著者
前田 祐希 船津 公人
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
Journal of Computer Aided Chemistry (ISSN:13458647)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-10, 2011 (Released:2011-02-16)
参考文献数
18

光電極を用いた水分解による水素製造法は二酸化炭素をほとんど副生せずに太陽光エネルギーを水素に変換するための方法であり、その活用が期待されている。しかし、光電極に用いる光触媒に関する研究は盛んに行われている一方、反応器に関する研究はほとんどなされていない。そこで本研究では、光電極による水素製造装置を設計することを目的とした。反応器において高効率な反応を達成するためには、反応器の構造パラメータを反応に対して適切に決定する必要がある。このような反応器の最適設計問題に対して、流体シミュレーションが有効な手段の一つとなる。しかし、流体の流れが反応に有利な状態を形成するように反応器の構造を決定するためには、多くのシミュレーション回数が要求される。特に一回当たりの計算時間が長いシミュレーションを用いる場合、その高い計算コストが障害となる。そこで本研究では、シミュレーション結果を統計解析し、構築した統計モデル(メタモデル)を利用する事でシミュレーション回数を抑制しながら反応器の最適設計を行うことを試みた。本研究で解析の対象である光電極による水素製造装置は、効率的な反応を達成するために最適化を行うべき応答因子が複数存在し、それぞれの因子がトレードオフの関係にあるという特徴を持っている。そのため、反応に有利な構造パラメータを決定する事は困難と考えられていた。しかし、メタモデルの構築と遺伝的アルゴリズムによる多目的最適化により、100回の流体シミュレーションから構造パラメータのパレート最適解を導出した。またこの解析により、統計手法による流体シミュレーションの反応器設計への効率的な適用の可能性を示した。
著者
谷口 景一朗 前 真之 季 思雨 高瀬 幸造 児島 輝樹 岸本 尚子
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.26, no.64, pp.1001-1006, 2020-10-20 (Released:2020-10-20)
参考文献数
10

Understanding the thermal performance of windows with shading devices is important for energy saving. Using a full-scale experimental building, the thermal insulation performance (U-value) and the solar heat gain performance of windows with shading devices was measured, and the validity of the measurement method was confirmed. In addition, the indoor thermal environment and the comfort with and without shading devices were measured, and it was confirmed that the shading devices contributed to the improvement of comfort especially by realizing a uniform radiation environment.
著者
樋口 恵太 永井 清仁 服部 文弘 前山 薫 瀬川 進 本城 凡夫
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.608-618, 2016 (Released:2016-08-25)
参考文献数
56
被引用文献数
2 2

真珠収穫後のアコヤガイ貝肉を主原料とし,海事作業から発生する貝掃除屑を加えてコンポスト化試験を行った。その結果,アコヤガイ貝肉は約 45 日の処理でコンポスト化が可能である事が分かった。また,貝掃除屑はコンポスト材料の通気性向上や,コンポストの肥料成分を増加させる効果が認められた。完熟したコンポストは,塩分を含むが,コマツナに対して肥料効果を示した。以上より,真珠養殖過程で廃棄される貝肉および貝掃除屑は,農業資材として有効活用できる事が示され,真珠養殖による環境負荷の低減につながると期待された。
著者
鈴木 雄太 浦辺 幸夫 前田 慶明 笹代 純平 森田 美穂
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.209-212, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

〔目的〕競泳選手と非競泳選手の上肢挙上時の脊柱アライメントの変化の違いを探るため,立位とストリームライン(以下,SL)での脊柱アライメントを比較した.〔対象〕競泳群26名,非競泳群20名とした.〔方法〕Spinal Mouse®を用いて立位とSL立位の胸椎,腰椎および骨盤のアライメントの変化量,SL立位での上肢挙上角度を測定した.〔結果〕競泳群では上肢挙上角度が大きな対象ほど,胸椎の後弯,腰椎の前弯,骨盤の前傾が小さかった.非競泳群では,いずれの変化量も上肢挙上角度と有意な相関は認められなかった.〔結語〕上肢挙上角度が大きい競泳選手は胸椎の伸展運動によって腰椎前弯と骨盤前傾を小さくすることが可能であることが示された.
著者
張 燕生 張 振亜 杉浦 則夫 前川 孝昭
出版者
The Society of Agricultural Structures, Japan
雑誌
農業施設 (ISSN:03888517)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.195-204, 2002-03-25 (Released:2011-09-05)
参考文献数
21

高速度メタン発酵を実現するために, メタン菌細胞の栄養元素の要求量を知ることが重要である。本研究では正確なメタン菌細胞中の微量金属元素の測定法を確立するために細胞の洗浄方法を検討した。遊離陽イオン並びに残留培地をメタン細菌の表面から取り除くために, 4種の, すなわち蒸留水, 生理塩水, 燐酸塩緩衝液及びEDTA混合液 (EDTAと燐酸塩との混合液) を洗浄液としてメタン細菌ペレットの洗浄を行った。洗浄したメタン菌細胞を湿式分解法で前処理し, ICP-MS (Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer) を用いてメタン細菌の微量金属イオン含有量を測定し, 比較した。供試洗浄剤を用いた洗浄結果, 細胞内イオン含有量計測値の変動率の最も大きい洗浄液は水であり, その変動率の最も少ないものは燐酸緩衝液であった。更に原子間力顕微鏡を用いて洗浄した細胞を検鏡した結果, 細胞の凹みと細胞破壊の現象が見られた。この細胞破壊の程度は水を洗浄液とした場合, 最も大きかった。また, 細胞洗浄における誤差は主に細胞の破壊に起因することが明らかになった。次に細胞破壊の現象を防ぐために, 細菌培養液にグルタルアルデヒド溶液を加え, 軽く固定化してから細胞サンプルを遠心分離・洗浄する方法を試みた。この場合, 水を用いた3回洗浄においても細胞の破壊がほとんど発生しなかった。この細胞洗浄方法は細胞の破壊に由来する誤差を有効に防ぐ事ができ, 細胞の微量金属元素分析の再現性を改善することが期待される方法であると考えられる。
著者
前田 一雄
出版者
一般社団法人 日本生体医工学会
雑誌
BME (ISSN:09137556)
巻号頁・発行日
vol.2, no.5, pp.322-327, 1988-05-10 (Released:2011-09-21)
参考文献数
21

超音波診断装置の安全性は厚生省研究班, JIS, 日本超音波医学会見解に示されているとおりである. 新しい血流計測ドプラ法では, やや高出力のロングパルスを用い, 米国FDAは1976年当時の出力を基準とした規制を行っている. 超音波の作用閾値は種々の生体作用実験により検討されているが, 診断装置の進歩に伴い新しく計測パラメータと計測方法がIECやWFUMBなどで検討されており, 今後急速に進展をみるものと期待される.
著者
山田 裕子 前島 伸一郎 片田 真紀 阿部 泰昌 爲季 周平
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.244-250, 2007-09-30 (Released:2008-10-01)
参考文献数
29
被引用文献数
1 1

脳梗塞による右大脳半球損傷で失語症を伴わない口腔顔面失行を呈した症例を報告した。症例は64 歳の右手利きの男性で,左手利きの家族性素因はなかった。神経学的には顔面を含む左片麻痺と左半身の感覚障害を認めた。神経心理学的には,口腔顔面失行,左半側空間無視,注意障害,構成障害を認めた。失語症や観念失行,観念運動失行はなかった。頭部MRI では右中大脳動脈領域の広汎な梗塞巣が認められた。本症例の言語機能は左半球優位に,口腔顔面の随意運動に関する機能は右半球優位に側性化されている可能性が示唆された。一般的に口腔顔面失行は失語症に伴うことが多く,発語に関する半球に密接に関連すると考えられているが,言語と口腔顔面の随意運動に関する神経機構は互いに独立して存在しうるものであると考えられた。また失行の中でも口腔顔面と上肢の行為の神経機構は異なる半球間に側性化されていると考えられた。

1 0 0 0 アラビア史

著者
前嶋信次 著
出版者
修道社
巻号頁・発行日
1958
著者
前澤 知輝 河原 純一郎
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PI-010, 2021 (Released:2022-03-30)

ブランド名など,その製品を象徴する情報は,消費者の印象を変化させ,購買行動に影響を与える。例えば,製品ラベルの時間方向(例:新製品)が,製品写真が示す時間方向(未来方向を示す右向き)と一致する場合に,消費者は製品を高く評価する。この時間的一致の効果は,製品広告に限定的ではなく,飲食店広告に対しても一般化できるかもしれない。そこで本研究では,過去情報の表示が,飲食店への消費者態度を向上させるかを検討した。5つの実験で,参加者は創業年が記載された飲食店広告を観察し,その後に品質期待,味への期待,訪問意欲の主観的態度を7件法で測定した。その結果,創業年表示が古い広告(寛政,大正)は,ラベルがない広告や創業年が新しい(令和)広告に比べて,特に品質に対する評価が向上した。また,創業年を縦書き表記で呈示した広告は,横書きで表示する場合よりも品質に対する評価が向上した。したがって,創業年表示の効果は,ラベルの単一呈示だけでなく,過去へ時間的焦点の存在や,縦書き表示による伝統的側面の補強によって消費者態度を高める。品質の良い製品は生存するという,適者生存バイアスが関係していることが考えられる。
著者
遠矢 将太郎 園田 達彦 前田 憲成
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.201-206, 2022-03-05 (Released:2022-05-11)
参考文献数
10

Nucleic acid extracted from environmental samples is an important analyte in instrumental analysis. With respect to the phenomenon in which sodium tungstate promotes the methane production in anaerobic digestion, the analyses of microbial community using RNA were conducted; however, we noticed that only RNA concentration measured by absorbance measurement (NanoDrop) was remarkably high. Therefore, in this study, DNA and RNA were extracted from the anaerobic digestion sludge samples with sodium tungstate, sodium selenite, or sodium molybdate, and these nucleic acids were quantified and compared by absorbance measurement, fluorescence measurement (Qubit), and gel electrophoresis. Interestingly, it was found that only the RNA concentration of the sample containing sodium tungstate measured by NanoDrop was 3 times higher than that by Qubit analysis. In addition, there was no difference between the RNA concentration measured by Qubit and gel electrophoresis. Regarding DNA concentration and the other compounds, there were no differences. Hence, these results indicate that the Qubit system is useful for the quantification of the RNA concentration in the environmental samples.
著者
赤池 孝章 野口 陽一郎 前田 浩
出版者
熊本大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

ウイルス感染病態における一酸化窒素(nitric oxide,NO)の役割を解析するため、マウスインフルエンザウイルス肺炎モデル、ラット狂犬病ウイルス/単純ヘルペス脳炎モデルを作製し、各ウイルス感染病巣におけるNOの過剰生成を解析し、NO合成阻害剤であるN^G-monomethyl-L-arginine(L-NMMA)を投与し、生体内のNO合成を制御することで、ウイルス感染病態がどのように修飾されるかを検討した。その結果、マウス、ラットの肺、および脳内において、ウイルス感染に伴い誘導型NO合成酵素(NOS)が強く誘導されることが、誘導型NOSのcDNAプローブを用いたRT-PCR/Sourthern blot法、およびNorthern blot法により明らかとなった。また、ウイルス感染局所におけるNO生成を電子スピン共鳴(electron spin resonance,ESR)法により、110Kにて解析したところ、過剰に産生したNOに由来するNO-ヘモグロビンアダクトの有意な生成が認められ、これは、NOS阻害剤であるL-NMMAを動物に投与することにより著明に抑制された。さらに、L-NMMA投与により、インフルエンザウイルス感染マウスの生存率が有意に改善(100%致死率→50%生存)した。以上の知見より、マウスインフルエンザウイルスをはじめとする各種ウイルス感染の病原性発現機構において、NOが重要な増悪因子として作用していることが明らかとなった。
著者
前田 光一 三笠 桂一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.12, pp.3497-3502, 2011 (Released:2013-04-11)
参考文献数
8

日本呼吸器学会の院内肺炎ガイドラインは,2002年の初版の検証をもとに2008年に改訂されて現在のものとなっている.2008年版ガイドラインでは重症度分類が予後に基づくものに変更され,各群における抗菌薬の選択とPK/PDを考慮した投与法,わが国の医療事情に即したde-escalationの方法が提唱された.ただし,わが国でも医療・介護関連肺炎の概念が導入されたことから,さらにその内容の見直しが今後も必要となる.