著者
中川 浩一 茶之木 美也子 小林 裕美 八代 典子 依藤 時子 染田 幸子 竹村 宏代 福田 道夫 濱田 稔夫
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.670-682, 1994

シプロキサン<SUP>&reg;</SUP>錠 (ciprofloxacin, CPFX) の皮膚組織への移行性と臨床的有用性を検討した.移行性は10名の健常成人男女にCPFXを200mg投与し, 2時間後に血液と皮膚を採取してそのCPFX濃度を高速液体クリマトグラフィーを用いて測定した.その測定値は, 0.99±0.18μg/ml (血清中), 1.18±1.54μg/g (皮膚組織中) で, 組織移行率 (皮膚組織中濃度/血清中濃度) の平均は1.12と計算された.また, 対照薬として, tosufloxacin (TFLX) も150mgを, 同一人かつCPFX内服と同時に投与し, 同様の測定を行った.結果は, それぞれ, 0.49μg/ml, 0.34μg/g, 0.57であった.すなわち, CPFXにおける値は, いずれも, TFLXにおける値よりも統計学的有意差をもって高値であった.臨床試験では30名 (男女各15名, 平均46歳) の皮膚感染症患者に, おおむね, 600mg/dayのCPFXを7-14日間投与してその臨床効果を調べた.その結果は著効; 15例, 有効38例, やや有効; 3例, 無効; 1例, 判定不能; 3例であり, 有効率は85.2%であった. また, 試験開始時に採取した検体から12株の<I>S</I>.<I>aurens</I>株が分離され, CPFXのMICは12株中10株において0.2μg/ml以下であった.以上の成績から, CPFXは皮膚組織移行性においてTFLXよりも優れ, 皮膚科領域感染症にきわめて有用であることが示された.
著者
松本 苗緒 吉川 真弓 江田 邦章 小林 あゆみ 横島 真澄 村上 正人 金来 広文
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.211-222, 2008-06-25
被引用文献数
14

簡易に加工された農産物中残留農薬分析における簡易前処理法を検討した.試料をペースト状に細切均質化しガラス遠心管中でアセトニトリル抽出および塩析後,アセトニトリル/ヘキサン分配し,ミニカラム(グラファイトカーボン/NH<sub>2</sub>およびシリカゲル)で精製した.分析はGC/MSおよびLC/MS/MSを用いた.試験溶液のマトリックス効果を調べた結果,正負の両方で影響が見られたことから,マトリックス効果を排除するためにマトリックス検量線を用いた.試料8種(にんにくペースト,青ピーマンカット,グリーンピースペースト,セロリーペースト,さつまいもペースト,あずき(乾),たけのこ水煮,トマトペースト)について235農薬の添加回収試験を行った結果,いずれの試料とも214農薬で回収率は50~100%,変動係数は20%未満であった.本法は食品中残留農薬のスクリーニング方法として活用できると考える.
著者
小林 範子 廣瀬 肇 小池 三奈子 原 由紀 山口 宏也
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.348-354, 2001-10-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
13
被引用文献数
4 2

痙攣性発声障害 (SD) に対する音声訓練の有効性を検討するために, SDと診断された患者17名に対して訓練を実施した.喉頭の過緊張の軽減に有効とされる6種類の訓練手法と発話速度低下の訓練を組み合わせて使用した.音声症状の評価は, 3名の言語聴覚士による「喉詰めの度合い」の聴覚印象評価によって行った.17名のうち9名が音声の改善と結果に対する患者自身の満足に基づいて訓練を終了し, 2名が通院困難のために訓練中止, 6名が音声改善中のために訓練継続という結果であった.訓練終了例の年齢, 病悩期間, 訓練回数, 初診時の重症度には共通点が認められなかった.重度の音声症状が軽度にまで改善して訓練を終了したものが4例あった.「ため息発声」, 「気息声」, および発話速度低下訓練が多くの症例に有効な訓練手法であった.本研究の結果は, SDに対する治療法の一つとしての音声訓練の有効性と訓練の実施方法を示唆するものと思われる.
著者
高木 潤吉 大関 悟 後藤 圭也 大石 正道 小林 家吉 藤村 義秀 本田 武司
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.128-134, 1998

Polymorphous low-grade adenocarcinoma (以下PLGA) は口腔内, 主に口蓋に発生する小唾液腺癌である。本腫瘍は比較的均一な細胞からなるが, 組織像は多彩な浸潤増殖像を呈する。今回著者らは3例のPLGAを経験したので報告する。<BR>症例1ではPLGAは右側舌下面に発生し, 症例2, 3では口蓋に発生していた。症例1では右側顎下リンパ節への転移が認められたため, 舌部分切除術および肩甲舌骨筋上頸部郭清術を行った。症例2, 3では原発巣の切除のみが行われた。症例1は術後7年, 症例2は術後4年経過するが, 再発, 転移は認めていない。症例3は術後8か月で老衰のため死亡した。これらの症例の病理組織学的所見では, 細胞は小型から中型で, 均一な円形の核を有するものの, 充実性, 管腔状, 篩状, 梁状, 小葉状構造などの多彩な増殖像がみられた。分裂像はほとんど認められなかった。<BR>免疫組織学的所見では, 症例1ではcytokeratinとS-100蛋白が一部の細胞に陽性を示し, 症例2, 3ではcytokeratin, S-100蛋白, vimentin, actinが陽性を示した。carcinoembryonic antigenとepitherial membrane antigenは3症例とも陰性であった。
著者
松浦 信夫 竹内 正弘 雨宮 伸 杉原 茂孝 横田 行史 田中 敏章 中村 秀文 佐々木 望 大木 由加志 浦上 達彦 宮本 茂樹 菊池 信行 小林 浩司 堀川 玲子 菊池 透
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.427-434, 2008 (Released:2009-05-20)
参考文献数
25

小児において適応が認められていない,経口血糖降下薬メトホルミンの有効性,安全性を評価するために,臨床試験を行った.47名が試験に登録され,38名が試験を終了した.HbA1c値を指標とした主要評価項目では38名中30名(78.9%)が有効と判定された.HbA1c値,空腹時血糖など7項目を指標とした副次評価項目を経時的に比較検討した.試験開始前に比し12週,24週終了時でのHbA1c値,空腹時血糖は有意に低下した.乳酸値を含めた臨床検査値に異常なく,有害事象は47例中16例に,副作用は1例に認めたが,試験を中止するような重篤なものは認めなかった.
著者
三木 文雄 生野 善康 INOUE Eiji 村田 哲人 谷澤 伸一 坂元 一夫 田原 旭 斎藤 玲 富沢 磨須美 平賀 洋明 菊地 弘毅 山本 朝子 武部 和夫 中村 光男 宮沢 正 田村 豊一 遠藤 勝美 米田 政志 井戸 康夫 上原 修 岡本 勝博 相楽 衛男 滝島 任 井田 士朗 今野 淳 大泉 耕太郎 青沼 清一 渡辺 彰 佐藤 和男 林 泉 勝 正孝 奥井 津二 河合 美枝子 福井 俊夫 荒川 正昭 和田 光一 森本 隆夫 蒲沢 知子 武田 元 関根 理 薄田 芳丸 青木 信樹 宮原 正 斎藤 篤 嶋田 甚五郎 柴 孝也 池本 秀雄 渡辺 一功 小林 宏行 高村 研二 吉田 雅彦 真下 啓明 山根 至二 富 俊明 可部 順三郎 石橋 弘義 工藤 宏一郎 太田 健 谷本 普一 中谷 龍王 吉村 邦彦 中森 祥隆 蝶名林 直彦 中田 紘一郎 渡辺 健太郎 小山 優 飯島 福生 稲松 孝思 浦山 京子 東 冬彦 船津 雄三 藤森 一平 小林 芳夫 安達 正則 深谷 一太 大久保 隆男 伊藤 章 松本 裕 鈴木 淳一 吉池 保博 綿貫 裕司 小田切 繁樹 千場 純 鈴木 周雄 室橋 光宇 福田 勉 木内 充世 芦刈 靖彦 下方 薫 吉井 才司 高納 修 酒井 秀造 西脇 敬祐 竹浦 茂樹 岸本 広次 佐竹 辰夫 高木 健三 山木 健市 笹本 基秀 佐々木 智康 武内 俊彦 加藤 政仁 加藤 錠一 伊藤 剛 山本 俊幸 鈴木 幹三 山本 和英 足立 暁 大山 馨 鈴木 国功 大谷 信夫 早瀬 満 久世 文幸 辻野 弘之 稲葉 宣雄 池田 宣昭 松原 恒雄 牛田 伸一 網谷 良一 中西 通泰 大久保 滉 上田 良弘 成田 亘啓 澤木 政好 三笠 桂一 安永 幸二郎 米津 精文 飯田 夕 榊原 嘉彦 螺良 英郎 濱田 朝夫 福山 興一 福岡 正博 伊藤 正己 平尾 文男 小松 孝 前川 暢夫 西山 秀樹 鈴木 雄二郎 堀川 禎夫 田村 正和 副島 林造 二木 芳人 安達 倫文 中川 義久 角 優 栗村 統 佐々木 英夫 福原 弘文 森本 忠雄 澤江 義郎 岡田 薫 熊谷 幸雄 重松 信昭 相沢 久道 瀧井 昌英 大堂 孝文 品川 知明 原 耕平 斎藤 厚 広田 正毅 山口 恵三 河野 茂 古賀 宏延 渡辺 講一 藤田 紀代 植田 保子 河野 浩太 松本 慶蔵 永武 毅 力富 直人 那須 勝 後藤 純 後藤 陽一郎 重野 秀昭 田代 隆良
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.914-943, 1987
被引用文献数
2

Clavulanic acid (以下CVAと略す) とticarcillin (以下TIPCと略す) の1: 15の配合剤, BRL28500 (以下BRLと略す) の呼吸器感染症に対する有効性と安全性をpiperacillin (以下PIPCと略す) を対照薬剤として, welI-controlled studyひこより比較検討した.<BR>感染症状明確な15歳以上の慢性呼吸器感染症 (慢性気管支炎, びまん性汎細気管支炎, 感染を伴った気管支拡張症・肺気腫・肺線維症・気管支喘息など) およびその急性増悪, 細菌性肺炎, 肺化膿症を対象とし, BRLは1回1.6g (TIPC1.5g+CVA0.1g) 宛, PIPCは1回2.0g宛, いずれも1日2回, 原則として14日間点滴静注により投与し, 臨床効果, 症状改善度, 細菌学的効果, 副作用・臨床検査値異常化の有無, 有用性について両薬剤投与群間で比較を行い, 以下の成績を得た.<BR>1. 薬剤投与314例 (BRL投与161例, PIPC投与153例) 中, 45例を除外した269例 (BRL投与138例, PIPC投与131例) について有効性の解析を行い, 副作用は293例 (BRL投与148例, PIPC投与145例) について, 臨床検査値異常化は286例 (BRL投与141例, PIPC投与145例) について解析を実施した.<BR>2. 小委員会判定による臨床効果は, 全症例ではBRL投与群78.8%, PIPC投与群79.4%, 肺炎・肺化膿症症例ではBRL投与群 (79例) 82.1%, PIPC投与群 (73例) 79.5%, 慢性気道感染症症例ではBRL投与群 (59例) 74.6%, PIPC投与群 (58例) 79.3%の有効率で, いずれも両薬剤投与群間に有意差を認めなかった.<BR>3. 症状改善度は, 肺炎・肺化膿症症例では赤沈値の14日後の改善度に関してPIPC投与群よりBRL投与群がすぐれ, 慢性気道感染症症例では胸部ラ音, 白血球数, CRPの3日後の改善度に関してBRL投与群よりPIPC投与群がすぐれ, それぞれ両薬剤投与群間に有意差が認められた.<BR>4. 細菌学的効果はBRL投与群68例, PIPC投与群57例について検討を実施し, 全体の除菌率はBRL投与群75.0%, PIPC投与群71.9%と両薬剤投与群間に有意差は認められないが, Klebsiella spp. 感染症においては, BRL投与群の除菌率87.5%, PIPC投与群の除菌率16.7%と両薬剤群間に有意差が認められた. また, 起炎菌のPIPCに対する感受性をMIC50μg/ml以上と50μg/ml未満に層別すると, MIC50μg/ml未満の感性菌感染例ではBRL投与群の除菌率69.6%に対してPIPC投与群の除菌率94.7%とPIPCがすぐれる傾向がみられ, 一方, MIC50μg/ml以上の耐性菌感染例ではPIPC投与群の除菌率12.5%に対して, BRL投与群の除菌率は66.7%と高く, 両薬剤間に有意差が認められた.<BR>5. 副作用解析対象293例中, 何らかの自他覚的副作用の出現例はBRL投与群5例, PIPC投与群11例で, 両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.<BR>6. 臨床検査値異常化解析対象286例中, 何らかの異常化が認められた症例は, BRL投与141例中45例 (31.9%), PIPC投与145例中28例 (19.3%) で, 両薬剤投与群間に有意差が認められた. 臨床検査項目別にみると, GPT上昇がBRL投与140例中26例 (18.6%), PIPC投与140例中14例 (10.0%), BUN上昇がBRL投与128例中0, PIPC投与127例中4例 (3.1%) と, それぞれ両薬剤投与群間での異常化率の差に有意傾向が認められた.<BR>7. 有効性と安全性を勘案して判定した有用性は, 全症例ではBRL投与群の有用率 (極めて有用+有用) 76.3%, PIPC投与群の有用率の74.8%, 肺炎・肺化膿症症例における有用率はBRL投与群81.0%, PIPC投与群75.3%, 慢性気道感染症症例における有用率はBRL投与群70.0%, PIPC投与群74.1%と, いずれも両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.<BR>以上の成績より, BRL1日3.2gの投与はPIPC1日4gの投与と略同等の呼吸器感染症に対する有効性と安全性を示し, とくにβ-lactamase産生菌感染症に対しても有効性を示すことが確認され, BRLが呼吸器感染症の治療上有用性の高い薬剤であると考えられた.
著者
香取 幸夫 川瀬 哲明 小林 俊光
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.67-74, 2005 (Released:2012-09-24)
参考文献数
19
被引用文献数
1

This paper reviews the diagnosis and treatment of foreign bodies in the tracheobronchial tree of children. From 1986 to 2005, sixty-four cases were treated in the Tohoku University Hospital. According to previous reports, children under the age of three years were the most common sufferers. The most freguently found foreign bodies were peanuts, but non-organic materials were also the cause in a few cases. For the diagnosis and examination of the sites of foreign bodies, the history of aspiration and coughing attacks, weakness of respiratory sounds, chest roentgenogram f indings, and also CT scans were found to be valuable. In all cases, i t was possible to remove the foreign bodies by ventilation bronchoscopy.
著者
佐藤 琢紀 木村 昭夫 佐藤 守仁 糟谷 周吾 佐々木 亮 小林 憲太郎 吉野 理
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.10, pp.687-693, 2007

<b>背景</b> : 2004年に敗血症診療の初のガイドラインであるSurviving Sepsis Campaign Guidelines for Management of Severe Sepsis and Septic Shock (SSCG) が発表され, 全世界的に敗血症の治療法が標準化されつつあり, 初期輸液療法の重要性が提唱されている。<b>目的</b> : 本研究では, 初期輸液療法の重要性の再確認と具体的な輸液量の検討を行った。<b>対象と方法</b> : 2001年1月1日から2006年8月31日までに当センター救急部に救急搬送されたsevere sepsisあるいはseptic shock 64症例について検討した。治療開始後72時間と28日でそれぞれ死亡群・生存群に分け, 各群間で来院時の重症度スコアやSSCGで推奨されている治療法について比較した。<b>結果</b> : 初期輸液療法に関して, 72時間後・28日後ともに生存群の方が死亡群に比して有意に輸液量が多かった。来院時の重症度スコアや抗菌薬, 昇圧剤投与等の初期輸液療法以外の治療法の施行割合では, 各群間で有意差を認めなかった。来院後1時間輸液量が1,700ml以上であれば100%の生存が得られた。1時間輸液量が1,700ml未満であっても, 24時間輸液量が3,200ml以上であり, 24時間尿量が550ml以上確保できたときは, 93%の生存率が得られたが, 24時間尿量が550ml確保できなかったときは, 38%の生存率であった。1時間輸液量が1,700ml未満, 24時間輸液量が3,200ml未満であっても, 24時尿量が550ml以上確保できたときは, 82%の生存率が得られたが, 24時間尿量550ml確保できなかったときは, 36%の生存率であった。<b>結語</b> : severe sepsisの初期治療法では, 臓器灌流量を維持するための適切な初期輸液が, 重要であることが再確認され, 従来から言われている輸液量の指標は妥当であることも確認された。
著者
小林 泰之 上茶谷 若 井上 嘉則 山本 敦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.635-639, 2011-08-05
参考文献数
17

リンゴ果汁中のカビ毒であるパツリンを分析するための前処理法に,両性イオン性高分子を固定した親水性相互作用型固相抽出剤(DAM吸着剤)を適用した.リンゴ抽出物を1% エタノール-ヘキサン溶液に溶解後,DAM吸着剤50 mgを充填した固相抽出カートリッジに負荷することで,パツリンは定量的に吸着された.吸着されたパツリンはアセトニトリル2 mLによって定量的に溶出された.アセトニトリル溶出液を0.01% 酢酸水溶液1 mLに転溶後,HPLCに供した.パツリンのピーク近傍には定量の妨害となる夾雑ピークは検出されなかった.本前処理法全工程でのパツリンの回収率は77.0~82.1% で,RSDは0.9~2.6% であった.また,パツリンの検出限界は1 &mu;g kg<sup>-1</sup>であった.本法を市販リンゴ果汁及びリンゴ果実中のパツリン分析に応用したところ,土壌中で腐らせたリンゴ果実中のパツリンが精度よく定量された.
著者
鈴木 雅之 黒岩 龍 印南 圭祐 小林 俊平 清水 信哉 峯松 信明 広瀬 啓吉
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.3, pp.644-654, 2013-03-01

日本語テキスト音声合成において,任意の入力テキストに対し正しいアクセントを推定することは,自然な合成音声を得るために不可欠である.日本語は,単語が文中で発声されると,アクセントが前後の文脈に応じて変化する,アクセント結合と呼ばれる現象が発生する.本研究では,この日本語のアクセント結合を統計的に自動推定する課題に取り組む.まず本研究の遂行に必要な,文発声時のアクセント情報がラベル付けされた文章データベースを作成した.ここでは6334文の日本語文セットを対象に,日本語東京方言話者の作業者一名が,アクセント句境界,文中の単語アクセント型のラベリングを行った.そしてこのデータベースを利用し,条件付き確率場を用いた日本語東京方言のアクセント句境界及び文中の単語アクセント型推定手法を提案する.アクセント句単位でアクセント結合自動推定の正答率を調べたところ,規則処理(87.48%)と比較して,提案手法(94.66%)はより高精度にアクセント結合を推定できることが示された.更に規則処理によるアクセント結合処理を用いた合成音声と,提案によるアクセント結合処理を用いた合成音声とを,聴取実験により比較したところ,提案手法は合成音声の自然性を有意に向上させられることが分かった.
著者
千葉 拓郎 田井 秀一 上羽 貞行 小林 力
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.702-708, 2008
参考文献数
18

我々は,矩形の圧電バイモルフ振動子を3角形に加工した3角形圧電バイモルフ振動子を使って,その先端に針を付けた振動型粘度計の開発してきた。これまでに約20〜400Hzの非共振帯の周波数を使って,バイモルフ入出力間の位相差から高い検出感度で広範囲の粘度測定を行ってきた。そこで,本実験では特に非ニュートン性の高粘度液体の測定において要望されている,更に低い1〜20Hzの超低周波領域での高粘度液体の測定を試みた。この超低周波領域では位相差が急上昇する特異な特性が現れて計測不能であったが,バイモルフの出力インピーダンスを改善することにより,これまでに類のない1Hzからの超低周波領域での粘度測定を可能とすることができた。
著者
伊藤 亜希 小林 正治 松崎 英雄 田中 潤一 大畠 仁 高野 伸夫 齊藤 力
出版者
特定非営利活動法人 日本顎変形症学会
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.229-237, 2007-12-15 (Released:2011-02-09)
参考文献数
29
被引用文献数
3 8

This study investigated the relation between personality characteristics and types of jaw deformities and evaluated the influence of orthognathic surgery on personality characteristics.The subjects consisted of 52 patients (16 males and 36 females) in whom jaw deformities were surgically corrected and the mean age at surgery was 26.3 years. They were divided into four groups based on the types of jaw deformities such as mandibular protrusion with or without maxillary retrusion, mandibular retrusion with or without maxillary protrusion, open bite and asymmetry.Personality characteristics were analyzed using Minnesota Multiple Personality Inventory (MMPI) and Rosenberg's Self-Esteem Scale before and six months after surgery, and the Kruskal Wallis test and t-test were used for statistical analyses.Preoperative MMPI scores were not significantly different from normal values of their generation as a whole, but the distribution of Depression Scale and Self-Esteem Scale scores among the four groups were significantly different. The Depression Scale score in the asymmetry group was higher than those in the other groups and the Self-Esteem Scale score in the asymmetry group was lower than those in the other groups. After surgery, the Depression Score decreased in the asymmetry group and the Self-Esteem Scale score increased in all groups except the open bite group.In conclusion, it is considered that patients with asymmetry are likely to have an inferiority complex and orthognathic surgery for such patients has a favorable effect on personality characteristics because the deformity and the change of full-face appearance are easily recognized by themselves.
著者
小林 英史
出版者
特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
雑誌
日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学 (ISSN:13468111)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.65-75, 2014

<b>従来の歯科医療では,う</b>蝕<b>歯には修復治療,軽度から中等度の歯周病には歯周治療,重度の歯周病には歯周補綴,歯を失った場合には義歯によって対応してきた.近年ではその対応にインプラントや審美的要件が加わり,患者はさまざまな治療オプションの中から自らが受けたい治療を選択することが可能となっている.しかしながら,歯科医師と患者がどの治療オプションを選択するにせよ,最終的に健康な口腔内の維持には「咬合の安定」が重要であることに異論の余地はない.咬合の再構成に迫られる症例では,安定した中心位咬合,バーティカルストップ,アンテリアガイダンス,それに伴う臼歯離開咬合,適切なアンテリアカップリングの獲得を第一の治療目標とすることは,これからの歯科医療にとっても不変であるものと考えている.今回,長期的に偏った嚙み癖により,下顎位の病的偏位をきたした患者に対し,咬合治療に焦点をあて,必要最小限の歯質の切削による下顎位ならびに審美的な主訴の改善に努めた結果,良好な結果が得られた.【顎咬合誌 34(1・2):65-75,2014</b><b>】 </b>
著者
高崎 禎子 久保田 紀久枝 小林 彰夫 赤塚 慎一郎
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.329-335, 1986
被引用文献数
3

脱脂大豆とかつお節だしけ抽出残渣を加水分解し調製された新しいタンパク質加水分解調味料(混合調味料)の香気成分を減圧蒸留法およびヘッドスペース法により分離し,GCおよびGC-MSから香気構成成分の同定を行った。香気成分は,有機酸,ピラジン類,ラクトン類,フラン類,含硫化合物,ピロール,アルデヒド類などから成っており,それらの多くは,オキアミ加水分解調味料の成分と共通していたが,混合調味料からは,オキアミ調味料の特有香気に関与している2-フェニル-2-ブテナール,4-メチル-2-フェニル-2-ペンテナール,5-メチル-2-フェニル-2-ヘキセナール等のアルドール型縮合物は見出せなかった。混合調味料とオキアミ調味料の香気濃縮物およびヘッドスベースの香気成分を比較することにより,混合調味料の穏やかな香気について考察した。
著者
谷地舘 藍 佐藤 弘二 佐藤 彰 薮上 信 小澤 哲也 小林 伸聖 中居 倫夫 荒井 賢一 Ai Yachidate Koji Sato Akira Sato Shin Yabukami Tetsuya Ozawa Nobukiyo Kobayashi Tomoo Nakai Arai Ken Ichi
雑誌
【A】基礎・材料・共通部門 マグネティックス研究会
巻号頁・発行日
2010-12-16

センサ素子全体を薄膜プロセスにより作成した伝送線路型薄膜磁界センサを試作した。アモルファスCoNbZr薄膜とコプレーナ型伝送線路を組み合わせ、被測定磁界に対するキャリア信号の位相変化を検出対象とする磁界センサを製作した。試作した磁界センサのインピーダンスおよび位相変化を測定し、その結果を報告する。
著者
今井 亨 奥 貴裕 小林 彰夫
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.4, pp.1-6, 2011-10-21
被引用文献数
1

テレビ番組の音声を文字で伝える字幕放送は,聴覚障害者や高齢者への重要な情報保障手段の一つである.1985 年の字幕放送開始以来,リアルタイムの日本語文字入力方法が確立されていなかったため,字幕が付与される番組は長い間事前収録番組に限られていた.NHK では,他の研究機関とも連携してニュース音声認識の研究を進め,世界に先駆けて 2000 年に音声認識によるニュース番組のリアルタイム字幕放送を開始した.番組音声を直接認識する本ダイレクト方式の実用化後,スポーツ番組の実況アナウンス等の復唱音声を認識するリスピーク方式の字幕制作システムの実用化などにより,リアルタイム字幕放送は年々拡充されるようになった.また,両方式を併用して認識性能と運用性を高めた,ハイブリッド方式のニュース番組用字幕制作システムの実用化も,現在検討を進めている.本稿では,字幕放送の現状と音声認識を利用した各種字幕制作システムを紹介するとともに,その技術的特徴と実用化の経緯について述べる.Closed-captioning for broadcast, which displays spoken words as texts on the TV screen, is one of important media for the hearing impaired and the elderly. Since starting in 1985, closed-captioning has been provided only to prerecorded TV programs due to lack of a real-time input method of Japanese texts. NHK has done extensive research on speech recognition for news with other research institutes and led the world in real-time closed-captioning for broadcast news by speech recognition in 2000. Besides the direct method recognizing the original program sound, NHK realized a re-speaking method where rephrased utterances by another speaker are recognized for captioning of sports programs, resulting in expansion of live closed-captioning every year. Also a new hybrid method combined with both methods will be put into practical use for more accurate and efficient captioning of news programs soon. This paper introduces current situation of closed-captioning for live broadcast and the real-time closed-captioning systems with their technological features and the ways how they were implemented.