著者
鈴鴨 よしみ 熊野 宏昭 山内 祐一
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.417-424, 1997
参考文献数
14

この研究の目的は, タイプA行動パターン, 職場ストレス(Karasekのdemandcontro1-supportモデルにより定義), および生活習慣の歪みの間の関連を, 以下のような仮説に基づいて検討することであった。1)タイプA行動パターンと職場ストレスは, 運動不足, 飲酒, 喫煙, 食行動の異常といった健康に対して悪い影響を及ぼす行動的リスクファクターを助長する。2)タイプA者が高ストレイン状況下におかれるとより多くの生活習慣の歪みを呈する。2職場の649名の職員(男性442名, 女性207名)に質問紙(「JobContentQuestionnaire(JCQ)」, 「前田式A型傾向判別表」, その他生活習慣の歪みについて尋ねるもの)による調査を行った。そして, タイプA行動パターン, 職場ストレス, および生活習慣の歪みの間の相互連関を各性別ごとに分散分析により検討した。この研究はパス解析を用いて行った以前の研究を再解析したものである。再解析を行った理由は, パス解析ではタイプAと職場ストレスの相乗効果が検討できず, 上記の2番目の仮説の検証が十分にできなかったためである。さらに, 以前の研究では26項目から成るJCQを用いたが, JCQの信頼性と妥当性を検討した最近の研究の中で22項目4下位尺度版の利用が推奨されていたため, 今回は22項目に基づいて新たに算出し直した結果に基づいて解析した。その結果, 以下にあげるような関連がタイプAまたは職場ストレスと生活習慣の歪みとの間に見出され, 2,3の結果を除き, 第一の仮説はおおむね是認されたものと考えられた。1)男性のタイプA者には喫煙者が多く, 女性のタイプA者はアルコールをよく飲む。2)仕事の要求度の高い男性はアルコールをよく飲む。3)裁量の自由度の高い男性には喫煙者が多い。4)同僚のサポートが十分にある男性は間食が少ないが, アルコールをよく飲む。5)仕事の要求度と裁量の自由度がともに高い女性は間食が多い。6)裁量の自由度と同僚のサポートがともに低い男性は最も運動不足である。また, 第二の仮説は以下のような点で検証された。1)裁量の自由度の低い男性のタイプA者は最も運動が不足していた。2)仕事の要求度の高い女性のタイプA者と仕事の要求度の低いタイプB者の双方で喫煙者が多い傾向にあった。以上から, 今回の研究では, 全体的に仮説を支持する結果が得られたということができよう。今後は, より多くの職場を対象にして, 職種をより詳細に分類した研究, そして, タイプA行動パターンと職場ストレスの身体的および心理的リスクファクターに対する影響も検討できるような研究をさらに進めることが望ましい。
著者
池尻 良平 大浦 弘樹 伏木田 稚子 安斎 勇樹 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.53-64, 2017-05-20 (Released:2017-05-26)
参考文献数
20

MOOC(大規模公開オンライン講座)の普及によって遠隔地であっても無料で大学の講義を受講できるようになっている.しかし,講座の学問領域において何が学習されているかを実証的に評価している研究は少ない.そこで本研究では,MOOC の歴史学講座の受講による学習効果を評価した.講義内容を視聴し課題に取り組んだ実質的な受講者を分析した結果,歴史領域の知識の獲得を要する各週課題の平均得点率はどれも80%以上,歴史的思考力を要する講義課題の平均得点率は68%であることが確認された.一方,事前事後の質問紙・テストで測定した歴史的思考力は事前に比べて事後で有意に向上したものの,効果量としては小さいということが示された.これらの結果を踏まえ,講義映像と掲示板で構成されるMOOC に対し,より歴史的思考力を育成する方法として,対面学習と組み合わせたり,CSCL 研究の知見を踏まえた機能を追加したりする改善方法も示した.
著者
安斎 勇樹 益川 弘如 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.287-297, 2013

本研究の目的は,協同制作を課題とした大学生向けのワークショップにおいて,創発的コラボレーションを促すプログラムの活動構成の指針を示すことである.本研究では,ジグソーメソッドと類推の効果を組み合わせた「アナロジカル・ジグソーメソッド」という活動構成を仮説として設定した.アナロジカル・ジグソーメソッドのほかに,ジグソーメソッドと類推の有無によって合計4群の活動構成を設定し,それぞれ2回(各6-7グループ)の実践を行い,各グループの制作プロセスを質的に分析した.その結果,アナロジカル・ジグソーメソッドによって活動を構成すると,創発的コラボレーションが促されることが示唆されたほか,視点の相違から類推が活用され,さらにそれが異なる視点から再解釈されたり,複数の概念を結びつけたりする可能性が示された.
著者
平塚 祥子 熊野 宏昭 片山 潤 岸川 幸生 菱沼 隆則 山内 祐一 水柿 道直
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.120, no.2, pp.224-229, 2000-02-01
被引用文献数
1

The failure of patients to comply with treatment regimens recommended by their physicians is a significant clinical problem. Researches on the assessment of compliance have, however, been precluded by methodological difficulties such as lack of adequate measures. The purpose of this study was to develop a self-administered questionnaire to evaluate drug compliance. First, questionnaire containing a 52-items complied by two doctors, a pharmacist and a nurse, was tested on 81 outpatients, all volunteers, attending the departments of psychosomatic medicine and internal medicine. Four items were temporarily removed for later analysis because they directly inquired about drug compliance (drug compliance items). The other 48 items were analyzed and three factors consisting of 26 items were further studied : expectation on taking medicine, rejection to taking medicine and seeking knowledge of drugs. Chronback's alpha coefficients representing internal consistency of the three factors were sufficiently high (ranging from .75 to .84). Furthermore, we preformed a simplified pill count to validate the 4 drug compliance items. There was a weak to moderate correlation between the result of pill count and each of 4 drug compliance items. A new self-administered questionnaire of 30 items was thus developed and named the Drug Compliance Scale.
著者
平泉 武志 熊野 宏昭 宗像 正徳 吉永 馨 田口 文人 山内 祐一
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.397-405, 1998-08-01
被引用文献数
1

本研究の目的は, 自律神経機能, 心理・行動特性の面から, 医療環境下と非医療環境下にみられる血圧格差と, 心理的ストレス負荷時昇圧の類似点および相違点を比較することにより, 「白衣現象」の機序を明らかにすることである.対象は, 3回以上の外来受診にて収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上を満たし, 重度の臓器障害を伴わない未治療本態性高血圧症患者86例(年齢20〜75歳, 平均55歳;男性33名, 女性53名)である.非服薬下に外来随時血圧と24時間自由行動下血圧の測定を行い, 随時血圧と昼間(6〜12時)血圧の平均値の差を白衣効果と定義した.次いで, 十分な臥位安静の後に, 無負荷の状態で10分間, 数列逆唱による心理的ストレス負荷状態で6分間, 立位負荷状態で7分間, 血圧とRR間隔を一拍ごとに記録し, 心理的ストレス負荷時昇圧度を評価すると同時に, スペクトル解析により血管支配性交感神経活動と圧受容体反射感受性を評価した.さらに心理テストと半構造化面接を施行し, 種々の心理・行動特性を評価した.以上の自律神経機能の指標と心理・行動特性を説明変数に, 白衣効果と心理的ストレス負荷時昇圧を目的変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行った.心理的ストレス負荷時昇圧には, ストレス負荷時血管支配性交感神経活動が正の関連を示したのに対して, 白衣効果には安静臥位時血管支配性交感神経活動が負の関連を示した.一方, 心理的ストレス負荷時昇圧には「神経症傾向」, 「怒り」, 「生活習慣の歪み」が正の関連を, 「タイプA行動」が負の関連を示したのに対して, 白衣効果には「抑うつ」が正の関連を, 「不適応」と「怒り」が負の関連を示した.また, 白衣効果と心理的ストレス負荷時昇圧との間には, 有意な相関はみられなかった.以上の成績から, 白衣現象は自律神経機能, 心理・行動特性のいずれの側面からも, 心理的ストレス負荷時昇圧とは異なる現象であることが示唆された.
著者
中原 淳 八重樫 文 久松 慎一 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.437-445, 2004-03-20
被引用文献数
7

近年,多くの高等教育機関がeラーニングに注目している.一般的なWebベースのeラーニングシステムには,学習者同士が相互作用を行うための電子掲示板が実装されている.学習者は,それを活用し,相互に情報交換や討論を行い,協調的な問題解決に取り組むことができる.本研究では,電子掲示板における相互作用の状況を,個々の学習者が所有する携帯電話の待ち受け画面に可視化することで,電子掲示板における学習者の諸活動を促進することを目的とした携帯電話ソフトウェア「iTree」を開発した.iTreeは,「木の成長をメタファとした表現」を用いて,電子掲示板の相互作用を携帯電話の待ち受け画面に可視化する.この画面を見ることで学習者は,PCから電子掲示板の様子を,頻繁にチェックしなくても,そこで進行している相互作用の状況を把握することができる.評価の結果,iTreeを利用する学習者は,電子掲示板のメッセージを,より積極的に閲覧する傾向があることがわかった.また,iTreeの機能全般に関して,多くの学習者が肯定的な主観的評価をよせていた.
著者
栗原 一貴 望月 俊男 大浦 弘樹 椿本弥生 西森 年寿 中原 淳 山内 祐平 長尾 確
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.391-403, 2010-02-15
被引用文献数
3

本論文では,現在一般的に行われているスライド提示型プレゼンテーション方法論について,その特徴を表す新しい定量的指標を提案する.提案指標は,「準備した順に発表資料を提示しているか」および「発表者と聴衆がどれくらい離れたところを表示しているか」を数値的に表現するものである.この指標を用いることで,プレゼンテーションの改善を図る様々な拡張手法を定量的に評価することが可能となる.さらに,提案手法を算出可能なプラットフォームシステム,Borderless Canvasを開発する.大学院講義における運用を通じて提案指標の算出と可視化例,解釈例を示し,指標の有効性と限界,適切な適用方法を議論する.In this paper we propose quantitative metrics to enable discussing the effectiveness and the limitations of extended methods of slide-based presentation methodology, which is widely used and studied today. We define metrics to estimate such as "how the presenter follows the prepared sequence of topics" and "how the presenter's behavior and every member of the audience's behavior differ." Then we develop a ZUI multi-display discussion software, Borderless Canvas, as a platform for calculating the metrics. The result of a situated datataking in a graduate school class for a semester shows an example usage of the metrics and their interpretation. Based on this, we discuss their effectiveness and limitation to apply them to evaluate extended methods of slide-based presentation methodology.
著者
大森 正子 星野 斉之 山内 祐子 内村 和広
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.85-93, 2007
被引用文献数
9

〔目的〕結核患者の発生を職場という視点で分析し,職業別に患者発見の動向を明らかにすること,特に看護師については罹患率を推計すること。〔資料と方法〕結核発生動向調査年報,国勢調査年の職業別人口を用いた。職業別に患者の発見方法の変化を比較し,看護師と教員・医師の罹患率を男女別に推計した。〔結果〕看護師等では新登録中職場健診発見割合が年々拡大し,2004年は40.4%になった(医療機関発見割合は43.9%)。また看護師等では家族以外の接触者検診で発見される割合が1995年以降急速に拡大し,2000年以降は6~9%になった。1987年から2004年にかけて新登録者は5.6万人から3.0万人へ47.4%の減少をみたが,看護師等は490人から574人へ17。1%の増加となった。18年の間,看護師の罹患率は横ばい状態で,2004年の罹患率は,女で10万対46.3,男で825と推計された。その他の職業の20~59歳の罹患率と比較した相対危険度は,女で4.3(95%CI:3.9~4.8),男で3.8(95%CI:2.8~5.2)となった。一方,教員・医師の相対危険度は男女とも1以下であった。〔考察〕相対危険度から看護師の結核の約80%は職業起因と推察され,看護師の働く場である医療機関あるいは高齢者施設等においては,職場健診も含めて院内(施設内)感染対策の充実と徹底を期待する。
著者
山内 祐平
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.478-482, 2011-12-01
被引用文献数
2

本稿では,米国の大学図書館における学習支援の系譜と大学の学習支援組織をレビューした上で,日米の大学における学習支援の位置づけの違いを明らかにし,その差がラーニングコモンズの展開に与えている影響について考察を行う。結果として,大学進学率と中退率の差,大学に設置されている学習支援組織の差,学習支援組織を支える仕組みの差,インフォメーションコモンズの不在という4つの相違点が明らかになり,相違を前提とした日本型ラーニングコモンズの学習支援について提案する。
著者
菅井 勝雄 黒田 卓 西端 律子 前迫 孝憲 三宅 正太郎 山内 祐平 黒上 晴夫
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

初年度(平成11年度)は、総合学習における本研究テーマをめぐって、理論的検討を実施した。すなわち、J.Deweyの「児童中心」教育を中心に、近年の社会的構成主義、文脈主義、研究方法論やアプローチなどを討議した。その結果、総合学習における設計と評価では、「コミュニティにおける協同活動」や、「ポートフォリオ評価」などが理論上重要であることが確認され、論じられた(菅井)。また、試行期間にある総合学習の実践校として、大阪府下の2校をはじめ、研究分担者がそれぞれの地域校で研究を開始することにした。第2年度(平成12年度)は、密接な打ち合わせと連絡のもとに研究を推進したが、大阪府下の中学校と大阪大学との間で連携の試みをスタートさせるとともに、大阪大学(前迫)と富山大学(黒田)との間で、情報ネットワークを利用した交換指導の試みを実施した。このような経緯の結果、最終年度(平成13年度)の3年間にわたる研究成果報告書には、下に示す研究成果を公表することができた。(1)総合学習における児童・生徒の学習意欲と授業設計との関わりについて、調査法を用いて明らかにした(三宅)。(2)総合学習における小・中学校の情報活用能力をめぐるカリキュラム編成法や評価法を探求し、併せて自然環境の中での生徒の体験活動とメディア利用の実践を展開し、ひとつのモデルを提示した(黒田)。(3)総合学習との関連で、学校図書館の捉え直しが論じられ(森田)、メディアリテラシーのアプローチが探求された(山内)。(4)最近の脳研究から総合学習の基礎研究が試みられ、興味ある知見が得られた(村井)。(5)中学校と大学の連携のモデルが示された(西端)。
著者
星野 斉之 内村 和宏 山内 祐子
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.1-8, 2009-01-15
被引用文献数
1

〔目的〕青中年期結核罹患率の地域差を検討する。〔方法と結果〕2005年の結核発生動向調査と国勢調査を用いて,都道府県別の性・就業状況別の青中年期(25~54歳)罹患率を算出し,背景要因を検討した。〔結果〕都市と周辺地域の罹患率が高い。四大都市通勤圏とその他の地域の比較では,都市通勤圏の日本人の就業者,無職,主婦で有意に高かったが,主婦では差は小さかった。生活保護対象者の罹患率は高いが,受給率に地域差はなかった。外国人の罹患率は高いが,女性の無職・その他のみに地域差を認めた。電車・バス利用回数と罹患率が,就業者で強い相関を示したが,主婦に相関はなかった。居住状況と都道府県罹患率に相関はなかった。糖尿病,悪性腫瘍,関節リューマチの受療率は結核罹患率と相関せず,推定HIV感染合併患者数は少なく,除外しても罹患率の差異は保たれた。〔考察〕都市部における公共交通機関の利用と就業による感染リスクが示唆され,事業所の患者発見対策強化と必要時の公共交通機関における接触者健診が勧められる。また,貧困の影響の可能性があり,詳細な検討が必要である。外国人,居住状況,HIV感染,糖尿病,悪性腫瘍,関節リューマチの影響は示唆されない。
著者
永井 由美子 山内 祐平 中原 淳
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.48, pp.260-261, 2001-10-15

Community on netowork-BBS, ML-, there are useing text while people communicate. Members of a BBS have to imagine a community's activity by the text. Our subject of stydy is interaction on community. There are included activity of the community, content of their talk and relation with each participats. On this development, visualization of the state of community's activity is our purpose. We visualized these;(i)icon's movement of a location on screen : comparison of other icons.(ii)icon's motion : variable of icon's quantity. (iii)icon's cloma : variable of icon's quality. (iv)icon's brightness : variable of icon's quality.