈迦の遺骨(=仏舎利)に焦点を当てる。このことを考えることは、仏教をめぐる《聖遺物信仰》を考えることでもある。仏像が《偶像崇拝》を象徴するように、仏舎利は仏像以前からの《聖遺物信仰》の象徴であった。その意味で仏舎利信仰は仏教のもっとも根源的な信仰の姿を伝えている」(内藤榮「「仏舎利と宝珠」展概説」、奈良国立博物館編『特別展「仏舎利と宝珠-釈迦を慕う心」』、二〇〇一年一七二頁。本稿の基本的な構成・趣旨は、この概説に沿っている。)仏舎利を納める仏塔とともにアジアへ広がった。遺骨の聖性は釈迦に限定された特殊なものだったのか。《遺骨》は舎利信仰と接触することで、聖性への契機を掴んだのでないか。山折哲雄氏は仏教と結びついた舎利崇拝は、上層階級に受け入れられ、漸次一般に浸透していったが、「あくまでも「仏」という特定のカリスマの「舎利」にたいする崇拝」であり「例外的な遺骨崇拝」である(「死と民俗-遺骨崇拝の源流-」『死の民俗学』岩波書店、一九九〇年、四八頁)という前提に立ちながらも、五来重氏の元興寺極楽坊の納骨器研究に着日'、「わが国における仏舎利崇拝と納骨信仰とが共通の文化的土壌から生み出された同血の信仰形態であるということに、とくに注意喚起しておきたい」(同、六〇頁)と述べておられる。筆者も仏舎利崇拝と我が国における遺骨崇拝に基づく納骨の習俗とが、接点をもっているのではないかと考える。本稿は、そのことを明らかにするために、印度・中央アジア・中国・朝鮮・日本と釈迦の遺骨が《仏舎利》という崇拝の対象として辿った道筋を、日本の仏舎利信仰を中心に歴史的に俯瞰しながら、日本の《遺骨崇拝》形成にどのような思想的接触を持っていったかを探りたいと思う。ただ、「日本の舎利信仰は舎利は釈迦の遺骨である」という常識を一度払拭しないと理解できないほど、複雑に入り組んでいる」(内藤榮、前掲概説、同頁)のも事実である。
著者
中村 嘉明 溝上 章志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_1197-I_1205, 2018

我が国における乗合バスの輸送人員は1968年にピークを迎え,その後減少を続けている.そのような状況の中,バス利用者の減少の歯止めとして期待され,1980年頃からバスロケーションシステムの導入が全国で進んだ.2017年現在,バスロケーションシステムは全国で様々な通信インフラや,クラウドなどのサービスを利用し導入され,その形態は多様化している.一方で,過去に導入したバスロケーションシステムに導入効果が認められず,サービス廃止やシステムの入れ替えが行われているものも数多く存在する.本研究では,全国のバス事業者へのバスロケーションシステムに関するアンケートの調査結果と,多くのバスロケーションシステムの導入・運用の実態をもとに,バスロケーションシステムの現状と課題,今後のバスロケーションに求められるものを示す.
著者
中村 要介 池内 幸司 阿部 紫織 小池 俊雄 江頭 進治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.I_1177-I_1182, 2018
被引用文献数
1

本研究は平成29年7月九州北部豪雨を一例とし中山間地河川である花月川を対象として,RRIモデルと解析雨量・降水短時間予報を用いた疑似リアルタイム環境での洪水予測シミュレーションを実施した.予測計算は流域・河道の状態量を30分毎に更新・保存しながら6時間先までの水位を逐次計算し,実績水位と予測水位の差から洪水予測に内在する予測時間毎の水位誤差を定量的に評価した.その結果,予測時間が長くなるほど予測水位誤差の幅が大きくなることがわかった.また,RRIモデル×降水短時間予報を用いた今次災害のリードタイムは70分であった.さらに,予測水位の誤差分布を考慮し予測水位を補正することで,補正しない場合より2時間早く氾濫危険水位の超過を予測できる可能性が示唆された.
著者
中村 覚
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.155-158, 2019-03-15 (Released:2019-06-01)
参考文献数
5

本研究では、『捃拾帖』の内容検索を可能とするシステムの開発事例について述べる。『捃拾帖』とは、明治時代の博物学者である田中芳男が収集した、幕末から大正時代にかけてのパンフレットや商品ラベルなどを貼り込んだ膨大なスクラップブックである。東京大学総合図書館はこれらの画像を冊単位で公開しているが、貼り込まれた資料単位での検索が望まれていた。この課題に対して、本研究ではIIIFのアノテーション機能を利用し、各頁の貼り込み資料単位で画像を切り出し、検索可能なシステムを開発した。また、東京大学史料編纂所の「摺物データベース」が提供する、貼り込み資料単位のメタデータと組み合わせることで、内容情報に基づく検索を可能としている。本研究はその他、複数の機関が提供する各種リソース(IIIF・オープンデータ)を組み合わせて利用している点に特徴があり、デジタルアーカイブの利活用を検討する上での一事例として機能することを期待する。
著者
小張 真吾 磯崎 淳 山崎 真弓 田中 晶 安藤 枝里子 中村 陽一
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.155-163, 2016
被引用文献数
2

【背景】近年, 食物アレルギー児の数は増加し, 乳幼児を預かる施設での対応が求められている. 【目的】横浜市内の幼稚園・保育所での食物アレルギー児への対応の実態を明らかにする. 【方法】横浜市内の全幼稚園・保育所を対象に, 食物アレルギー児の把握法, 食事状況, アドレナリン自己注射薬 (エピペン<sup>®</sup>) の使用などについて無記名アンケート調査を行った. 【結果】過去の同種の調査と比べ食物アレルギー児の割合は幼稚園・保育所ともに増加していた. 保育所に比べ幼稚園では除去食や代替食対応が可能な施設は少なく, 食物アレルギー児の把握も医師の診断以外で行っている施設が多かった. 保育所の中でも, 認可外保育所には同様の傾向がみられた. エピペン<sup>®</sup>処方児は幼稚園で多かったにもかかわらず, 投与可能な施設は幼稚園のほうが保育所と比較し少なかった. 食物アレルギーに関する知識は, 保育所に比べ幼稚園職員で乏しい傾向があった. 【結語】幼稚園や認可外保育所を中心に, 乳幼児保育施設において, 食物アレルギーに関する知識の啓発と食物アレルギー対応の拡充をより進める必要がある.
著者
為栗 敦生 中村 鴻介 高橋 良颯 山口 実靖
雑誌
研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:21888779)
巻号頁・発行日
vol.2021-NL-249, no.1, pp.1-7, 2021-07-20

深層学習は文書分類等の自然言語処理にて活用され,Self-Attention などが大きな成果をあげている.一方で深層学習による分類は,分類精度は高いがその判断根拠を人間が理解することが困難であるとの指摘がされている.本稿では,テーマが定められたニュース記事群のテーマによる分類のタスクに着目し,深層学習による分類の判断根拠の提示手法について考察する.具体的には,LSTM Attention により記事分類を行い,高い精度で分類をできることを示す.そして,Attention 値や既存の判断根拠提示手法 Smooth-grad に着目し,自然言語記事分類の判断根拠提示手法について考察する.また性能評価により,これらに着目することにより判断根拠を提示できることを示す.
著者
中村 滝雄 ペルトネン 純子 長柄 毅一 河原 雅典
出版者
富山大学芸術文化学部
雑誌
GEIBUN : 富山大学芸術文化学部紀要 (ISSN:18816649)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.126-133, 2011-02

富山県で泊鉈を製作している大久保中秋氏(刃物・農土具製作所、昭和5 年生まれ)の作業場環境ならびに製作道具を調査し、その詳細を記録した。この調査によって、一般に鍛冶師が行う熱処理時の事例とは異なって、鍛造エリアが明るいこと、また製作道具が泊鉈製作に特化したものではなく、特別な冶具なども無いことが確認できた。このような状況の下、大久保氏が重要視していると考えられる鍛造エリアの明るさと熱処理方法の関係、ならびに製作道具の調査から野鍛冶の道具と製作技術について考察した。その結果、鍛造エリアの明るさは焼入れと焼戻しを同時に行う上で必要な環境であり、焼戻しにおける酸化色の移動状況を見極めるためであることが推察できた。また、大久保氏をはじめとする野鍛冶は、特定の製品に適応させた道具や冶具を作らず、臨機応変に駆使できる経験則的な技術を築き上げて個々の製品に対応し、製作していることが分かった。
著者
金子 修 中村 岳男 池崎 太一
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.857-864, 2018 (Released:2018-12-18)
参考文献数
15
被引用文献数
8 15

We propose a new approach to controller parameter tuning in the two-degree-of-freedom control architecture, what is called as Estimated Response Iterative Tuning (ERIT). The idea is very simple in the sense that the feed-forward controller is tuned so as to realize that the estimated response calculated in the off-line is equal to the desired response. This approach is very useful because the required material for the optimization are the obtained data and the available information like the feedback controller, the desired transfer function, and the initial feed-forward controller. Here, we analyze the cost function which appears in the ERIT. To show the validity of the proposed method, we give an illustrative example.