著者
伊藤 康弘 宮内 昭 木原 実 小林 薫 廣川 満良 宮 章博
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.294-298, 2013 (Released:2014-01-31)
参考文献数
10

年齢は甲状腺乳頭癌の予後を規定する重要な因子である。特に高齢者乳頭癌が生命予後不良であることは,よく知られている。ただし,生命予後とリンパ節再発予後,遠隔再発予後とは必ずしも一致しない。今回われわれは小児(20歳未満)乳頭癌110例の予後および予後因子について検討した。8例に術前から遠隔転移を認め(M1),これらはM0症例に比べてaggressiveな臨床病理学的所見を示した。M0症例における10年リンパ節および遠隔再発率はそれぞれ16%,5%であった。多変量解析において3cm以上のリンパ節転移,16歳以下が独立したリンパ節再発予後因子であり,3cm以上のリンパ節転移と被膜外進展が遠隔再発予後因子であった。M1症例およびM0症例各1例が癌死した。小児乳頭癌の生命予後は良好であるが,再発率はかなり高い。特に3cm以上のリンパ節転移,16歳以下,被膜外進展のある症例に対しては慎重な治療と経過観察が必要である。
著者
青山 佐喜子 片山 実圭子 清原 実穂 山本 由喜子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成18年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.141, 2006 (Released:2006-09-07)

【目的】食品の抗酸化活性は、食品の品質劣化の防御ばかりでなく、生体の各種疾患の予防・治療に対しても有効性が期待されている。ネギ属野菜類についても、その機能性のひとつに抗酸化性があり、特にニンニクやタマネギについては多くの研究報告がある。一方、ネギ類は多くの種類が食用とされているが、その抗酸化活性についての研究は少ない。そこで本研究では、青ネギ(葉ネギ)、白ネギ(根深ネギ)と、白ネギと同様に根深ネギの一種である赤ネギについて、抗酸化活性と抗酸化成分を測定して比較した。【方法】抗酸化活性の測定には、ラジカル消去能を測定するTEAC法(Trolox equivalent antioxidant capacity)と、還元力を測定するFRAP法(Ferric reducing antioxidant power)を用いた。抗酸化成分はフラボノイド、アスコルビン酸、アントシアニンを測定した。フラボノイドとアスコルビン酸はHPLCにより、アントシアニンは比色法により測定した。【結果】TEAC、FRAPはともに、3種類のネギ類のうち赤ネギが最も高かった。青ネギと白ネギの抗酸化活性を比べると青ネギのほうが高く、青ネギのTEAC、FRAPは白ネギのそれぞれ約4倍、2倍であった。抗酸化成分のうちフラボノイド類は3種類のネギ類いずれもからケルセチンとケンフェロールが認められた。青ネギからはケンフェロールが多く、赤ネギからはケルセチンが多く認められた。総フラボノイド量は青ネギ、白ネギ、赤ネギで約8:1:17の割合で、赤ネギに最も多く、白ネギ中には最も少なかった。また、青ネギにはアスコルビン酸が多く、白ネギの約4倍含まれていた。さらに、赤ネギからはアントシアニンが検出されたが、青ネギ、白ネギからは検出されなかった。
著者
草野 圭弘 福原 実
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.179-185, 2014-06-30 (Released:2014-07-09)
参考文献数
25

Bizen stoneware, with the characteristic reddish hidasuki or “fire-marked” pattern, is one of Japan's best known traditional ceramic works of art. We investigated the microstructure and color-formation process in Bizen stoneware, and discovered that the hidasuki pattern resulted from the precipitation of corundum (α-Al2O3) and the subsequent epitaxial growth of hematite (α-Fe2O3) around it in a ~50 µm-thick liquid specifically formed in the ceramic surface. The epitaxial composites include hexagonal plate-like α-Fe2O3/α-Al2O3/α-Fe2O3 sandwiched particles. At low oxygen partial pressures, α-Fe coated graphite, Fe3P and ε-Fe2O3 were also formed to appear.
著者
長谷川 久弥 川暗 一輝 井上 壽茂 梅原 実 高瀬 真人
出版者
日本小児呼吸器疾患学会
雑誌
日本小児呼吸器疾患学会雑誌 (ISSN:09183876)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.80-84, 2008-06-30 (Released:2011-06-07)
参考文献数
8

先天性中枢性肺胞低換気症候群 (オンディーヌの呪い, 以下CCHS) は睡眠時に低換気を呈する稀な疾患である。今回, 本邦におけるCCHSの実態把握のため, 全国アンケート調査を施行した。23施設から37例のCCHS症例の回答が得られた。主な結果は以下の通りである。症例背景: 男児18例, 女児19例, 在胎週数39.2±2.1, 出生体重2917±360g, 年齢4ヶ月-34歳。診断方法: 臨床症状37/37 (睡眠時低換気37/37, 覚醒時低換気9/37), 血液ガス分析25/37, 炭酸ガス換気応答14/37, 遺伝子解析 (PHOX2B) 13/37。合併症: Hirschsprung氏病13/37, 中枢神経合併症15/37, 他。転帰: 病院内死亡3/37, 入院中1/37, 在宅人工換気33/37 (死亡4/33, 施行中29/33), 治癒0/37。呼吸管理法: 気管切開21/37, 鼻マスク9/37, フェースマスク5/37, 横隔膜ペーシング1/37。今回の検討で本邦におけるCCHSの現状を把握することができた。CCHSの診断, 管理等は様々な方法が行われており, 統一されたものはなかった。今後, 症例の蓄積をすすめ, 適切な診断, 管理法を検討していく必要があるものと思われた。
著者
緒方 一喜 三原 実
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.262-267, 1962
被引用文献数
2 1

現在使用されているバタートラップは, 捕集能力がはなはだ低いので, この改良のための検討と, 規格化のための資料を得るため, チャバネゴキブリを対象に, 実験装置内で実験を行つた. 0.15m^3の金属缶内に, 16箇の腰高シャーレを用い, 4種の試料を組合わせて, 4×4のラテン方格による配置で, 誘引餌の効力比較を行つた. 50種の試料について23種の組合わせを行い, 延47回の比較実験を行つた結果, 米ヌカ, ヒエ, 某社製毒餌剤が他に比べて捕集力が高い傾向がみられた.トラップ容器の形態の検討として, 腰高シャーレと, 3種のプラスチック容器を比較したが, 腰高シャーレが最もよく集めた.トラップの内壁には, マーガリンを上半部に塗つた場合が, ワセリンよりも, そして, 下半部に塗つた場合より多くの虫を捕集した.トラップの外壁には, 何も巻かないより, そして新聞紙やばんそうこうを巻くより濾紙を巻いた方が多く虫を集めた.濾紙は, 新品よりも, 5%白砂糖液に浸したものが多く虫を集めた.以上の結果から, チャバネゴキブリに対しては, 腰高シャーレを用い, 内壁上半部にマーガリンを塗り, 外壁には砂糖水に浸して風乾した濾紙を巻いたものが, 最も捕集力が高いものと考えた.なお, 深さ6cm, 口径9cmの大きさで, 少くとも, チャバネゴキブリ雌成虫200匹までは脱出逃亡させないで捕集できる.
著者
伊藤 康弘 木原 実 宮 章博 宮内 昭
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.155-159, 2016 (Released:2016-11-24)
参考文献数
12

甲状腺分化癌,髄様癌,未分化癌に対するTKIを用いた分子標的薬剤治療が認可され,進行再発甲状腺癌の治療はかなり変化してきている。しかし実臨床の場ではなかなか教科書通りにはいかず,担当医を悩ます場面があることも事実である。ある程度は自分自身の経験や聞知した知識で乗り切れるものの,未だに誰も答えをもっていない問題があることも事実である。TKIをはじめるべき時期,逆にやめるべき時期,癌の生物学的態度とTKIの効果との関連など臨床側が知りたい点はまだまだある。本稿では外科と腫瘍内科の中間地点の立場からこれらについて問題を提起してみた。
著者
長原 実
出版者
北方森林学会
雑誌
日本林學會北海道支部講演集
巻号頁・発行日
no.31, pp.1-3, 1983-03-20

家具の歴史をさかのぼろうとすれば,それはメソポタミアで,最古の文明をつくったとされるシュメール人達が,すでに粘土でつくった腰掛にすわっていたようであるから,紀元前3000年〜4000年までさかのぼることができるようである。木製家具が造られるようになったのは,かなり後になってからであるが,それでもローマ時代には権力の象徴としての玉座があり,庶民的生活用具として素朴な木製椅子が用いられていた,と考えられる。以来ロマニック,ゴシック,ルネサンス,バロック,そして華麗さにおいてその頂点といわれるロココスタイル,即ち16世紀から17世紀前半を界として次第にシンプルナイズされて来る。そして19世紀末にはモダニズムが台頭して来るといった具合に,家具はインテリアデザインと相まって何時の時代にも建築文化とともに歩んで来た,といえる。しかし,ここでは古典について長々と解説するつもりはない。今世紀,即ち近代家具が世界的にどのような動きを示したか,について私が1963年から67年までの家具研究のための滞欧生活,そしてその後十数年間家具製造業を営みながら,毎年数度の海外旅行によって得た経験から,世界の家具について特徴的活動を地域,あるいは人物によって追跡してみようと試みたものである。
著者
大津 耕陽 福島 史康 高橋 秀和 平原 実留 福田 悠人 小林 貴訓 久野 義徳 山崎 敬一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.2019-2029, 2018-11-15

近年さかんに行われているアイドルのライブにおいては,演者の演技に対し観客が「応援」という形で参加することにより,会場をともに盛り上げていこうとする様子が見られる.本稿では,アイドルのライブにおける演者の演技・それに対する観客の応援を振動・光に変換し,双方向に伝達しあうことで,演者・観客間の双方向インタラクションを拡張するライブ支援システムを提案する.提案手法を実現するために,応援したいメンバの演技をリアルタイムに観客の持つデバイスに振動・光として提示する機能,観客が自身の持つデバイスを振ることで光として応援を可視化して演者側に伝達する機能の2つを持つシステムを開発した.実際のライブ環境下において実験を行い,演者の動きの情報を観客に伝達することで応援したいメンバと観客の間の一体感が高まることを確認した.また,デバイスの振りの情報に基づいて観客の応援の大きさを演者の衣装に提示することによって,応援したい特定のメンバと観客間の一体感に加えて,特定のメンバを応援する観客同士の一体感が高まることを確認した.
著者
原 元宣 清水 武彦 福山 正文 野村 靖夫 代田 欣二 宇根 ユミ 広田 昭彦 矢後 啓司 山田 宏 石原 実
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.645-649, 1987-08-15 (Released:2008-02-13)
参考文献数
13
被引用文献数
8 9

茨城県取手市に飼育されていた犬が1985年3月27日, 激しい掻痒, 自己損傷を伴う症状を発見後に死亡, この地域ではオーエスキー病が1981年以来豚に流行していたことから本病が疑われた。剖検では病巣は検出されなかったが, 病理組織学的に延髄と頚部脊髄に著明な血管周囲の細胞浸潤, 神経膠症, ノイロノファギーを認めた。脳・脊髄の混合乳剤および肺・脾臓の混合乳剤を2頭のウサギに接種したところ, いずれも掻痒症を呈し, 4日後に死亡した。感染犬脊髄をPK-15細胞MA-104細胞に接種することにより細胞病原性を示すウイルスが分離され, 著明な円形化と巨細胞形成が認められ, ギムザ染色で核内封入体がみられた。感染PK-15細胞の電顕観察では, ヘルペスウイルス様粒子が観察され, 蛍光抗体法により抗オーエスキー病ウイルス抗体の結合が確認された。
著者
草野 成夫 井樋 昭宏 桑原 実
出版者
The Association for Plant Protection of Kyushu
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.25-29, 2005

温州ミカン「原口早生」の一般栽培圃場からカンキツエクソコーティスウイロイド(CEVd)による被害に類似した症状を呈した樹を多数発見し,検定植物エトログシトロンやRT-PCRによる検定を行ったところ,CEVd以外の4種類のカンキツウイロイド(CVd)を種々の組み合わせで2種類以上保毒していることが明らかとなった。カンキツ樹体の調査では,カラタチ台木部の症状が激しいほど樹冠容積や幹周の減少が顕著であった。<BR>また,CVd保毒が樹体に及ぼす影響を調査したところ,保毒ウイロイド数が多いほど台木部の病徴が激しい傾向が認められた。なお,カラタチ台木部の剥皮等の病徴発現には,ホップ矮化ウイロイド(HSVd)とCVd-IIIの複合感染による影響が大きく,これにCVd-OS,CVd-1-LSSが単独または複合感染することによって発現程度がさらに激しくなる可能性が考えられた。
著者
坂田 霞 薮田 ひかる 池原 実 近藤 忠
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, 2013

地球誕生後まもなく形成し今日に至り広く分布する海洋地殻は,地球最古の生態系が存在する環境として着目されていると同時に,初期地球,また地球外惑星における生命存在可能性についての示唆を与える(Edwards et al. 2012).海洋地殻では,海底下を循環する海水と岩石との反応で溶出した様々な元素を栄養源とする微生物が存在すると考えられ(Edwards et al. 2005),そのような岩石-水プロセスが観察できる,貧栄養,低温(10-15℃),速い海水循環が特徴的な北大西洋中央海嶺西翼部North Pondでの地下生命圏探査を行った。本研究では,玄武岩掘削試料中の微生物活動の記録を明らかにする目的で有機物の検出と炭素同位体分析を試みた。
著者
安原 実
出版者
国際基督教大学
雑誌
国際基督教大学学報. I-A, 教育研究 (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.97-102, 2008-03

大学生に中学生時代の学校の思い出を尋ねると答えは実に多様である.人間関係でつらかった体験も少なくないがよい思い出としてはクラスでの生活や修学旅行・合唱コンクールなどが上位にランクされることが多い.教育課程の分類で見てみるとそのほとんどが中学校の「特別活動」に係ることである.それだけ「特別活動」が成長期の中学生に与える教育的インパクトは大きい.この「特別活動」を学校において構成・実施していくにあたっては,学級担任や学年の担当者任せにすることなく,学校内外の「教育資源」を最大限有機的に組み合わせ計画的に実施することが大切である.学ぶ意欲の衰退やいじめの続発という教育課題に対してもこれを克服する力を生徒に培うきわめて有効な実践が「特別活動」である.
著者
小中原 実
出版者
The Society of Agricultural Meteorology of Japan
雑誌
農業気象 (ISSN:00218588)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.315-322, 1984-03-10 (Released:2010-02-25)
参考文献数
69
被引用文献数
2 2
著者
荏原 実千代 高橋 伸佳 山崎 正子 赤城 建夫
出版者
社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.249-258, 2006 (Released:2006-05-01)
参考文献数
24
被引用文献数
6 1

小児の高次脳機能障害を評価するために必要なコントロール値作成のため,成人用検査を6~18歳の健常児133名に行った.行ったのはウエクスラー記憶検査(WMS-R),Trail making testなどの注意機能検査,Wisconsin card sorting test—慶応—F-S version(WCST)および標準失語症検査(SLTA)である.WMS-Rで記銘力は12歳で16~17歳レベルの90%以上に達していた.注意機能も14歳まで急速に発達し以後ほぼ一定になった.SLTAでは6~7歳で90~100%の正答率を示す項目が多いが,8~12歳で90~100%の正答率に達する項目もあった.一方,WCSTの処理能力は10歳まで向上後思春期に停滞し,16歳以降再び向上する2段階の発達を示した.これらの検査を小児に用いる場合にはWISC-III知能検査と組み合わせて,総合的に評価する必要がある.
著者
牧 涼介 彭 沢亮 福原 実 草野 圭弘
出版者
一般社団法人 粉体粉末冶金協会
雑誌
粉体および粉末冶金 (ISSN:05328799)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.409-414, 2022-10-15 (Released:2022-10-15)
参考文献数
11
被引用文献数
1

Bizen stoneware is produced by firing shaped green clay in a firewood kiln at around 1200°C. The brownish and blackish colors that appear on the stoneware surface in a firewood kiln do not appear on stoneware heated in an electric furnace. The brownish color was found to be caused by the formation of single crystalline, branched, dendritic, Al-substituted ε-Fe2O3 particles. Composite particles consisting of Al-substituted ε-Fe2O3 and Fe-substituted spinel solid solution also formed on the stoneware surface. In this study, we successfully prepared brownish samples that were similar in color to Bizen stoneware by annealing at 1200°C for 2 h in air after heating Bizen clay pellets with K2CO3 at 1230°C under a 10 vol% CO and 90 vol% Ar gas mixture in an electric furnace instead of firing in a firewood kiln. Dendritic hematite particles also formed on the reproduced samples. The blackish color on Bizen stoneware fired in a firewood kiln was caused by the formation of augite [(Ca,Mg,Fe)2Si2O6], which was produced by a reaction between the Bizen clay and firewood ash.
著者
廣川 満良 鈴木 彩菜 川木 裕子 工藤 工 木原 実 宮 章博 宮内 昭
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.32-38, 2020 (Released:2020-06-16)
参考文献数
27

甲状腺穿刺材料を用いた補助診断法について概説する。穿刺針洗浄液を用いた生化学検査,たとえばサイログロブリン,カルシトニン,PTHなどは細胞診よりも診断精度が高く,比較的安価であることから,適応や評価を十分に理解したうえで積極的に用いるべきである。リンパ腫,特にMALTリンパ腫を疑った場合は,フローサイトメトリーによる軽鎖制限の確認は非常に有用である。遺伝子検査は本邦では未だ日常的には行われていないが,今後細胞診で濾胞性腫瘍や意義不明と報告された結節に対して行われていくことになるであろう。