著者
前田 健
出版者
神戸大学法学部
雑誌
神戸法学雑誌 = Kobe law journal (ISSN:04522400)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.1-42, 2016-09
著者
堀本 泰介 前田 健 川口 寧 杉井 俊二 土屋 耕太郎 五藤 秀男 田島 朋子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

ブタ用多価組み換えウイルス生ワクチンを開発するためには、まずベクターウイルスの選択を検討しなければならない。この目的に合うベクターウイルスとしては、(1)ブタに感染するが病原性の弱いもの、あるいは確実に弱毒化されているもの、(2)比較的サイズの大きな複数の外来性の遺伝子の挿入が可能なもの、(3)外来抗原を長期間発現可能な持続感染性のもの、が理想的であると考えられる。本研究では、この条件に合うものとしてブタサイトメガロウイルス(Porcine Cytomegalovirus : PCMV)のベクター化を考えた。その基礎知見の獲得のため、PCMVのゲノム構造および主要蛋白質の性状解析を実施し、以下の研究成果を得た。(1)PCMVゲノムDNAの制限酵素切断プロファイルを明かにし、切断断片のクローニングに成功した。(2)ヘルペスウイルスの主要遺伝子である主要ゲノムの転写複製に必須であるDNAポリメラーゼ遺伝子、粒子形成に必須であるカプシッド蛋白遺伝子、細胞レセプターへの結合に関与する糖蛋白質gB遺伝子、およびこれら周辺の遺伝子クラスターの同定、塩基配列を決定した。(3)これら主要遺伝子の分子系統解析の結果、PCMVはベータヘルペスウイルス亜科、特にヒトヘルペスウイルス6型および7型と非常に近縁なウイルスであることを発見した。(4)いくつかの必須遺伝子の発現実験により蛋白質の分子構造解析、あるいは免疫性状などについて検討した。(5)PCMV感染の有無を判定する高感度で特異性の高いMCP遺伝子配列に基づくPCR法を確立した。さらに、濾紙乾燥血液をこの方法に応用した。これらの成果は、細胞性・液性免疫の誘導や組み換えワクチン作製に関する基礎的な情報を提供するのみならず、今後、獣医畜産学および豚の臓器を利用した異種移植に関する臨床医学の発展に大きく貢献するものと考えられる。
著者
川口 寧 前田 健 堀本 泰介 見上 彪 田中 道子 遠矢 幸信 坂口 正士
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は'bacterial artificial chromosome (BAC) systcm"を用いてヘルペスウイルスの簡便な組み換え法を開発することによって、新しいワクチン開発、遺伝子治療ベクターの開発、基礎研究を著しくスピードアップすることにある。本研究課題によって得られた結果は以下の通りである。ヘルペスウイルスで最も研究が進んでいる単純ヘルペスウイルス(HSV)の組み換え法の確立をBAC systemを用いて試みた。外来遺伝子の挿入によって影響がでない部位であるUL3とUL4のジャンクション部位にLoxP配列で挟まれたBACmidが挿入されたHSV全ゲノムを大腸菌に保持させることに成功した。大腸菌よりHSVゲノムを抽出し培養細胞に導入したところ、感染性ウイルス(YK304)が産生された。また、YK304とCre recombinase発現アデノウイルスを共感染させることによって非常に高率にYK304 genomeよりbacmidが除去されたウイルス(YK311)が得られた。YK304およびYK311は培養細胞において野生株であるHSV-1(F)と同等な増殖能力を示した。さらに、マウス動物モデルを用いた解析によりYK304およびYK311がHSV-1(F)と同等の病原性を示すことが明らかになった。以上より、YEbac102は、(i)完全長のHSV-1 genomeを保持し、(ii)bacmidの除去が可能であり、(iii)野生株と同等な増殖能および病原性を保持する感染遺伝子クローンを有していることが明らかになった。大腸菌の中で、実際に任意の変異をウイルスゲノムに導入する系を確立した。RecAを発現する大腸菌RR1にHSV全ゲノムを保持させた(YEbac103)。YEbac103内で、RecA法に従って、ICP0遺伝子に3つのアミノ酸置換を導入することに成功した。また、RecAを発現するトランスファープラスミドを構築し、RR1を用いずに、RecA negativeの大腸菌YEbac102内で、ICP34.5部位に変異を導入することに成功した。YEbac102、YEbac103と確立した組み換え系は、HSVの基礎研究、ワクチン開発、ベクター開発に多目的に有用であると考えられる。またこれらの系は他のヘルペスウイルスにも応用可能である。
著者
原田 一孝 前田 健悟 岡崎 宏光 宮本 光雄 吉永 誠吾 杉 哲
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

子ども達の興味・関心が高く,実用的価値の高い製作教材を種々検討し,ワンチップコンピュータを用いた"電子オルガン"を開発した.これはドレミ...の音階(下のソから上のソまで)2オクターブを発生できる.また,振動数と音の高さとの関連性を調べたり,非音階の音(風の音,幽霊の音など)を発生するために,連続音(496Hz〜4kHz)を発生する機能も付加した.さらに,子ども達に人気のあるメロディー6曲を自動演奏する機能も付加したものが得られた.作る喜びを体験するために,木材の切断・仕上げ・塗装,プリント基板の切断・穴あけ・部品取り付け・ハンダ付け,紙コップを使ったスピーカ部やタッチセンサ部などの組立てにおいてホットボンド接着・ネジ取り付けなど,多くの作業場面を取り入れた授業計画を開発した.夏休みには開発中の"電子オルガン"や昨年度開発した"ヤジロベー"や"崇城博士"の工作教室を熊本市博物館,熊本市中央公民館および天草郡の小学校で実施し,多くの小学生に喜んでもらうと同時に,子ども達の工作スキル並びに指導法の検討を行った.中学校での研究授業は2学期に天草郡本渡市教良木中学校,3学期に水俣市久木野中学校で実施した.この時は"電子オルガン"と"崇城博士"の2教材を用いた.中学生の工作スキルのレベルを見込んで作業場面を増やしたが,実質は小学5・6年生と大差ないように感じられた,知識の面では確実に高レベルにあることが予想されるので,この事を生かした指導法の開発が望まれた.以上の研究授業から"ものづくり"の体験は"総合的に学習する時間"の優れた教材に成り得ることが判明したが,これらの準備・実施に要する手間・暇を考えた場合,現場教師に対する外部援助があって初めて実現可能であると感じる.このため,今後はホームページでノウハウを提供したり,ボランティアグループで援助活動等を計画して行きたい.
著者
前田 健一
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.156-166, 1995-06-30
被引用文献数
1

The purpose of this study was to examine whether peer status groups and subgroups differed in terms of loneliness, peer perceptions and self-perceptions of their aggression, withdrawal, and social competence. Five status groups of children (popular, rejected, average, neglected, and controversial) were identified on the basis of positive and negative sociometric nominations for 459 children in Grades 3 through 6. Of these groups, 200 children were selected on the basis of peer perceptions of aggression, withdrawal, and social competence to represent the following 8 subgroups:high-competent popular (HCP), low-competent popular (LCP), aggressive rejected (AR), withdrawn rejected (WR), aggressive-withdrawn rejected (AWR), high-withdrawn neglected (HWN), low-withdrawn neglected (LWN), and typical average (TA). Consistent with previous findings, the rejected children were viewed by peers as significantly more aggressive, withdrawn, and socially incompetent with higher levels of loneliness than average and popular children. Children in the AWR, WR, and HWN subgroups were found to be significantly more lonely and exhibited more inaccurate self-evaluations in aggression or withdrawal than typical average children.
著者
筒井 茂樹 平沢 健介 武田 真記夫 板垣 慎一 河村 晴次 前田 健 見上 彪 土井 邦雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.785-790, 1997-09-25
被引用文献数
7 20

in vivoマウス肝細胞における高用量ガラクトサミン誘発アポトーシスについて検索した. 3g/kg GalN投与群では, Tdt-mediated dUTP nick end labeling (TUNEL) 陽性細胞が6時間後から観察されはじめ, HE染色切片における好酸性小体およびTUNEL陽性細胞の出現は, 24時間後で最も顕著になった. また, 48時間後では, 肝実質細胞の変性および壊死が目立ち, TUNEL陽性細胞はほとんど見られなくなった. 1.5g/kg GalN投与群では, 3g/kg GalN投与群に比べ, 病変は穏やかで, 好酸性小体およびTUNEL陽性細胞は24時間後ではほとんど見られず, 48時間後で顕著になった. さらに, アガロースゲル電気泳動によって見られるDNAの"はしご様"断片化パターンは, 3g/kg GalN投与後24時間および1.5g/kg GalN投与後48時間で最も顕著となったが, 3g/kg GalN投与後48時間では減少した. 一方, sGOTおよびsGPT活性は, 3g/kg GalN投与後48時間で著しく上昇した. これらの結果から, in vivoで高用量ガラクトサミンにより誘発される細胞死は, アポトーシスにより生じ, 後にネクローシスによる可能性が示唆された.
著者
前田健次郎 編
出版者
柳谷藤吉
巻号頁・発行日
vol.第1-4号, 1876
著者
木曽 康郎 森本 将弘 岩田 祐之 山本 芳美 奥田 優 本道 栄一 前田 健
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、受胎産物と子宮内膜との相互作用の解析を行い、(i)免疫担当細胞の特異性、(ii)子宮内サイトカインネットワーク、(iii)MHC発現の特殊性、(iv)補体調節因子、等の4点の変化を中心に複雑な母子境界領域の免疫応答機構と胎盤特異的情報との関連を総括的に捉え、胎盤の免疫抑制機構への環境因子の毒性的影響を明らかにし、適切なモデル動物を見いだすことであった。目的達成のため、生殖能力に多少なりとも問題が見られた多種多様なマウスモデルを使用した。これらと内分泌撹乱物質により生殖能力の低下(流産を含む)を見せたマウスと比較検討の結果、胎盤形成期に流産が誘起されたものは、両者の間で驚くべき相似性を見せた。すなわち、胎盤迷路部の発達不全、脱落膜の異常、ラセン動脈の異常、間膜腺の発達不全である。特に、迷路部の非化膿性炎症(胎子間葉組織肥大)、栄養膜巨細胞の分化異常、脱落膜細胞のアポトーシス不全、ラセン動脈血管内皮および中膜の肥厚、子宮NK細胞の異常、であった。これらは内分泌撹乱物質のエストロゲン様活性が局所的に、あるいは限局的に働いた結果と考えられた。一方、サイトカインや成長因子およびそれらのmRNA発現は、むしろ内分泌撹乱物質により生殖能力の低下(流産を含む)を見せたマウスで上昇するなど、まったく異なった。これらは内分泌撹乱物質のエストロゲン様活性が局所的に、あるいは限局的に働いた結果、母子境界領域で重要な免疫応答を担当する細胞(特に子宮NK細胞)にサブセットの変化を含めて、質的変化が誘導されたことを示唆した。今後の課題として、これまでの成果を基に絞り込んだ各因子を、胎盤および子宮内膜の各構成細胞株から作成した再構築組織様塊(オルガノイド)に導入し、これに生理活性を与え、妊娠現象を母子間免疫と胎盤特異情報との相互関連からブレークスルーさせたい。
著者
見上 彪 前田 健 堀本 泰介 宮沢 孝幸 辻本 元 遠矢 幸伸 望月 雅美 時吉 幸男 藤川 勇治
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は猫に対する安全性、経済性、有効性全てに優れる多価リコンビナント生ワクチンを開発・実用化することである。以下の成績が得られた。1.我々は猫ヘルペスウイルス1型(FHV-1)のチミジキナーゼ(TK)遺伝子欠損株(C7301dlTK)の弱毒化とそのTK遺伝子欠損部位に猫カリシウイルス(FCV)のカプシド前駆体遺伝子を挿入した組換えFHV-1(C7301dlTK-Cap)の作出に成功した。C7301dlTK-Capを猫にワクチンとして接種した後にFHV-1とFCVの強毒株で攻撃したところ、猫は両ウイルスによる発病から免れた。しかし、FCVに対する免疫応答は弱かった。2.そこで、更なる改良を加えるために、FCVカプシド前駆体遺伝子の上流にFHV-1の推定gCプロモーターを添えた改良型組換えFHV-1(dlTK(gCp)-Cap)を作出した。培養細胞におけるdlTK(gCp)-Capのウイルス増殖能はC7301dlTKとC7301dlTK-Capのそれと同じであった。dlTK(gCp)-CapによるFCV免疫抗原の強力な発現は関節蛍光体法及び酵素抗体法にて観察された。加えてdlTK(gCp)-Capをワクチンとして接種した猫は、C7301dlTK-Cap接種猫と比較した場合、FCV強毒株の攻撃に対してその発症がより効果的に抑えられた。3.猫免疫不全ウイルス(FIV)のコア蛋白(Gag)をコードする遺伝子をFHV-1のTK遺伝子欠損部位に挿入したC7301ddlTK-gagを作出し、In vitroでその増殖性や抗原の発現を検討した。この2価ワクチンは挿入した外来遺伝子の発現産物が他の蛋白と融合することなく、自然の状態で発現するように改良されたリコンビナントワクチンである。培養細胞での増殖性は親株であるC7301とほぼ同じであり、イムノブロット解析により、C7301ddlTK-gagは前駆体Gagを発現していた。
著者
前田 健吾
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.94-97, 2010-02-05
参考文献数
14

AdS/CFT対応は,高速金原子核同土の衝突実験の結果を理論的に説明するなど,強結合領域のゲージ理論の理解に威力を発揮する.近年は,強相関効果が重要となる高温超伝導体などの強相関電子系の理解を目指して,AdS/CFT対応が物性理論の分野にも応用されつつある.最近になって,超伝導体の重力モデルがAdS/CFT対応を用いて構築されたので,それを紹介するとともに,このモデルの問題点などを議論する.
著者
二宮 敬虔 橋本 樹明 紀伊 恒男 前田 健 斎藤 徹 玄葉 麻美 高安 星子 卯尾 匡史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス
巻号頁・発行日
vol.93, no.254, pp.9-16, 1993-09-30

『あすか』は1993年2月20日、鹿児島宇宙空間観測所より打ち上げられたX線天体を観測する科学衛星である。全天に散らばるX線源を効率よく観測する為に高いマヌーバ性能が姿勢系に要求されている。また、X線源の微細な構造を調べる為、高分解能のX線望遠鏡が搭載されており、その性能を最大限に活用するため高いポインティング性能を実現している。本論文では、『あすか』姿勢系の中で特に定常ポインティング性能を支配するオンボード姿勢決定系に関して、その設計思想・設計性能及び軌道上性能を中心に報告する。
著者
越中 康治 新見 直子 淡野 将太 松田 由希子 前田 健一
出版者
広島大学大学院教育学研究科
雑誌
広島大学大学院教育学研究科紀要. 第三部, 教育人間科学関連領域 (ISSN:13465562)
巻号頁・発行日
no.56, pp.319-323, 2007-12-28

The present study examined effects of motive and purpose on preschoolers' judgments about aggressive behavior. 61 preschoolers made judgments about 4 types of aggressive behavior that combined motive (selfish, altruistic) and purpose (defense, retribution). Children under the age of four (n=16; average age, 44 months; range, 33-47 months) judged all types of aggressive behavior to be wrong. However, four-year-old children (n=18; average age, 55 months; range, 50-59 months) and older children (n=22; average age, 68 months; range, 60-75 months) allowed all types of aggressive behavior. Especially, older children allowed altruistic aggressive behavior more than selfish aggressive behavior. Moreover, retribution was allowed more than defense. The results indicate that judgments of older children are based on moral concepts (harm, welfare, and justice), whereas judgments of younger children tend to be oriented toward authority.
著者
中台 佐喜子 金山 元春 前田 健一
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.2, pp.151-157, 2003-03-28
被引用文献数
1

本研究では,76名の年長幼児を対象に,仲間集団における同性仲間および異性仲間からの人気度と社会的スキルとの関係について男女別に検討した.相関分析の結果,社会的スキルの高さは男児では同性仲間からの人気度と,女児では異性仲間からの人気度と関係していることがわかった.この結果を指名する方の立場から整理してみると,男児は相手の性にかかわらず社会的スキルに優れているかどうかが遊び仲間の選択に影響するのに対して,女児は相手が同性仲間であっても異性仲間であっても男児ほど社会的スキルを選択の基準としていないことが示唆された.本研究の結果は,幼児の仲間集団における人気度と社会的スキルとの関係を検討する際に性別の要因を考慮することの重要性を示している.
著者
水口 啓吾 里見 有紀子 前田 健一
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.10, pp.101-109, 2010

本研究では, 発達障害児が在籍する通常学級の中から, 発達障害児と接触頻度の高い健常児である接触頻度高群(16名), その他の健常児である接触頻度低群(129名), および発達障害児群(10名)を選出し, 架空の物語場面を用いて健常児と発達障害児の交流態度について比較検討した。架空の物語場面では, 問題の原因が健常児側にある場面と発達障害児側にある場面の2場面を呈示し, その後で登場人物の発達障害児に対する印象評定と行動評定を求め, 3群間で比較した。その結果, 印象評定では2つの場面とも, 3群間に有意差は見られなかった。しかし, 行動評定では接触頻度高群が最も好意的態度を示した。発達障害児と日頃接触している接触頻度高群でも, 発達障害児の唐突な言動に対しては好意的印象を持たないこと, しかし発達障害児と一緒に勉強する・遊ぶなどの交流行動では寛容的であることが明らかになった。
著者
高野 吉郎 大島 勇人 前田 健康 馬場 麻人 坂本 裕次郎 寺島 達夫 花泉 好訓
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

口腔領域における抗原提示細胞ネットワークの全容を解明するための一連の研究の一環として、ラット切歯、臼歯、ヒト永久歯および乳歯を用いて、以下に示す項目について検討を行った。1.抗原提示細胞ネットワーク:マクロファージを含む抗原提示細胞ネットワークをMHC class II抗原に対する免疫組織化学と、ACPaseの酵素組織化学の二重染色法、ならびに免疫電顕法により精査した。歯根膜と歯髄で、樹状細胞郡とマクロファージ郡の2郡に大別し、両者の分布パターンの異同を大筋で明らかにした。幼若な個体では歯髄、歯根膜ともに樹状細胞は少数で、成長に伴って増加した。ラット臼歯歯根膜では樹状細胞と破骨細胞の棲み分けが確認され、歯髄では樹状細胞が頻繁に象牙細管に細胞突起を刺入していることが確認された。2.窩洞形成刺激が歯髄樹状細胞に与える影響:従来看過されていた窩洞形成後の樹状細胞の早期反応の詳細を明らかにした。窩洞形成直後から多数の樹状細胞が象牙細胞の傷害野へ集積し、修復象牙質の形成開始期まで溜まってダイナミックな動態を示すことが確認され、樹状細胞が外来抗原刺激の感受に加えて、歯髄修復に何らかの関与をしている可能性が示唆された。3.抗原提示細胞と破骨細胞の前駆細胞判別の試み:歯槽骨の骨形成野と骨吸収野が歯根の近遠心で明瞭に区別されるラット臼歯歯根膜では、同じ骨髄単球系細胞である樹状細胞と破骨細胞がやはり明瞭な棲み分けをしていることが確認された。そこで矯正的に骨の吸収と添加の方向を変化させ、樹状細胞と破骨細胞の局在性を変化させることで、in situでの両細胞の分化を誘導し前駆細胞の異同を検討した。4.ヒト乳歯歯髄の樹状細胞:健常、歯根吸収期、歯冠吸収期の乳歯歯髄に多数の樹状細胞の存在を確認した。樹状細胞はヒト永久歯歯髄やラット臼歯と同じく象牙細管に突起を刺入するものが多く、特に乳歯では歯髄側の象牙質吸収野に見られるセメント質様組織の形成との関係が伺われた。当初計画した歯髄樹状細胞の所属リンパ節への移動に関する細胞化学的検討と樹状細胞の抗原物質処理経路の免疫細胞化学的検討については、今後の検討課題とした。