著者
小林 彩 吉尾 雅春 岩本 直己 桜井 真紀子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.BbPI2156, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】小脳梗塞後の症例では、協調運動障害、平衡障害が問題となる事が多いが、今回左上方1/4の視野障害、左側への注意障害、眩暈が大きな問題となった小脳梗塞患者を担当した。アプローチの結果、視野の著明な改善が見られたのでここに報告する。【方法】対象:36歳女性。2010年3月11日に左視野障害を自覚、眼科受診し左同名半盲と診断された症例である。3月12日に脳神経外科病院入院となり、CT・MRI画像にて右小脳半球、右一部後頭側頭回に梗塞巣を認めた。3月24日眩暈増悪しMRIにて右椎骨動脈閉塞、右後下小脳動脈領域を中心とした小脳半球に鮮明な脳梗塞を認めた。5月17日当院入院となる。主訴は左側から人が近づいてきても見えない、文字を見ているとぼやけて読めなくなってくるであった。初期評価:入院時のCT画像において右Broadmann17野鳥距溝の下唇に一部脳梗塞巣が確認された。動作レベルは、居室内伝い歩きレベル・病棟内歩行器歩行レベルであった。起居動作、歩行時の方向転換にて眩暈が出現し、頭部回旋にて眩暈増悪がみられた。左側方への追視や音読においては、努力することによって眩暈増悪と疲労感の訴えがみられ、意識的に逃避しているとの事であった。ハンドヘルドダイナモメーターを用いた筋力測定にて、体幹屈曲右27.4N・左26.5N、肩関節屈曲右47.0N・左40.2N、股関節屈曲右57.8N・左60.8N、膝関節伸展右133.3N・左139.2Nであった。視覚評価として、縦方向A4紙に50mm文字を横4文字・縦4列、25mm文字を横6文字・縦9列に記載したランダムな平仮名の複写を行った。立位にて患者正面に複写用の紙を置き、その左側・左上方に課題用紙を置いた。その結果、左隅3から5文字の複写が困難であった。座位では患者正面の机上に複写用の紙を置き、その左側・左上方に課題用紙を置いた。座位では左側の複写で、左隅2,3文字の複写が困難であった。また、座位で机上においた5mmの文字の音読では、20行中12行目から文字がぼやけ困難となった。全文の音読には、閉眼や紙面から視線を外すなどの動作を行い、濁点や類似した文字の読み間違いがみられた。音読速度は、2分24秒であった。眼科における視覚検査においても左上方1/4に著明な視野障害が認められた。アプローチ:上記諸問題に対して、個別筋への筋力強化、タンデム歩行・スラローム歩行などの応用歩行、サイドステップ、頭頚部回旋運動を実施した。追視運動の獲得がみられた後、視覚と運動の複合的アプローチとして、頚部・体幹の回旋運動を伴うキャッチボール、バドミントン、DVDを用いたエアロビクスダンスを実施した。【説明と同意】本研究の趣旨を説明し、同意協力を得、当院倫理委員会の承認を得た。【結果】最終評価時、院内ADL自立、自転車走行自立レベルであり、新聞の音読も可能なレベルに改善が認められた。筋力は、体幹屈曲右149.9N・左121.5N、肩関節屈曲右148.0N・左140.1N、股関節屈曲右223.4N・左238.1N、膝関節伸展右277.3N・左270.5Nと著明に改善みられた。複写検査では、座位および、立位での50mm文字は1ヶ月、25mm文字は3ヶ月経過時に複写可能となった。音読検査では20行全文が音読可能となり、速度も1分25秒に短縮した。また、眼科にて行った視覚検査においても左上方の視野障害は認められなかった。【考察】本症例の視野障害は、発症後2ヶ月経過時のCT画像において右Broadmann17野鳥距溝の下唇に一部脳梗塞巣が確認され視覚障害が認められたものの、5ヶ月経過時に視覚障害は認められない。そのため、本症例にみられた視覚障害はBroadmann17野のみに由来するものではないと考えられる。SchmahmannとShermanにより報告された小脳病変により生じる小脳性認知・情動症候群:cerebellar congnitive affective syndrome:CCASの一つとして挙げられている空間認知障害が認められたと考えられる。空間認知障害は、臨床的特徴として視空間の統合障害が挙げられている。追視運動や回旋運動など複合的な小脳へのアプローチにより視覚情報の統合が行えるようになり、視野拡大につながったと考えられる。【理学療法学研究としての意義】小脳へのアプローチにより、平衡感覚や失調の軽減だけでなく、視覚・情報の統合などの効果も期待される。また、脳画像から視覚野に問題が見られず、視覚障害が認められた場合のアプローチとして、小脳へのアプローチの有効性が認められた一症例として今後の治療や研究に繋げたい。
著者
小林 彩 吉川 美香 小川 英作 奥山 隆平
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.346-349, 2013-08-01 (Released:2013-09-07)
参考文献数
5
被引用文献数
2 1

基幹病院とクリニックが連携して患者の治療を進めることは,地域医療を充実する上で大変重要である。慢性皮膚疾患の一つである乾癬の診療では,生物学的製剤が近年使用できるようになり,高い治療効果を得ることが可能となってきた。そこで,私たちは長野県内の皮膚科医 (皮膚科を標榜する病院,クリニック) にアンケート調査を行い,乾癬治療の現状を把握することを試みた。 159 施設へアンケートを郵送し,各診療施設での患者数,現在の治療法,生物学的製剤に対する各医師の考えなどに関して,質問を行った。その結果,87 施設 (回答率 55%) から回答が得られた。アンケート結果からは長野県内の乾癬患者数は約 3000 人,その 7 割近くはクリニックで診療を受けていた。全体の 8 割以上の患者は外用剤のみで加療されていた。クリニックでは,生物学的製剤投与の対象となる患者が 15 施設 34 人いることがわかった。また,副作用への懸念や患者への説明時間が確保できないといったことがクリニックでの生物学的製剤導入を阻む要因となっていた。これらの結果から,生物学的製剤を含めた乾癬の診療を進める上で,クリニックと基幹病院の間の連携が大変重要であると考えた。
著者
小林好日 著
出版者
京文社
巻号頁・発行日
1927
著者
石崎 和彦 橋本 憲明 松井 崇晃 名畑 越夫 神戸 崇 奈良 悦子 星 豊一 阿部 聖一 小林 和幸 重山 博信 平尾 賢一 金田 智
出版者
新潟県農業総合研究所
巻号頁・発行日
no.13, pp.47-66, 2015 (Released:2015-06-24)

「コシBL13号」は,新潟県農業総合研究所作物研究センターにおいて開発されたいもち病真性抵抗性同質遺伝子系統である。1996年より,戻し交配法を適用し,「K59」を1回親,「コシヒカリ」を反復親として育成された。いもち病真性抵抗性遺伝子型はPitと推定される。2011年から奨励品種決定調査に供試され,いもち病抵抗性以外の特性において「コシヒカリ」と類似性が高いことから,2013年に新潟県の奨励品種に採用された。なお,「コシBL13号」は,2014年に種苗法に基づき品種登録された。

1 0 0 0 OA 地域連携

著者
四宮 敏章 田原 一樹 中村 由美 金井 恵美 松村 勝代 松澤 未由紀 小林 絢 谷川 恵子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.422-429, 2017 (Released:2017-05-01)
参考文献数
3
被引用文献数
2

心療内科医が中心となったがん診療・緩和ケアにおける地域連携の1例を示す. OPTIM-studyが示した 「顔の見える関係」 づくりを重点に置いたかかわりが重要である. 奈良県においては, 病院関係者, 地域医療を担う医療者, 患者団体, 県の担当者が対等の立場で話し合うことのできるさまざまな機会を作っている. また, 緩和ケアの質の向上を図るためには, PDCAなどを用いたアウトカムの評価も行う必要があり, その取り組みについても進めている.
著者
小林 健太 土屋 卓也 渡部 善隆 劉 雪峰 高安 亮紀
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度において得られた成果は以下の通りになります。小林健太(代表者)および土屋卓也(分担者)は非適合有限要素法の誤差評価について研究を進め、必ずしも正則性条件を満たさないような三角形分割上でのCrouzeix-Raviart有限要素法およびRaviart-Thomas有限要素法について誤差評価を得ることに成功しました。非適合有限要素法は、実際に広く用いられているにも関わらず、三角形分割に制限を課さない誤差評価は今まで得られていませんでしたので、この結果は実用上も重要です。渡部善隆(分担者)は、重調和型非線形方程式の解に対する精度保証付き数値計算の枠組みを理論面・実用面から整備しました。これは今後、流体方程式の精度保証を考える上で基礎となる重要な結果です。また、Poisson方程式の有限要素近似解に対する精度保証付き高精度誤差評価に成功しました。この成果は、他の方程式に対する精度保証の高精度化にも応用できる可能性が高いと考えられます。劉雪峰(分担者)は、Stokes方程式の事前誤差評価とStokes微分作用素の固有値評価を中心に研究を行い、特に、3次元領域におけるStokes微分作用素の固有値の厳密な下界と上界を得ることに成功しました。また、Stokes境界値問題の有限要素法解について、Hypercircle法を用いることで事前誤差評価に成功しました。さらに高安亮紀(分担者)は、半群理論を利用した放物型方程式に対する解の精度保証付き数値計算方法を応用し、非線形放物型方程式の時間変数を複素数に拡張した方程式の解について精度保証付き数値計算を試みました。また、双曲型方程式の一種である移流方程式に対する解の精度保証付き数値計算に成功しました。劉および高安の結果は、流体問題やその他、複雑な構造を持つ方程式への精度保証付き数値計算の応用に向けて重要であるといえます。
著者
科学部所属 杉山拓、小林勇太、中澤颯、間仁田和樹
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第125回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.197, 2014 (Released:2014-07-16)

群馬県の県木はクロマツであり、かつては赤城山に広く植樹されていたが、多くが枯れてしまった。私たちは、枯れた原因について異なる説を聞いた。そこで、枯れた原因を探るとともに、マツがどのように減少し、今後はどうなるか、調べることにした。 まず、林業試験場などで聞き取り調査や文献調査を行うとともに、マツの現状を現地で確認し、現地で撮影した映像やwebからの情報をもとに、地図上に分布などを記録した。次に、過去の3つの現存植生図を用いて、どのように変化したか調べた。 聞き取り調査、文献調査の結果、赤城山では酸性雨が降っていたがマツの生育には影響しない程度であり、枯れた原因はマツクイムシが道管を破壊するためであると分かった。文献調査から、赤城山のマツ林は90年前と比べ、約90分の1まで面積が減っていたことが分かった。また、現地調査や現存植生図からは、かつては広い林も多くあったが、現在は数本が点在している場所が多くなっていることが分かった。 マツは現在も樹齢やマツクイムシの影響で枯れていくものがあるが、枯れる本数と植林本数がほぼ同じであり、マツクイムシの被害が抑えられれば、本数は増加していくと考えられる。
著者
小林 昭
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.155-161, 1960-02-20 (Released:2011-09-21)
参考文献数
9
著者
篠﨑 聡 小林 泰俊 林 芳和 坂本 博次 レフォー アラン 瓦井 山本 博徳
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.1272-1281, 2019 (Released:2019-06-20)
参考文献数
30

【背景と目的】大腸ポリープに対する内視鏡的切除において,熱凝固を加えないでスネアで切除するコールドスネアポリペクトミー(CSP)と熱凝固を加えながらスネアで切除するホットスネアポリペクトミー(HSP)の比較研究がなされてきた.CSPとHSPの有効性と安全性をシステマティックレビューとメタ解析を用いて評価した.【方法】大腸ポリペクトミーに関してCSPとHSPを比較したランダム化比較研究(RCT)のみを解析の対象とした.評価項目は,完全切除率,ポリープ回収率,遅発性出血率,穿孔率および所要時間である.Mantel-Haenszel random effect modelを用いてpooled risk ratio(RR)と95%信頼区間(CI)を算出した.【結果】8つのRCT(症例数1,665名,切除ポリープ3,195個)に対しメタ解析を行った.完全切除率において,CSPとHSPは同程度であった(RR 1.02,95%CI 0.98-1.07,p=0.31).ポリープ回収率もCSPとHSPは同程度であった(RR 1.00,95%CI 1.00-1.01,p=0.60).遅発性出血率は,統計学的有意差を認めなかったもののHSPのほうがCSPより多い傾向にあった(症例単位:RR 7.53,95%CI 0.94-60.24,p=0.06,ポリープ単位:RR 7.35,95%CI 0.91-59.33,p=0.06).すべてのRCTで穿孔は報告されなかった.大腸内視鏡時間はHSPでCSPより有意に長かった(平均差 7.13分,95%CI 5.32-8.94,p<0.001).ポリペクトミー時間もHSPでCSPより有意に長かった(平均差 30.92秒,95%CI 9.15-52.68,p=0.005).【結論】今回のメタ解析ではHSPと比較してCSPで所要時間が有意に短かった.また,遅発性出血率もHSPと比べてCSPで低い傾向にあった.したがって,小さな大腸ポリープに対するポリペクトミーにおいてCSPを標準的治療として推奨する.