著者
本田 久樹 小林 大介 細見 新次郎 藤井 正司 戸祭 正喜 宇野 耕吉 司馬 良一
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.31, no.9, pp.1083-1086, 1996-09-25

抄録:多発性翼状片症候群(multiple pterygium syndrome,以下MPSと略す)とは多発性皮膚翼状片,先天性多発性関節拘縮と特異顔貌(眼瞼下垂,眼瞼裂斜下,耳介低位や小顎症など)を3主徴とし,他にも四肢の変形を合併する稀な疾患である.現在までの報告例は国内と海外を含めて約60例である.しかしMPSの中には,生下時には頚部の翼状片はそれほど顕著でないために先天性多発性関節拘縮症の診断にて報告されている例もあると思われる.本疾患は実際には今までの報告例よりも多数存在しているものと思われる.今回,筆者らは生後間もなく先天性多発性関節拘縮症と診断し,治療をしたが成長するにつれて,しだいに多発性皮膚翼状片が顕著となったことにより同症候群と考えられた2症例を経験した.
著者
小林 寛子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.149-166, 2019-03-30 (Released:2019-09-09)
参考文献数
107

科学技術の発展は目覚ましく,それに対応できる資質・能力を育むことは,自然科学を対象とする理科教育において喫緊の課題と言えよう。本稿は,理科教育が果たすべき役割について心理学の観点から検討しようとするものである。折しも,2017年3月に公示された学習指導要領,及び,それに先立って発表された中央教育審議会の答申には,心理学的観点が数多く含まれた。本稿では,そうした観点の1つである,学習者の立場で「何ができるようになるか」を考えるという点を取りあげ,心理学研究を概観する枠組みとして用いた。具体的には,学習者が学習の過程で抱える困難を明らかにする研究,及び,困難の克服を目指す指導法を提案し,その効果を検証しようとする研究に特に焦点をあてた。さらに,それらを,理科教育を通して「できるようになること」,すなわち,育成が目指される資質・能力の3つの柱(知識及び技能,科学的に探究する力,科学的に探究しようとする態度)ごとに整理して示した。そうしてまとめた研究の知見を受け,最後に,これからの理科教育と心理学研究における課題について論じた。
著者
新中 善晴 亀田 真吾 笠原 慧 河北 秀世 小林 正規 船瀬 龍 吉川 一朗 ジェライント ジョーンズ スノッドグラス コリン
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

Comet Interceptor' is a proposed mission to the recent European Space Agency (ESA) call for F-class ('fast') missions. This is one of six mission concepts invited to submit detailed proposals. A decision is expected until late July 2019. The purpus of our misson is to characterise a dynamically-new comet or interstellar object like 'Oumuamua, which are visiting the inner Solar System for the first time, including its surface composition, shape, and structure, the composition of its gas coma for the first time. Our mission will launch to the Sun-Earth L2 point, where it will be stayed in a stable L2 halo orbit for a period of up to 2-3 years, until a suitable opportunity for a flyby mission to a dynamically new comet presents itself. Suitable targets will be comets that will have a perihelion distance closer than ~1.2 au and an ecliptic plane crossing time and location reachable with ~1.5 km/s delta-v from L2. Once a target is found, which expected to be within a few years based on predictions for comet discovery rates with the Large Synoptic Survey Telescope (LSST), the spacecraft will depart on an intercept trajectory. Before the flyby, the main spacecraft will resease at least two sub-spacecraft, parallel paths through the coma and past the nucleus to be sampled. This mission will give us a 3D snapshot of the cometary nucleus at the time of the flyby, testing spatial coma inhomogeneity, interaction with the solar wind on many scales, and monitoring of Lyα coma. This mission will be a unique measurement that was not possible with previous missions, in addition to the fact that we will target a dynamicall new comet, which will allow interesting comparisons to be made with the results from Rosetta target comet 67P/Churyumov-Gerasimenko. It is expected that the proposed mission includes contributions from Japan as well as ESA member countries.
著者
松井 龍吉 小林 祥泰 山口 拓也 長井 篤 山口 修平
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.565-569, 2011 (Released:2011-10-21)
参考文献数
7

多系統萎縮症とは以前よりオリーブ橋小脳萎縮症(OPCA),線状体黒質変性症(SND),Shy-Drager(SDS)と呼ばれてきた3疾患を包括した病理学的疾患概念の総称である。今回我々は本疾患患者に対し,八味地黄丸を投与したところ,起立時の血圧変動に著明な改善を認めた症例を経験したので報告する。症例は79歳男性。緩徐進行性に動作緩慢,すくみ足,手指振戦を認め,その後立ちくらみ症状が出現。起立性低血圧が見られ各種薬剤の投与を行うが効果は不十分であった。このため八味地黄丸を追加投与したところ,体位変換時の血圧変動が小さくなり,さらに諸症状の改善も認めた。八味地黄丸は自律神経機能の改善に効果を示す方剤とされており,本症例においても多系統萎縮症に伴う起立性低血圧の改善に寄与したと考えられた。
著者
佐口 健一 田中 佐知子 小林 文 中村 明弘
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.75-80, 2019-02

近年,教育現場における学習成果の評価方法として,パフォーマンス評価が求められており,その評価方法の一つとしてポートフォリオ評価が挙げられる.ポートフォリオには学生が学修カリキュラムを通した振り返りとして,成長した点や反省点などが記述されている振り返りシートが含まれる.そこで本研究ではテキストマイニングの手法を用いて振り返りシートの記述内容の分析を試みた.2018年度の2〜4年次の学生582名の内,本研究に参加の同意が得られた557名を対象とし,各学生が2年次3月初めのオリエンテーションの際に提出した1年次振り返りシートを解析した.調査項目は,1年次を振り返り,自分の「成長した点」と 「反省点」についての自由記載とした.解析の結果,「成長した点」として最も多かったカテゴリは「寮生活」で,次いで「友達」,「コミュニケーション」であった.これらの抽出されたカテゴリから,本学の特徴である初年次全寮制教育において学生はコミュニケーション能力が高まったと感じていることが明らかとなった.また,「反省点」として最も多かったカテゴリは「勉強」で,次いで「テスト」,「予習復習」であり,集中して勉強できなかったことや,勉強開始がテスト直前になってしまったことなどを挙げている.これらの結果から,テキストマイニングの手法を用いてポートフォリオの振り返りシートの記載内容を解析することにより,学生が初年次全寮制教育プログラムで学んだと感じている内容を,教員が根拠をもって認識できることが明らかとなった.
著者
小林 宏 原 文雄 内田 豪 大野 宗久
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.155-163, 1994-01-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
22
被引用文献数
16 43

In order to develop “Active Human Interface (AHI) ” that realizes heart-to-heart communication between intelligent machine and human being, we've been undertaking the investigation of the method for improving the sensitivity or “KANSEI” communication between intelligent machine and human being. This paper deals with the mechanical aspects of “Face Robot” that produces facial expressions in order to express the artificial emotions as similar as human being. As actuators move the face skin of the face robot, we select the flexible microactuator (FMA) driven by air pressure for the sake of moving the control points of the face robot corresponding to Action Unit (AU) s, and we design the aluminium frame of the Face Robot for disposing the FMA and then we make the skull frame onto the aluminium frame. The skin of the face robot made by silicon rubber covers up the skull frame. Then we undertake psychological recognition test by showing the face images of 6 basic facial expressions expressed on the Face Robot, and the results show us that the correct recognition ratio accomplishes 83.3% for 6 basic facial expressions. This high ratio shows the possibility of Face Robot as a “KANSEI” communication medium between intelligent machine and human being.
著者
小林 慧子 井上 千栄子 高田 満智子 小池 恵 荒島 真理子 船田 柳子 相馬 ふみ子 松山 セツ 條島 康代 伊沢 栄子 松浦 二枝 長坂 美奈 後藤 義英
出版者
医学書院
雑誌
保健婦雑誌 (ISSN:00471844)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.228-240, 1979-03-10

はじめに 最近,母乳栄養について医療関係者の関心も高まり,目をむけられるようになった。昭和50年5月の業務研究会で,私達は保健婦として,母乳分泌を高め,母乳栄養を確立させるためにどのような働きかけをすべきか,ケースをとおして具体的な援助の方法を研究し,今後の保健指導に役立たせたいと考えた。 すでに周知のことと思うが,初乳にはラクトフェリン,各種免疫抗体,分泌型IgA,マクロファージ等,新生児の腸管に強力な感染防御機構を与えるという大きなメリットがあることで注目されている。厚生省では50年度から,母乳育児運動に本腰を入れ,2月1日に"母乳育児の効果に関する研究班"を発足させ,あわせて妊産婦への啓発,人工乳の誇大広告規制等,多角的に母乳復権運動が開始された。ちなみに昭和50年5月,当所における3か月健康診査時(200名)の母乳栄養率は20%とかなり低い値を示している。この事実を見極め,母乳栄養を継続し得ない諸因子を探究し,保健婦として援助の方法を研究・考察し,まとめたので報告する。
著者
植竹 智 原 秀明 平木 貴宏 岩崎 達郎 笠松 良崇 北尾 真司 小林 康浩 小無 健司 増田 孝彦 増田 亮 宮本 祐樹 岡井 晃一 大久保 翔 尾崎 亮太 笹尾 登 佐藤 帯子 T. Schumm 瀬戸 誠 重河 優大 S. Stellmer 鈴木 健太 渡部 信 山口 敦史 安田 勇輝 依田 芳卓 吉見 彰洋 吉村 浩司 吉村 太彦
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集 72.1 (ISSN:21890803)
巻号頁・発行日
pp.789, 2017 (Released:2018-04-19)

229トリウムには,原子核としては異常に低い数eVの励起準位が存在することが知られている.この原子核遷移は電子に遮蔽されているため外乱の影響を受けにくく,レーザーにより直接励起できる可能性がある.そのため新世代高精度周波数標準としての応用を目指した研究が世界各国で進められている. しかしながら,先行研究で明らかになった遷移エネルギーは7.8±0.5eV (159±10nm) と不定性が大きいため,より精密な決定が急務である.我々はSPring-8の高輝度放射光X線による核共鳴散乱を用いた新しい手法により,原子核遷移周波数を精密に決定することを目指している.これまでにX線の高時間分解能検出器開発,高密度229トリウム標的開発などを進めてきた.講演では実験の現状について詳細を報告する.
著者
神本 武征 高橋 浩 小林 治樹 松岡 信
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.49, no.440, pp.901-908, 1983-04-25 (Released:2008-03-28)
参考文献数
15
被引用文献数
2

急速圧縮装置を用いて平面に衝突するディーゼル火災の対流熱伝達に関する実験を行った.衝突面の熱流束は,通常の等温ガス噴流の衝突の場合と異なり,よどみ点から半径方向にほぼ一定に分布する.これは,よどみ点から半径方向に減少する熱伝達率と,半径方向に向かって燃焼が進行するにつれて増加する熱落差とが相殺し合う結果と解釈される.衝突面への熱損失率は熱発生率の約10%であり,両者の時間経過曲線は良く似ている.
著者
杉田 収 中川 泉 飯吉 令枝 斎藤 智子 小林 恵子 佐々木 美佐子 室岡 耕次 坂本 ちか子 杉田 靖子 曽田 耕一 濁川 明男
出版者
新潟県立看護大学
雑誌
看護研究交流センター年報
巻号頁・発行日
vol.17, pp.6-13, 2006-07

化学物質過敏症(CS)発症者の発症原因になった化学物質と,発症者が反応する空気中化学物質との関連性を,空気中の化学物質56項目を分析することで検証した.その結果,発症原因化学物質と思われる一般名テブコナゾール,化学名a-[2-(4-クロロフェニル)エチルトa-(1,1-ジメチルエチルト1H-1,2,4-トリアゾールートエタノールにはヒドロキシル基(-OH)と塩素(C1)が存在した.一方発症者が「入れる建物」と「入れない建物」のそれぞれの空気中化学物質の分析比較から,発症者が反応する空気中の化学物質は,ヒドロキシル基を有するブタノールと塩素を有するトリクロロエチレンであることが推定された.上越市立小学校全児童12,045名のCSに関連する症状について,無記名アンケートによる実態調査を行った.回収数は10,348名分(回収率85.9%)であった.CS診断基準では主症状5項目,副症状9項目,さらに眼球運動や化学物質の微量負荷試験などの検査が取り入れられているが,ここでは一般市民向けアンケート用であることから「検査」を省略し,診断基準に準じた症状の13項目について,それぞれ「大いにある」「ある」「少しある」「全くない」の選択肢で調査した.各項目について「大いにある」「ある」を「症状あり」とした場合は,主症状2項目・副症状4項目以上,及び主症状1項目・副症状6項目以上の児童は21名(0.2%)であった.一方「少しある」を加えて「症状あり」とした場合は618名(6.0%)であった.
著者
小林 正佳
出版者
日本鼻科学会
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.77-79, 2013 (Released:2013-05-01)
著者
高見 千歳 下司 淳 小林 彰夫
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.1349-1354, 1990-08-15 (Released:2008-11-21)
参考文献数
12
被引用文献数
4 4

ウンカ食害葉より作られる椪風ウーロン茶の香気成分の解明を行うために官能評価およびGC, GC-MS分析し,一般ウーロン茶,紅茶との比較により検討を行った.揮発性成分として51成分を同定し,18成分を推定した.リナロール,およびその誘導体化合物,ゲラニオール等を主成分とし,香気成分組成は一般ウーロン茶より紅茶に類似することがパターン類似率により明らかになった.また官能評価においても同様な傾向が認められ,よい一致性がみられた.リナロールに対するリナロールの誘導体の量比では椪風ウーロン茶のみに高い値が得られ,ウンカの食害による影響と推察された.