著者
馬場 幸大 西尾 正輝 山崎 裕治
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.61-66, 2016 (Released:2016-10-03)
参考文献数
34

要旨 国指定天然記念物であるイタセンパラについて小規模水槽飼育を実施し、飼育条件の違いが成長や生残に与える影響を調査した。実験条件として、1日あたりの給餌の頻度(1回、3回)、個体の密度(5匹、20匹)そして日当たり(日なた、日陰)の3つの項目に注目した。これらの条件を組み合わせた8通りの実験群を3組ずつ用意し、1か月ごとに生残率を算出し、標準体長および体重を計測した。さらに、本種の繁殖期とされる9月および10月における計測については、性成熟の判定を行った。飼育実験の結果、豊富な餌量の供給および低密度における飼育によって、良好な成長が期待できることが示唆された。一方で、残餌や高水温に起因する水質悪化が、摂餌活性および生残率の低下をもたらす可能性が示された。また、すべての実験群において性成熟する個体が出現した。これらのことから、保護池のような広大な土地が確保できない場所においても、効果的な条件を整えた小規模水槽において本種の飼育は可能であり、有効な保全方策の1つとなることが明らかとなった。
著者
大塚 尚実 其田 一 山崎 裕 北 飛鳥 宇留野 修一
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.7, pp.424-427, 2008-07-15
参考文献数
7

「氷上の格闘技」と呼ばれるアイスホッケーの試合中に,パックが頸部に衝突し,心肺停止で搬送された症例を経験したので報告する。症例は18歳の男性。アイスホッケーの試合中,相手のシュートで放たれた硬質ゴム製パック(重量約160g)が左耳後部に当たり,意識消失した。直後は自発呼吸があったがまもなく消失し,救急車内収容後に心静止となった。当院に搬入された際は心肺停止状態であり,瞳孔は散大し対光反射は消失していた。CPRを継続し,エピネフリン 1 mg投与後,自己心拍が再開した。左乳様突起尾側部に打撲痕が認められた。CT及びMRIを撮影したところ,くも膜下出血及び脳幹周囲血腫を認めた。自発呼吸,意識は回復しなかった。集中治療室に入室し,脳保護目的で低体温療法を行ったが,第 5 病日のCTでは低酸素脳症の所見であり,脳波・聴性脳幹反応ともに平坦であった。遠征中の事故であったため第 7 病日に地元病院に転院搬送となったが,搬送 7 日後に肺炎による呼吸不全を主とする多臓器不全により死亡した。アイスホッケーでは身体接触による外傷のほか,スケート,スティックやパックなどによる外傷も多数報告されている。そのため若年者ではより厳重に防具で身体保護を行っているが,シュートは成人で120-150 km/hにもなる。今回は防具の隙間に衝撃が加わり,脳幹周囲出血及びくも膜下出血を呈し,脳圧上昇によって脳幹が圧迫され,呼吸停止から心停止に至ったと推測される。同様の事故による複数の剖検例も報告されており,今後防具等の改善を検討する必要がある。
著者
山崎 裕治 後藤 晃
出版者
日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-28, 2000-05-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
181

Because lampreys have been considered to be representative of primitive vertebrates, frequent taxonomic, phylogenetic and speciation studies have been made, both before and since the landmark publication, “The Biology of Lampreys” (-1971-81). Primarily because of their low diversity of morphological features (treated as valid taxonomic characteristics), lampreys have been subject to much taxonomic uncertainty. Nevertheless, current phylogenetic hypotheses, based pri-marily on dentition, have been accepted by many researchers, with only slight modifications, over the last 2-3 decades. However, recent molecular studies of some lamprey groups have demonstrated the potential for a molecular approach to phylogenetic systematics of lampreys and a new basis for evaluation of previously-held hypotheses.Many lamprey genera are composed of several species characterized by different life-styles, such as parasitic, anadromous and nonparasitic, fluvial. The speciation process proposed in previous studies has been broadly divided into the following patterns: nonparasitic, fluvial species have evolved directly from a parasitic, anadromous species; and some nonparasitic, fluvial species have evolved from an intermediate at the parasitic, fluvial stage, rather than directly from a parasitic, anadromous form. In this review, these two processes and the mechanisms by which nonparasitic forms may have evolved, are discussed.As a case study, phylogeny and speciation within the Far East monophyletic genus Lethenteron is considered. Four Lethenteron taxa, L. japonicum, L. kessleri and the northern and southern forms of L. reissneri, should be regarded as discrete species because of the existence of reproductive isolation between all possible pairs of taxa in region of sympatry. In the monophyletic group, comprising the former three species, the nonparasitic fluvial L. kessleri and the northern form of L. reissneri are both thought to have evolved from ancestral stocks of parasitic, anadromous L. japonicum, following the occurrence of precocious dwarf individuals in each an-cestral line.
著者
山崎 裕子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.531-535, 2006-11-01

ブログは管理が容易なウェブサイトの一種で,現在国内ユーザ数が急速に増加しているが,国内の大学図書館でブログを運営している所はまだわずかである。本稿ではその一例として,2005年9月から2006年6月まで運営されたブログ「東大薬学図書館にっき」を紹介する。東京大学薬学図書館職員(筆者・当時)がブログを開始した意図,学内業務の一環として開始した経緯,ブログッールの選定方法,図書館内外の出来事を取り上げた記事の内容,ドメイン別・月別などに分類したアクセス状況,リンクやトラックバックなどのブログ機能の活用状況について概説し,大学図書館におけるブログの意義について考察する。
著者
西森 大地 山崎 裕司 中屋 久長 山本 双一 平賀 康嗣 片山 訓博 重島 晃史 高地 正音
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.59-61, 2011-03-31

下肢伸展運動を課題として,徒手による他動的誘導(以下,他動誘導)と徒手抵抗による誘導(以下,抵抗誘導)のいずれが運動再現性の点で優れているかを比較検討した.対象は,健常成人24名の右脚である.12名は靴ベラ式短下肢装具装着下(以下,装着群)で,残り12名は非装着下(以下,非装着群)で実験を行った.仰臥位,右膝関節最大屈曲位を開始肢位とし,他動誘導,抵抗誘導のいずれかのガイドによって開始肢位から再現させる屈曲角度(膝関節90°と60゜)まで誘導し,その運動を記憶するよう指示した.開始肢位に戻した後,自動運動によって運動を再現させ,誤差を求めた.膝関節60°の非装着群における誤差は,他動誘導,抵抗誘導の順に2.49cm,1.54cmであった。装着群では3.68cm,1.57cmであった.両群ともに抵抗誘導において誤差は小さかった(p<0.05 ).膝関節90°では非装着群において有意差を認めなかったが,装着群では抵抗誘導において誤差は小さかった(p<0.05 ).以上のことから,徒手抵抗を加えて運動を誘導する方法が正確に運動を指導することができるものと考えられた.
著者
寺尾 詩子 山崎 裕司 横山 仁志 大森圭貢 笠原 美千代 平木 幸治
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 = Journal of Kochi Rehabilitation Institute (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-6, 2004-03-31

本研究の目的は,昇段動作に必要な下肢筋力水準について検討することである.対象は,運動器疾患を有さない高齢患者166名(74.4歳)である.昇段能力は高さが40cm,30cm,20cm,10cmの練習台を用い,上肢の支持がない状態での昇段の可否を調査した.下肢筋力は,椅子座位,膝関節屈曲度位での等尺性膝伸展筋力を測定した.昇段能力が優れた群において膝伸展筋力は有意に高値を示した(p<0.001).膝伸展筋力が体重の17%を下回る場合,いずれの段差においても昇段は不可能であった.筋力が30%を上回る場合,全ての症例が10cmの昇段が可能で,80%の症例は20cmの昇段が可能であった.筋力が40%を上回る場合,80%の症例が30cmの昇段が可能であった.さらに,筋力が50%を上回る場合,80%の症例が40cmの昇段が可能であった.本研究から,高齢患者における昇段能力の規定要因としては膝伸展筋力が重要であり,昇段動作が手すりなしで自立するためには最低限の下肢筋力が必要なことが示唆された.
著者
和田 麻友美 山崎 裕 村井 知佳 中村 裕介 佐藤 淳 秦 浩信 北川 善政
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.106-113, 2014-03

非定型歯痛(Atypical Odontalgia: AO)は,明確な原因がないにもかかわらず歯やその周囲に疼痛を訴える疾患であり,歯科医師は診断や治療に苦慮することが多い.当科で診断したAO症例の臨床経過および治療効果を明らかにする目的で後ろ向き研究を行った. 対象は2010年1月から2012年5月の期間に,当科で最終的にAOと診断した22例(男性:5例,女性:17例,平均年齢:54歳)であった.主訴は歯痛9例・抜歯後疼痛6例・歯肉痛5例・インプラント術後疼痛1例・上下顎の顎骨疼痛1例であった.病悩期間は半年未満9例(41 %)・半年~1年3例(14 %)・1年以上10例(45 %)であった.全例が当科受診前に他の歯科医療機関を受診していた.前医で行われた治療は,歯内療法・歯周療法・レーザー照射・スプリント療法・補綴療法・薬物療法など多岐にわたっていた. AOの臨床診断のもと,13例に対して当科で薬物療法を行った.使用した薬物は,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor, SSRI:10例),ベンゾジアゼピン系抗不安薬(benzodiazepine derivative, BZD:9例)の順に多く,これらのうち7例が両者の併用例であった.治療効果は13例中7例(54 %)で疼痛の改善が認められた.改善した7例のうち,6例はSSRIとBZDとの併用療法であった. SSRIとBZDの併用による薬物療法はAO症例に有効である可能性が示された
著者
武田 雅彩 三浦 和仁 新井 絵理 松下 貴恵 山崎 裕
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.122-126, 2020-04

苦味の自発性異常味覚を訴える症例に対し,漢方薬の五苓散を投与したところさまざまな効能が得られた症例を経験したので報告する. 70 代の女性.初診の1か月前,突然,安静時に右舌縁の苦味を自覚し,その後も症状に改善傾向なくかかりつけの歯科からの紹介にて当科受診した.下肢のむくみ,頬粘膜の咬傷痕が認められ,血清亜鉛値は61 μg/dl と軽度低値ではあったが他の各種検査では異常を認めなかった.味覚障害の原因として亜鉛欠乏性が疑われたが,まずベンゾジアゼピン系の抗不安薬であるロフラゼプ酸エチルの投与を開始した.すぐに苦味は軽快傾向を示したが,3週頃から改善が認められなくなった.そこで水滞の所見を参考に五苓散5 g/ 日を投与すると苦味が軽快した他に下肢のむくみや頬粘膜の咬傷がなくなった。結果的に亜鉛の補充は行わずに味覚異常は完治した
著者
山崎 裕之 石井 裕 渡辺 富夫
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
pp.22-00046, (Released:2022-09-09)
参考文献数
21

For the elderly, the act of “speaking” is important to maintain their physical function. It is known that the listening with nods and giving responses are important to encourage utterances. Also, in elderly nursing homes, conversations are often started when they look at images. We have developed a speech-driven embodied entrainment character called “InterActor” which automatically performs communicative motions such as nodding based on voice input, and have demonstrated the effectiveness of nodding reaction. In this study, we propose a listening system that promotes utterances by recognizing the user’s speech contents by voice input, and presenting images related to the words in speech on the display, and giving nodding reaction from the listener’s InterActor and images. This system has a function to support the intention to listen by having the listener’s InterActor to turn around to the image at the time of display and to gaze it jointly. To verify the effectiveness of this system, a comparative experiment and a sensory evaluation experiment were conducted on care workers at an elderly nursing home under the two conditions, one with or without of nodding image, and another with or without of the word image from the utterance. As a result, it was confirmed that the listening effect by image presentation and nodding motion has an utterance promoting effect that makes it easier for the user to speak.
著者
山崎 裕美
出版者
東京都立大学法学部
雑誌
東京都立大学法学会雑誌 (ISSN:03868745)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.89-149, 2005-01-14
著者
清水 大輔 山崎 裕治
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2029, (Released:2021-08-31)
参考文献数
33

ミヤマモンキチョウは、高山帯から亜高山帯にかけて生息する高山蝶である。本種は、近年の温暖化によって、個体数の減少が危惧されており、 2019年の環境省レッドリストでは準絶滅危惧種に指定されている。しかし、現在本種の生息域や生活環などの基本的な生態研究が十分に行われていない。本調査では、ミヤマモンキチョウの保全を目的とし、本種の主要な生息地である立山連峰弥陀ヶ原の標高約 1600 mから約 2100 mまでの範囲において、生息状況および利用環境に関する調査を行った。その結果、 2019年 7月 17日から同年 8月 18日までの間に、本種の成虫が延べ 529個体確認された。本種の確認地点は、標高 1700 m以上の草原地帯であり、森林地帯では確認されなかった。また、草原において本種の出現に与える影響を推測するために、本種の出現を目的変数とし、草原全体のメッシュの斜度と草原における地形の存在メッシュを説明変数としたロジスティック回帰分析を実施した。その結果、本種の出現に対してメッシュの斜度は正の影響を示し、池塘の存在は負の影響を示した。これは、本種の成虫が池塘周辺と比較して、傾斜が大きく水はけのよい草原地帯を多く利用する傾向があることを示唆する。また、本種が利用する吸蜜植物および寄主植物の種類や樹高、および日照状態などの生育環境を調査した。本調査の結果は、将来的な環境変化が本種のさらなる減少をもたらす可能性があることを示唆する。
著者
青木 詩子 山崎 裕司 青木 治人
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.77-81, 1998-03-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
1
被引用文献数
1

階段を前向きに降りること(前方アプローチ)が困難な片麻痺患者に対し,後ろ向きに降りる方法(後方アプローチ)を試み,その有用性について検討した。対象は片麻痺患者13例(年齢58.8 ± 15.8歳)で,前方アプローチによる階段の降りは,13例中5例が不可能であった。これらの症例に対し,前方アプローチと後方アプローチを施行し,それぞれの可否,不安感,所要時間,動作パターンを調査した。後方アプローチは全例が階段の降りが可能となり,階段の降りにおける不安感の比較でも,前方アプローチに比べ後方アプローチにおいて有意に不安感は小さかった。階段降りの所要時間は,後方アプローチと前方アプローチの間に有意な差を認めなかった。以上のことから,階段の降りが困難な片麻痺患者に対しては,後方アプローチを指導することが有効と考えられた。
著者
山崎 裕功
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.29-33, 2005-01-18

脊髄損傷者は,受傷後,症状が固定化すると,公的に身体障害者として認定され,障害年金受給者として社会生活することになる.しかし,働くという視点でみると,受傷前の職業に復帰できるものは,軽症か,特別待遇にあるもの,雇用基盤の良好な労災事故被害者など,ごく一部に限られ,自然の流れで就労できる人は,殆どない状態である.また,職場復帰できた場合でも,そこには,職場環境や勤務形態を変えてもらったり,雇用サイドや周囲の人達の理解や善意があって初めて可能となっている.このように,脊髄損傷者の場合,受傷後は大半が失職してお
著者
加治木 章 津田 徹 山崎 裕 城戸 優光
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.1290-1295, 1992-07-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
19

Methylphenidate (リタリン®) 静注乱用者2名に高度の閉塞性換気障害と拡散障害を認めた. 胸部X線所見上1例はブラ, 無気肺を伴う肺気腫所見を示し, 自然気胸も合併した. 他の1例は間質性陰影を主体としていた. 両者とも静注乱用をはじめて約10年で労作時呼吸困難を自覚するようになった. 当時の静注乱用の仲間で現在生存している他の1名も胸部X線所見にて肺気腫を認めている事, 比較的若年で発症している事より, これらの肺障害はリタリン静注乱用によりおこったものと考えられた. 若年性の肺気腫や, 拡散障害を伴う閉塞性換気障害の症例ではこのような薬物静注乱用の可能性も考慮する必要がある.
著者
平川 経晃 小寺 良尚 福田 隆浩 公益財団法人日本骨髄バンク 黒澤 彩子 田島 絹子 山崎 裕介 池田 奈未 小島 裕人 田中 秀則 金森 平和 宮村 耕一
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.153-160, 2018

<p>骨髄バンクコーディネートにおける実情把握を目的として,2004年1月~2013年12月に日本骨髄バンクへ登録された患者18,487人,ドナー延べ223,842件の解析を行った。末梢血幹細胞移植例は除外した。移植到達患者あたりのコーディネート件数の中央値は11件,登録から移植までの日数中央値は146日,登録患者の40%が移植未到達であった。HLA6/6抗原フルマッチドナー推定人数が多い場合に,移植到達率が上昇し,移植到達日数が短縮した。ドナー側のコーディネート終了理由は年齢・性別で異なり,20代男性ドナーは健康理由による終了率が低く,ドナー都合による終了率が高かった。複数回コーディネートを受けたドナーのうち,前回の終了理由が患者理由の場合,ドナー理由で終了した場合と比較して採取到達率が高かった。本結果を基盤情報として,より効率的で迅速なコーディネートを目指した施策の検討が必要であると考えられた。</p>
著者
坂田 健一郎 山崎 裕 佐藤 淳 榊原 典幸 浅香 卓哉 北川 善政
出版者
特定非営利活動法人 日本口腔科学会
雑誌
日本口腔科学会雑誌 (ISSN:00290297)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.197-203, 2020 (Released:2020-10-09)
参考文献数
30

The effectiveness of zinc replacement therapy is reported to be approximately 70%. However, the effectiveness of this therapy in our department has been lower than that reported in the field of otolaryngology. In the present study, we examined the effectiveness of zinc replacement therapy in patients with taste disorder. Forty patients were administered only zinc formulations(Polaprezinc, 150mg/day) for ≥8 weeks. The time until effect, serum zinc level and other parameters were used to evaluate improvement in the taste disorder. In the present study, three cut-off values were determined based on the serum zinc levels.The overall improvement rate among the patients in this study was 50%. The improvement rates by serum zinc level were 57% at <60μg/dl, 56% at 60-69μg/dl, 60% at 70-79μg/dl, and 14% at ≥80μg/dl. There was a significant difference in the improvement rate between the patient groups with serum zinc levels of <80 and ≥80μg/dl(57% vs. 14%, p<0.05). The times until effective expression in the 20 subjects with improvement were less than 2 months in 20% and more than 2 months in 80%, with significant differences among the two groups(p<0.05). Polaprezinc was effective in 60% of the cases where serum zinc level measured in blood tests was less than 80μg/dl. Effectiveness was not observed when the serum zinc level was more than 80μg/dl. Therefore, zinc supplementation therapy should be conducted over the long term after proper selection of the patients.