著者
小川 光明 岡村 真 島崎 邦彦 中田 高 千田 昇 中村 俊夫 宮武 隆 前杢 英明 堤 浩之
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.40, pp.75-97, 1992-12-15
被引用文献数
5

愛媛県伊予郡双海町沖において, 高分解能ソノプローブを用いた詳細な音波探査を実施し, 中央構造線活断層系の正確な分布と形態を記載した。さらに, 断層を挟んだ地点からピストンコア試料を採取し, それらを対比することにより, 断層活動の時期を解読した。この海域に分布する中央構造線は, 左雁行に配列する計4本の断層から構成されており, そのうちの1本には完新世における明瞭な右ずれ運動が認められる。また, この断層は近接する他の断層と同時に活動することにより, 細長い地溝を形成する。その活動時期は, 石灰質化石の^<14>C年代測定から, 約6200年前と約4000年前であると推定された。4000年前以降にも活動があったと思われるが, 残念ながら堆積速度の急減のため, 断層活動が保存されていなかった。本地域での活動性に, 陸上のトレンチ調査から解読された活動性を加味すると, 四国における中央構造線は, 少なくとも3つ以上の領域に分かれ, それぞれが約2000年の間隔で活動を繰り返していると考えられる。
著者
原口 強 中田 高 島崎 邦彦 今泉 俊文 小島 圭二 石丸 恒存
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.306-314, 1998-08-10 (Released:2010-03-25)
参考文献数
3
被引用文献数
6 13

未固結堆積物を定方位で連続的に採取する方法として独自に考案・開発した地層抜き取り装置と, 建設現場ですでに確立している鋼矢板打ち込み工法を組み合わせた定方位連続地層採取方法を提唱する. 本方法の原理は, 2つに分割したサンプラーを2段階に分けて地層中に差し込んで地盤中で閉合した断面を完成させ, それを同時に地盤から引き抜くことにより, その間に挟まれた地層を定方位で採取する方法である.本方法は, 活断層調査の現状における様々な問題点を克服するために開発されたもので, 2つの事例 (糸魚川-静岡構造線活断層系・神城断層と東京都旧江戸川) を示す. 糸魚川-静岡構造線活断層系・神城断層では幅35cm, 厚さ12cm, 深さ約11mの連続する定方位地層断面を2本採取し, 急傾斜する地層を切る小断層がとらえられた. 東京都旧江戸川では水深5mの川底から深さ約9mにわたって完新世の軟弱な未固結堆積層を幅30cmの地層断面として採取し, 縦ずれ量約25cmの連続する正断層状の地割れを含む地層断面を採取した. これらの採取結果から本方法が, 軟弱な未固結堆積物の定方位連続地層採取方法として広範に有効であることが明らかとなった.
著者
中田 高 島崎 邦彦
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.106, no.1, pp.59-69, 1997-02-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
4
被引用文献数
31 53

We invented a completely new simple method and new equipment necessary for high-resolution active fault studies. Vertical thin sections of unconsolidated soil layers are extracted by a newly invented sampler named “Geo-slicer”.Extracted sections can be taken to a laboratory for close examination or can be displayed at a meeting or even stored for future re-examinations (Fig. 1). This method enables us to carry on high-resolution analyses not only in active fault studies but also in other fields of Quaternary sciences with less expenditure of time, labor and money.We made three different-sized Geo-slicers and tested them successfully in the field. A Geo-slicer is made of steel and has a simple structure composed of a box and its shutter (Figs. 2 and 3). Several devices are implemented to the box and the shutter, such as wedge-shaped side walls and a stopper at the bottom of the box for easy pull-out of the equipment and steady-holding of samples (Fig. 4).For sampling, we firstly intrude the box vertically down into the ground by using a vibro-hammer (Photo 1) and then shutter sliding along the thin slits attached to the both sides of the box, and pull out the equipment containing samples.The extracted layers of sediments are surprisingly undisturbed and show almost the same features as previously observed on trench walls excavated close to the extraction sites (Photos 2 and 3). The largest sample collected by this method is 150 cm wide, 270 cm long (deep) and 8-15 cm thick (Photo 4).This sampling method is far more effective on active fault studies than the conventional trench excavation technique and we will be able to carry out three-dimensional analysis of active faulting, restoration of horizontal fault slips and so on for paleoseismological studies (Fig. 6).
著者
島崎 邦彦 中田 高 中村 俊夫 岡村 眞 千田 昇 宮武 隆
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

別府湾中央断層および北西部の三名沖断層、沖の瀬沖断層において音波探査およびピストンコアリングによる堆積物採取を行った。別府湾中央断層では過去6300年間に最大20mの上下食い違い量が見いだされている。この最も活動度の高い部分でコアリングを行い、断層の南北両地点で海底下16mを超える深度までの連続不撹乱試料を得ることができた。断層を挟む堆積物の対比結果により、海底面から海底下約2.5mまでは大きな上下食い違いを生じていないことが明かになった。年代測定の結果を考慮すると、過去1000年間この断層からは大きな地震が発生していないと結論される。しかし、断層の北側海底下2.5mから5mまでの間に、断層の南北で約7mの上下食い違いを生じている。この約7mの上下食い違いは年代測定の結果によると、2000年前から1000年前までの間に生じたと推定される。対比面の数が少ないため決定的な議論はできないが、約2000年前に7mの上下食い違いを生ずる大地震が発生した可能性がある。(他の可能性は、2000年前から1000年前までの間に複数回地震が発生した。)過去6300年間に約20mの上下食い違いを生じているので、一回の地震で7m食い違いを生ずるとすれば、過去6300年間に3回地震を発生したはずである。平均繰り返し間隔は約2000年となる。これは、昨年度の研究によって明かとなった中央構造線活断層系西部の松山沖の部分の繰り返し間隔とほぼ等しい。この両者はほぼ同じ時代に地震を発生している可能性があり、80km近く離れているが、力学的になんらかの連動性を持っているのかも知れない。中央構造線活断層系の四国中央部、および四国東部の部分も同様な繰り返し発生間隔であるとの推定があるが、最新の地震活動は、いずれも2000年前より新しい。このため現在の地震発生ポテンシャルは、西部の松山沖が最も高いと考えられる。同様に、別府湾中央断層も地震発生ポテンシャルが相対的に高いと結論される。
著者
熊原 康博 中田 高
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.72-85, 2007 (Released:2010-06-02)
参考文献数
16
被引用文献数
1 4

本研究では,2005年10月に発生したパキスタン地震(Mw=7.6)の起震断層を明らかにするため,CORONA偵察衛星写真を用いて断層変位地形の判読をおこなった.その結果,長さ66km,北西―南東走向,右横ずれ変位成分をもつ北東側隆起の逆断層タイプの活断層が認められた.活断層の特徴が地震のメカニズム解と整合すること,断層トレースに沿って地表地震断層が生じていることから,この活断層は本地震の起震断層であると認定される.この活断層をバラコット―ガリ(Balakot-Garhi)断層と呼称する.断層破壊方向と断層トレースの分岐パターンの関係によると,震源付近から両端に向かって断層破壊が伝播したことが推定され,実際の震源過程と調和している.地震前後の衛星画像から地震に伴う斜面崩壊を抽出すると,震源周辺及び断層トレースから上盤側5km以内に斜面崩壊が多いことが明らかになった.
著者
沖村 雄二 K.A QURESHI I.H HYDRI S H KHAN A N FATMI 星野 健一 中田 高 徳岡 隆夫 大槻 憲四郎 中村 耕二
出版者
広島大学
雑誌
海外学術研究
巻号頁・発行日
1987

パキスタンは, ユーラシア大陸とゴンドワナ大陸の一部の大規模衡突に伴う多様な地質現象のあらわれているところとしてよくしられている. 本調査研究は, 典型的な前地摺曲衡上断層帯といわれるパキスタン西部一帯の堆積相・堆積盆の移行・構造地質学・変動地形学・地球化学的解析により, 衡突型プレート境界に於ける地質学的諸現象を明かにしようとするものであって, 複数の対曲構造と横ずれの造構史の解明は, わが国のフォッサマグナ対曲の成因にも新知見をもたらすに違いない.パキスタン国のインダス河下流域の西域一帯, バルチスタン州のほぼ全域にわたって, 層序・古生物・堆積学的研究(1), 構造地質学的研究(2), 変動地形学的研究(3)の研究組織を編成して, 大陸プレートの衡突側縁で形成されたと考えられるクエッタ対曲の北部域を精査し, 南部域については予察を行った. (1)の部門では, ペルムージュラ系としてその地質学的意義のまったく不明であったAlozai層群の層序区分と, 生物相・堆積相について研究(下記6・4)を行い, プレート運動と関連する付加複合地質帯としての解析をすすめている. その一部は, 日本地質学会第95年々会(1988,4.)において発表される予定である. (2)の研究組織は, すでにICL(CC6)UNESCO国際セミナーでゴンドワナーユーラシア大陸の分離と衡突の過程について, その年代と特性を明かにした研究結果の一部を発表した(下記6・1および第1図). この研究分野では, さらに地球化学的解析(EPMAによる岩石学的・鉱床学的研究)をくわえて発表結果の裏ずけを進めるとともに, 有効資源の開発のための資料をつくりつつある. (3)については, ランドサット・空中写真地質解析と現地調査結果の一部であるパキスタン全域における活断層と変位量の解析結果を, (2)と同じ国際セミナーで報告し, さらに大陸衡突による地形の変動過程を明かにする研究をすすめている. また日本地理学会1988年春期大会において, この研究資料をもとにヒマラヤの応力場の問題が発表される予定である.なお, この海外学術研究については, 共同研究先のパキスタン地質調査所が, "Geology of Baluchistan, Pakistan"の出版計画を持っており, 研究の続行を強く希望している.
著者
中田 高 大槻 憲四郎 今泉 俊文
出版者
THE TOHOKU GEOGRAPHICAL ASSOCIATION
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.111-120, 1976
被引用文献数
7 4 4

Nagamachi-Rifu Dislocation Line runs in the NE-SW direction marking the boundary between Sendai Coastal Plain in the southeast and hilly land in the northwest. Along this dislocation line, deformation of terraces of the Hirose and Natori rivers have been noticed by many scholars. The present writers have investigated intensively the mode of deformation of the terraces and structure of Pliocene Sendai group, in order to clarify characteristics of Quaternary crustal movements along the dislocation line.<br>Main results are as follows:<br>1) The dislcoated terraces, i. e. Aobayama, Dainohara, Uwamachi, Nagamachi and Shimomachi Terraces in descending order, form an elevated zone stretching parallel to the dislocation line for 10km with width of 1km. On the northwestern margin of the zone, Dainenjiyama Faults (thrusts) are located shaping scarplets or gentle slopes and terrace deposits are often displaced on the faults. On the southeastern margin, a flexure structure associated with subsurface Nagamachi-Rifu Fault, which is presumed to be a thrust, forms conspicuous scarplets or steep slopes accompanying warped terrace deposits which submerge below alluvium.<br>2) These terraces are deformed with the greater rate on the older terrace in a same mode and the mode is also in harmony with that of Pliocene Sendai group. Average rates of vertical displacements on Dainenjiyama Faults and Nagamachi-Rifu Line are calculated to be 0.1+mm per year and 0.5mm per year respectively since formation of Aobayama Terrace III. Deformation rate of this terrace to that of uppermost Pliocene Dainenji bed is about 2 to 3.<br>3) Most of minor faults along the dislocation line are thrusts chiefly with dip-slip components and their strikes appear in the NE-SW direction, which coincide with characteristics of Dainenjiyama Faults and Shishiochi Fault located 1km to the west.<br>4) Judging from the deformation of Sendai Group with brittle shear fracture and unchangeable thickness of the group, commencement of crustal movements along Nagamachi-Rifu Line may be dated in Quaternary succeeding to the emergence of uppermost Pliocene Dainenji bed.<br>5) Maximum compressive principal stress axis, which is elucidated by the characteristics of major and minor faults along the dislocation line, lies in the NW-SE direction and coincides with the direction deduced from focal mechanisms of recent major earthquakes and microearthquakes analysis in the surrounding area.<br>6) This maximum stress direction pattern also concides with stress field inferred from characteristics of notable active faults in the vicinity. Some of historical great earthquakes have occurred along these faults indicating that these faults are still active under the same stress field.<br>Therefore it can be said that during Quaternary period continuous and accumulative crustal movements have been taking place along Nagamachi-Rifu Dislcoation Line under the NW-SE compressive stress field.
著者
中田 高 奥村 晃史 今泉 俊文 隈元 崇 堤 浩之 渡辺 満久
出版者
広島工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究は,従来の活断層研究により積み重ねられてきた断層の分布や構造に関する静的な断層モデルに対して,地震時の活断層の挙動に関する動的モデルを構築することを主たる目的とした.そのために,1)活断層の位置,形状,変位速度の分布を解明,2)断層変位量計測の新たな手法の開発,3)日本列島の活断層の変位量データベースの作成,4)活断層の挙動に関する動的モデルの検討,を具体的に行った.その結果,議論の多い活断層の不連続部や末端部において,大縮尺空中写真判読による見直しを実施し,これまで活断層の存在が確かではなかった岩国断層や西部や北九州地域の活断層をはじめ多くの活断層について,詳細な位置,形状を確定した.横ずれタイプと逆断層タイプのそれぞれの典型である阿寺断層および横手盆地東縁活断層系について,独自に空中レーザープロファイラーによるDEMを取得し,断層変位地形の把握,断層変位量の計測について,手法の利点と問題点を具体的に検討した結果,レーザー計測データを用いた断層変位地形の立体化が活断層認定に有効であり,正確な変位量の把握には変動地形学的手法の併用が不可欠であることが明らかになった.また,GPS地形測量装置や簡易レーザー計測装置(Handy Station)を用いた断層変位量計測を実施し,その有効性を検討した.さらに,既存の文献に記載された断層変位量などをもとに主要98活断層(帯)の活断層変位量データベースを構築した.これをもとに断層変位量分布の特徴を検討し,幾つかの活断層(帯)について地下のアスペリティの位置を推定した.これらの情報と活断層の幾何学形状から推定した断層の破壊開始点をもとに,主要活断層帯から発生する地震の動的モデルの試案を提示した.
著者
原口 強 中田 高 島崎 邦彦 今泉 俊文 小島 圭二 石丸 恒存
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.306-314, 1998-08-10
参考文献数
3
被引用文献数
7 13

未固結堆積物を定方位で連続的に採取する方法として独自に考案・開発した地層抜き取り装置と, 建設現場ですでに確立している鋼矢板打ち込み工法を組み合わせた定方位連続地層採取方法を提唱する.本方法の原理は, 2つに分割したサンプラーを2段階に分けて地層中に差し込んで地盤中で閉合した断面を完成させ, それを同時に地盤から引き抜くことにより, その間に挟まれた地層を定方位で採取する方法である.本方法は, 活断層調査の現状における様々な問題点を克服するために開発されたもので, 2つの事例(糸魚川-静岡構造線活断層系・神城断層と東京都旧江戸川)を示す.糸魚川-静岡構造線活断層系・神城断層では幅35cm, 厚さ12cm, 深さ約11mの連続する定方位地層断面を2本採取し, 急傾斜する地層を切る小断層がとらえられた.東京都旧江戸川では水深5mの川底から深さ約9mにわたって完新世の軟弱な未固結堆積層を幅30cmの地層断面として採取し, 縦ずれ量約25cmの連続する正断層状の地割れを含む地層断面を採取した.これらの採取結果から本方法が, 軟弱な未固結堆積物の定方位連続地層採取方法として広範に有効であることが明らかとなった.
著者
中田 高
出版者
日本地理学会 古今書院(発売)
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.p29-44, 1980-01
被引用文献数
18
著者
岡村 真 島崎 邦彦 中田 高 千田 昇 宮武 隆 前杢 英明 堤 浩之 中村 俊夫 山口 智香 小川 光明
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.40, pp.65-74, 1992-12-15
被引用文献数
6

別府湾北西部の海底には3 kmから5 kmの長さを持つ5本の正断層が分布する。この分布の様子は, 別府-島原地溝にみられる陸上の活断層分布と類似しているが, 連続する部分は認められない。今回, 長さ2 km以上の断層セグメントを命名した。活動度はいずれもB級 (1-0.1 mm/y) である。地溝状の, 相対する南落ちと北落ちの正断層とは, 東北東-西南西の線により二分される。伊予灘の中央構造線断層系においても地溝状の形態が認められ, 別府湾まで連続するかどうか興味ある問題である。断層の活動度は, 年代が解っている反射層の変位量から求めることができる。しかし, 個々の地震の発生時や変位量を求めるためには, 断層両側のコア試料の対比が必要となる。我々は当初, 豊岡沖断層の両側で海底ポーリングを行い, 海底下20 mまでの試料をえた。しかし, ポーリングによる海底堆積物採取は, 時間と費用がかさみ, 多くの断層に対して, また継続的に行うことがむずかしい。このため以後は, ピストンコアリングにより堆積物の採取を行っている。現在, 海底下20 m以上の連続試料を一日で数本得ることができるようになった。亀川沖西断層では, 過去6000年間に3回の地震発生が認められ, その変位量と時間間隔との間には規則性がある。断層変位の分布は対称で, 断層の両端の近傍で最大となる。
著者
渡辺 満久 中田 高 後藤 秀昭 鈴木 康弘
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100137, 2011 (Released:2011-11-22)

1.日本海溝沿いの活断層の特徴と地震・津波との関係を検討する。立体視可能なアナグリフ画像は、海上保安庁海洋情報部とJAMSTECの統合測深データ(0.002°間隔のGMT grd format、東経138-147°・北緯34-42°)と、250mグリッド地形DEM(岸本、2000)を用いて作成した。本研究では、平成23年~25年度科学研究費補助金(基盤研究(B)研究代表者:中田 高)、平成21~24年度科学研究費補助金(基盤研究(C)研究代表者:渡辺満久)を使用した。2 海底活断層は、以下の3種類に区分できる。(1) アウターライズの正断層群は、三陸沖から牡鹿半島南東沖にかけてはほぼ南北走行に延びるが、それ以南では海溝軸と斜交するように北東-南西走行となり、房総半島沖においては再び海溝軸と並走するようになる。正断層は、日本海溝軸から東側50~60km程度の範囲内に分布している。断層崖の比高には変位の累積性が認められ、海溝軸に近いものほど大きい(最大で500m以上)。(2) 三陸沖や房総半島沖の海溝陸側斜面の基部では、長さ200km程度の逆断層が複数認定できるが、連続性は良好ではない。その西側では、三陸北部沖から茨城県沖にかけて400km程度連続する長大な逆断層が認められ、隆起側には大きな垂直変位が生じていることを示す背斜構造がある。さらに陸側には、一回り小規模な逆断層(延長50km程度)がある。三陸沖以北の日本海溝斜面基部には、アウターライズより密に正断層が分布する可能性が高い3 日本海溝沿いの活断層と地震・津波との関係は、以下のように整理できる。(1) アウターライズには、鉛直変位速度が1mm/y程度の正断層が10程度並走する。正断層帯における伸長量は2cm/yに達する可能性もある。アウターライズの正断層起源とされる1933年三陸津波地震の起震断層は特定できない。(2) 延長400kmに達する連続性の良い逆断層は、その位置・形状から、2011年東北地方太平洋沖地震に関連する活断層であると判断される。今回の地震は複数の活断層が連動したものではなく、長大な活断層から発生する固有地震であった可能性が高い。同様の地震は、869年と1611年にも発生した可能性がある。1793年の地震時の津波は、分布は広いがあまり高くはないため、他の活断層が引き起こしたものであろう。海溝の陸側に分布する正断層に関しては、不明な点が多い。(3) 長さ200km程度の活断層はM8クラスの地震に、陸側の数10km程度の活断層はM7クラスの地震に関連するであろう。歴史地震との対応も比較的良好である
著者
中田 高 蓬田 清 尾高 潤一郎 坂本 晃章 朝日 克彦 千田 昇
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.127-142, 1995
被引用文献数
30 48

Distinctive ruptures of the surface faulting which generated the destructive 1995 Hyogoken-Nanbu Earthquake (M<SUB>s</SUB>=7.2) appeared along the Nojima fault, an active fault on the northwestern coast of Awaji island, Japan. The surface fault ruptures in Awaji island extend southwestward continuously for about 9km from Easki near the epicenter to Toshima in Hokudan town, and caused prominent right-latearl off-sets of 1.9m at maximum on roads, paddy dikes with vertical displacement of 1.2m at maximum, while no large surface faulting has been reported in Kobe where major damage and casualties have appeared.<BR>Most of the surface ruptures follow along the pre-existing active fault traces of the Nojima fault. The ruptures are generally arranged in left-stepping echelon, and local extensional and compressional jog forms such as trenches, mole tracks, buldges are sometimes related to changes in fault strikes.<BR>The earthquake fault seems to have propagated bilaterally northeastward and southwestward from the hypocenter in the Straits of Akashi near the major jog of the earthquake fault system. The source process of the earthquake deduced from the slip distribution along the earthquake fault in Awaji island well explains near-field P-waveforms of broad-band seismometers for early part in about 4 seconds. The later part of much larger amplitude should attribute to the northeast fault ruptures toward Kobe.