著者
佐藤 慎二
出版者
COSMIC
雑誌
呼吸臨床 (ISSN:24333778)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.e00013, 2017 (Released:2019-03-01)
参考文献数
28

抗MDA5抗体は,皮膚筋炎,特にそのサブタイプである典型的な皮膚筋炎の皮疹を呈しながら,臨床的に筋症状がまったくないかあるいはごく軽微な症例である無筋症性皮膚筋炎に見出されたDM特異自己抗体で,対応抗原はウイルス感染における自然免疫での感染防御機構で重要な役割を担っているmelanoma differentiation-associated gene 5(MDA5)である。同抗体陽性例は,臨床上,治療抵抗性・予後不良の急速進行性間質性肺炎を高頻度に併発するという特徴を有する。
著者
佐藤 慎哉 嘉山 孝正
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.443-451, 2013 (Released:2013-06-25)
参考文献数
6
被引用文献数
1 2

低髄液圧症候群は, 脳脊髄液の漏出により頭痛等を引き起こす疾患で, 70年以上も前にその疾患概念が提唱された. その後, その中に低髄液圧でない症例が存在するとの理由で脳脊髄液減少症の名称が提唱されたが, 臨床像に異なる点も多く, 疾病の定義が混乱している. さらに本症と交通外傷の因果関係が社会問題化している. このような状況のもと, 平成19年度から厚生労働科学研究費補助金を受けて「脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究」が行われ, 平成23年10月に脳脊髄液漏出症を対象にした画像判定および診断基準が公表された. 今回は, なぜ対象が脳脊髄液減少症ではなく脳脊髄液漏出症なのかも含め, 公表した基準について概説する.
著者
笈田 翔平 佐藤 慎祐 白水 靖郎 松島 敏和 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_563-I_572, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
14

本研究では,現行のPT調査データと商業統計調査データを横断的に活用し,それらの関連分析を実施した上で,「目的別・交通手段別集中交通量」と「小売業業態別店舗面積」に基づいて「ゾーン毎・業態別年間販売額」を算定する「商業売上予測モデル」の構築を試みた.そして,それらの関連分析及びモデル構築の結果,「商業売上」と「集中交通量」の間には明確に正の相関があり,加えて,交通目的や手段の相違によっても商業売上への影響度合いが異なることが明らかとなった.さらに,構築した商業売上予測モデルの感度分析を実施した結果,手段分担率の変化は商業売上の増減に大きく影響することが確認され,とりわけ,買物活動を企図としたトリップの交通手段を公共交通へとシフトさせることは商業の活力向上にとって重要な要件であることが分かった.
著者
山木 哲 近藤 礼 佐藤 慎治 毛利 渉 齊藤 元太 齋藤 伸二郎 園田 順彦
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.25-30, 2018 (Released:2018-02-14)
参考文献数
15
被引用文献数
1

In subarachnoid hemorrhage cases with multiple cerebral arterial aneurysms, it is important to identify the ruptured aneurysms. We previously reported the usefulness of the contrast-enhanced motion-sensitized driven equilibrium three-dimensional turbo spin echo (MSDE-3D-TSE) sequence method, which allows vessel wall imaging by visualizing enhancement of ruptured aneurysms at a high rate. The present study examined the usefulness of this method in cases with multiple ruptured cerebral arterial aneurysms. Between September 2011 and September 2014, magnetic resonance imaging (MRI) using the contrast-enhanced MSDE-3D-TSE sequence method was performed before surgery in 22 patients with acute-phase subarachnoid hemorrhage and a total of 53 cerebral arterial aneurysms. Among the 53 aneurysms, 30 (56.6%) showed enhancement of the aneurysmal wall. All 22 ruptured aneurysms showed enhancement. However, 8 unruptured aneurysms also showed enhancement (sensitivity: 100%, specificity: 73.3%). Ruptured aneurysms showed greater enhancement than unruptured aneurysms, and ruptured aneurysms were identified at a high rate. In cases with multiple cerebral arterial aneurysms in which ruptured aneurysms were difficult to identify with conventional methods, the contrast-enhanced MSDE-3D-TSE sequence method was extremely useful.
著者
橋岡 由佳 佐藤 慎祐 徳田 泰司
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.1128-1140, 2019

<p>入れ歯安定剤が硫酸バリウム(以下バリウム)の胃壁への付着過多を起こした場合の検査中の対応について検討した。</p><p>3社(A社, B社, C社)のバリウムと入れ歯安定剤2製品(以下D, E)を用いて粘度測定を行った。バリウムに人工胃粘液と発泡剤を加え粘度を測定した後D, Eを加えて再度測定した。既知の報告により本実験は50°Cのお湯30mLを追加して粘度測定をした。次にマーゲンファントムを撮影して視覚評価も行った。</p><p>D, E付加で粘度が上昇した。湯の追加で粘度はD, E付加前と同等または低下した。視覚評価では付着の評価も病変の評価も一部の条件を除き, D, E付加でバリウム溶液と有意差があり, 湯の追加でバリウム溶液と有意差はない結果となった。</p><p>バリウム溶液は懸濁液が冷水では粘度が上昇するためD, E付加で上昇した粘度を検査中に下げるにはお湯の方が効率的であると考えられた。ゆえにお湯30mLの追加は画質を担保できバリウムの付着を改善することが期待出来る。</p>
著者
佐藤 慎吾
出版者
The Tohoku Geographical Association
雑誌
季刊地理学 = Quarterly journal of geography (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.23-39, 2008-03-28

本研究は, 衆議院富山県第三区を対象に, 当該議員の集票組織の分析から, 後援会の空間組織の地域的差異を導出し, その上で後援会の空間組織とその編成要因について検討した。<br>A議員の集票組織には, 職域別の政治団体が20, 地場企業やその関連組織の自民党職域支部が7, A議員が私的に組織した後援会が44存在した。このうち, 政治団体役員の居住地と自民党職域支部の所在地, および後援会の設置地域は高岡市に偏在していた。また, A議員の事務所と秘書も同様に高岡市に設置されていた。<br>とくに, 後援会は高岡市内に26あり, 小学校区を単位として編成され, 支持者への日常世話活動が強化されていた。この背景には, 高岡市が富山三区内最大の票田地域であるにもかかわらず, 都市的地域特有の流動層と同じ党派のライバル議員によって, A議員の相対得票率が比較的低い値で推移してきたことがある。<br>一方, 高岡市外の18の後援会は市町村を単位に配置されていた。これは, 市町村が住民意識に強い影響を及ぼしているだけでなく, 有力な集票組織である農協の管轄地域や系列県議の選挙区地域, さらには公共事業の執行地域とその見返りとしての票の集計地域である点とも深く関係していた。
著者
佐藤 慎也 本杉 省三
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.70, no.592, pp.33-40, 2005

The purpose of this study is to understand the role of rehearsal rooms and stages in creation of a stage drama. For this study, we investigated the entire creation of the play, from the first rehearsal to the public performance. In fact, the actors and staff spent most of their time in the rehearsal room until the play was completed. Therefore, the rehearsal room has to be the same size as the stage and backstage areas to provide the same width and height, as well as all essential facilities. Furthermore, it is also important to plan the rehearsal room comfortable, because sometimes actors and staff may use it to take breaks.
著者
三倉 健吾 佐藤 慎一
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
vol.110, pp.17-25, 2021-09-30 (Released:2021-10-15)

In order to extract information about predators from the drillhole characteristics, predatory behavior, drillhole-site selectivity, and preference of prey size and species were examined in Rapana venosa and Glossaulax didyma. Laboratory experiments used predators and the prey bivalves collected from Lake Hamanako in Shizuoka Prefecture, central Japan. Glossaulax didyma always drilled around umbo of bivalve shell, and it preferred similar prey size to its shell size. In contrast, observation of predatory behavior of R. venosa revealed that this species usually killed prey bivalve without drillhole but left slit-shaped scratches or nomarks using probably poisoning or suffocation. Rapana venosa preferred the largest individuals among the different sizes of Ruditapes philippinarum, and it consumed first Cyclina sinensis rather than R. philippinarum and Scapharca kagoshimensis. Our results made clear the differences of the drillhole characteristics and preference of prey size between R. venosa and G. didyma, and enabled to suggest the predator species from the dead and fossil shell.
著者
佐藤 慎吾
出版者
The Tohoku Geographical Association
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.23-39, 2008-03-28 (Released:2010-06-22)
参考文献数
38

本研究は, 衆議院富山県第三区を対象に, 当該議員の集票組織の分析から, 後援会の空間組織の地域的差異を導出し, その上で後援会の空間組織とその編成要因について検討した。A議員の集票組織には, 職域別の政治団体が20, 地場企業やその関連組織の自民党職域支部が7, A議員が私的に組織した後援会が44存在した。このうち, 政治団体役員の居住地と自民党職域支部の所在地, および後援会の設置地域は高岡市に偏在していた。また, A議員の事務所と秘書も同様に高岡市に設置されていた。とくに, 後援会は高岡市内に26あり, 小学校区を単位として編成され, 支持者への日常世話活動が強化されていた。この背景には, 高岡市が富山三区内最大の票田地域であるにもかかわらず, 都市的地域特有の流動層と同じ党派のライバル議員によって, A議員の相対得票率が比較的低い値で推移してきたことがある。一方, 高岡市外の18の後援会は市町村を単位に配置されていた。これは, 市町村が住民意識に強い影響を及ぼしているだけでなく, 有力な集票組織である農協の管轄地域や系列県議の選挙区地域, さらには公共事業の執行地域とその見返りとしての票の集計地域である点とも深く関係していた。
著者
小澤 春香 佐藤 慎也 玉木 宏史 黒川 純
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0975, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】臨床的に下肢筋力強化や足底への荷重刺激,下肢伸展共同運動からの分離運動として患者にブリッジ動作を指導する機会が多い。その際にセラバンドやボールを用い外転筋群・内転筋群の選択的な収縮を図ることも多い。先行研究においてブリッジ動作時の股関節外転角度や膝関節屈曲角度の違いによる筋活動を比較した報告は多いが,内外転筋群への抵抗を加えたブリッジ動作の報告は少ない。そこで本研究では外転の抵抗を加えない通常のブリッジ動作と,外転・内転方向への抵抗を加えたブリッジ動作の中殿筋・大殿筋・内転筋群の筋活動を測定し,各ブリッジ動作が各筋に及ぼす影響を検討することである。【方法】健常成人男性17名(平均年齢25.9±2.9歳,平均身長170.9±5.3cm,平均体重65.5±9.7kg)を対象とし,測定肢位は上肢を胸の前で組み,股関節内外転中間位,膝関節屈曲130°からのブリッジ動作とし,股関節屈伸0°にて5秒静止を3回測定した。ブリッジ動作は無抵抗下でのブリッジ(ノーマル),外転等尺性収縮を加えたブリッジ(外転ブリッジ),内転等尺性収縮したブリッジ(内転ブリッジ)とした。股関節内外転等尺性収縮はハンドヘルドダイナモメーターと自家製固定装置を用い,最大等尺性収縮を基準として100%(max),50%,25%とした。測定方法は,表面筋電計マイオトレースを用い中殿筋・大殿筋・内転筋群の3筋を導出筋とした。ダニエルズのMMT5を基準として正規化し%MVCとした。測定区間は等尺性収縮5秒間のうち中間3秒間とし,3回の平均値を用い,各筋の%MVCを各ブリッジ動作で比較検討した。統計処理は,一元配置分散分析の後にTukeyの多重比較を用い,有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】研究の開始に当たり当院の倫理委員会の承認を得た(承認番号2013023)。また被験者には研究の意義・目的について十分に説明し,同意を得た後に実施した。【結果】中殿筋では,ノーマルで11.2±6.0%,外転ブリッジmax(外転max)で92.3±47.1%,外転ブリッジ50%(外転50%)で33.6±12.6%,外転ブリッジ25%(外転25%)で21.2±10.5%,内転ブリッジmax(内転max)で14.8±8.0%,内転ブリッジ50%(内転50%)で9.1±5.9%,内転ブリッジ25%(内転25%)で7.9±4.2%であった。外転max・外転50%ではノーマルより有意に高く,さらに外転maxは外転50%より有意に高かった。外転maxは他の全ての課題より有意に高かった。大殿筋ではノーマルで14.9±8.8%,外転maxで78.6±44.5%,外転50%で24.8±11.9%,外転25%で19.1±12.0%,内転maxで19.6±15.4%,内転50%で11.1±8.4%,内転25%で9.6±6.5%であった。外転maxは他の全ての課題より有意に高かった。内転筋では,ノーマルで12.9±5.8%,外転maxで9.7±5.9%,外転50%で1.8±0.9%,外転25%で3.2±2.5%,内転maxで60.8±19.6%,内転50%で26.3±12.2%,内転25%で15.0±7.0%であった。内転max・内転50%では他の全ての課題より有意に高く,さらに内転maxは内転50%より有意に高かった。【考察】ブリッジ動作において,外転方向へ等尺性収縮を最大努力で実施すると,通常のブリッジ動作よりも大殿筋をさらに活動させることができるが,最大努力の50%以下の抵抗では大殿筋の筋活動に変化はみられない。中殿筋・内転筋群は50%で筋活動が増加し,最大努力によってさらに筋活動は増加する。股関節内外転方向への抵抗を加えたブリッジ動作でさらに中殿筋・内転筋群を選択的に活動させるには,内外転方向への等尺性収縮を50%以上で実施する必要がある。【理学療法学研究としての意義】今回の結果から,ブリッジ運動を行う際は,目的とした筋に合わせて抵抗の種類・負荷量を変えることで,より効率的に筋活動を増加させることができると考える。
著者
野村 幸弘 佐藤 慎一 森 秀晴 遠藤 剛
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.106-116, 2008-06-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
24

イソシアナート末端ポリウレタンと2級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物 (シリル化剤) から, 新規なアルコキシシラン末端ポリウレタン (シリル化ポリウレタン) を合成した。シリル化剤は, 3-アミノプロピルトリアルコキシシランとアクリル酸エステルとの共役付加反応で合成した。得られたシリル化ポリウレタンの粘度は, アクリル酸エステルと反応させていない3-アミノプロピルトリアルコキシシランから誘導したシリル化ポリウレタンに対して低くなった。得られたシリル化ポリウレタンの硬化速度及び接着強さを比較したところ, シリル化剤のエステル部位のアルキル基が短いほど, 硬化が速いことが分かった。また, 引張せん断接着強さ及び接着性がシリル化率の影響を受け, シリル化率60%以上の条件では, シリル化率が低いほど接着性が高くなる傾向にあった。さらに, シリル化ポリウレタンの硬化触媒として, 三フッ化ホウ素-モノエチルアミン錯体 (BF3-MEA) とジブチルスズジメトキシド (DBTDM) の性能比較を行った。その結果, DBTDMに比較して, BF3-MEAは触媒活性が高いこと及びシリル化ポリウレタン硬化物の熱安定性を低下させないことが分かった。以上のことから, シリル化ポリウレタンは湿気硬化型接着剤のベースポリマーとして, またBF3-MEAはシリル化ポリウレタンの効果的な硬化触媒として利用できることが分かった。
著者
網代 広宣 小林 雄也 平田 昂大 板野 圭佑 佐藤 慎也 酒井 直也 仲島 佑紀
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.49-55, 2023-10-31 (Released:2023-11-07)
参考文献数
18

本研究は117名の高校野球選手を対象にCOVID-19感染拡大防止措置が実施された年と前年の傷害発生率を調査し比較した.季節別では,2019年と比較し,2020年の夏季で肩・肘傷害,冬季は足・足部傷害が増加した.各季節のポジション別では,夏季の投手・内野手の肩傷害,秋季で内野手の肘傷害,冬季で外野手の足・足部傷害が増加した.今後は得られた特徴より,傷害予防を講じていく必要がある.
著者
赤松 隆 佐藤 慎太郎 Nguyen Xuan Long
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.605-620, 2006 (Released:2006-12-20)
参考文献数
23
被引用文献数
26 27

混雑料金制は,理論的には,交通渋滞問題に対する優れた方策である.しかし,その制度の有効な実施に不可欠な(1)利用者情報(需要関数)の正確な推定や(2)渋滞メカニズム(ボトルネック混雑)を考慮した動的料金の設定は,実際には非常に難しい.そこで本稿では,混雑料金制度に代わるTDM施策として,“ボトルネック通行権取引制度”を提案する.そして,この制度の導入により,確実に渋滞が解消するのみならず,通行権取引市場で適切な通行権価格体系が実現し,社会的に最適な状態となることを示す.さらに,その証明を通じて,提案した通行権の設定・取引問題と住宅立地均衡問題の数理的同型性を明らかにする.
著者
佐藤 慎太郎
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.701-722, 2005-12-30 (Released:2017-07-14)

本稿は宗教学の問い直し(「宗教学とはいかなる学問か」)の試みの一つとして、M・エリアーデの宗教学を考察の対象とするものである。特に彼はその研究における鍵概念として「聖なるもの」を置いており、この概念との関係からその視点を浮き彫りにすることを試みる。そこには近代西洋世界の救済への切迫した危機意識を看取できる。彼の宗教学においてはヒエロファニー論にしてもhomo religiosus概念であっても、最終的な帰結までもってゆけば、必ず近代西洋の問題に対してポジティブな可能性を開くものとして主張されていた。すなわち彼の宗教学には意味の次元の開示による、客観性や実証性という原理では取りこぼしてしまう、非聖化を迎えた近代西洋社会において果たしうる文化的役割がいわば確信犯的に強調されていることを確認する。