著者
山本 誠子 奥村 麻里 大場 智美 為積 沙奈絵 松岡 博厚
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.309-314, 2009 (Released:2015-01-23)
参考文献数
14
被引用文献数
1

生姜搾汁の牛乳凝固性について塩化カルシウム添加脱脂乳を基質に用い検討した。生姜搾汁の乳凝固活性は調製後不安定であった。生姜搾汁に1mML-システインと1mML-アスコルビン酸の添加により-18℃~-20℃で9~11週間貯蔵後も約80%の乳凝固活性が保持された。乳凝固活性は脱脂乳5mlに対する添加量が生姜搾汁0~0.4mlの範囲内で直線的に上昇し,0.5mlにて飽和に達した。乳凝固活性は脱脂乳へ塩化カルシウム0~15mM添加の範囲内で直線的に上昇した。乳凝固活性はカルシウム濃度に依存していた。乳凝固活性は温度とともに上昇した。最高乳凝固活性は70℃であった。生姜搾汁を60℃,10分間加熱処理後の乳凝固活性は約50%減少し,70℃で完全に失活した。しかし,70℃,1分間の加熱処理後には乳凝固活性の83%が保持された。
著者
中岡 博史 細道 一善 光永 滋樹 猪子 英俊 井ノ上 逸朗
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.37-44, 2014-04-20 (Released:2014-04-20)
参考文献数
28

HLA領域の遺伝的多型は医学分野のみならず,人類の移住,混合,自然選択や遺伝的適応といった進化過程を推測する集団遺伝学においても重要なツールとして用いられている。日本人の起源については諸説あるが,約30,000年前の後期旧石器時代に日本列島へと移住してきた狩猟採集民である縄文人と,紀元前1,000年から西暦300年頃に朝鮮半島から日本列島へと移住してきた弥生人の祖先が混血して,現在の日本人集団の起源になったとする“混合モデル”が有力であると考えられている。本稿では,日本人集団の混合的起源を支持する遺伝的知見について概説するとともに,HLA遺伝子多型から日本人の祖先集団を推測する遺伝的痕跡の探索について,最新の研究を紹介したい。
著者
片岡 博美
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.387-412, 2005-05-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
44
被引用文献数
5 3

本稿では,静岡県浜松市におけるブラジル人のエスニックな連帯の様態を,エスニック・ビジネスの利用状況に注目することにより分析した.エスニック・ビジネス事業所は,財・サービスの提供のほか,同胞間の情報の結節点,ネットワークの構築,同胞援助,受入国との接点といった社会的機能や,母国文化の保持・発信,母国との紐帯,アイデンティティの保持・育成などの文化的機能を持ち,浜松市のブラジル人にとり「特別な場所」となっている.これら機能の発達は,「市場媒介型移住システム」をはじめとしたブラジル人の国際移動形態と密接に関連する.浜松市のエスニック・ビジネス事業所は,「開かれた」,「弾力性を持つ」エスニック・コミュニティの拠点として機能しており,ブラジル人の滞日が長期化する中,今後,一層その必要性は高まると考えられる.
著者
片岡 博美
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.285-299, 2016

本稿では,在留外国人を交えた地域防災を,外国人・日本人を交えた全ての地域構成員が持つ,地域コミュニティ参加や防災・災害時に関わる制約という観点から分析し,地域防災において外国人やエスニシティといった要素をいかに捉えていくべきかを検討した。その中では,従来の日本語から多言語へという翻訳中心の防災情報の持つ課題や地縁・長期居住が中心となっている従来の地域コミュニティ自体が抱える課題も明らかとなった。在留外国人を交えた地域防災力の向上には,外国人・日本人を交えた地域の構成員個々人が持つ制約を考慮した防災・災害に関する取り組みの過程で,あるいは取り組みの結果として形成・再構築される新しい地域防災コミュニティの存在が欠かせない。
著者
園田 裕太 大石 風人 熊谷 元 広岡 博之
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.1-11, 2019-02-25 (Released:2019-03-27)
参考文献数
89
被引用文献数
4

近年,アニマルウェルフェアと生産性・経済性を考慮した家畜生産が世界的に求められている.本総説では牛肉のフードチェーンにおいてアニマルウェルフェアがどのように牛肉の生産性や消費者のニーズに影響しているかについて主に欧州の先行研究をまとめて検討した.農家レベルではアニマルウェルフェアを考慮することで生産性の向上が見込まれ,輸送・屠畜レベルでは肉量や肉質の損失が軽減されうることが示された.消費者レベルではアニマルウェルフェアを考慮した生産方法による牛肉には付加価値が付与される傾向が認められた.これらの結果から,アニマルウェルフェアはフードチェーンの様々な段階で家畜生産に影響を及ぼすため,今後,アニマルウェルフェアと生産性ならびに消費者のニーズとの関係性を科学的に実証した知見や情報を統合し,学際的・総合的視点からアニマルウェルフェアと生産性・経済性とを両立する生産システムの構築が必要になると考えられた.
著者
竜岡 博
雑誌
情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.3(1987-HI-016), pp.1-9, 1988-01-18

日本文の入力用のキー配列は、さまざまなものが行なわれている上に、さらに次々に新しい提案が提出されるが、これを統一しようとすることは好ましくない。むしろ、どれもハンディキャップなしに、自由に市場で競争しうる環境を育成・維持・発展させることが望ましい。そのような環境に適合したキー配列として、機能入力、カーソル移動でも手のひらの移動をまったく伴わず、各キーの操作時間の平均値とバラツキが最小、各指の使用頻度が適切、逐次押しと両手交互押しを100%達成しているソフト化されたmykey配列について、その操作法の概略と特色とを述べる。
著者
菅原 貴志 高里 良男 正岡 博幸 太田 禎久 早川 隆宣 八ツ繁 寛 今江 省吾 山本 崇裕 武川 麻紀
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.294-298, 2006 (Released:2008-08-08)
参考文献数
7

Generally vitreous hemorrhage (VH) is detected in 2.2% to 13% of subarachnoid hemorrhage (SAH) patients. VH with SAH (Terson's syndrome) is known to occur frequently in patients with severe SAH or re-ruptured aneurysms. We retrospectively analyzed 20 patients diagnosed with Terson's syndrome out of a total of 881 patients treated for SAH in our department from July 1995 to October 2004. Our study group comprised 15 male and 5 female patients ranging in age from 38 to 77 years (mean 51.2 years). Each patient was classified in Hunt & Kosnik (H&K) grades on admission. One patient was classified in Grade 2, 3 patients in Grade 3, 7 patients in Grade 4 and 9 patients in Grade 5. Each patient was further classified in a Fisher group: 1 patient was in Group 2, 9 patients in Group 3, and 10 patients in Group 4. Regarding the aneurysmal location, 4 cases had ICA aneurysms, 6 had AcomA aneurysms, 4 had MCA aneurysms, 4 had VA or BA aneurysms, and 2 had ACA aneurysms. Re-rupture of aneurysm occurred in 4 cases. Two patients underwent external ventricular drainage because of acute hydrocephalus immediately after CT on admission. Seventeen aneurysms were treated by surgical neck clipping, and 3 aneurysms were treated by intra-aneurysmal coil embolization as the final treatment. Seven patients underwent external decompression because of severe brain swelling, and 6 patients underwent V-P shunt for chronic hydrocephalus. Symptomatic vasospasm occurred in 1 case. Glasgow Outcome Scale (GOS) at discharge showed that 8 patients were GR, 10 were MD, and 2 were SD. VH occurred in only 1 patient on the contralateral side to the ruptured aneurysm among those who had obvious hemilateral VH. Vitrectomy was performed for the 17 VH of 10 patients, and the duration from VH onset to treatment was 8-24 weeks (mean 16.4 weeks). Conservative therapy was done for 15 VH of 10 patients, and the follow-up duration was 12-102 weeks (mean 27.0 weeks). Comparing these 20 VH patients with 311 favorable-outcome (GR or MD) patients who were not considered to have VH, H&K grade or Fisher group scales were significantly higher in VH patients. No significant difference existed between the groups with regard to the number of ruptures or the location of the ruptured aneurysms.
著者
片岡 博美
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.1-25, 2004-03-30 (Released:2017-05-19)
被引用文献数
6

近年の国際労働力移動を取り巻く変化の中,外国人労働者と彼らのエスニック・コミュニティ,エスニック・ビジネスは,積極的に評価される傾向にある.本研究では,受入先の地域社会におけるエスニック集団の主体的活動であるエスニック・ビジネスに注目し,静岡県浜松市のブラジル人を対象としたエスニック・ビジネス事業所でのアンケート調査及び聞き取り調査をもとに,その現況,地域的展開を分析し,それらビジネスがブラジル人や受入先の地域社会に対して果たす役割や意義を検討した.1990年の入管法改正以降の浜松市及び浜松都市圏内におけるブラジル人の増加に伴い,浜松市のエスニック・ビジネス事業所の多くはその商圏を拡大させ,近隣居住のブラジル人を対象とした小規模な「狭域エスニック型」とともに,市外の広域な地方のブラジル人を対象とした「広域エスニック型」,ブラジル人以外をも対象とした「外部市場進出型」事業所が増加した.2000年以降,ブラジル人を対象とした市場が飽和状態となり淘汰・転換期を迎えた浜松市のエスニック・ビジネスであるが,広域な地方をターゲットにした事業展開や外部市場への進出に活路を見出す事業所は依然増加傾向にあり,今後も継続的発展が予測される.浜松市におけるエスニック・ビジネスは,ブラジル人コミュニティの中心やブラジル人援助の中心,そして受入社会との接点としての役割も果たしており,「民族/生活様式」専門化地域として,交流・接触の場として,トランス・ナショナルな文化空間として,自助組織結成の布石として,地元の地域社会に貢献し得る可能性を持つ.
著者
藤田 久雄 安藤 友継 藤岡 博文 島田 昭博
出版者
香川県環境保健研究センター
巻号頁・発行日
no.8, pp.60-66, 2009 (Released:2013-08-20)

UASB槽(300L)と接触バッキ槽(200L)を組合せた実用規模の排水処理実験装置を試作し,ゆで汁を一日200~300玉製造しているうどん店から週5日全量採取して,7カ月間処理実験を行った。その結果,処理水のpH,BOD,COD,SSは,装置立ち上げ及びトラブル時を除いて,全て排水基準の一律基準以下であった。BODの平均値は容積負荷量が3.1g/L/日,原水濃度が4,000mg/L,UASB処理水濃度が150mg/L,接触バッキ槽処理水濃度が19mg/L,除去率が95%以上であった。BOD負荷量に対する汚泥発生量は5.2%,平均メタン生成量は370L/日,月平均電力使用量は289kWh/月であった。うどんゆで汁排水は,UASBを用いた小型高速メタン発酵装置で処理できることが確認できた。実用化には低コスト化・メンテナンスフリー化技術等が課題となる。
著者
本城 勇介 諸岡 博史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.1-13, 2010 (Released:2010-01-20)
参考文献数
18

社会基盤施設に関連した事故に関する判例などが報道されると,工学で考えられている設計問題の枠組みと,法律で規定されている枠組みに差があることを感じることがある.本研究はこのような法律の考え方と,設計の考え方の関係を明確にし,社会基盤施設に求められる安全性や技術者の責任を明らかにすることを目的とする.判例を検討していると,瑕疵に関する考え方も,徐々に安全性が相対的なものであるという認識に変化していると思われる.判例は依然通説である「客観説」をとっているが,その判断にあたり,予見可能性,回避可能性など技術的見識を加え,結果の重大性や構造物の重要性などを多面的に勘案するようになってきていると思われる.
著者
守屋 和幸 広岡 博之
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.1-6, 2018-02-25 (Released:2018-03-23)
参考文献数
5

各要因のグループ(水準)内のデータ数が等しくない不釣り合いデータの分散分析には,最小2乗分散分析法が用いられ,平均値には通常の算術平均値ではなく他の要因や回帰変量に影響されない最小2乗平均値が使われる.本研究では,オープンソースのフリーソフトウェアRパッケージによる最小2乗分散分析法と最小2乗平均値の算出手順を紹介し,回帰変数を含む2元配置試験の数値例を使って,Rによるプログラムと実行結果を例示した.
著者
野村 裕也 植村 周平 間瀬 圭介 中平 洋一 吉岡 博文 椎名 隆
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第51回日本植物生理学会年会要旨集
巻号頁・発行日
pp.0964, 2010 (Released:2010-11-22)

葉緑体は、光合成の他に、ホルモン合成や活性酸素種生成といった生体防御反応においても重要な器官であると考えられている。我々は、葉緑体が細胞内Ca2+シグナルを介して感染シグナルを素早く認識していることを見いだした。しかし、免疫応答における葉緑体の役割はほとんどわかっていない。これまでの研究から、葉緑体チラコイド膜に局在するCa2+結合タンパク質CASが、細胞外Ca2+による細胞質Ca2+シグナルの制御と気孔閉鎖に関与することを明らかにした。今回、免疫応答におけるCASの役割を調べるために、CASノックアウト変異体(cas-1)にPseudomonas syringae pv. tomato DC3000(Pst DC3000)を接種し、菌数増殖を測定した。その結果、cas-1ではPst DC3000に対して抵抗性が低下することがわかった。また、過敏感細胞死への影響を調べるためにPst DC3000(avrRpt2)を接種したところ、WTよりも細胞死が遅延することがわかった。さらに、Nicotiana benthamianaにおける CASサイレンシング植物体において、INF1、Cf-9/Avr9により誘導される過敏感細胞死が顕著に遅延することが明らかとなった。これらの結果から、CASは植物の生体防御反応において重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
著者
安部 直重 広岡 博之 高崎 宏寿 久保田 義正
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.515-520, 2002-11-25
参考文献数
22
被引用文献数
3 2

東北, 関東および東海地方における8県, 422戸の酪農家で飼育されている1,535頭の乳用雌牛 (ホルスタイン種) を対象とした搾乳気質についてのアンケート調査結果を解析した. 調査内容は, 対象牛の搾乳気質, 産次, 牛群内での社会的優位度, 繋留時間, 繋留方法, 飼養規模, 種雄牛で, 各項目について酪農家の回答を求めた. 搾乳気質評価は, 1 : 非常におとなしい, 2 : おとなしい, 3 : やや神経質, 4 : 神経質, 5 : 非常に神経質, の5段階として飼育者自身に評価を依頼した. 気質評価1と2にランクされ, 搾乳作業に支障がないと思われたウシは全体の63%であったが, ランク3のやや神経質と評価されたウシは27%, ランク4および5に評価され搾乳作業にやや支障があると思われるウシは9%存在した. 全調査牛の平均搾乳気質評点は2.31であった. 搾乳気質を従属変数とし, その他の項目を独立変数として最小2乗分散分析を行った結果, 産次 (P<0.03), 社会的順位 (P<0.0001), および種雄牛 (P<0.0001) において有意な効果が示されたが, 繋留時間 (P<0.13) および繋留方法 (P<0.22) の効果は有意ではなく比較的小さかった. また酪農家の飼養規模と搾乳気質の間には関連性は認められなかった. 以上の結果より, 本試験における対象牛では, 特定種雄牛を父に持ち, 経産牛でしかも社会的に中庸で繋留時間が短くフリーストール下で飼養されたウシはおとなしく搾乳される傾向のあることが示唆された.