著者
佐藤 和夫 西村 顕 小林 美希 進藤 斉 高橋 康次郎
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.2, pp.122-129, 2013 (Released:2017-12-28)
参考文献数
49
被引用文献数
1 1

1.醪の生成アルコールを17%以下とした液化仕込みによる清酒製造において,酒粕中の酵母を再利用した高密度酵母による繰り返し仕込みを長期間継続して行うことができ,平均で約3日の醪期間の短縮効果がみられた。2.繰り返し仕込みの醪では,酵母の増殖量は少なかったことから,何らかの増殖阻害現象が生じたと考えられた。3.醪の圧搾は粕中の酵母の増殖能や発酵能に影響しなかった。また,酵母のメチレンブルー染色率は10%以下を維持し,生酸菌や野生酵母による顕著な汚染は生じなかった。4.繰り返し仕込み回数が多くなると製成酒のアミノ酸度や着色量が増大して品質評価上の問題が生じたことから,実現可能な繰り返し仕込み回数は数回程度と考えられた。
著者
小林 浩子 田中 ふみ子 松田 知明
出版者
羽陽学園短期大学
雑誌
羽陽学園短期大学紀要 = Bulletin of Uyo Gakuen College (ISSN:02873656)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.17-27, 2016-02-01

本稿では、前稿に引続き、大正15年「幼稚園令」制定期から昭和戦後期までのわが国の幼稚園・保育所の成立過程と制度の変遷と山形のそれとを比較し、検証することを通して、本県の保育の特徴について検討した。その結果、全国と比較して大正末期・昭和前期・戦中期・戦後期までの幼稚園の設置数は全国に比べて低いこと、増加はほとんどみられず一定数を保ってきたこと、その一方で保育所は、農村地域の乳幼児の託児所と幼稚園機能を併せ持つ施設として地域の共稼ぎ家庭を支えてきたことなどがわかった。このような状況は、本県が独自の「幼・保一元化」の保育を全国に先駆けて実施してきたことをあらわしており、後の時代の「認定子ども園」普及への布石となったと考えられる。
著者
市川 竜太郎 小林 秀 小倉 あい
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成24年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.141, 2012 (Released:2012-09-24)

目的消費者が行う野菜の冷蔵保存の方法として、購入した状態のまま保存するか、食料保存袋に野菜を入れ替えて保存する方法が一般的に行われている。一方、野菜類は保存中に傷ませた経験のある食材であり、鮮度を保持する方法を知りたい食材として挙げられている。そこで、野菜としてホウレンソウを用い、保存方法の違いが保存後の鮮度に及ぼす影響について検討した。 方法ホウレンソウは東京都内にて購入した市販品をそのまま供試試料とした。重さ約100gのホウレンソウをそのまま保存した場合、食料保存袋に入れて保存した場合、および含水不織布でホウレンソウを包み食料保存袋に入れたものを2週間家庭用冷蔵庫にて保存し試験に供した。保存後のホウレンソウの鮮度は、重量、ガス(O2,CO2)濃度、色差計による色調変化、官能評価(指標として、総合的な新鮮さ・しおれ・傷み・黄変・可食の可否)を行った。 結果各々の条件で保存したホウレンソウの重量を測定した結果、含水不織布で包み食料保存袋で保存したものは、保存前と比較し重量が約10%増加していた。一方、ホウレンソウをそのまま保存した条件では保存前と比較し約17%の重量減少が認められた。食料保存袋にて保存した条件では顕著な重量変化は認められなかった。また、ガス濃度を測定した結果、保存条件の違いによる差は認められなかった。しかしホウレンソウの色調変化では、含水不織布で包み食料保存袋にて保存したものが最も緑色を維持しており、次いで食料保存袋による保存、そのままの状態での保存の順で葉の黄変が認められた。また、各保存条件で保存したホウレンソウの官能評価では総合的な鮮度で相違が認められ、含水不織布で包み食料用保存袋で保存したものが最も鮮度が良いと評価された。含水不織布を利用した保存条件では、葉からの蒸散作用が抑制されるとともに、ホウレンソウが水分を吸収し、鮮度を保持していたと推察された。
著者
小林 由実 小川 進 田中 喜典 小川 宣子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.183, 2011

<B>目的</B> 炊飯に用いる水のイオンの種類やその含量などの水質が飯の品質に影響を及ぼすことを報告している<SUP>1)</SUP>。そこで本研究では、浄水器により調整した水が飯の品質に及ぼす影響についてカルシウムイオンを中心に検討を行った。<BR><B>方法</B> 炊飯には、原水を浄水カートリッジで浄化処理した水(以下:浄水)、浄水をイオン交換樹脂により処理した水(以下:イオン交換水)、そして硬度が浄水に比べ100mg/L高くなるように塩化カルシウムを添加した水(以下:調整水)の3種類を用い、カルシウムイオン濃度は原水が15.7mg/L、用いた3種類の水はそれぞれ15.7mg/L, 2.5mg/L,51.5mg/Lであった。飯の品質はクリ―プメータ測定及び官能検査から硬さ、電子水分計から水分、でんぷんの糊化度はグルコアミラーゼ法と走査電子顕微鏡による組織構造から調べた。また、最初の米の容積に対する炊飯後の容積の割合(膨張率)から飯の「ふっくらさ」を検討した。<BR><B>結果</B> イオン交換水で炊飯することで浄水に比べ、飯の膨張率は高く、水分量が多く、軟らかな飯となり、糊化度の値も高く、網目構造も観察でき、優れた品質の飯となることが示された。一方、調整水で炊飯した飯は浄水に比べ、膨張は悪く、飯の水分量は少なく、でんぷんの糊化度も低かった。これよりカルシウムイオン濃度は飯の品質に影響を及ぼし、カルシウムの除去は飯の品質を上げる効果があることが明らかとなった。<BR>[文献]1)小川宣子、稲垣明子、山中なつみ、下里道子:炊飯溶液中のカルシウムとナトリウムが飯の性状に及ぼす影響(第1報)、日本家政学会誌、57(10)、pp669-675(2006)
著者
孫 仁俊 中野 博昭 大上 悟 小林 繁夫 福島 久哲 堀田 善治
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会誌 (ISSN:00214876)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.892-898, 2005 (Released:2005-10-20)
参考文献数
13
被引用文献数
12 13

The effect of equal-channel angular pressing (ECAP) on the pitting corrosion resistance of Al and Al-Mg alloy was investigated by means of polarization curves in solutions containing 300 ppm of Cl- and by surface analysis. The potentials for pitting corrosion of Al and Al-Mg alloy were evidently shifted to the noble direction by ECAP process, indicating that this process improves resistance to pitting corrosion. SEM observation revealed that the pitting corrosion occurred near the impurity precipitates and the size of impurity precipitated decreased with ECAP process. The time-dependence of corrosion potential and the polarization resistance determined by AC impedance technique suggested that the formation rate of Al oxide films was increased with ECAP process. The improvement in pitting corrosion resistance of Al and Al-Mg by ECAP seems to be attributable to the decrease in the size of impurity precipitates and the increase in the formation rate of Al oxide films.
著者
森下 哲夫 小林 瑞穂
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.79-88, 1954

我々はさきの報告に於て蛔虫を海〓に多数感染させて, 1週以後に蛔虫の幼虫及び成虫から得た抗元を以て, 罹患海〓に皮内反応を実施し特異な成績を得た.しかもこの反応は蛔虫の種類(人, 豚及び犬に)関係なく陽性であるが, 鉤虫抗元に対しては蛔虫罹患海〓は皮膚反応を示さないことを知つた.その逆に犬鈎虫罹患海〓は鈎虫抗元にのみ陽性の反応を示し蛔虫抗元には反応しない.更に蛔虫及び鈎虫抗元共抗元分析の結果polysaccharide fractionは注射後30分で烈しい発赤を惹起し, 6時間位継続して消褪し, 一方protein fractionは2〜3時間後から水腫を伴つて発赤を起し72時間継続することを知つた.豚蛔虫飼養液を抗元として蛔虫罹患海〓の皮膚反応を行うと蛔虫体成分のpolysaccharide fractionに相当する反応丈を示し, protein fractionに相当する反応は全然認められなかつた.Schultz-Dale反応を罹患海〓の腸に対し施行すると蛔, 鈎虫抗元ともpolysaccharide fractionのみが腸の著しいれんしゆくを示すが, protein fractionでは反応が陰性であつた.蛔, 鈎虫共成虫と幼虫との間には共通の皮膚反応が認められ犬鈎虫の場合はfilaria型幼虫のみならずrhabditis型幼虫が成虫と同様な皮膚反応陽性成分を有するが, 卵には認められなかつた.蛔虫卵に依る抗元の場合は更に判然とした変化を認められ蛔虫卵の数を一定にして抗元を製造すると, 単細胞のものには反応が認められず桑実期迄はこの状態が続くが, 蝌蚪期に至つて多少弱いが皮膚反応が陽性になつて来る.幼虫形成の蛔虫卵では勿論成虫と同様の反応を示した.以上の様な結果に対して更に精しい抗元の性質の究明を試みたのが本報文である.
著者
小林 泰輔 暁 清文 柳原 尚明 松本 康 町田 敏之 堀内 譲治
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.321-327, 1993-03-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

Case 1: a 59-year-old male with a one-year history of diabetes mellitus complained of right sudden deafness with vertigo. Otoneurological examinations showed sensorineural hearing loss of the right ear and bidirectional horizontal gaze nystagmus. MRI revealed infarction of the right cerebellar hemisphere indicating occlusion of the anterior inferior cerebellar artery (AICA). With conservative treatment his hearing returned to the contralateral ear level. Case 2: a 49-year-old female who complained of right sudden deafness with vertigo and ipsilateral facial palsy. Audiometric studies showed total deafness on the right. Bidirectional horizontal gaze nystagmus, together with V, VII, IX and X cranial nerve palsies were recognized. CT and MRI proved infarction of the right cerebellum and pons. Her hearing improved only partially. Other neurological signs disappeared within eight months. Case 3: a 54-year-old male with a history of hypertension and angina pectoris complained of right sudden deafness with dizziness. Right sensorineural hearing loss and spontaneous nystagmus toward the left were noted. His hearing improved on the next day. Two days later, however, he lost consciousness. CT showed no abnormality, but angiography revealed occlusion of the basilar artery.These three cases showed the importance of differential diagnosis between acute hearing loss due to cerebral infarction and idiopathic sudden deafness. We emphasize the diagnostic importance of risk factors such as hypertension and diabetes mellitus and the sign of vertigo with nystagmus of central origin in cases of cerebral infarction.
著者
池田 昭夫 松本 理器 長峯 隆 菊池 隆幸 小林 勝弘 國枝 武治 宇佐美 清英
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-06-29

難治てんかん患者の脳内脳波記録への数理モデルの適用や、手術病理標本の解析、動物実験などを通じ、てんかん焦点の脳波バイオマーカーとしてのActive ictal DC shiftsの存在を確立し、てんかん発作における、 神経細胞, 能動的グリア, 受動的グリアの3成分、特に前2者の重要性を明らかにした。また、てんかん発作前状態ではred slow(低周波数帯域活動と高周波律動の共起)がactive DC電位の領域に一致することを明らかにした。一方で、頭皮上脳波での記録の実証により、Active ictal DC shifts、Red slowのバイオマーカーとしての汎用性を明らかにした。
著者
小垣 哲也 小林 敏雄 谷口 伸行
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.65, no.633, pp.1559-1567, 1999-05-25 (Released:2008-03-28)
参考文献数
15
被引用文献数
3 2

In order to conduct direct numerical simulation (DNS) or large eddy simulation (LES) of turbulent flows in complicated flow geometry, accurate finite difference methods are needed in generalized curvilinear coordinate system. Recently, it was shown that the analytical conservation properties of the set of basic equations are needed to be satisfied properly even in discretized basic equations in order to obtain accurate and stable solutions in simulations of incompressible turbulent flow using finite difference method. The basic equations treated here are the continuity equation, the Navier-Stokes equation and the transport equations of the square values of velocity components and the kinetic energy. In this paper, finite difference schemes in generalized curvilinear coordinate system that are suitable for simulations of incompressible turbulent flow are constructed from relatively simple extension of the proper finite difference schemes derived in equidistant Cartesian coordinate system. The extension of finite difference scheme into generalized curvilinear coordinate system is based on the fact that the analytical conservation properties of the coordinate transformed basic equations for incompressible viscous flows are identical with that in Cartesian coordinates.
著者
小林 正智 安部 洋 井内 聖 小林 俊弘
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.1034, 2009

理化学研究所バイオリソースセンター実験植物開発室は文部科学省ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)「シロイヌナズナ/植物培養細胞・遺伝子」の中核機関として植物材料の収集・保存・提供を行っている。平成20年度は新たなリソースとして理研植物科学研究センターが開発したシロイヌナズナFOXライン種子の提供を開始した。またヒメツリガネゴケ、ポプラ、タバコの遺伝子材料の追加公開や形質転換培養細胞の公開準備を進めている。このほかデータベースの更新情報や公開を予定しているリソースの準備状況、更には2010年6月に横浜市で開催予定の21st International Conference on Arabidopsis Researchの概要について報告する予定である。
著者
角野 香織 増田 理恵 張 俊華 木島 優依子 中村 桂子 橋本 英樹 佐藤 菜々 中芝 健太 大久 敬子 藤井 伽奈 橋本 明弓 片岡 真由美 里 英子 小林 由美子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.186-194, 2021

<p><b>目的</b> 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急速な感染拡大を前に,保健所は感染者の把握・追跡の中核的役割を担う一方,その機能がひっ迫する事態に陥った。日本公衆衛生学会から保健所機能の支援を訴える声明が発出されたことを受け,教育研究機関に所属する筆者らは,都内保健所での支援に参加した。本報告は,支援の経緯を記述し支援体制への示唆をまとめ,保健所と教育研究機関が有機的に連携するうえで必要な要件を考察すること,支援を通して見えた保健所における新型コロナウイルス感染症への対応の課題を提示すること,そして支援活動を通じた公衆衛生学専門職育成への示唆を得ることなどを目的とした。</p><p><b>方法</b> 本支援チームは,2大学の院生(医療職13人・非医療職5人)から構成され,2020年4月から約2か月の間支援を行った。支援先は人口約92万人,支援開始当初の検査陽性者累計は約150人,と人口・陽性者数共に特別区最多であった。本報告は,支援内容や支援体制に関する所感・経験を支援メンバー各自が支援活動中に記録したメモをもとに,支援体制の在り方,支援中に得られた学び,支援を進めるために今後検討すべき課題を議論し報告としてまとめた。</p><p><b>活動内容</b> 支援内容は,「新型コロナウイルス感染症相談窓口」「帰国者・接触者相談センター」での電話相談窓口業務,陽性者や濃厚接触者への健康観察業務,陽性者のデータ入力他事務業務であった。各自が週1~2日での支援活動を行っていたため,曜日間の情報共有や引継ぎを円滑に行うために週1回の定例ミーティングやチャットツール,日報を活用した。</p><p><b>結論</b> 教育研究機関が行政支援に入る際には,感染拡大期の緊張状態にある保健所において,現場の指揮系統などを混乱させないよう支援者として現場職員の負担軽減のために尽くす立場を踏まえること,学生が持続可能な支援活動を展開するための条件を考慮することが必要であることが示唆された。一方,本支援を通して保健所の対応の課題も見られた。行政現場の支援に参加することは,教育研究機関では経験できない現場の課題を肌で感じる貴重な機会となり,院生にとって人材教育の観点でも重要だと考えられた。新型コロナウイルスの感染再拡大ならびに他の新興感染症等のリスクに備え,今後も教育研究機関と行政がコミュニケーションを取り,緊急時の有機的関係性を構築することが求められる。</p>