著者
塚本 善弘 TSUKAMOTO Yoshihiro
出版者
岩手大学人文社会科学部
雑誌
Artes liberales : Bulletin of the Faculty of Humanities and Social Sciences, Iwate University = アルテスリベラレス : 岩手大学人文社会科学部紀要 (ISSN:03854183)
巻号頁・発行日
no.97, pp.95-119, 2016-01

日本政府は2015年7月,懸案となっていた30年度・温室効果ガス排出量を13年度比26%減とする目標を決定したが,二酸化炭素(CO2)排出量でオフィスや家庭で4割近い削減を見込んでいること(家庭部門39.3%減)が柱の一つとなっている(外務省,2015)。CO2排出量は近年,産業・運輸部門では減少に転じた一方,オフィス・商業施設等の業務その他部門と家庭部門は増加傾向が続いており──冷暖房を始めとする家庭部門エネルギー消費量(全国的には3割が冷暖房)も,13年度時点で1990年比20.0%増──(環境省編,2015:104),新築住宅の省エネ基準適合化や住宅ストック(既存住宅)の断熱改修,高効率給湯器・照明の導入促進,スマートメーター利用による家庭エネルギー管理徹底など,政府が掲げる対策・施策(外務省,2015など)で家庭部門CO2排出量を4割減らすことは容易ではないように見える。 確かに,家庭部門CO2排出量等増加の背景には,核家族化に伴う世帯数増や家電製品の多様化・大型化,同一世帯内での複数台利用一般化などがあるとされる1)。しかし,「次世代省エネルギー基準」(国の1999年基準)適合の高断熱・高気密エコ(省エネ)戸建住宅居住の場合,年間冷暖房エネルギー消費量が無断熱住宅より54%削減されるとのデータ(環境省編,2015:104),また住宅の断熱化・省エネ改修(エコリフォーム)やLED照明,省エネ家電への買い替え等が進めば,エネルギー消費量が1/4になるとの科学技術振興機構・低炭素社会戦略センター試算(朝日新聞,2015aなど)にも示されているように,エネルギー消費・CO2排出を大幅に減らす技術自体は既に存在している。それら技術の普及,住まいのエコ・省エネ化促進のための社会的仕組み・制度の整備・構築が不十分だったのであり,2011年3月に起きた東日本大震災後に高まった省エネ・節電意識や家庭用エコ(再生可能エネルギー利用・省エネルギー)設備・機器の設置・購入への関心が,あまり(震災発災から5年近く経過した現在以上に)薄れないうちに──省エネ・節電意識低下が懸念され始めている反面,13年度の家庭部門CO2排出量は,節電や省エネ機器普及等の効果で12年度比1%程の減少と,増加傾向に歯止めがかかっており(環境省編,2014:154,同,2015:120など),未だ市民の省エネ・節電行動は継続されている段階と言い得る2)──仕組みを整え,普及への軌道に乗せることが,温室効果ガス削減目標の達成や将来の家庭部門での更なるエネルギー消費低減への鍵を握っていよう。 そのため国レベルでも,とりわけ躯体(外皮;外壁・窓など)の断熱性能に優れエネルギー消費削減効果が大きい高断熱・高気密エコ住宅の新築・改修やエコ設備・機器導入を促すべく,新築住宅に関する「改正省エネルギー基準」(2013年基準)の2020年義務化(実質的に99年基準の新築住宅適合義務付け)や,15年のエコ住宅新築・リフォームを対象とした「省エネ住宅ポイント」制度復活(09・11年に続き実質3度目),省エネ性能や耐震性等の基準を満たす高性能住宅取得の場合の住宅ローン「フラット35S」金利優遇を始め,法制度面の拡充・基準強化や財政支援策を講じてきた。もっとも,前稿(塚本,2015)で指摘したように,新築住宅省エネ基準適合率は上昇してきたものの(11年度で5〜6割程),適合住宅普及が遅れている地域が存在していたり,既存住宅のエコ化は総じて芳しくなく,依然,①住まい手の一般市民・消費者への普及啓発(情報提供・意識啓発),②地場・中小建築業者・設計者(地域事業者)育成,技術力(施工・設計能力)向上,③割高な建築・導入(初期)費用(イニシャル・コスト)負担軽減の3点が,「エコ住宅」3)普及への大きな課題・障害となったまま,残されている。 また,高性能エコ住宅はこれまで,北海道など寒冷地中心に普及してきたが,他地域では夏が高温多湿で冬は低温少湿の場所が少なくない等,気候風土・自然条件や住宅建築様式・技術の伝統の相違,さらにエコ住宅普及状況,地場住宅事業者のエコ住宅設計・施工の平均的技術レベルも異なり,こうした地域特性の差に応じた普及施策・取り組みが不可欠となる。実際,エコ住宅地域普及への推進組織体制を中心に検討した前稿でも簡単に紹介したように,各地の自治体や環境NPO,住宅関連事業者・団体等では00年代半ば・後半頃以降,単独ないし関係主体間連携の下,課題解決に向けた先進的取り組み・施策を精力的に実施し,一定の成果も上がり始めている。そこで本稿では,主に08〜10年度にかけての本州・寒冷地(県)──東北ならびに北信越地方──での調査に基づき分析した拙稿(塚本,2010,2011)の続編も兼ね,それ以降の時期を中心に,広く寒冷地以外も含め国内各地(高性能エコ住宅が既に普及している北海道を除く)で展開されてきたエコ住宅普及への具体的施策・取り組み内容の特徴と問題点等について,あらためて整理,考察することとしたい4)。以下,各県単位での普及活動の中心を担い,前稿で類型化した「(環境)NPO系団体」と「(住宅)事業者系団体」(塚本,2015:117),ならびに行政機関(県及び市等)による取り組みを,3つの課題別に順に見ていこう。
著者
古屋 聖児 横山 英二 熊本 悦明 塚本 泰司
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.15-24, 1983 (Released:2010-07-23)
参考文献数
18

正常対照群7例と神経因性膀胱患者20例を対象として, 球海綿体反射の伝導時間を測定した. この伝導時間は, 陰茎または陰核, および後部尿道を電気刺激した後, 肛門括約筋が収縮する迄の潜時として計算される.1. 正常対照群における伝導時間は, 陰茎または陰核を電気刺激したばあいは32-45msec (平均38.1msec), 後部尿道を刺激したばあいは60-84msec (平均71.1msec) であつた. 従つて, 前者のばあい50msec以上, 後者のばあい90msec以上の伝導時間は異常と考えられる.2. 核上型神経因性膀胱患者12例の伝導時間は, 正常対照群と差を認めなかつた. しかし, 核型神経因性膀胱患者1例および末梢型神経因性膀胱患者6例では, 球海綿体反射の伝導時間に延長が認められた.3. 球海綿体反射の伝導時間の測定は, 客観的, 定量的な臨床検査法として, 神経因性膀胱のタイプや障害部位の診断に有用であると考えられる.
著者
塚本 記子 佐藤 百合絵 八木 有子 平塚 志保 荻田 珠江 佐川 正
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.345-350, 2011-07

本研究の目的は,基礎体温の測定の継続にかかわる要因を明らかにし,女性の健康を促進する教育への一助とすることである。調査対象は,基礎体温の測定を6ヵ月以上継続しているA大学の女子学生4名とし,半構成的面接を行い分析した。その結果,【基礎体温の測定を行動化に結びつける知識と動機がある】【確実な排卵・月経日の予測で,生活の質の向上が図れる】【妊娠・避妊のコントロールにより自尊感情が高まる】【女性としての機能が正常に働いていることを実感できる】【測定行為に対する気楽さと,それを支えるツールと活用法をもつ】の5つのカテゴリーが抽出された。基礎体温の測定の自発的な開始には,基礎体温がどのように役立つかという情報や,自分の身体について知りたいという動機が関係し,生活の質やセルフケア能力が向上しているという実感が測定の継続を支えていた。また,気楽な気持ちで取り組み,手軽なツールを活用することで負担感を軽減し,さらに女性としての機能をもっている喜びや自立感が継続を助長していた。
著者
磯山直也 寺田努 塚本昌彦
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.2013-HCI-153, no.6, pp.1-8, 2013-05-17

近年,インタラクティブシステムのためのユーザ行動認識手法が多数提案されている.情報提示システムがインタラクティブになることで,観客はシステムを自らの体で経験して楽しむことができ,システム提供者もより豊かな表現をすることができる.ユーザ行動には様々なものがあるが,システム設置の制限などの理由により,既存のシステムは特定のアクションの認識に特化しているものがほとんどである.本稿では,平面に複数の加速度センサを装着することで,行われたアクションの位置や強さを認識する手法を提案する.小型の加速度センサのみでシステムを構成することにより,デバイスが目立たずに,汎用的に設置することが可能である.これまでに2度の長期的なメディアアートでの使用を通じて,提案手法の有用性を確認した.
著者
ジャベル ニザル 塚本 隆行 野口 伸
出版者
The Japanese Society of Agricultural Machinery and Food Engineers
雑誌
農業機械學會誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.97-105, 2008-05-01
被引用文献数
2

環境負荷低減を目的として, バイオガス・軽油二燃料機関による農用トラクタの開発を行った。本研究では, バイオガス・軽油二燃料トラクタ機関について, バイオガス供給量を自動制御するバイオガス供給アルゴリズムの開発を目的とした。<br>二燃料運転によるディーゼル機関の基本性能について, 特にバイオガスと軽油の熱量換算の燃料消費率 (BSHC) 及び燃料代替率の検討を行った。二燃料運転の基本性能を把握した後, 吸気管内圧力 (MAP) を機関負荷推定のパラメータとして, バイオガス供給制御アルゴリズムの試作と性能試験を行った。試験の結果, 試作アルゴリズムは安定して機関回転数と負荷に応じてバイオガス供給量を制御できた。
著者
塚本 裕樹 角 薫
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.28, 2014

子どもを対象とし飛距離を伸ばすことを目的とした投球フォームトレーニングシステムの紹介する.フォームを体得することで飛距離を伸ばし,運動の楽しさを体感してもらえるシステム開発を目指す.具体的には,スクリーン上に見本のフォームと自分のフォームを同時に表示し,Kinectを利用することで投球中のスケルトンデータの肘の上がり具合を認識し音声でアドバイスを与える.評価実験を行いシステムの効果測定を行った.
著者
飯田 明由 小久保 あゆみ 塚本 裕一 本田 拓 横山 博史 貴島 敬 加藤 千幸
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.73, no.732, pp.1637-1646, 2007-08-25 (Released:2011-03-03)
参考文献数
10
被引用文献数
4 1 7

The aim of this investigation is to understand the generation mechanism of aero-acoustic feedback noise radiated from rear-view mirrors. In order to clarify the relationship between the velocity fluctuation and radiated noise, correlation in terms of aerodynamic noise and velocity fluctuations were measured in a low-noise wind tunnel. The experimental results showed that noise level of the tonal-noise depended on the ratio of the height of the bump to the thickness of the boundary layer. Strong tonal-noise was generated when the height of the bump was almost equal to 40% of the height of the boundary layer. The tonal-noise level also depended on the length between the trailing-edge of the bump and the edge of rear-view mirror. The frequency of the tonal noise can be calculated by modified Rossiter equation. The tonal-noise was disappeared in the case of the bump was placed at separated boundary layer. It revealed that the seed of the tonal noise was small disturbances generated by the bump on the surface of the rear-view mirror.

2 0 0 0 OA 脚本集

著者
塚本哲三 編
出版者
有朋堂書店
巻号頁・発行日
vol.上, 1922

2 0 0 0 OA 脚本集

著者
塚本哲三 編
出版者
有朋堂書店
巻号頁・発行日
vol.下, 1922
著者
寺田 努 今井 淳南 村尾 和哉 塚本 昌彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. HCI, ヒューマンコンピュータインタラクション研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.10, pp.1-8, 2015-05-07

本稿は,情報処理学会論文誌ジャーナルに投稿する原稿を執筆する際,および論文採択後に最終原稿を準備する際の注意点等をまとめたものである.大きく分けると,論文投稿の流れと,LATEXと専用のスタイルファイルを用いた場合の論文フォーマットに関する指針,および論文の内容に関してするべきこと,するべきでないことをまとめたべからずチェックリストからなる.本稿自体も LATEX と専用のスタイルファイルを用いて執筆されているため,論文執筆の際に参考になれば幸いである.
著者
塚本 康浩
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

動物の発生・再生・腫瘍形成および記憶における細胞接着分子ギセリンの役割を個体レベルで追求した。ニワトリの皮膚移植再生モデルを確立し、移植片の定着にギセリンおよびそのリガンドが関与すること、さらにギセリンの投与が再生を促進することを見出した。さらに、ギセリンおよびそのリガンドが腫瘍(大腸癌およびリンパ腫)の転移を促進することを腫瘍移植実験において明らかにした。ギセリン欠損動物は、出生前に致死となることが判明した。