著者
玉田 泰嗣 古屋 純一 鈴木 啓之 小野寺 彰平 山本 尚德 佐藤 友秀 野村 太郎 近藤 尚知
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.503-509, 2020-03-31 (Released:2020-04-17)
参考文献数
18

摂食嚥下リハビリテーションは,慢性期のみならず急性期病院入院中の早期から行うことも重要である。歯科においても,特に有床義歯に対する歯科補綴学的対応は歯科医師に限定されているため,他職種からの期待も大きい。しかし,摂食嚥下障害を有する急性期病院入院患者における有床義歯の使用状況については,十分には明確になっていない。そこで本研究では,摂食嚥下障害と診断され歯科に依頼のあった急性期病院入院患者627名(平均年齢71.0歳)を対象として,有床義歯の使用状況について調査を行った。患者の多くは脳血管障害や頭頸部癌を有する高齢者で,多数歯欠損であるEichner分類B3~C3の割合が全体の約60%を占めていた。有床義歯に対する歯科補綴処置の必要性は医科の認識よりも実際には高く,全身と口腔の状態から歯科医師が,有床義歯装着が必要と判断した患者は全体の約70%だった。しかし,実際に義歯を使用している患者は全体の約25%であった。また,摂食嚥下障害臨床的重症度分類(Dysphagia Severity Scale:DSS)が低い患者ほど義歯を装着していないことが多いが,誤嚥を認めないDSS 5,6の患者においても,義歯が必要だが使用していない患者を約35%認めた。以上より,摂食嚥下障害を有する急性期病院入院患者においては,有床義歯に対する歯科補綴学的対応が重要であることが示唆された。
著者
加藤 文崇 星野 宏光 山本 為義 小林 省吾 棟方 哲 大里 浩樹
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.2022-2026, 2016 (Released:2017-02-28)
参考文献数
21

爪楊枝の胃壁穿通による肝膿瘍の1例を経験したので報告する.症例は53歳の男性.心窩部痛を主訴に受診した.胆石発作が疑われ経過観察していたが,腹痛の改善を認めなかったため,腹部超音波検査・CT検査を施行したところ,肝外側区域に約3.5cm大の膿瘍と内部に針状陰影を認めた.異物の胃壁から肝への穿通による肝膿瘍と診断した.抗生剤による保存的治療を行い炎症の改善を得た後,異物除去を目的に腹腔鏡下肝外側区域切除術を施行した.異物は爪楊枝であった.術後は特に合併症なく,術後10日目に退院となった.異物の胃壁穿通による肝膿瘍の診断にはCT検査が有効であった.腹腔鏡下手術は低侵襲で可能であり,異物除去に有効であった.
著者
山本 敏貢
出版者
(社)部落問題研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

同和地区もしくはアイヌ民族居住区とその周辺地域の生活水準、生活環境に見られる格差や隔離、隔絶された地域関係はわが国の近代化の中で意図的に作られたものである。とりわけアイヌ民族対策は「北海道旧土人保護法」に代表されるように、言語、宗教、習俗など民族的権利を否定し、北海道の先住者であるアイヌ民族に対し、北海道開拓移住者への同化を強いることを前提とした政策であった。他方同和対策は、格差是正という成果をあげつつも、一部に部落排外主義、部落第一主義の運動や行政により、同和地区内外住民の社会的交流を阻害するという弱的をのこしている。同和対策は、同和地区(未解放部落)の生活水準や生活環境に見られる低位性=国民的平均水準との格差と、それにともなう差別的偏見を早急になくすための特別な措置である。ウタリ福祉対策は同和対策と同様に格差是正や、政策対象者の社会的自立とりわけ社会の主権者としての民主的人格形成とともに、独自の課題として民族自立の保障を重要な課題とする。それらはいずれも個人の課題というよりも旧身分差別あるいは民族差別からの解放を保障しようとする地域社会そのものの課題である。その政策は地域福祉実践となって具体化されるべきてある。以上のことを同和対策事業については、和歌山、京都、奈良、滋賀県等の行政、運動関係資料の蒐集、関係者からの聞き取り調査により、ウタリ福祉対策については、北海道庁及び北海道ウタリ協会の各種調査報告書、行政関係資料の蒐集、アイヌ民族差別問題と取り組む関係者からの聞き取り調査により明らかにした。その研究成果は『部落差別とアイヌ民族差別の比較研究』としてまとめた。
著者
川嶋 太津夫 平田 光子 小方 直幸 白鳥 義彦 両角 亜紀子 山本 清 米澤 彰純 福留 東士 丸山 文裕 佐藤 郁哉 渡部 芳栄 吉川 裕美子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-10-31

大学が自立した学術経営体として環境変化に迅速かつ柔軟に変化に対応するためには、大学のガバナンスとマネジメントの改革が喫緊の課題となっている。本研究は、マネジメントの側面に注目し、国際比較を行い、主として学術面のマネジメントに従事する「学術管理職」と財務や総務といった間接部門のマネジメントに従事する「経営管理職」の相互作用の分析を行った。その結果、日本の大学に比して、海外大学では二つの経営層の一層の職位分化と専門職化が進行していること。にもかかわらず、二つの経営層が機能し、影響力を及ぼしているドメインには共通性が見られること。しかし、職能形成には大きな相違が見られることが明らかになった。
著者
山本 耕平
出版者
京都大学大学院文学研究科社会学研究室
雑誌
京都社会学年報
巻号頁・発行日
no.17, pp.139-153, 2009-12

The aim of this paper is to reexamine what kind of insight the Sociology of Scientific Knowledge (SSK) provides us concerning our understanding of science. SSK has definitely described some crucial dimensions of science which traditional sociology and philosophy of science had not taken notice of. However, it seems that SSK doesn't offer any clear implication for our understanding of scientific rationality. I consider this equivocalness a significant problem to be solved, since some claims raised by SSK provide the background assumptions for much of recent research in Science Studies, like the Science, Technology and Society (STS). To make clear what implications are to be brought out from the claims of SSK about the social dimensions of science, I incorporate some recent arguments of Social Epistemology. Recent studies in Social Epistemology show interesting facts concerning the relationship between the social dimensions of science and scientific rationality. Focusing on Philip Kitcher's discussion about the division of cognitive labor and Miriam Solomon's "Social Empiricism, " I argue that the social dimensions of science sometimes make scientific decision-making rational, and sometimes they do not: it is entirely contingent how the social dimensions of science affect the results of scientific activities. In conclusion, I argue that we should not use the claims of SSK about the social dimensions of science as theoretical bases for our evaluation of science, but just as a tool for identifying various factors underlying decision-making processes. I suggest that this interpretation of the claims of SSK offers a better way to utilize our knowledge of social dimensions of science in Science Studies.
著者
山本 隆
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.694-700, 1999-10-10

味覚は嗅覚とともに他の感覚とは異なり快・不快の情動性に訴える要素が強い。味覚性情動の処理に重要な役割を果すと考えられている扁桃体の働きをいくつかの側面から考察した。扁桃体は味覚性入力を受けたあと,その情報の価値を生物学的観点から判断する。その結果,快(おいしい)・不快(まずい)が実感されるのであるが,その脳の仕組みについてわれわれの行動薬理学的実験をもとに考察した。また,最近のヒトの非侵襲的脳機能計測法による扁桃体の応答特性についても言及した。さらに,味覚をもとにした学習としての味覚嫌悪学習や味覚連合性嗅覚学習における扁桃体の重要性を筆者らの実験結果を紹介しつつ解説した。
著者
山本 志乃
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.167, pp.127-142, 2012-01-31

漁村から町場や農村への魚行商は、交易の原初的形態のひとつとして調査研究の対象となってきた。しかし、それらの先行研究は、近代的な交通機関発達以前の徒歩や牛馬による移動が中心であり、第二次世界大戦後に全国的に一般化した鉄道利用の魚行商については、これまでほとんど報告されていない。本論文では、現在ほぼ唯一残された鉄道による集団的な魚行商の事例として、伊勢志摩地方における魚行商に注目し、関係者への聞き取りからその具体像と変遷を明らかにすると同時に、行商が果たしてきた役割について考察を試みた。三重県の伊勢志摩地方では、一九五〇年代後半から近畿日本鉄道(以下、近鉄)を利用した大阪方面への魚行商が行われるようになった。行商が盛んになるに従って、一般乗客との間で問題が生じるようになり、一九六三年に伊勢志摩魚行商組合連合会を結成、会員専用の鮮魚列車の運行が開始される。会員は、伊勢湾沿岸の漁村に居住し、最盛期には三〇〇人を数えるほどであった。会員の大半を占めるのは、松阪市猟師町周辺に居住する行商人である。この地域は、古くから漁業従事者が集住し、戦前から徒歩や自転車による近隣への魚行商が行われていた。戦後、近鉄を使って奈良方面へアサリやシオサバなどを売りに行き始め、次第にカレイやボラなどの鮮魚も持参して大阪へと足を伸ばすようになった。それに伴い、竹製の籠からブリキ製のカンへと使用道具も変化した。また、この地区の会員の多くは、大阪市内に露店から始めた店舗を構え、「伊勢屋」を名乗っている。瀬戸内海の高級魚を中心とした魚食文化の伝統をもつ大阪の中で、「伊勢」という新たなブランドと、当時まだ一般的でなかった産地直送を看板に、顧客の確保に成功した。そして、より庶民的な商店街を活動の場としたことにより、大阪の魚食文化に大衆化という裾野を広げる役割をも果たしたのではないかと考えられる。
著者
山本 武志 河口 明人
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.126, pp.1-18, 2016-06-30

医師,看護師,理学療法士の3職種の13のプロダクト(文書・声明文・綱領等)の内容を精査し,90のコード,21のカテゴリ,7領域,3分野で構成された「医療プロフェッショナリズム概念」を構築した。次に,1990年以降のプロフェッショナリズム概念の変遷を検討した。「科学的根拠に基づく医療・ケア」,「専門職連携・協働におけるコンフリクト・マネジメント」,「ハンド・オーバー」,「安全文化の普及・推進」,「マス・メディアの利用と情報提供のあり方」などの新しい概念の登場によるプロフェッショナリズム概念の拡大がみられた。また,患者の意思決定への参加から,患者の自律性を尊重するなど,プロフェッショナリズム概念の質の変化が認められた。概念の変化に応じた卒前・卒後の教育・学習の転換が求められるが,専門職連携教育をプロフェッショナリズムを涵養する1つの方略として提示した。
著者
山本 浩二
出版者
常葉大学造形学部
雑誌
常葉大学造形学部紀要 = TOKOHA UNIVERSITY FACULTY OF ART AND DESIGN RESEARCH REVIEW (ISSN:21884366)
巻号頁・発行日
no.16, pp.103-110, 2017-12-31

我が国においては明治期以降、美術教育における基礎的な造形力を養う方法としてデッサンの習得が行われてきた。特に日本の美術系高等教育においては入学試験でデッサンを課すという場合が多く、受験のための訓練と認識されることも多いのが現状である。本稿ではデッサンを単に描画のための技術と捉えるのではなく、ものを見るという行為について知るとともに様々なものの見方を獲得するための訓練と位置づけ、あらゆる美術ジャンルに共通する問題である視覚ということについて考察を進めることで美術教育におけるデッサンの役割について明らかにしようとするものである。
著者
山本 栄一 日隈 四郎 家坂 貞男 有松 憲生 二司 哲夫
出版者
The Society of Resource Geology
雑誌
鉱山地質 (ISSN:00265209)
巻号頁・発行日
vol.17, no.84, pp.200-213, 1967-08-20 (Released:2009-06-12)
参考文献数
15

The Hashima coal mine of the Mitsubishi Mining Co. is located at the semi-artificial tiny Hashima Island, well known as "Warship Island", about 20 km to the south-west of the Nagasaki Harbour.The mine was put into operation in 1887 and has yielded highest class coking coal ever since. Nevertheless, the mining condition was becoming unfavorable in recent years and new coal fields have been actively searched in this area.Since 1953, many geologists and their assistants collected large number of rock samples from the sea-bottom by means of the specially designed dredger backet. They dived with aqualung to observe directly the outcrops at the sea bottom, and examined heavy mineral frequencies of the rock samples collected. Intensive geophysical prospecting, such as marine seismic prospecting by reflection method with floating cables and pressure sensitive geophones, and sonic prospecting was also introduced, in 1957.Thus, the detailed geological maps could be constructed, and the underground geological structure in this off-shore area was revealed. Several coal seams in the Mitsuse area could be traced at the sea bottom exactly, and the coal reserves were clarified.The Mitsuse area has been mined, since Oct. 1965, 14 months after the previous working area was closed owing to a mining accident. The Mitsuse area produces monthly more than 30, 000 tons of high class coking coal at present.In the Hashima area, there is a large reverse fault, named the Hashima-oki fault. Since the depth of the coal seams beyond this fault is rather shallow and there is a large quantity of coal reserves, this huge area is much promising as the next working area.
著者
川口 敏 山本 貴仁
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.29-31, 2003 (Released:2007-09-28)
参考文献数
7
被引用文献数
8 6 2

Sixty seven pellets of Long-eared Owls, Asio otus, were collected in a village, Ehime Prefecture, during 19February 2001to 6 April 2001. The bones of 164 Mus musculus, ten Micromys minutus, two Apodemus speciosus, two Rattus sp., seventeen Pipistrellus abramus, two Myotis macrodactylus, twelve Crocidura dsinezumi and a bird were found in the pellets. M. minutus, P. abramus, M. macrodactylus and C. dsinezumi were new records in diet of the Long-eared owls.
著者
山本 潤 前田 眞治
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.172-179, 2018-06-25 (Released:2018-08-29)
参考文献数
19

右頭頂後頭葉の脳梗塞で着衣障害を呈した80歳代男性に対し,徴候の要因を検討する目的で,開眼と閉眼の2条件で着衣動作の分析を行った.開眼条件では,はじめの袖通し工程で,袖に腕を通すことができない徴候を認め,他の工程は問題なかった.一方,閉眼条件では,徴候を認めず,着衣可能であった.その他の評価から,前開き型に限定していること,はじめの袖通し工程で出現すること,人形に着せた場合も同様の徴候を認めることが明らかとなった.加えて,視覚的同定の問題ではない構成行為の障害も認めた.以上より,触・圧覚情報が乏しいはじめの袖通し工程で,視覚情報からの処理に基づく構成行為の問題に起因した徴候と推察された.
著者
大前 隆仁 松川 義純 山本 修平 武原 弘典 西森(佐藤) 婦美子
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.307-310, 2015 (Released:2016-02-09)
参考文献数
15
被引用文献数
1

レストレスレッグス症候群(RLS)は,主に夜間,下肢に不快な異常感覚を自覚し,睡眠障害の原因となる疾患である。今回,RLS の二症例を経験したので報告する。症例1は60歳男性。他院でRLS と診断され,標準的治療を受けて一定効果があったが,増悪を来した。滋陰降火湯エキス及び桂枝茯苓丸エキスを開始したところ,1週間で睡眠の質が大きく改善し,下肢症状も改善した。症例2は30歳男性。6ヵ月前から下肢に不快な異常感覚が出現し,増悪した。睡眠が障害され,日中の仕事などに支障を来した。滋陰降火湯エキスと柴胡加竜骨牡蠣湯エキスを開始したところ,初服で下肢症状はほぼ消失し,睡眠も良好となり2週間で廃薬とした。RLS は夜間に症状が増悪することから陰血の不足があると考える。また,虚熱による手足煩熱を伴う場合は清熱が必要である。二つの点から,滋陰降火湯の有効性が示唆された。
著者
菅野 博之 大塚 英志 泉 政文 山本 忠宏 本多 マークアントニー 大内 克哉 Hiroyuki KANNO Eiji OHTSUKA Masafumi IZUMI Tadahiro YAMAMOTO Mark Anthony HONDA Katsuya OUCHI
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2012
巻号頁・発行日
2012-11-30

WEB上にまんが表現が移行するということは、「単行本」や「雑誌」がWEBの環境下で新たな適応を求められることを意味する。現在のまんが表現は「コマ」を映画の1カットに見立て「モンタージュ」的に接続する一方、2頁単位の「見開き」に「構成」として配置するものであるが、そのような方法はWEB上では一度解体する。本研究では「横スクロール」形式によってiPadなどのタブレット上に帯状に描かれたまんがを表示する技法において、紙のまんがに替わる新しい文法形式を検証するため、中世の絵巻物「信貴山縁起」の手法の解析を行った。その結果、画面を上下二分割する中心軸上で読者の視線を上下させる技法を確認し、それがiPad対応の横スクロールまんがにも用いることができることを確認した。その他「異時間図法」など、絵巻の技法は応用可能であることが確認できた。「絵巻」と「横スクロール形式のWEBコミック」の方法上の互換性は高く、そこに「紙のまんが」や「アニメーションの技法」をどのようにあらためて導入するかが次の重要な課題である。
著者
森田 学 稲垣 幸司 王 宝禮 埴岡 隆 藤井 健男 両角 俊哉 伊藤 弘 山本 龍生 吉江 弘正
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.352-374, 2013-01-16 (Released:2013-04-24)
参考文献数
106

2011年8月「歯科口腔保健の推進に関する法律」が公布・施行された。高齢化が進む中,生涯を通じて歯科疾患の予防や口腔機能の維持に取り組み,国民が健全な生活を営める社会の実現に向けた法的な整備が開始したことになる。この動きを受けて,本論文では,日本歯周病学会として,ライフステージごとの歯周病予防戦略について提案する。How to 式ではないので,「読んですぐ実践できる」という種類のものではない。むしろ,どのような考えをベースにこれからの歯周病対策をすべきか,診療室・地域において,歯周病学会会員ならではの活躍の参考資料になればと願う。日本歯周病学会会誌(日歯周誌)54(4):352-374, 2012
著者
山本 淳一 澁谷 尚樹
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.46-70, 2009
被引用文献数
3

本論文では、2004年にわが国で制定された「発達障害者支援法」が示している発達障害への支援のありかたについて、応用行動分析学がどのように貢献できるかを概説した。応用行動分析学のもつ「科学性」と「包括性」を整理し、それが、「発達障害者支援法」にうたわれている理念に一致していることを指摘した。次に、「自閉性障害」「注意欠陥/多動性障害」「学習障害」をとりあげて、以下の点についてエビデンスにもとづく支援方法を吟味した。(1)それぞれの発達障害にはどのような特徴があるか?(2)科学的な発達支援方法がどのように明らかにされてきたか?(3)より大きな支援プログラムがどのようにつくられ、その効果が大規模研究によってどのように分析されてきたか?(4)そのような研究を基盤にして、どのように支援ガイドラインが提示されてきたか?(5)様々な特徴をもつ個人に対して、様々な実践現場で活用するために、新たな研究と実践がどのように発展してきたか?その結果、研究成果を受けてガイドラインが提示され、ガイドラインをさまざまなニーズをもつ個人に適用するための方法が開発され、さらに新たな支援成果が蓄積される、という一連の発達支援の発展を抽出した。研究というのは、研究そのもので完結するのではなく、支援そのものの質の向上を促すための必要条件であることを示し、今後の研究課題を討議した。
著者
布川 美穂 鴨下 澄子 脇田 哲郎 山本 茂
出版者
一般社団法人 日本食育学会
雑誌
日本食育学会誌 (ISSN:18824773)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.167-172, 2018-04-25 (Released:2019-05-10)
参考文献数
14

Rice as a staple food in school meals is recommended about 3.5 times per week, but it is reported that milk offered daily is inappropriate as a part of Japanese food culture. To that end, there are municipalities that are considering temporarily discontinuing However, it is unknown how the children who consume the milk feel. Furthermore, if we think that it is undesirable as a part of food culture, it is possible to give it as a drink outside lunch time. However, there have been limited researches to date on this question. Therefore, we conducted two studies to clarify the issue. In Study 1 we examined whether milk provided daily as part of the school lunch is liked by children and in Study 2 we tried to determine children’s opinions about when they preferred to drink milk. In Study 1, pictures of nine typical school lunches were incorporated into a questionnaire and children were asked to select one of five preferences (good, slightly better, neither, slightly bad, bad). Survey subjects were a total of 1947 children from 3rd to 6th grade in Tokyo (329 children), Niigata prefecture (632), and Fukuoka prefecture (986) who agreed to cooperate in the study. In study 2 we investigated the best time to drink milk for 415 children in Tokyo. For the 5 menus with rice as the staple food, 57% of the children rated them favorably (the sum of ‘good’ and ‘slightly good’) and 27% unfavorably (the sum of ‘slightly bad’ and ‘bad’). For the 4 menus without rice as the staple (noodles or bread), 61% rated them favorably and 24% unfavorably. The times at which children preferred to drink milk were 12 AM (52%), 8AM (16%), 3PM (13%), and 10AM (11%). Most of the children suggested that rice as a staple food and milk were not an inappropriate combination, and the most desirable time to drink milk was lunch time.
著者
清水 晶平 望月 翔太 伊豫部 勉 山本 麻希
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
巻号頁・発行日
pp.107, 2013 (Released:2014-02-14)

イノシシ (Sus scrofa)は他の大型哺乳類と比較すると,足が体重と比べて短い.そのため,雪が深いと活動が困難となり,積雪 30cm以上の日が 70日を超える北陸~東北地方には生息できないと考えられていた.しかし,積雪量が 4mを超える 新潟県十日町市では,1995年頃からイノシシの生息痕が報告されている.新潟県では 1978年にはイノシシの生息は確認されなかったが,2003年に生息が確認され,2004年度は 20頭だった捕獲頭数が,2011年度には 791頭まで急増した.そこで本研究では,新潟県で定着しつつあるイノシシの分布に積雪が与える影響を評価し,今後の分布域拡大における積雪の影響について考察した. 本研究では,国土数値情報のデータと,LANDSATから作成した独自の土地被覆図を使用して分析を行った.捕獲頭数は,水稲共済損害評価に係る獣害申告データ(NOSAI)を使用した.ハンターマップの 5kmメッシュごとに,広葉樹林,針葉樹林,水田,畑地,鳥獣保護区,都市域,河川(各々の項目が占めるメッシュ内の面積),積雪量等の地形情報を GISアプリケーションを利用して抽出した.メッシュ内の捕獲頭数を従属変数とし,イノシシの行動に影響を及ぼすと予想される環境要因を独立変数として選択し,ポアソン分布を仮定した一般化線形モデルを作成した. その結果,捕獲頭数の多いメッシュでは,メッシュ内の広葉樹林・針葉樹林・畑地・鳥獣保護区の面積が多く,水田・都市部の面積と積雪量が少なかった.この結果から,イノシシは積雪量の少ないエリアに多く分布していること,比較的積雪量の少ない海岸寄りの林縁付近に位置する水田が被害にあいやすいことが示唆された.本結果と過去の積雪量と被害の拡大状況,捕獲効率等の結果から,今後のイノシシの分布拡大に積雪が与える影響について考察を行う.
著者
谷池 直樹 前田 圭吾 平井 雄三 山本 信祐
出版者
日本口腔診断学会
雑誌
日本口腔診断学会雑誌 (ISSN:09149694)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.216-219, 2019 (Released:2019-11-07)
参考文献数
14

Tobacco smoking is a worldwide public health problem. Recently, there has been growing interest in smoking cessation. On the other hand, oral mucosal ulcers are common presentations encountered in daily practice. These ulcers may be caused by various etiologies.We report a case of refractory oral mucosal ulcer caused by improper use of nicotine gum. A male in his 50s presented to our department with an intractable ulcer in the oral floor existing for over 3 months. He had smoked 20 cigarettes per day for 25 years. He had given up smoking and been using nicotine gum for 6 months. He used two pieces of nicotine gum (2mg tablet) per day, and the gum was improperly placed at the oral floor for 3 to 4 hours per piece. An excisional biopsy was performed and revealed a mucosal ulcer without atypical cells. He was instructed to stop using nicotine gum at the first visit to our department, and the ulcer healed completely in 4 weeks.