著者
清水 渉 小山 卓 山田 優子 岡村 英夫 野田 崇 里見 和浩 須山 和弘 相原 直彦 鎌倉 史郎
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.392-396, 2009

QT短縮症候群(SQTS)は,器質的心疾患をもたないにもかかわらずQT時間が修正QT(QTc)時間で300~320msec未満と短く,心室細動(VF)から突然死を発症する症候群である.当院で有症候性のSQTS症例を4例経験した.全例男性で,3例でVFが確認され,1例では失神発作を認めた.12誘導心電図上,安静時QTc時間は平均327msecと短縮しており,全例で後壁および/または下壁誘導でスラー型またはノッチ型のJ波(早期再分極)を認めた.加算平均心電図では全例で遅延電位は認めず,電気生理学的検査を施行した2例では,いずれも右室の有効不応期は短縮していたが,VFは誘発されなかった.薬物負荷試験では,クラスIII群のニフェカラントとクラスIa群のジソピラミドの静注,およびキニジンの内服でQTc時間の延長を認めた.先天性QT延長症候群の原因遺伝子(LQT1,2,3,5,6,7)上に変異は認めなかった.全例で植込み型除細動器(ICD)が植込まれ,1例で3ヵ月後にVFの再発を認めた.
著者
野村 康弘 倉本 宣
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
巻号頁・発行日
pp.445, 2005 (Released:2005-03-17)

カワラバッタEusphingonotus japonicus (Saussure)は砂礫質河原という植生がまばらな河原に特異的に生息する昆虫である。近年各地で減少が著しく、東京都では絶滅の危機が増大している種と選定されており、一刻も早い対策が求められている。本種は主に被植度の少ない砂礫質河原に好んで生息することが先行研究により報告されているが、それ以外の保全に関する情報は今のところ報告されていない。そこで、多摩川における本種のメタ個体群を把握し、保全に関する基礎的知見を得ることを目的とし、研究を行った。調査対象地は多摩川の河口から51-59kmの範囲にある14の生息地で行った。調査方法は成虫が出現した時期から、個体に識別番号と個体群の情報をマーキングし、個体コード、性別、捕獲した地点をそれぞれ記録した。調査は2004年7月-10月にかけて行った。総捕獲数は6271匹で、再捕獲数は1630匹だった。その中で生息地間を移動した個体は85匹であった。各個体群の面積と移出率(移出個体数/再捕獲数)を対数モデルで検討したところ、強い負の相関が認められた(R=0.675、p<0.01)。また、出水後の調査により、多摩川における本種の生息地のほとんどが水に浸かるということが明らかになった。以上のことから小さい生息地が多数あることにより、本種の移動、生息地間ネットワーク化を促進し、出水による絶滅回避の確率を高くすると思われる。大きい生息地が少数存在している場合には、大規模な出水により個体群は大きなダメージを受ける可能性が高いことから、本種の保全戦略としては小さな生息地が多数存在するように管理することが重要であると考えられる。
著者
朝倉景衡 [編]
出版者
[書写者不明]
巻号頁・発行日
0000
著者
下畑 敬子 下畑 享良 小野 哲 茂木 僚一郎 石倉 秀昭 宮下 興
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.129-132, 2014 (Released:2014-07-18)
参考文献数
11

【目的】ナラトリプタンによる月経関連片頭痛に対する治療効果と問題点について検討する.【方法】対象は2008年6月から2010年1月の間に,ナラトリプタン2.5 mgにより治療を行った月経関連片頭痛患者16名とした.観察期間中における継続率,有効率,副作用について後方視的に検討した.【結果】継続率は14/16名(87.5%)であった.有効が14/16名(87.5%),無効が2/16名(12.5%)であった.重篤な副作用はなかった.継続した理由は,(1)再発率が低く経済的である,(2)副作用がない,があげられた.一方,継続できなかった理由は,(1)悪心・嘔吐で内服できない,(2)効果発現までの時間が長い,があげられた.【結論】月経関連片頭痛に対するナラトリプタンは,継続率,効果とも良好で,重篤な副作用もなかったことから,月経関連片頭痛に有用であると考えられた.一方,悪心・嘔吐のため内服困難であることや,別種類のトリプタンを状況に応じて使い分けている患者がいることもわかり,トリプタン製剤の使い分けなど,外来における患者指導が重要であると考えられた.

1 0 0 0 OA 三峯山誌

著者
石倉重継 著
出版者
闡勝閣書房
巻号頁・発行日
1906
著者
佐藤 豪 池永 雅一 俊山 聖史 太田 勝也 上田 正射 板倉 弘明 津田 雄二郎 中島 慎介 遠藤 俊治 山田 晃正
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.38-42, 2019 (Released:2020-02-29)
参考文献数
20

症例は51歳,男性.開腹歴はなし.腹痛,嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した.来院時,腹部は膨満し,臍下に間欠的自発痛と圧痛を認めた.前日の夕食にしゃぶしゃぶを食べていた.腹部単純X線検査では小腸ガスの貯留と鏡面像を認めた.腹部造影CTで絞扼所見を認めなかったため,胃管減圧チューブを留置して緊急入院した.翌朝,腸管拡張の改善がなかったためイレウス管を留置した.その後2日間経過観察したが,腹部症状の改善が乏しかったために緊急手術を施行した.拡張した腸管の先端で軟らかい腫瘤を触知し,腸を切開して摘出した.術後に再度問診を行い,入院前夜に大量に摂取した木耳(きくらげ)による食餌性イレウスと診断した.木耳による食餌性イレウスは本邦でこれまで報告がなく,若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
笹倉 香奈
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.3-7, 2017 (Released:2019-01-02)

本稿は「トンネル・ヴィジョン」に関する英米における議論を紹介することを目的とする。「トン ネル・ヴィジョン」とは、トンネルの中に入ったときのように視野が狭窄し認知の範囲が狭くなる 状態である。例えば捜査官はある被疑者に焦点を絞り、その被疑者の事件について有罪判決を得る ための証拠を選び出す。他方で、無罪方向を示す証拠を無視したり排除してしまったりする。有罪 への志向は証人や目撃者の取調べや識別手続、被疑者の取調べ、情報提供者への対応に影響を与え ることになる。この状況がトンネル・ヴィジョンであり、冤罪の原因となる。内在的な要因(認知 バイアス)だけではなく、外在的な要因(刑事司法制度を取り巻く様々な制度的な圧力)によって、 トンネル・ヴィジョンは強化される。捜査官のみならず、検察官、弁護人、裁判官など、全ての人 がある結論に固執し、トンネル・ヴィジョンに陥る。欧米では 2000 年代以降、刑事司法における トンネル・ヴィジョンや認知バイアスについての研究が進められてきた。トンネル・ヴィジョンに 陥り、冤罪を生まないようにするためにいかなる方策が必要かという点についての議論も紹介する。
著者
板倉 陽一郎
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP)
巻号頁・発行日
vol.2013-EIP-60, no.12, pp.1-6, 2013-05-09

ストリートビュー事件高裁判決(福岡高判平成24年7月13日判例集未登載(平成23年(ネ)第439号))高裁判決は,原審である地裁判決に続き,Googleストリートビューにおける屋外の洗濯物撮影にかかる損害賠償義務を否定したが,プライバシー侵害の主張のみならず,個人情報保護法違反についての主張,プライバシー配慮義務違反についての主張に判断を下しており,我が国個人情報保護制度への示唆を含むものである。本稿では,上記高裁判決についての分析を加えると共に,今後の個人情報保護制度をめぐる議論への有益な示唆を指摘するものである。
著者
平岡 真合乃 五味 高志 小田 智基 熊倉 歩 宮田 秀介 内山 佳美
出版者
神奈川県自然環境保全センター
巻号頁・発行日
no.10, pp.71-79, 2013 (Released:2014-03-06)

丹沢山地大洞沢試験流域内の流出土砂量と土砂生産源の季節変化を把握するために、流域末端の沈砂池で流出土砂量の測定と、流域内斜面でのインターバルカメラを用いた林床被覆の連続観測を行った。流出土砂量は台風などの大規模降雨時に多くなる傾向が見られたが、流量変化との関係は見られなかった。流域内で裸地は流路沿いに分布しており、斜面傾斜が40°以上と急傾斜であったことから、潜在的な土砂生産源と考えられた。林床被覆率は秋季から冬季の気温の変化にともなって経日変動していた。気温が0℃付近を変動している期間の裸地面では、凍結融解作用にともなう土砂の不安定化や移動が確認でき、土砂生産の季節的な変動が示唆された。
著者
片倉 直子 山本 則子 石垣 和子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.2_80-2_91, 2007-06-20 (Released:2011-09-09)
被引用文献数
5 1

本研究は,統合失調症をもつ者への効果的な訪問看護を,その目的と技術に着目して明らかにした.対象は,統合失調症をもつ利用者を2年以上継続して看護し,その間利用者に入院のなかった経験をもつ7名の訪問看護師,およびこの7名の訪問看護を受けた9名の利用者である.訪問看護師へのインタビューと訪問場面の参加観察を,質的に分析した.効果的な訪問看護では,利用者の地域生活に対する意志を看護師が了解する前後で目的が変化していた.意志を了解する前の段階では,「利用者の意志表出に道を付ける」が目的となり,「利用者の状況を五感でみる」「精神障害者として生きてきた体験の把握」「その人らしい特性の把握」「意図的に日常(ふだん着)の自分を使う」等の看護技術を用いていた.利用者の意志を了解した後は,「利用者に必要な生活能力を育成する」が目的となり,一部上記の技術を継続しながら「生活上の対処能力の把握」「意図的な日常の自分と専門家としての自分を使い分ける」等の技術を用いていた.
著者
佐倉 統
出版者
Primate Society of Japan
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.33-42, 1987 (Released:2009-09-07)
参考文献数
73
被引用文献数
5

Theoretical framework of sociobiology can be regarded as Lakatosian “advanced research program, ” which has high probability of problem solution and a flexible metaphysical structure. Some theories, however, should be expanded to apply to primate behavior, because a lot of primate behavior does not seem to have direct genetical bases. Learning ability of primates is higher than that of non-primates and some of higher primates even show cultural behavior. So that, it is necessary to clear up the relation between phenotype and behavior to establish primate sociobiology. For this purpose, a new concept on their relation, the “phenotype/sub-phenotype network” model, is presented here. If a behavioral parameter is genetically determined phenotype, behavior(s) which are influenced with this parameter can be called “sub-phenotype(s).” I also discuss some theories on cultural transmission and evolution, and confirm that the framework of sociobiology is useful to reveal this problem. These theories and models will provide fruitful perspectives on human origin and evolution, applied to primate pre-cultural behavior. Finally I discuss some problems and perspectives on primate sociobiology. On the development of primate sociobiology, it seems to be emergent and important to apply multiple variate genetic theory that has been developed by R. Lande.