著者
三浦 義正 矢野 智則 坂口 美織 井野 裕治 角田 真人 Tsevelnorov Khurelbaatar 小林 泰俊 坂本 博次 林 芳和 砂田 圭二郎 大澤 博之 福嶋 敬宜 山本 博徳
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1747-1755, 2018-12-25

要旨●小腸腫瘍の治療前評価における超音波内視鏡(EUS)の役割は,質的診断と腫瘍深度診断であり,内視鏡治療に直結するため重要である.しかし,小腸腫瘍は上皮性腫瘍,非上皮性腫瘍共に発見時に内視鏡治療になる可能性は低いため,臨床でのEUSの使用は限られる.一方,Helicobacter pylori陰性者が増加する中で,十二指腸腫瘍を発見・治療する機会が増えている.特に表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(SNADET)の治療においては,腫瘍のサイズ,形態,リスク・ベネフィットを考慮して治療法を選択するが,EUSは手技の安全性を確保する上で重要である.本稿では,小腸腫瘍に対する診断・治療について,実臨床で比較的遭遇する疾患を中心に解説する.
著者
川瀬 成吾 石橋 亮 内藤 馨 山本 義彦 鶴田 哲也 田中 和大 木村 亮太 小西 雅樹 上原 一彦
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.199-212, 2017 (Released:2018-04-01)
参考文献数
91

淀川流域における外来魚類の生息現況を明らかにするために、採集および文献調査を行った。231地点の採集調査の結果、12種の国外外来種(採集地点が多い順に、オオクチバス、ブルーギル、カダヤシ、カムルチー、タウナギ、コクチバス、ナイルティラピア、アリゲーターガー、ニジマス、カラドジョウ、チャネルキャットフィッシュ、コウタイ)と2種の国内外来種(ヌマチチブ、ワカサギ)が採集された。アリゲーターガー、カラドジョウは当流域(本調査範囲内)、チャネルキャットフィッシュは淀川における初記録となった。河川本流と河道内氾濫原(ワンド・タマリ・二次流路)では、オオクチバス、ブルーギル、ヌマチチブ、カムルチーの、農業水路や支流などの周辺水域ではカダヤシ、オオクチバス、ブルーギル、タウナギの出現率が高かった。オオクチバス、ブルーギルは流域全体に広がっており、カダヤシ、ヌマチチブ、カムルチーも比較的広範囲に出現した。文献調査では、さらに4種(ソウギョ、ハクレン、コクレン、タイワンドジョウ)の外来魚類の記録が見つかった。
著者
山本 達夫
出版者
東亜大学
雑誌
総合人間科学 : 東亜大学総合人間・文化学部紀要 (ISSN:13461850)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.97-120, 2003-03

経済活動からのユダヤ人の排除(「経済の脱ユダヤ化」)は、ナチ党による政権掌握以来、比較的無秩序に行なわれていたが、国家指導部がこれに積極的に関与しはじめた1937年後半以降、一定の政策として遂行されるようになった。政策としての「経済の脱ユダヤ化」は、ユダヤ経営の閉鎖・清算、またはドイツ人への所有権の譲渡(「アーリア化」)という形で行なわれた。経済・社会の広範囲に影響がおよぶこの政策の遂行には、第三帝国の多くの組織・機関が関わり、ユダヤ経営とユダヤ人の運命を決定していった。これらの組織・機関が、個々の事例の処理にあたって判断の拠り所にしたのが、国家指導部が出した諸法令であった。だが、これらの法令の全てが公にされたわけではない。『ライヒ官報』や『ライヒ内務省報』で公布されたものもあるが、しかし一般的な法令の「施行細則」としてこの政策の実際の処理過程を規定していたのは、「回覧通達」をはじめとする非公開の指令や内部文書であった。したがって「経済の脱ユダヤ化」政策の具体的な遂行過程を把握するためには、これらの文書の分析が不可欠である。ここに訳出するのは、そうした文書を含む「経済の脱ユダヤ化」関連法令のうち、とくに重要なものである。大きく4つの系統に分けられる「経済の脱ユダヤ化」関連法令のうち、前号では「財産申告令」(1938年4月26日)および「第三帝国政令」(1938年6月14日)に関連する諸法令を紹介した。今回は「排除令」(1938年11月12日)および「財産活用令」(1938年12月3日)関連の法令を中心に紹介する。
著者
山本 達夫
出版者
東亜大学
雑誌
総合人間科学 : 東亜大学総合人間・文化学部紀要 (ISSN:13461850)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.53-70, 2002-03

「経済の脱ユダヤ化」とは、第三帝国における経済活動からのユダヤ人の排除をいう。経済活動からのユダヤ人の排除は1933年のナチ党による政権掌握以来、比較的無秩序に行なわれていたが、国家指導部がこれに積極的に関与しはじめた1937年後半以降、一定の政策として遂行されるようになった。政策としての「経済の脱ユダヤ化」は、ユダヤ経営の閉鎖・清算、またはドイツ人への所有権の譲渡(「アーリア化」)という形で行なわれた。経済・社会の広範囲に渡って影響が及ぶこの政策の遂行には、第三帝国の多くの組織・機関が関わり、ユダヤ経営とユダヤ人の運命を決定していったのである。これらの組織・機関が、個々の事例の処理にあたって判断の拠り所にしたのが、国家指導部が出した諸法令であった。だが、これらの法令の全てが公にされたわけではない。『ライヒ官報』や『ライヒ内務省報』で公布されたものもあるが、しかし一般的な法令の「施行細則」としてこの政策の実際の処理過程を規定していたのは、「回覧通達」をはじめとする非公開の指令や内部文書であった。したがって「経済の脱ユダヤ化」政策の具体的な遂行過程を把握するためには、これらの文書の分析が不可欠である。ここに史料として訳出するのは、そうした文書を含む「経済の脱ユダヤ化」関連法令のうち、とくに重要なものである。その多くは文書館史料であり、わが国では初めて紹介されるものである。
著者
山本 正夫 Katsuko KATAOKA
出版者
International Society of Histology and Cytology
雑誌
Archivum histologicum japonicum (ISSN:00040681)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.449-457, 1986 (Released:2011-10-26)
参考文献数
28
被引用文献数
20 39

A primary cilium often projected from the Golgi region of pancreatic A, B and D cells. The proximal portion of the cilium was found surrounded by a tubular invagination of the plasmalemma, and then the cilium extended into the intercellular canaliculus. The most proximal portion of the ciliary membrane exhibited periodical densities which might correspond to the ciliary necklace. The axoneme of the cilium was basically of the 9+0 pattern, i. e., nine peripheral doublets and no central singlet, though it was modified along the length of the cilium. Although a few appendages were projected from each doublet, it was difficult to identify dynein arms and nexin links. At the most proximal portion of the cilium, a “champagne-glass” structure connected each doublet with the ciliary membrane.The distal and proximal centrioles of the diplosome were connected to each other by a striated band. The proximal centriole, which served as a basal body, had accessory structures, such as alar sheets, basal feet and rootlets.Frequent projections of the primary cilium and its elaborate structure suggest that the cilium is not an aberrant structure but rather one which plays a certain role in the islet cell function.
著者
山本 祐輔 山本 岳洋 大島 裕明 川上 浩司
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.24-37, 2019-01-16

本稿では,ウェブ検索エンジンなどの情報アクセスシステムを用いて情報を精査し,正確なウェブ情報を収集する能力「ウェブアクセスリテラシー」を測定する尺度と質問紙を提案する.提案したリテラシー尺度の信頼性,妥当性の評価を行うために,クラウドソーシングサービスを用いて534名のウェブユーザにオンライン調査を行った.因子分析の結果,ウェブアクセスリテラシー尺度は7因子構造であった.また,ウェブアクセスリテラシー尺度の総合得点は,当該尺度と関連すると考えられる健康リテラシー尺度得点と弱い正の相関(r=0.32,p<.001)を,ウェブ情報に対する信用度と弱い負の相関(r=-0.20,p<.001)を示した.さらに,情報リテラシー関係の講義の受講経験別にウェブアクセスリテラシー尺度得点を確認したところ,統計的有意差が確認された(F(1, 525) = 8.82,p<.01).信頼性を示すクロンバックのα係数については,6つの因子は0.8以上,1因子については0.76であった.
著者
時田 祐吉 山本 剛
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.419-428, 2021-09-01 (Released:2021-09-01)
参考文献数
44

要約:集中治療領域で行われる心エコー図検査の代表的なものとして,①緊急を要する病態に対し,ベッドサイドでの迅速な診断を目的とし定性的な評価を行うpoint-of-care超音波であるfocused cardiac ultrasound(FoCUS)と,②包括的なプロトコルに基づき定量的評価を含め循環器系の幅広い病態の診断を目的とした包括的心エコー図検査(comprehensive echocardiography),の2つが挙げられる。FoCUSは循環器医に限らず幅広く集中治療医により行われるため,目的や評価すべき内容の理解に加え,誤った診断に至らないようにFoCUSの限界や包括的心エコー図検査でなければ診断できない病態についての理解が必要である。本総説ではFoCUSの概要と限界,また包括的心エコー図検査との関係について述べる。
著者
武井 浩樹 藤田 智史 山本 清文 中谷 有香
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

小児期では味蕾は成熟しているが,味覚情報を脳内に伝える脳神経線維や中継核はまだ発達途上である。したがって味覚を生み出す大脳皮質味覚野においても同様に発達が完了していないと考えられる。神経回路の発達が完了する「臨界期」の存在が大脳皮質視覚野で報告されているが,味覚野では未解明のまままである。そこで,脳内のニューロン活動を経過観察できるレンズをマウスに埋入し,種々の味覚物質を摂取させた際のニューロン群の発達に伴う発動パターンを数週間にわたり覚醒下にて計測する。また、視覚野の「臨界期」に重要な役割を果たすとされるBDNFの拮抗薬を投与するなどして,味覚野の「臨界期」を推定する。
著者
山本 浩二郎 前田 晃佑 原口 珠実 里岡 達哉 青山 瑛里子 横山 靖法 草薙 みか 大里 恭章
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.588-592, 2021-08-31 (Released:2021-08-31)
参考文献数
11

薬剤による重篤な有害事象の発生頻度は低く,患者の症状の変化が薬剤性であることを疑うには薬剤師の積極的な介入が有効である。薬剤による有害事象の1つである血管性浮腫は,舌・咽頭に発生すると気道閉塞を起こし重篤な転帰を招く可能性がある。八尾徳洲会総合病院(以下,当院と略す)では集中治療室(intensive care unit,以下ICUと略す)に薬剤師を配置し重症患者の薬物治療管理を行っている。今回われわれは急性の舌・咽頭浮腫により気道閉塞をきたし救急搬送された症例に対して,ICU常駐薬剤師が薬剤性を疑い,医師へ発症機序の説明,代替薬や必要な検査提案など積極的治療介入により診断に結びついた症例を経験したため報告する。また,ICUにおいて薬剤師が介入することで薬剤性の有害事象に関する情報提供をリアルタイムに行うなど,医師の診断と治療方針に大いに貢献し,救急・集中治療の充実を図ったので併せて報告する。
著者
山本 欣司 ヤマモト キンジ Yamamoto Kinji
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.87, pp.11-21, 2002-03-28

「たけくらべ」をめぐる論争をたどりながら明らかになったのは、美登利の変貌の原因を初潮とする見解の背後に、性的な「成熟」によって(子ども)/ (大人)を分割する近代的パラダイムがひそんでいるということである。初潮を迎え(大人)になるまで美登利は無垢で、娼妓の世界-の参入を猶予されているとアプリオリに前提されてきた。ところが、佐多稲子氏は初潮にそれほど大きな意味はないとして、女性のセクシュアリティをめぐる神話に疑問を投げ掛けた。暴力による変貌を主張した《水揚げ説》は強い説得力を持つ。だが、これまでの議論には、娼妓になるべき娘として、実際に美登利にどのような立場の変化があり得たか一という視点が欠けていた。日本近代公娼制をめぐる歴史的事実に目を向けたとき、娼妓とは売られた娘であったことがわかる。私は、美登利の変貌が「身売り」によるものであり、「たけくらべ」の合意する残酷さから目をそらしてはならないと主張した。
著者
松田 壮一郎 山本 淳一
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.92-101, 2019-02-10 (Released:2020-02-10)
参考文献数
44

研究の目的 広汎性発達障害(PDD)児のポジティブな社会的行動へユーモアを含んだ介入パッケージが及ぼす効果を検証した。研究計画 ベースライン期と介入期のABAB反転デザイン法を用いた。場面 大学内プレイルームでの自由遊びを対象に実験が行われた。参加児 特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)男児(5歳5ヶ月) 1名が参加した。介入 (a)触覚ユーモア、(b)聴覚ユーモア、(c)視覚ユーモア、(d)からかいユーモア、(e)強化の遅延、(f)拡張随伴模倣、によって構成される介入パッケージを導入した。行動の指標 参加児のアイコンタクト、笑顔、及びアイコンタクト+笑顔の生起率を部分インターバル法により記録した。結果 介入パッケージを導入している間、アイコンタクト、笑顔、及びアイコンタクト+笑顔、全ての生起頻度がベースラインに比べて増加した。結論 ユーモアを含んだ介入パッケージは遊び場面におけるASD児のポジティブな社会的行動の頻度増加に効果があった。
著者
山本 義泰
出版者
天理大学学術研究会
雑誌
天理大学学報 (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
no.126, pp.p1-17, 1980-03
著者
清水 純子 伊藤 明子 山本 洋子 伊藤 雅章 本間 香 橋本 明彦
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.114, no.7, pp.1277-1282, 2004-06-20 (Released:2014-12-13)

1993~2002年の10年間に新潟大学医学部附属病院皮膚科で組織学的に扁平苔癬と診断し,経過を観察した症例のうち,薬剤性を除く78症例を集計した.合併疾患,C型肝炎ウイルスとの関連,金属試薬貼布試験結果や歯科金属除去の有効性を検討した.抗HCV抗体陽性率は15.4%(78例中12例)で高い傾向がみられた.口腔内病変を有する症例は64例であった.そのうち,貼布試験を施行した症例は40例で,何らかの金属試薬に陽性を示した症例は55.0%(40例中22例),さらに,歯科修復物に陽性金属含有が確認された症例数は15例,歯科金属除去有効率は77.8%(9例中7例)であった.その他,粘膜疹に接している部位の金属修復物を除去した後に粘膜疹が改善した症例が6例あり,歯科金属が非アレルギーの機序で関与する可能性も考えられた.以上より,扁平苔癬の原因ないし増悪因子として,歯科金属による接触アレルギーないし局所刺激性が重要と考えた.
著者
田口 浩 糸賀 裕弥 毛利 公一 山本 哲男 島川 博光
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.958-968, 2007-02-15
被引用文献数
6

本論文では,プログラミング教育において,学習者ひとりひとりの理解状況に応じて演習課題を出題する手法を提案し,それを実際のプログラミング演習科目へ適用した結果を示す.本手法では,豊富に用意された演習課題の中から,過去の他の学習者の演習履歴に基づいて各演習課題の達成度を推測し,各学習者に最適な演習課題を選出して出題する.学習意欲が低い学習者には学習の継続を,学習意欲が高い学習者にはプログラミング能力の向上を優先して出題を行うので,本手法は両者に対して効果的である.本手法を大学でのC 言語プログラミング演習科目に適用した結果,選出された演習課題を解いた学習者の学習継続率が11.3 ポイント向上し,理解をより深めさせることもできた.This paper proposes a method to recommend a C-language programming exercise to each student according to its understanding. The understanding of each student for a specific programming exercise is assumed to be evaluated by a score. For a specific student, a score of a specific programming exercise is inferred, using score histories of himself and other students who addressed the same programming exercise sets in the past. The method selects an appropriate programming exercise to each student, based on the inferred score and the attitude toward the programming. It recommends an easy one to a student loosing motivation, while a tough one to a positive student. The application of the method to an actual university course has proved that students addressing recommended programming exercises are superior to ones rejecting the recommendation in the exercise continuity by 11.3 points, as well as the understanding.
著者
内田 惠太郎 山本 孝治
出版者
日本貝類学会
雑誌
ヴヰナス
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.119-125, 1942

From the numerous specimens collected at various localities along the coast of the Korean Peninsula and its adjacent islands, we obtained the following results about the distribution of Haliotis species in the Korean waters. 1) The following four forms of Haliotis are found in the Korean waters : Haliotis gigantea gigantea Gmelin, H. gigantea sieboldi Reeve, H. gigantea discus Reeve, and H. kamtschatkana Jonas. 2) H. kamtschatkana, a boreal species, is found along the coast of the Korean Peninsula and its adjacent islands, while the remaining three forms, belonging to the temperate species, are found on the coast of Saisyu-to (Quelpart Island) and Tusima. In some islands lying between the Peninsula and Saisyu-to, all of the above four forms are found together. 3) The boundary zone of distribution of the above two groups of Haliotis almost coincides with the 12℃.-isothermal line at 25 metre depth in winter.
著者
山本 英一郎 樋口 雅樹 井上 裕次郎 青山 菜美子 廣橋 猛
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.191-196, 2021 (Released:2021-06-02)
参考文献数
5

【緒言】新型コロナウイルス感染症の第1波拡大中に, 疼痛コントロール目的に緩和ケアチームで介入していた患者が新型コロナウイルス感染症に罹患し死亡した2例を経験したので報告する. 【症例】疼痛コントロール目的にヒドロモルフォン錠を内服していた造血器腫瘍患者2例であった. 両者とも経過中に新型コロナウイルス感染症に罹患したが, 新型コロナウイルス感染症の特徴の一つとされるhappy hypoxiaと考えられる状態を認めた. 急激な全身状態の悪化を認めながらも呼吸困難感の訴えはなく, 投与経路を含めた薬剤調整を行い症状緩和に努めた. 【考察】緩和ケア診療で関与する患者が新型コロナウイルス感染症に罹患した場合, 基礎疾患を有するため急激な状態悪化を認める可能性があるとともに, 新型コロナウイルス感染症の特徴的な症状に応じたオピオイドタイトレーションが必要となる可能性がある.