著者
大井 祐太朗 舘野 宏彦 髙倉 大匡 將積 日出夫
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.333-336, 2020 (Released:2020-03-31)
参考文献数
8

症例は66歳男性。右前額部から眼窩周囲の違和感を主訴に近医総合病院内科を受診し頭部MRI所見で右上顎洞の液体貯留を指摘され慢性副鼻腔炎と診断された。マクロライド療法施行されたが改善なく精査加療目的に当科紹介受診。CTで右篩骨洞内に歯科インプラント体と思われる異物あり,内視鏡下鼻副鼻腔手術で異物を摘出した。 近年QOL向上や高齢者の増加等により歯科インプラント体埋込は増加傾向にある。歯科インプラントの副鼻腔への迷入は増えており,副鼻腔炎の精査の際には詳しい病歴や治療歴なども聴取し,異物も鑑別に精査する必要性があると考えられた。
著者
斎藤 清二 田中 三千雄 樋口 清博 窪田 芳樹 青山 圭一 島田 一彦 紺田 健彦 藤倉 信一郎 佐々木 博
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.24, no.8, pp.1238-1247_1, 1982-08-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
15

236例のERCP施行症例につき主に選択的胆管造影率の向上を目的として,超広視野角十二指腸ファイバースコープとストレシチ法の併用の有用性を検討した.Fujinon社製DUO-X(視野角105°)を使用した149例では,膵管造影率はOlympus社製JF-B3(視野角64°)を使用した87例の成績と差はなかったが,胆管造影率は明らかに高値であった(各々93.5%,77.8%).DUO-Xを使用してプッシュ法でERCPを行った群47例の選択的胆管造影率はJF-B3の45例のそれと統計的有意差を認めなかったが(各々89.4%,77.8%),DUO-Xとストレッチ法を併用した群61例では有意に高い胆管造影成績(96.7%)が得られた.DUO-Xとストレッチ法を用いて施行条件を一定としてERCPを行った32例中胆管造影成功30例の所要時間は平均11分24秒であった.ストレッチ法でのERCPは試みた大部分の症例において容易に施行され,症例の胃形態とスコープ走行形態の間には一定の関連は見い出し得なかった.以上よりERCPにおけるストレッチ法は選択的胆管造影に有利な方法であり,超広視野角十二指腸ファイバースコープの併用により比較的容易かつ確実に施行できる勝れた方法であると思われた.
著者
清野 諭 北村 明彦 遠峰 結衣 田中 泉澄 西 真理子 野藤 悠 横山 友里 野中 久美子 倉岡 正高 天野 秀紀 藤原 佳典 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.399-412, 2020-06-15 (Released:2020-07-02)
参考文献数
39

目的 本研究の目的は,大都市在住高齢者を対象としてフレイルの認知度とその関連要因を明らかにすることである。方法 東京都大田区で実施したフレイル予防のための地域介入研究のベースラインと2年後調査データを用いた。2016年7月に,郵送法によって65-84歳の男女15,500人の健康度や生活実態を調査した。2018年 7 月に同一集団のフレイル認知度を調査し,この有効回答者10,228人をフレイル認知度の解析対象とした。さらに,これに2016年の調査データを結合できた9,069人を対象として,フレイル認知度の関連要因を検討した。フレイルについて「意味を知っている」または「聞いたことはあるが意味は知らない」と回答した者の割合を認知度とした。これを目的変数とし,年齢,婚姻状況,家族構成,教育歴,等価所得,BMI,既往歴の数,食品摂取多様性得点,腰痛,膝痛,飲酒,喫煙,抑うつ,運動習慣,社会活動,社会的孤立,フレイルの有無を説明変数とした決定木分析とマルチレベルポアソン回帰分析を適用した。結果 フレイルの認知度は20.1%(男性15.5%,女性24.3%)と推定された。決定木分析による認知度の最も高い集団は,社会活動と運動の習慣があり,かつ食品摂取多様性得点が 4 点以上の女性であった(認知度36.3%)。フレイル認知の独立した有意な関連要因は,年齢(1 歳ごと:多変量調整済み prevalence ratio[PR]=1.03,[95%信頼区間=1.02-1.04]),性(女性:1.35[1.21-1.51]),教育歴(高等学校:1.27[1.11-1.45],短大・専門学校以上:1.47[1.28-1.70]),等価所得(250万円以上/年:1.12[1.01-1.25]),運動習慣(あり:1.26[1.11-1.43]),食品摂取多様性得点(6 点以上:1.37[1.21-1.55]),社会活動(あり:1.33[1.20-1.49]),社会的孤立(あり:0.75[0.67-0.85]),フレイル(あり:0.72[0.62-0.84])であった。結論 フレイルの認知度は低水準であった。高年齢で社会経済状態や社会活動・運動・食習慣が良好な女性ではフレイルという用語が比較的よく認知されていた。一方,フレイル対策が必要な者ではフレイル認知度が低いという実態が明示された。ハイリスク者のフレイル予防・改善を促す具体策の検討が急務である。
著者
井浪 義博 安東 嗣修 佐々木 淳 倉石 泰
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.132, no.11, pp.1225-1230, 2012 (Released:2012-11-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

The primary function of surfactants is to remove dirt, exfoliated corneum cells, and microorganisms from the skin. However, the use of toiletries such as soaps and shampoos containing surfactants may cause adverse effects such as cutaneous irritation, dryness, and itching. Recently, skin pathologies, including dry skin, rough skin, and sensitive skin, have increased because of changes in living conditions and lifestyle. Although many people with skin pathologies complain of itching during and/or after skin washing using detergents, the mechanisms of detergent-induced itch are yet to be elucidated. Therefore, in this study, we investigated the mechanisms underlying surfactant-induced itching. We found that topical application of an anionic surfactant sodium laurate at an alkaline pH, but not N-lauroylsarcosine sodium salt at neutral pH, to mouse skin induced scratching, an itch-related response. Additionally, we found that the sodium laurate-induced scratching was inhibited by H1 histamine receptor antagonist, but not mast cell deficiency. Sodium laurate application increased histamine content and the level of the active form (53 kDa) of L-histidine decarboxylase (HDC) in the mouse epidermis, but not the dermis. Furthermore, addition of sodium laurate to a human epidermal cell culture increased histamine release and HDC levels, without affecting cell viability. These results suggest that surfactants with alkaline properties are pruritogenic and that the pruritus is induced by the histamine released from epidermal keratinocytes. The increase in histamine release may be attributable to the activation of HDC in epidermal keratinocytes.
著者
吉村 政哲 城倉 洋二 花沢 英行 野崎 利雄 奥田 峰広 芋川 玄爾
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.249-254, 1993-12-16 (Released:2010-08-06)
参考文献数
20
被引用文献数
4 1

Lauroyl beta-alanine (LBA) is a unique amino acid derivative-surfactant which has recently been found to have very low potential of inducing a specific inflammationrelated receptor on epidemal cells, intercellular adhesion molecule-1 (ICAM-1) when incubated with human keratinocytes. This led us to assume that this surfactant possesses very low cutaneous inflammatory properties as opposed to ordinary commercially available anionic surfactants. Thus, we have assessed the biologic effects of LBA on several cellular derangements in the stratum comeum, cytotoxicity against human keratinocytes and an influence on arachidonic metabolism in skin tissue in comparison with those by other ordinary anionic surfactants such as potassium myristate (SOAP), sodium dodecyl sulfate (SDS), sodium cocoyl isethionate (SCI), acylmethyl taurine (AMT) and monoalkyl phosphate (MAP).Permeability experiments using hairless pig skin indicated that LBA is 10 and 3 times as lower permeable as SOAP and MAP, respectively. In in vitro study on human keratinocytes, of all anionic surfactants used, LBA showed the lowest inhibitory effect on cell growth which was accompanied by a lower level of the release of arachidonic metabolite such as prostaglandin E2 (PGE2) from human keratinocytes. This mild cellular effect was also corroborated by the previous observations that LBA elicits on substantial expression of ICAM-1 which has recently been identified on surface of epidermal cells in inflammatory dermatosis typified by T cell infiltration, in contrast to a marked expression by some of other anionic surfactants.In order to clarify in vivo cutaneous effect, cumulative cup shaking test was carried out on the inner surface of human forearm skin by applying surfactant aqueous solutions twice a day for four days. Whereas almost all anionic surfactants induced severe scaling and erythematous reactions during repeated treatments, LBA was the only surfactant which did not elicit any roughness and inflammatory reaction. This non-inflammatory property was also corroborated by an additional study on damaged skin that roughened forearm skin after acetone/ether treatment can be slightly restored even by successive applications of LBA, but not other anionic surfactants used. These findings indicate that LBA has biologically low active properties to both stratum coreum and epidermal cells which may lead to the development of a unique surfactant applicable to damaged skins.
著者
松本 均 伊藤 恭子 米倉 久美子 市橋 正光
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.4, no.5, pp.492-497, 2005 (Released:2011-05-17)
参考文献数
8
被引用文献数
1

健常人女性33名に末梢の血流改善効果を有するカシスポリフェノールを単回経口摂取させ,その後の頬部の血流に対する効果と下眼瞼中央部のくまに対する改善効果をポリフェノールを除いたプラセボとクロスオーバー二重盲検法による群間比較で評価した。プラセボ群では変化が認められないのに対し,カシス群では摂取15分後から血流量の有意な増加が見られた。同時にカシス群はプラセボ群と比較してL∗値の有意な上昇,エリスマインデックスの有意な上昇とメラニンインデックスの有意な減少が確認された。また,血流量変化とメラニンインデックス変化との間に逆相関関係が見られたことにより,くま発生の主要因は血流の停滞であると考えられ,カシス摂取による即効的な血流改善効果を介してくま改善効果を有する可能性が示唆された。
著者
中川 昌治 M. Santosh 吉倉 紳一 原田 亜実 三浦 正裕 福田 照久 松田 靖正 桑田 泰宏 K. J. Mathew P. T. Ambujakshan H. Thampy
出版者
一般社団法人日本粘土学会
雑誌
粘土科学討論会講演要旨集 第48回 粘土科学討論会 (ISSN:24330566)
巻号頁・発行日
pp.23, 2004 (Released:2006-05-13)

南インドKerala州のTrivandrum近郊では,良質のカオリン粘土の鉱床が多く存在し,紙や衛生陶器用に採掘されている.カオリナイトと少量の石英からなる白色塊状粘土の層が第三紀層中に胚胎し,鉱床上部にはラテライト化した砂質カオリンが分布する.これらの粘土中のカオリナイトはXRDとSEMから結晶性が非常に高い.基盤岩(先カンブリア時代のアルミナ質グラニュライト)が強烈な風化変質作用を受けカオリン化し,近くの湖に堆積してできたと考えられる.
著者
清田 裕太郎 岩倉 成志 野中 康弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_1059-I_1066, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
20
被引用文献数
1

2011年3月11日に発生した東日本大震災で首都東京の交通網は完全に麻痺した.道路交通網においても例外ではなく,大規模なグリッドロック現象が発生した.今後首都圏付近で発生する地震に備え,震災時におけるグリッドロック現象の時空間拡大プロセスの分析を行い,震災による渋滞現象の実態を明らかにすることを目的とする.本研究では,タクシープローブデータを解析し3月11日の首都東京のグリッドロック拡大を時系列で分析し,上下車線別のグリッドロック発生リンクの特定とボトルネックと推定される地点を抽出した.
著者
大倉 隆二
出版者
國華社
雑誌
國華 (ISSN:00232785)
巻号頁・発行日
vol.115, no.9, pp.35-44, 2010-04
著者
小俣 訓子 高倉 義幸 窪田 健児 濵本 和孝 岸本 風汰 飯田 美穂 唄 大輔 高倉 義典
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0331, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに】足関節の機能を評価する指標として足関節・後足部判定基準(JSSF scale)が日本足の外科学会で制定されている。これは疼痛,機能,アライメントの3大項目から成り,合計100点満点で構成されている。末期の変形性足関節症(OA)などにより日常生活動作(ADL)に支障を来す症例に対し,足関節固定術(固定術)や人工足関節全置換術(TAA)が行われる。現在までに固定術およびTAAの術前後や術式間において,JSSF scaleなどを用いて足関節の機能を定量的に評価した研究は極めて少ない。機能の改善には術前後における理学療法も重要であるため,当院ではこれらの手術例に対し,JSSF scaleの変化および機能向上の指標になる関節可動域(ROM)について,術前後あるいは術式間で比較検討したので考察を交えて報告する。【方法】対象は当院で2011年7月~2016年8月の期間に固定術あるいはTAAを行ったOAを中心とした49名49足(固定術20足,TAA29足)である。年齢35歳~89歳(平均70.02歳),男性15名,女性34名であった。術前の理学療法は患側の関節可動域運動(ROMex),足関節周囲筋の筋力向上運動を実施し,術後4週間のギプス固定期間中は足関節周囲筋の等尺性収縮運動,患部以外の運動,ギプス除去後は段階的に患側のROMex,さらに筋力向上運動を実施した。評価項目は,JSSF scaleと足関節のROMを術前と術後12か月で測定した。統計学的解析は,JSSF scaleの3大項目と合計点数,さらに足関節ROMについて術前後あるいは術式間でt検定を用いて比較検討した。有意水準は5%未満とした。【結果】固定術ならびにTAAの術前後において,JSSF scaleの3大項目のすべてで術後有意に改善が認められた(p< 0.05)。OAに対する手術療法の目的は除痛とアライメント矯正であり,前述の改善を認めたことは手術の目的を果たしていた。そして,術式間の比較ではJSSF scaleの3大項目すべてにおいて有意差は認められなかった。つまり,いずれの術式においてもJSSF scaleによる機能評価では有意に改善していたと考えた。ROMに関しては,固定術およびTAAともにすべての方向において術前後で有意差が認められなかった。これは術前のROMが維持できていると考えられ,術前からの理学療法の効果と考える。また,術式間でのROM比較では,術後の底屈および背屈で固定術群に対してTAA群で有意に改善が認められた。これはTAA群では関節置換によりROMがより向上した結果と考えられる。【結論】JSSF scaleとROMの比較により,固定術およびTAAともに術前に比して術後にROM低下は認められず,ADLとROMの改善には術前後における理学療法が重要であると考える。
著者
朝倉 充彦
出版者
東北福祉大学教職課程支援室
雑誌
教職研究
巻号頁・発行日
no.2018, pp.1-11, 2019-03-31

2011年の滋賀県大津市の中学生いじめ自死事件を契機に,いじめ問題への国の取り組みは,いじめ防止対策推進法の制定,いじめ防止のための道徳教育の充実,その具体化としての道徳科の設置,および検定教科書の作成使用というようにすすめられてきた。そして,いじめ問題を主題とする道徳の授業では,弱さを克服しいじめや不正を許さない強い正義感を持つことをねらいとすることが期待されている。文部科学省が作成したいじめ問題を扱った教材「卒業文集最後の二行」を活用した授業では,いじめの被害者加害者の立場について考えることを通して,いじめを止めさせる仲裁者の出現を目指す。しかし,それは容易なことではない。むしろ仲裁を躊躇う弱さを恥じるのではなく,生徒皆が弱さを共有していることを認識し,集団の力でいじめに対峙していくことこそが今求められている。