著者
松本 淳 林 泰一 山根 悠介 小林 茂 寺尾 徹 山本 晴彦 釜堀 弘隆 久保田 尚之 赤坂 郁美 福島 あずさ 村田 文絵 藤波 初木 加藤 内藏進
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2014-05-30

国内で実施中のデータレスキュー研究活動をまとめ、国際的活動と連携するACRE-Japanを、本研究を中核として組織し、アイルランドと北京で開催された国際会議報告を国際共著論文にまとめた。またMAHASRIプロジェクトの後継となるアジアモンスーンに関する国際共同研究の立案を開始し、国内・国際ワークショップを主宰した。南アジアについては、旧英領インドの現ミャンマー・バングラデシュ領内の日降水量データの原本照合・品質チェックが完了し、過去120年スケールの長期変化傾向についての解析を進めた。インド北東部チェラプンジの104年間の日降水量データから、インド北東部のモンスーン活発期の発生機構を明らかにした。バングラデシュの1955年~1980年後半、インドアッサム州の1930年~1950年代後半までのシビアローカルストームデータベースを構築し、発生日の長期変動について解析した。スリランカの1860年代以降の日降水量データ収集した。東南アジアについては、フィリピンの過去115年間のモンスーン開始期および20世紀後半以降における降水の季節変化パターンの長期変動を解明した。日本とフィリピンの過去120年間の台風活動を調べ、近年の大きな被害を出した台風と類似の台風が過去にも上陸していたことを示した。中国については、日降水量データ(Zi-ka-wei)1890年代~1930年代のデジタル化を完了した。樺太、朝鮮、北支那における気象データの統合と検証を行い、東北部黒龍江省における温暖化解析と水稲冷害のリスク解析、東北部・内蒙古自治区の乾燥地帯における雨季の変動解析を行った。帝国日本の気象観測ネットワークに関する2冊の書籍を刊行した。東アジアの多彩な季節サイクルの長期変動解明を行なった。日本については、東海・四国地方の明治・大正期の日降水量データをデジタル化し、大雨発生の長期変化等を解析した。
著者
富田 弘美 中川 隆子 小菅 啓子 小林 茂雄
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 = Journal of the Japan Reseach Association for textile end-uses (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.54-63, 1998-12-25
参考文献数
7
被引用文献数
1

社会人男性の生活場面における服装意識と生活意識の特徴及び関連性について20代と40~50代を対象に質問紙法により調査を行った.主な結果は次の通りである.<BR>(1) 服装意識について20代は職場では個性を重視した服装, 余暇では外出時の服装に関心がみられ, 40~50代は職場では規範意識を持ち機能的な仕事着を必要としている.<BR>(2) 生活意識について20代は家庭中心の人付き合いや積極的に余暇を過ごすなど個人を尊重している.40~50代は地域社会を背景とした人付き合いをし, 伝統的な社会ルールを受容している.<BR>(3) 服装意識と生活意識の関連性についてそれぞれ因子分析をした結果, 抽出された各因子の関連性を正準相関分析により解析した.職場の服装意識では規範性が低く, スーツ着用や仕事着の必要性に対して否定的な層は, 生活意識では余暇の過ごし方は積極的だが仕事に対しては消極的であった.また職場での服装の規範性が高く, 余暇の服装に興味の少ない層は, 生活意識では個人尊重や人付き合いの因子間に関連がみられ, いずれも消極的であった.さらに冠婚葬祭の服装や家庭での服装の因子は, 生活意識の個人尊重, 慶弔行事への考えの因子間に関連がみられた.
著者
小林 茂 水野 祐
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.128-135, 2016-04-15

多様なスキルや視点,経験を持つ人々が新しい製品やサービスを短期間で共創するイベント「ハッカソン」や「メイカソン」における民族誌調査を基に,主催者側および参加者側の双方にとって適切に知的財産を取り扱うことを盛り込んだ参加同意書を作成し,同様のイベントにおいて活用できるよう2014年2月にテンプレートとして公開した.さらに,公開後に行った調査で新たに見つかった課題に対し,イベントの期間中における知的財産の定義および権利化の意思確認を行う終了後の確認書を追加して2015年2月に更新した.2015年9月から12月までに行ったイベント主催者に対する調査結果から,この参加同意書は日本国内のイベント主催者に広く認知され,多くの場合において派生物が利用,または参考にされていることが確認できた.
著者
小林 茂 渡辺 理絵
出版者
大阪大学文学研究科片山剛研究室
雑誌
近代東アジア土地調査事業研究ニューズレター
巻号頁・発行日
vol.1, pp.14-23, 2006-03

平成17年度科学研究費補助金 基盤研究(A)1930 年代広東省土地調査冊の整理・分析と活用(課題番号 17251006)中間報告書
著者
小林 茂男
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.335-343, 2013

2013年10月第20回ITS世界会議東京では開催テーマを「Open ITS to the Next」とした。次世代のITSは,環境・エネルギー・安全・渋滞解消等の交通問題の解決,人々の生活の質の向上を図ることを目指す。また同時に,災害や不測の事態への的確にしてスピーディーな対応という社会の要請に応えることも重要な役割である。そのためにITSは,グローバルに誰にでもさまざまな機会や挑戦のための場が開かれ,多くのプレイヤーが参加できる共通プラットフォームの構築や広域の連携が図れるオープンな形のネットワーク社会を提供していくベースとなっていくことが望まれる。
著者
小林 茂樹 矢田谷 健 高山 昭蔵
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理研究会誌 (ISSN:09166505)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.82-88, 1991-02-25

小型ピロプラズマ症 Japanese Theileriosis (JT症)は、蓄牛放牧時に多発し、放牧牛の発育を著しく遅滞させると同時に、その検査と治療に多大の労力と費用を要する。著者らは、本症発生率の高い公共乳用育成牛放牧場におけるその感染・発症検査、発症牛治療、ならびに放牧牛発育調査を行い、今後の同症の予防・治療対策の一助とした。対象牧場は湿潤冷涼地にあり、放牧密度は0.60〜0.62ha/頭であった。貧血牛(JT症発症牛)は、1987年に比べ夏季降水日数および降水量の多かった1988年に、入牧後早期に増加した。1988年におけるJT症の高い発生は、環境要因として降水日数および降水量の多かった気象条件に起因する草地管理不良(放牧残草の枯死・腐敗など)からダニなど媒介昆虫の繁殖が旺盛となったことが、主な原因と推察された。1988年放牧牛については、入牧後1ヶ月でTheileria sergenti感染率が61%に達した。本原虫感染に基づく発症は、パラインフルエンザ3型およびアデノウイルス7型ウイルス等の感染が間接的に関与したと考えられた。1988年入牧牛の入牧時月齢とJT症発症・治療牛割合との関係は、不明確であった。同じく入牧時体重と同症発症・治療牛割合との関係も認められなかった。発症牛の治療に殺原虫剤としてアミノキン・ナフトエートとジアゾアミノベンザミッドを、補液剤として栄養加リンゲルを用いた。治療開始時ヘマトクリット値(Ht値)は17.9±1.7%で、治療日数は8.1±5.2日であった。1988年春入牧牛の5ヶ月間の1日平均増体重は、発症・治療牛で306±199g、非発症・治療牛で530±234gであった。発症・治療牛では、放牧開始時月齢と無関係に増大量が小さかった。 日本家畜管理研究会誌、26(3) : 82-88.1991. 1990年9月3日受理
著者
岡部 公樹 吉川 知伸 宮本 学 金子 恵美 吉田 幸一 緒方 美佳 渡邉 暁洋 本村 知華子 小林 茂俊
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.424-433, 2023-12-20 (Released:2023-12-20)
参考文献数
15

【目的】大規模災害現場で薬剤師がアレルギー疾患患者に対応する際の問題点,アンメットニーズを明らかにするため調査を行った.【対象と方法】災害医療に携わる薬剤師に日本薬剤師会,日本病院薬剤師会を介し無記名のWEBアンケート調査を行った.【結果】235名から回答を得た.アレルギー疾患に関する情報を平時は電子媒体で得たい薬剤師が多く,災害時はアプリ,紙媒体で得たい薬剤師が平時より増加した.アレルギーポータルや既存の資材の利用者は少なかった.支援で調剤・携行した薬は抗ヒスタミン薬が多かったが,アレルギー疾患関連薬剤の携行量や剤型の不足が問題であった.吸入補助器具やアドレナリン自己注射薬は携行数と比べ今後の携行が推奨されていた.患者指導で重要な事として79.6%の薬剤師が「避難時の薬剤手帳の携帯」と回答した.【結論】アレルギーポータルや資材の普及,支援時期毎の携行薬リスト作成,薬剤手帳を携帯して避難することの啓発が必要である.一方,使用期限の短いアドレナリン自己注射薬の災害時の供給方法は今後の課題である.
著者
宮本 学 岡部 公樹 吉川 知伸 金子 恵美 緒方 美佳 吉田 幸一 本村 知華子 小林 茂俊
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.213-223, 2023-08-20 (Released:2023-08-21)
参考文献数
26

我々は,災害医療従事者を対象に,災害時のアレルギー患者対応に関するパンフレットや相談窓口など既存のツールの評価,災害医療従事者のアンメットニーズを調査するためアンケート調査を行い,266名から回答を得た.アレルギーに関する情報を得る手段は,平時では電子媒体や講演会が,災害時にはスマートフォンアプリや紙媒体の要望が多かった.アレルギー関連webサイトなど既存ツールの認知度は約10~30%と高くなかった.COVID-19が災害時のアレルギー疾患対応に悪影響があると回答したのは66%であった.73%の災害医療従事者が,災害時アレルギー対応窓口の一本化を望んでいた.また,自助の啓発,患者情報を把握するためのツールを要望する意見も多数みられた.これらの結果から,災害医療従事者に向けたアレルギー疾患マニュアルの拡充を積極的に行う必要があると考えられた.
著者
小林 茂 徳井 直生 小林 大祐 図師 雅人 森下 静香 岡部 太郎 藤井 克英 後安 美紀 大井 卓也
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.4B3GS1104, 2023 (Released:2023-07-10)

障害のある人の文化芸術活動における人工知能技術の活用から見えてきた可能性と課題に関して報告する。奈良市のコミュニティ・アートセンター「たんぽぽの家アートセンターHANA」では、身体障害や知的障害のある人々が絵画、詩、演劇など多様な文化芸術活動を行っている。そうしたアーティストたちに共通する課題が、障害の重度化や加齢などにより心身の状態が悪化していく中における創造的な活動や新たな挑戦の継続である。例えば同施設に在籍していた武田佳子は、徐々に身体機能が失われるにつれ、画材や技法を変えながら制作を継続してきた。ここで着目したのがサポーターである。サポーターはアーティストたちの制作活動を支援する人々で、単なる支援に留まらずアーティストに一体化しているかのように見える場面も多数観察された。作品を素材とする画像生成や自助具的なツール制作などの試行を経て、本プロジェクトでは新たなサポーターとしての人工知能に着目した。DALL·E miniやStable Diffusionなどの画像生成技術を活用して取り組んだ活動から見えてきた「表現活動に寄りそう他者としての人工知能」の可能性と課題について報告する。
著者
織田 恵輔 臼井 達矢 上田 真也 桂 良寛 吉川 貴仁 小林 茂 藤本 繁夫
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.313-318, 2012-06-01 (Released:2012-06-15)
参考文献数
31
被引用文献数
4

Although there are a number of reported cases of increased cerebral blood flow during exercise, there are no reports on the relation between changes of blood flow during exercise and attentional function. The purpose of this study is to clarify the relation between changes of blood flow during exercise with AT intensity and attentional function, using near-infrared spectral analysis. The subjects were 10 healthy males. The research protocol was to conduct steady load exercise. We randomly conducted two invention trials: 1) an exercise/task trial in which a trail making test (TMT) was performed as an attentional assignment during steady load exercise, and 2) a rest/task trial in which TMT was performed during rest as a control. As a result, we observed the following: increase of oxy-Hb in the prefrontal cortex during AT exercise, the significant shortening of TMT during exercise from 69.1±10.2 seconds to63.2±7.2seconds, and, with further control, that the more oxy-Hb rises, the more TMT time is shortened. From these results, it is suggested that 10 minutes of exercise would improve attentional function, and furthermore, there is a possibility that increased cerebral blood flow may be involved with the improvement of attentional function.
著者
岡本 肇 田中 享二 小林 茂 山中 勇人 内海 孝康
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.16, no.33, pp.435-440, 2010-06-20 (Released:2010-06-18)
参考文献数
2
被引用文献数
1 1

This paper is described about the failures of waterproofing membranes for underground structures applied on earth retaining walls prior to wall concreting. In this waterproofing system the quality of waterproofing work may become worse and failures increase because waterproofing membrane is applied to irregular surface of the earth retaining wall, waterproofing work is complicated with demolition work of earth retaining wall and concreting work. So it must be recognized the note of this system and needs to make standard of this system. Before standardizing, we researched the failures of this method and classified.
著者
原田 克彦 小林 茂
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.129(2005-MUS-063), pp.7-11, 2005-12-23

PCと外部のセンサやアクチュエータを接続するI/Oインタフェースモジュールは、既にさまざまなものが存在している。本稿では、開発したI/Oモジュールgainerについて説明する。gainerでは、デジタル/アナログ混載マイコンPSoCを使用することにより、機能の再構成が可能(リコンフィギャブル)となっている。また、プログラマブル・ゲイン・アンプ(PGA)による使用者のユーザビリティ向上も期待できる。これらがもたらす使用部品数の減少や低価格でのキット化は、教育用途向けの使用として優位性を発揮できる。一例としてgainerを使用したワークショップについて報告する。
著者
小林 政信 小林 茂之 西森 俊英
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.83-88, 2001 (Released:2003-03-25)
参考文献数
12
被引用文献数
17 17

The development of resistance to a new acaricide, etoxazole, was found in populations of the two-spotted spider mite, Tetranychus urticae, collected from apple orchards in Soma-Mura village, Aomori Prefecture. Laboratory tests showed that a few mite populations of the 30 populations collected from an approximately 7×5 km area were insensitive to the acaricide, even though they have never been exposed to this acaricide. We selected a resistant and a susceptible strain from an insensitive population through selection and reciprocal selection by etoxazole. The resistance ratio calculated from the LC50s of the resistant and susceptible strain was more than 20,000. Crossing tests between the two strains indicated that the resistance to etoxazole was under control of a completely recessive single gene.
著者
黄 国華 小林 茂樹 広渡 俊哉
出版者
THE LEPIDOPTEROLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.261-266, 2008-09-30 (Released:2017-08-10)
参考文献数
10

クロスジキヒロズコガ Tineovertex melanochrysa (Meyrick, 1911)は,小型のヒロズコガ科の一種で,本州,四国,九州,国外では,台湾,インドに分布することが知られている.本種の成虫は昼間に活動し,発生時期には比較的多くの個体が見られる.本種の雌交尾器は特異で,第8背板にメディアンキール(median keel)をもつ,産卵器の先端が鋸歯状となるなど,マガリガ上科にみられるような「突き刺すタイプ」となっている.この特異な形態から,本種が生きた植物の組織内に卵を産み込むのではないかと推定されていたが,実際にどのような産卵習性をもつかは不明であった.また,幼生期の生態などについても不明な点が多かった.著者らは.2007年7月上-中旬に大阪府能勢町三草山,および採集した成虫の行動を実験室で観察した.野外での観察の結果,雌はシダ植物のシシガシラ Blechnum nipponicum (Kunze) Makinoの葉の裏面に産卵するのを観察することができた.また,室内での観察により,卵は成葉の複葉裏面の組織内に1個ずつ複数個が産み込まれること,孵化後に組織から脱出した幼虫は植物体を食べずに地面に落下し,ポータブルケースを作って,枯れ葉などを食べることが明らかになった.本種の生活史は原始的なヒゲナガガ科とよく似ており,生きた植物に産卵する習性をもつことはヒロズコガ科では例外的である.世界的に見るとフィリピンに分布するIschnuridia Sauber, 1902とインド-オーストラリアに分布するEctropoceros Diakonoff, 1955などの属の種が類似した雌交尾器の形態をしていることが知られているが,生態に関する情報は少なく,これらが単系統群であるかどうかについても今後の検討が必要である.本種はMeyrick (1911)によってインド産の標本をもとに記載され,その後,台湾と日本から記録された.大阪府大の所蔵標本を中心に調査した結果,日本国内では以下の府県での分布が確認された.成虫が採集されたデータによると,本州・四国・九升|では年1回,琉球列島(八重山諸島)では少なくとも年2回発生し,近畿では,3-4齢幼虫で越冬すると考えられる.分布:本州(大阪府),四国(高知県,愛媛県),九州(福岡県,鹿児島県),琉球列島(石垣島,西表島,与那国島);台湾;インド.
著者
小林 茂夫 細川 浩 前川 真吾
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

ほ乳類や鳥類は,環境温が低下すると,ふるえによる産熱反応を起こして体温を保つ。一方,爬虫類,両生類,魚類は,環境温が低下しても産熱反射を生まず体温が下がる変温動物である。しかし,ふるえが系統発生上いつ生じたのかわかっていないここでは,低温でふるえ様の反応がサカナで生まれるとの仮説を立て,それを検証する実験をおこなった.受精後3日齢のゼブラフィッシュの稚魚を,28.5℃から12℃の水に移すと,尾ひれを律動的に振る相(ON相,約10Hz)と静止する相(OFF相)が,約3秒の周期で断続的に生じた(ON-OFF相)。しかし,サカナに前進運動は見られなかったので,その運動は産熱のための考えられる.ここでは,発砲スチロールで熱流を遮蔽した試験管に少量の12℃の水を入れ,その中に稚魚をいれ,ふるえで生じる水温の上昇を産熱の指標として測定した。一匹の稚魚を入れたときの温度上昇は,対照群の温度上昇と差はなかった。5匹の稚魚を入れると,水温は,対照群の上昇速度より高い速度で上昇した。10匹の稚魚を入れると,水温は,5匹の上昇速度のほぼ2倍の速度で上昇した。魚類の麻酔薬MS222で処理した5匹の稚魚を入れたとき,温度上昇は対照群と差はなかった。これらの結果は,尾びれのふるえ様の動きで熱が生まれたことを示す。間欠的な動きを生む発振器の場所を探るため,脳神経系のレベルで切断しふるえの変化を見た。後脳と脊髄の間を切断すると,間欠的な動きが連続的なものに変わった.これは,脳の発振器が,連続的なふるえを周期的に遮断していることを示す。
著者
松村 潔 小林 茂夫
出版者
一般社団法人 日本炎症・再生医学会
雑誌
炎症・再生 (ISSN:13468022)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.209-217, 2001-05-31 (Released:2010-04-12)
参考文献数
30

Prostaglandins play various roles in the brain under physiological as well as pathological conditions. This review summarizes our present knowledge about brain localization of two isoforms of cyclooxygenase, enzymes responsible for prostaglandin biosynthesis, and their possible functions. Cyclooxygenase-1 (COX-1) is con-stitutively expressed in microglia throughout the brain. Little is known about COX-1 function there. COX-1 is also abundantly expressed in the primary sensory neurons both at their cell bodies and at the central terminals in the medulla and spinal cord suggesting its involvement in sensory signal transmissions. COX-2 is constitutively expressed in telencephalic neurons in an activity-dependent manner. This neuronal expression of COX-2 was reported to be involved in the regulation of regional cerebral blood flow. On the other hand, some studies have reported that COX-2 might exert adverse actions after brain ischemia and in Alzheimer's disease. Under various infectious as well as inflammatory conditions, COX-2 is expressed in brain endothelial cells. We presented a large body of evidence that elevation of prostaglandin EZ in the brain and occurrence of fever during infection/inflammation are the consequences of this endothelial expression of COX-2. Thus, brain endothelial cells seem to transmit blood borne cytokine signals to brain by producing prostaglandin E2.